先日、The Telegraphのサム・ディーンがAFCの利き足に関するおもしろい記事を書いていた。
Arsenal are the most left-footed team in Europe. They are so left-footed that Arteta could stage a training match between 10 right-footed outfielders and 10 left-footed outfielders.
Across Europe’s major leagues, 27% of players are left-footed. At #AFC, it’s 44%. pic.twitter.com/hfNCaHW1o9
— Sam Dean (@SamJDean) October 26, 2025
現在のアーセナルスクワッドにおける左足率は44%で、ヨーロッパでもトップの「左足チーム」だという。ヨーロッパのメジャーリーグでは平均左足率は27%に過ぎないというのだから、かなり多い。
アルテタがヘッドコーチとしてアーセナルに来てからというもの、RWの選手は左足、LWの選手は右足など、ポジションによって優先する利き足があるのもすっかりふつうになったが、考えてみればアルテタ前のヴェンゲルさんやエメリ氏の時代に、コーチがそこまで選手の利き足に強くこだわっていた記憶はない。
そして、アルテタはとくに左足の選手にかなりのこだわりを見せていると。
これは、なかなかおもしろいトピックだと思う。
左足アーセナル vs 右足アーセナルで試合をしたらどちらが勝つ?
サム・ディーンの記事にインスパイヤされたr/Gunners有志がたてたサブがなかなか盛り上がっていた。
各チームはこんな感じである。


最初に左足チームを観たら、これはこっちの勝ちだろ。と思って右足チームを観ると、むむむとなる。
The Telegraphの記事では、左足チームにひとりだけ例外で右足のケパを入れていたが、実際に試合予想をするならr/Gunners有志のように両方ラヤのほうがフェアかもしれない。もちろんラヤは右足である。
あまりにもスクワッドの左足率が高いので利き足で分けたときに2チームがきれいにできてしまう。これはほかのチームではこうはいかないんじゃないか。
さて、どちらが勝つでしょうねえ。
フロント3は左足チームのほうが強そうだが、3MFは右足のほうはいまのレギュラーという安心感。バック4は甲乙つけがたいかも。
これは実際やってみてもらいたいね。お金とれそう。
アーセナル/アルテタの左足重視はパブロ・マリーに始まった
いまの左足チームなアーセナルは、パブロ・マリーに始まったとサム・ディーン。
彼はアルテタのアーセナルでの最初のサインであり、最初の左足DF。
彼がアーセナルに来たときにエメリから受け継いだCBは、ダヴィド・ルイス、ソクラティス、ムスタフィ、チェンバース、マヴロパノスと全員右足だった。
近年のアーセナルで左足CBで即座に思い出せるのは誰だろう。フェルマーレンくらい? メルテザッカーとコシエルニという当時のPLベストCBコンビと云われたふたりもともに右足だった。それくらい、とくにCBの利き足には無頓着だったという。
その後、アルテタはガブリエル、キヴィオール、カラフィオーリとつづけて左足CBを取っていることからも、とくにDFにおける左足重視は明白。アーセナルではLCB/LBには左足が常識になった。かなりの両足使いだったトミヤスも、アルテタ好みだったかもしれない。
そしてこれはDFだけでなく、MFやFWといったほかのエリアでも同様で、アルテタが来てからアーセナルが獲得した30人の選手のうち13人(43%)が左足ということ。ほとんど半分。アルテタの師匠であるPepも左足選手には意識的だったようだが、シティよりもずっと多い。
ただし、いまファーストチームにいるワネーリやMLS、ダウマンのようなアカデミー出身選手が3人とも左足なのは偶然らしいので、完全に意図的に左足を増やしているというわけでもないらしい。
なぜ左足が重要か?
パスアングルにとって、利き足がかなり重要だという。図がわかりやすい。利き足により自然にボールを蹴ることができるアングルはだいぶ違う。右サイドではこれが逆になるわけだ。
このように明白なメリットがあるのに、なぜこれまであまり利き足のことが重視されてこなかったのか。いまとなっては、わりと謎である。
The Telegraphの記事におもしろい指摘がある。引用しよう。
アーセナルはこれらの(左足)選手に非常に執着しており、数年前にはアカデミーのコーチに左足のセンターバックを特に育成する任務を与えたほどだ。
その結果、ユースシステムで左足選手の中には、昇格するにつれて完全にべつのポジションに転用される選手も現れた。
こうなるともう、左足プロジェクト。
野球なんかだともっと利き手について意識的なんだろうが(右投げ左打ちとかがふつうだったり)、フットボールも今後そういうふうになっていくんだろうか。子どものころから両足使いを仕込んで、それを習熟すれば、大人になったときには大きなアドヴァンテッジになる。
左足選手は左足専になりがち
ところで、左足チームvs右足チームの試合に話を戻すと、サブのなかで興味深い発言をしているひとがいた。
わたしはユースチームを20年もコーチしてきたが、自分が観てきたどのレベルにおいても、左足選手というのは右足選手よりもはるかに単足だ。
だから左足選手と右足選手で、すべての条件が同じなら、よりヴァーサタイルな右足選手が選ばれるだろう。
サカの弱足ショットを持ち出すひとがいるだろうが、それでもかなり限定される。彼は弱足でボールの特定の場所を蹴るやりかたをマスターしているが、右足でパスやボールキャリーをやるわけじゃない。
なるほど云われてみれば、左足の選手にはそういうイメージある。いまのチームだとオーデガード。彼はチームでの役割からしても、ほんとは単足ではいけないんだろうが、右足はだいぶ苦手な様子。エジルもそんな感じだった。ジャックはどうだったっけ? 最近の試合を観ていると、カラフィオーリはけっこう両足を使うイメージがあるな。
いっぽうアーセナルの両足使いを思い返すと、真っ先に思い出すのはカソルラだが、彼も右足(※いまTMを確認したら“both”となってた笑。FBRefでは右足)。トミヤス、あるいはティンバーも右足。なんだろう。右足のひとは左足も使おうと意識するが、左足のひとはあんまり右足を使おうとする意識がないのか。
The Telegraphの記事中でも触れられているように、たしかに左足の選手、とくにプレイメイカー系の選手には不思議な特別感がある。あの独特の美しさというか。とくにそれが右足より優れているというエヴィデンスはないらしいが、直感的にそう感じるのは不思議なものだ。中村スンシュケとか、あの左足で蹴るモーションは美しかったもんな。貴族のような彼らが、わざわざ庶民のように右足でプレイしようという気が起きないのかもしれない。
もしアーセナルが今年メジャータイトルを取れば、まずセットピースが想起されるはずであるが、左足チームということも注目されることになるかもしれない。来年から左足選手がトレンドになったりして。
おわり













