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【マッチレビュー】19/20EPL アーセナル vs ノリッチ・シティ(1/Jul/2020)よき一日【試合の論点】

コメント集にひきつづき、EPL19-20ノリッチ(H)のレヴュー。

今回は試合もおもしろかったし語るべきことがたくさんある。



試合の論点

アーセナル vs ノリッチのトーキングポインツ。

アーセナルのよき一日@エミレーツ

  • ブカヨ・サカが契約延長(念願)
  • ミキタリアンのローマ移籍が決定(高給をカット)
  • オバメヤンのPL50点到達(AFC史上最速記録)
  • セドリックのデビューゴール(びっくり)
  • ひさびさの快勝&大勝でトッナム越え(※暫定)

けが人も出なかった。

アルテタのチャレンジ。90分の継続性にはいまだ苦しむ

ぼくはこの試合では、ホームでアルテタのほんとうにやりたかったプレイを「今度こそ」見せてほしいと思っていた。

先日のシェフィールドU(A)でも、ある時間での攻撃の連携プレイにその片鱗は見せていて、あれがもっとたくさんの場面でできればと十分期待をさせるものだったが、今回はまた一歩そこからステップアップしたパフォーマンスに見えた。

シティ、BHA、セインツやシェフUのときと比べると、まず相手のプレッシングにあまり迫力がなかったせいもあるが、前半はほんとうに速くうまくボールが回り、アルテタにとっても理想的な展開になっていたと思われる。「最初の43分はとてもよかった」と自画自賛していたくらいだ。

つねにボールを持ちながら試合をコントロールし、ボールを失えば奪い返すために複数人で即座に殺到するという、アルテタのチームのコンセプトが見えた。きっとあれが理想に近いフットボールだった。

じつは前半のポゼッションのスタット自体は云うほど高くないのだが(56%)、いつもボールを持ち攻めている印象があったのは、そのプレイが効果的だったからだろうと思われる。ボールを大事にしつつも要所では、ワンタッチで素早くパスを回し、すきあらば急所を突くという、まったく観ていて気持ちのよいプレイだった。あんなふうにちゃんと意図があり、それを実行できたプレイを見せるアーセナルは久しぶりではないか。

あれこそがアルテタがアーセナルで本来やりたい、プレイなのだと思う。

アルテタは最近バック3をメインに使い、それで全体のバランスを見出している様子で、バックからのプレイや守備の安定もさることながら、もっとも恩恵を受けているのは攻撃、とくにウィングバック。KTとベレリンはポゼッション時には、後ろを気にすることなく攻撃に専念でき(とくにKTの基本ポジションは高くほぼウイングのようにプレイしている)、それが相手ハーフにおいてパスのオプションを増やし攻撃の活性化につながっている。

オフィシャルサイトより。LWBのKTの高いポジション

今回はとくにベレリンのプッシュアップが目立っていたように思う。以前のアルテタのシステム(RB = Inverted FB)からそこは確実に変えようとしているところだ。左サイドのKTよりは効果的ではなかったかもしれないが、とにかくベレリンはがんばっていた。そして以前の彼の爆発的なペイスが完全に戻っていないことも、見えてしまっていたけれど。。

ノリッチはこのワイドエリアのWBの攻撃参加に前半はほとんど対応できていなかったのも、アーセナルが快適にプレイできた理由だろう。DFがオバメヤンやネルソンに引きずられ、上がったWBがワイドエリアでフリーになる。そこへスルーボールやダイアゴナルのロングボール。そこには攻撃のかたちがあった。スタッツでは右からの攻撃機会がやや多かったようだが、左右のバランスもよかった。

問題はその後だった。

前半の終わりごろにはムスタフィの危なっかしいプレイもあって逆襲を許し、後半が始まれば、3人を一気に変えたノリッチの積極性についていけなくなってしまった。前半とはまるで正反対に守勢となり、10-15分くらいはボールを支配されて試合をコントロールされる側になった。たてつづけにシュートも打たれた。

