先日のFAカップ、オックスフォード戦のあと、ひさしぶりにピッチ上に姿を現したESRことエミール・スミス・ロウが、試合後のインタヴューでなかなか興味深い発言をしていた。
試合レヴューのエントリには入れなかったので、ここに書いておこう。
ESRの復帰戦の試合後コメント「ようやくケガが治ってうれしい」
FAカップのオックスフォード戦、アウェイスタンドに「サカ&エミル・スミス・ロウ~」のチャントが鳴り響くなか登場。およそ15分プレイ。離脱期間中には手術もあり、じつに4ヶ月ぶりの復帰となった。試合後のコメント。
ESR:こんなに長いあいだ離脱していて、難しかった。最初はこんなに長くなるとは思わなかったし、みんなを観ているだけなのは辛かった。でも同時に、チームはリーグのトップですごくいいプレイをしている。だから文句は云えないね。
多くのひとは知らないかもしれないけど、ぼくのケガは18か19才のころからずっとやってるものなんだ。何年にも渡ってそれと付き合っていくのはじつにキツかった。でも、それがようやく終わってくれて、とてもうれしい。手術も成功して、いまはとてもいい気分だ。
(2019にローンされていたRB Leipzig)あのときの痛みとまったく同じものだった。やりくりするのは、かなり難しいもの。それが何年も続いていたなんて、みんな知らないだろうけど、ようやくフルにフィットできてうれしい。
手術のあとは、すぐにチームといっしょに過ごすようにした。ぼくはミーティングにも参加したし、毎日のトレイニングで彼(アルテタ)がなにをやろうとしているのか、キャッチアップしようとした。
(手術後は)想像していたよりは楽だった。いまは復帰できてうれしい。
(週末のNLDについて)結果を出せたらかなりでかい。これ以上のいいタイミングもないだろう。ぼくらもフィーリングはかなりいいし、しばらく準備のためにみんな休める。
(去年の敗戦をモチベーションに使う?)チームのほとんどの選手は、あのときの気分をわかっている。ぼくらはかなりハードにトレインして、エナジーを使って、去年どう感じたかを使って、それを試合のなかに持ち込んでいく。
ぼくはみんなとプレイしたくて、ずっとうずうずしていた。ぼくもインパクトを出せて、残りのシーズンもチームがグレイトでいられればいいと思う。
以上。うずうず。
問題を抱えながらのESRの激動キャリア
現在22才のESRは、18-19才くらいの頃から去年秋に手術を決断するまで、鼠径部(股関)にずっと同じ痛みを抱えていたという。
以前にはアルテタが、彼の問題はケガ(injury)というよりは「成長痛」とも呼ぶべきものと述べていて、当初は時間がたてば自然と解消されると期待されていたのだろうと思われる。
この間も、ESRのキャリアはなかなか忙しかった。そして難しかったはず。だって、ずっと痛かったんだから。フィットしていたときでさえ、股間に爆弾を抱えて(?)だましだましやっていたのかもしれない。
彼が半年ローンでドイツ(RB Leipzig)に渡ったのが、2019年1月(18/19シーズン)。いまからちょうど4年前。本人18才。
このとき彼はこの問題で満足にプレイできず。TMによれば2018年9月からおよそ3ヶ月間groin strainでアウトなので、故障中にローンされたことになる。しかし、それでも当時のボスだったナーゲルスマンが彼のローンの延長を望んだという逸話もあった。才能を見抜いた。
翌年には、AFC(U-23)に戻ったあと、また1月に半年ローンで今度はハダースフィールドへ(19/20シーズン)。アーセナルアカデミーの優秀な選手でも、誰もがローンでうまくいくわけではないなかで、彼のこの半年間は、いまだにユース選手のローンの成功例のひとつとして語られたりしている。本人19才。
そして、20/21シーズンからは本格的にAFCでファーストチーム入り。チーム全体がフォームに苦しむなか、若い彼にはなかなかチャンスは訪れなかったが、この年のボクシングデイPLチェルシー(H)でいきなりNo.10スタートで勝利に貢献。1年ぶりのスターティング大抜擢&ロンドンダービーという大舞台で結果を出したことで、アルテタにこのチームでワークするポテンシャルを見せることになった。
その後は、フィットしたりしなかったりを繰り返し、今年のPLではシーズン序盤の4試合でプレイしただけ(すべてサブから)。
ついに9月に手術を決断。いまに至るという。
彼がこのインタヴューで述べているように、ほんとうにフルフィットネスを取り戻した、鼠径部の問題が完全に解消されたのなら、アーセナルのファンとしてこんなに喜ばしいことはない。思い切って手術を行ってよかった。
22/23シーズン後半、ESRはどこでプレイするか
ESRがこのチームで存在感を放っていたころと比べると、アーセナルのチームはけっこうプレイスタイルを変えているだろうか。
このチームのセットアップのなかで、アルテタが彼の適性ポジションをどう考えているのかは興味深い。
もちろん、アルテタは彼についてはつい先日も「CAM、ウィング、No.9でもプレイできる」とそのことについて言及していた。が、実際いまのチームに当てはめるとどこがいいのか。悩む。
LW?