アルテタのチームのひとつ大きな問題はこの「90分の継続性」で、どんなにいいときがあっても必ず悪い時間帯が訪れてしまう。

どんなチームでも90分パフォーマンスを安定させることは簡単なことではない。だが、アルテタのチームはそれがちょっと極端に見える。

今回はその典型的な展開で、あの流れのなかで、もしコラシナツのボックス内でのチャレンジがファウルになっていたら、相手ミスからのオバメヤンのゴールがなければ、2-1と追われる展開で、そうなったときにこの流されやすいチームには何が起きてもおかしくはなかった。そうやってこのチームはここまで何度もポインツを落としてきたのだ。

このことはアルテタも当然認識しており、進歩すべき課題のひとつだと話していた。

チームがいいプレイをして勢いに乗ることはいいことには間違いない。ただ、劣勢のとき負の勢いにも飲まれやすいのは大きな問題だ。

そここそが、チームのほんとうの強靭さが試されるところで、ひとつひとつ勝って自信を積み重ねていき、このメンタリティを克服していかねばならない。

ダニ・セバーヨスがもたらす変化

今回はほとんどのメディアもオバメヤンをMOTMに選んでいるので、試合をレヴューするなら先にオバメヤン(あるいはもしかしたらジャカ?)のことを書くべきなのだろうが、ぼくはあえてセバーヨスのことを先に書きたい。

以前から何度も書いているように、ぼくは良くも悪くもチームとしての全体のクオリティにもっとも大きな影響を与えるのが、セントラルMFの存在だと思っているからだ。チームワークにとり肝心要の存在。アーセナルのようなパス志向のチームならなおさらそう。

後半の悪い時間帯はやや消えてしまっていることも多かったが、前半だけで評価するならあのすばらしいパフォーマンスの立役者はなんといってもセバーヨスだろう。これまでの数試合とはまったく見違えていた。何か悪いものを喰ったのかもしれない。

このところはずっとアルテタに使われながらも、パッとしないパフォーマンスをつづけていただけに、今回の攻守に目覚ましい別人のような活躍には驚いてしまった。うれしい驚きである。でも、あれこそセバーヨスに期待したいクオリティだった。

この試合の彼のパスアキュラシーは驚きの92%(60/65)。同スタットではジャカも96%(49/51)と際立っているが、セバーヨスはあれだけ前方にチャレンジングなパスを出していながらと考えるとちょっとたたごとではない。

今回のパフォーマンスに多くのファンが彼のデビュー戦であるバーンリーを思い出していたようだが、ぼくにはあのときよりもフットボーラーとして、もっと成熟したパフォーマンスに見えた。

バーンリーでは彼のクオリティというよりは、献身的な「がんばり」のほうが一番に思い出されるのに対し、今回はもっと余裕があって、クオリティと成熟があって、アーセナルのチームの中心でボールを持ち試合の流れをつくる選手になっていたように見えた。

今回はジャカのパフォーマンスも大いに称賛されているし、得点もした彼のほうをより讃えたいというファンも多いかもしれないが、彼の好パフォーマンスのうちの多くの部分はセバーヨスとのコンビネイションの相乗効果に思えた。彼が走り回って相手を引きつけることで、ジャカにも時間と空間の余裕が生まれプレイのクオリティが上がったんじゃないかと。トリガーは彼だったのではないかと。

攻撃では右サイドのベレリンを走らせ、彼に何度か出していたスルーボールにはこれまでにない積極性や可能性を感じたものだ。ラカゼットの頭に送った浮き球のクロスもおみごと。またアルテタが指摘するようにボールのないときもディフェンダーを助け、守備に積極的で効果的だった。

今回の(前半の)セバーヨスは、テクニカルな部分とファイターな部分と両方が出ていて、ぼくがずっと観たかった理想のNo.8だった。4-3-3あるいは3-4-3のようにプレイするなら、当然CMのひとり(No.8)がゲイムメイカーとしてもクリエイトしなければならない。

試合前プレス会見でアルテタにツッコミが入っていたように、現状のアーセナルのMFの攻撃への貢献が低すぎるのは、今シーズンのアーセナルの低調を示す大きな特徴にもなっている。オバメヤンに依存しすぎに見えるのは、彼らの得点への直接的な関与があまりにもないからだ。

今回はセバーヨスとジャカのふたりともが活躍し、これまでになく攻撃にもかなり貢献した。ジャカのゴールもすばらしかったし。

アルテタからなんらかのインストラクションがあったのかもしれない。

現在アーセナルはレアル・マドリッドと彼のローンの延長で交渉中だというが、あのレヴェルのプレイを継続的に発揮できるなら、ぜひともにチームに残ってもらいたい。

彼に課題があるとすれば、チームパフォーマンスと同じく、つねに高いレヴェルを維持できる継続性/安定性だろう。そこは今後を観ていかないとわからないが、ただボスはとても信頼しているようだ。

ボスが信じるというのなら、おれはボスが信じるダニを信じよう。

※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

4 Comments on “【マッチレビュー】19/20EPL アーセナル vs ノリッチ・シティ(1/Jul/2020)よき一日【試合の論点】

  1. CLは無理だしELもあやしくてオーバメヤンの契約はどうなるんですかね ワクチン開発されるまでコロナでスタジアムにお客さん入れても限定的になるだろうし今がピークでこれから衰えていく選手なので給料は少しアップで2年で延長オプションで1年とかで契約更新できたらなぁと思うけど、エジルの前例があるので無理かな 同ポジションにはサカやマルティネッリも居るので1、2年後には絶対的な選手ではないと思いますから無理して契約することは避けてもらいたいものです

  2. オバメヤンの得点力はホントに凄いのひと言です。相手のちょっとしたミスにつけこんで点を獲ってしまう辺りが、見た目に似合わずクレバーというか、ゴールへの嗅覚が抜群ですね。
    ラカゼットは役割が違うとはいえ比べられると酷だなと。
    オバメヤンを残すなら彼が活きるシステムと周囲の選手を用意できるか、売るなら売るでその得点力をどう埋めるのか、難しい問題です。

  3. 天晴れでした!
    特に前半はセバージョス!
    FAカップのゴールで完全にノッてしまいましたね。
    ゴールの魔力。
    その意味でオーバは異次元ですね。
    こんな選手、なう市場で取って来れないんだから絶対残す派です。
    次節以降のジャカもノッちゃうとなると、中盤が急に輝き出してしまうのか。
    ウルブズ戦のMOTMはジャカと予想しておきます。
    セバージョス来季も居て欲しいなぁ。
    後半はセドリック!
    迷いなく逆足であのボールが蹴れるとは。
    クロスも両足で上げてたし、攻撃面では期待して良さそう!
    ベジェリンが復帰以降、らしく無いんで競い合って貰いたいですね。
    2ゴールのオバメヤンも流石だけどMOTMはエミマルかな。
    こんな良いGKだったのかと驚く。
    レノは復帰しても、うかうかして居られないのでは。

    あと関係無いんですけど、糞ださユニのチェルシー相手にジャックがプレイしてて、ほっこりしました。
    なんとか残留して貰って来季もジャックとファビアンスキを観たいもんです。

  4. マルティネスの顔つきがすごく変わったように見える。いい意味で。
    精悍に逞しく鋭い目つきに。優しいイメージから堂々とした頼れるイメージに。

    顔つきでいうとセドリックにも好感を持てた。
    優しい感じのアーセナルのメンツの中では少し異質な戦えるメンタリティーを持った勝負師のそれに見える。
    もちろんサッカーは顔つきでやるもんではないんだが(笑)
    アーセナルに戦うメンタリティー、勝負強さを与えてくれるんではと期待する。
    個人的には過去のハイライト見た印象では守備で裏を取られがちなところがあるように感じる。この試合でもあったかな。
    フィジカル的にある程度カバーできるものを持ってそうだし致命的にはならないというか改善は出来ると思う。今後見るのが楽しみです。

    フィジカルでいうと心配なのはセバージョス。PL再開直後に比べ動けるようになってきたとはいえ、元々スピードがない。ここは改善は難しいポイントなんじゃないかと。
    この試合のようなシステムだとそのポイントが目立たないようにはなっているが。
    攻撃におけるクオリティというかボールを扱う上手さなどは今のアーセナルのMFの中ではかなり高いと思うので、新しいNo.8の選手を取らないなら残ってという気持ちもあるかなぁ。
    ともあれラカへの浮き球のパス、ドリブルで持ち上がること、ボックス内に入り込むこと、これらのプレイが出たのはポジティブだった。頻度増やして欲しいのと他の相手にもできるか今後注目したいですね。

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