No.10で重宝されていたあと、オーデガードがチームに加わってからは、LWポジションをマルティネリとシェアしていた時期がしばらくあった。が、いまではもうマルティネリがPLでベンチスタートというのは考えにくい。今シーズンはとくに、RWのサカ同様、彼のLWは外せないくらい定着してしまった。
それにほんとうにムドリクが来るなら、LWのデプスは十分。
ESRはウィングといっても、かなりキャラクターが違うウィングなので、アルテタがそのあたりのギャップを利用したいのなら、ひとまずESRがLWのスーパーサブというのは今後ありそうな展開ではある。違うタイプすぎて、相手はイヤだろう。
いまのチームにESRがLWとして入ったときに、後ろのセットアップがどうなるのかも興味深い。以前KTがレギュラーのときは、ESRはオーヴァラップする彼と相性がよかったが、オーヴァラップしないジンチェンコとはどうか。ジャカにも影響があるか。
No.8?
ファンのあいだでは、ESRは将来的にはNo.8候補だと思っているひとが多いみたいだ。KDB的に。オックスフォードの終盤でも、オーデガードのポジションでプレイしていた。
ただ、これも今シーズンはオーデガードとジャカのふたりが盤石すぎる。プレイスタイル的にも、アルテタがそこをわざわざ変えたがるとは思えず。
とくにオーデガードは、8/10タイプとしてはESRと同じカテゴリではあっても、プレイスタイルがまったく異なる。ボールへの執着心(笑い)がまるで違う。
むしろ、ジャカの左8のほうなら、可能性があるか。もしアルテタがESRの将来像をやはりKDB的なものと観ているなら、いずれにせよ高齢のジャカを徐々にリプレイスしていくことはむしろ必要になる。だが、それも今シーズンはないか。ジャカもいま絶好調だから。変更を加えたい場所ではない。
フォルス9?
ESRのNo.9(フォルス9)は、まあ現時点ではアルテタがほんとうにそれをやるとはあまり想像はできない。
以前のシティがやっていたベルナルド・シルヴァをCFにするみたいな、フォルス9というか、9レスというか、そういうアルテタのイメージなんだろうが、このチームでうまくいくのかどうか。興味深くはある。
記録によれば、ESRは、以前アーセナルで一度だけCFとしてプレイしている(※21/22シーズンPLシティでサブから約20分)。
ジェズースが不在のなかでエンケティアになにかあったら、スクランブル的な状況への対応として可能性はあるかもしれない。だが、エンケティアが好調でもあり、わざわざそれをやるか? わからない。
カラバオカップでまだ生き残っていたら、実験もできたのに。
その他?
ESRが実質的にサカしかいないRWにハマると、チームとして都合はいい。マルキーニョスも毎週プレイできるチームにローンに出せる。
だが、ESRは右足でワイドからカットインサイドしたがる選手であり、右サイドのアタッカーには左足を置きたいチームのなかでプレイすると、必然的にゴール脅威が減ってしまうデメリットがありそう。彼には二桁ゴールのような直接的な貢献を期待したいのだから、できればそれは避けたい(21/22はPLでG10)。
ここしばらくは、アーセナルの選手たちの多くが取り組んでいるだろう、弱足を特訓するか。今シーズンは、サカもネリもめっちゃ逆足使って、上達させていっているように観える。
ESRのかなりユニークなプレイスタイルを考慮したとき、いったいどこに加わったら最適なのか。
考えると楽しい。
おわり
色んな心配もあるんですがスミスロウってどこで使っても自分のプレイして活躍してくれそうトラップもドリブルもパスもシュートもめっちゃ上手いし
現状はマルティかウーデの控えですかね。サカだけ休ませたいときはあまりやってないけどマルティが右で左で使ってもよいかと。個人的にはウーデよりロウの方がすきなのでセンターでみたいですが。