昨日Asian Cupの日本代表はじめて観た。前半だけ。あれは、おもしろかったな。インドネシアという相手のクオリティもあるんだろうけど、攻撃プレイが非常にチャレンジングというか、狭いところに躊躇なくパスを出すし、ボールを奪われることを全然恐れてない。観ていて楽しいから、こりゃあ外国人のファンも増えちゃうな。
さて、全フットボールファンが毎年楽しみにしている「Deloitteフットボールマネーリーグ」。世界中のプロフットボールクラブが、その活動からその年にどれだけの収入を得たかをランキングした、財政的エリートクラブの番付リポート。
昨日、それの最新版(2023年度)が発表され、各所でニュースになっていた。ちなみに、一般的なメディアの見出しとしては「レアル・マドリッドがマンシティを追い抜いた」である。
Deloitte Football Money League 2023
※ここでいう収入(revenue)は、マッチデイ収入、ブロードキャスト収入、コマーシャル収入で、選手取引などは含まれない(はず)
Deloitte Football Money League 2024 トップ20
22/23シーズンの収入における、トップ20ランキングは以下である。グラフィックは『Sky Sports』より。だいたい、想像と同じような顔ぶれ。
1位はレアル・マドリッド。去年トップだったマンシティが2位。PSGは初めてのトップ3入り。前年度より収入の伸び率がもっとも高かったにも関わらず、バルセロナは3位から4位へ。
その下は、マンU、バイエルンとつづき、7位のリヴァプールは前年度から4ポインツダウンともっともランクを落としている。
アーセナルは10位。去年も10位だった。
トップ20で去年と今年で同じポジションだったのは、バイエルン、アーセナル、ユヴェントス、インテル。まあ全体的にだいぶ金額には変動があるので、これは偶然だろう。
PLクラブは、前年度はトップ20に11クラブがいたのにくらべ,今回は8クラブに減っている。これは、イタリー、ジャーマニー、フランスのクラブに著しく収入が増加したクラブがいるおかげということ。前年度からナポリが71%増、ACミランが50%増、フランクファートが41%増など。ヨーロピアンコンペティションで先まで進んだ恩恵を受けている。
2023の傾向
2023の全体の傾向としては、トップ20の合計収入が€10.5bnと、前年度の€9.2bnから14%増加し、初の2桁ビリオンに。Covidシーズンでマッチデイ収入に大打撃を受けて以降、ひきつづきフットボール業界のビジネスの堅調さを示している。
ちなみに、10年前の2012-13シーズンとの比較では、収入の額はほぼ2倍ということ。インフレも関係あるかも?
これからはコマーシャル収入の多様化がカギに
上の図を観てもわかるように、興味深いのはコマーシャル収入。放映権収入と同様に、コマーシャル収入も今年度は大きく伸びている。
Deloitte’s Sports Business GroupのリーダーパートナーTim Bridge氏。『BBC Sport』より。
Tim Bridge:ライヴスポーツへの高い需要は、とくにコマーシャルとマッチデイ収入のさらなる成長を示唆している。
クラブとしては、もはやこれまでのブロードキャスト収入の指数関数的な増加には頼ることはできず、よりコマーシャルにフォーカスしたビジネスモデルを生み出すことが、おおいに財政的安定をもたらすと考えているようだ。
これは新しいマーチャンダイズや、あるいはマッチデイ以外のイヴェント、たとえばコンサートみたいな、そういう新しいコマーシャルな提案を生み出すことも含まれるかもしれない。
これからの数シーズン、ヨーロピアンクラブは総収入のうち大きな部分で、収益の多様化を目指すことになるだろう。
オフシーズンのエミレーツでライヴコンサートをもっとやるみたいなことか。
アーセナルFCの22/23収入
トップ20クラブのリポートもある。アーセナルはこんな感じである。この5年でマネーリーグのランクはほぼ変わっていない。
アーセナルも収入は、前年度から23%も増加。トップ20のなかでも、多く増加しているほうだろう。だが順位が変わらないのは、全体的にそれが増えているから。
健全な給与総額
上の図の2019から2023の推移で目を引くのは、収入における給与総額の率。
この5年間では2021の75%が最悪だったが、2023には51%に。かねてよりアーセナルファイナンスの話題では、給与総額がクラブ財政を圧迫していると指摘されてきたが、ここは非常に健全化されてきた。
ちなみに、2023のアーセナル以外のほかのPLビッグ6クラブのそれは以下のようになっている。
- シティ(59%)
- マンU(51%)
- リヴァプール(63%)
- ToT(46%)
- チェルシー(79%)
マンUは、選手のサラリーにはだいぶヘヴィに使っていると思ったが現時点ではそうでもないようだ。まあ、彼らは収入も多いので、クラブの身の丈にあった金額を選手に支払っているということなんだろう。マンUは2017には、このランキングのトップだったとか。
いっぽうで、ヤバそうに観えるのがチェルシー。ほぼ80%。高い選手を買いすぎでは?
トトナムの健全経営
それと、ToTも興味深い。ビッグ6のなかでは、ToTはこの年だけでなくずっと給与総額の割合が低い。2019年度は39%。なんという健全経営であるか。それでいてちゃんと競争力もある。認めたくはないが。
ちなみに『The Atheletic』のこのトピックのコメント欄では、ToTを揶揄するコメントに対し、冷静なレスがあって、なんとなくそれを引用したくなった。
(トトナムはなんてジョーク)
キミが云うクラブは、国家の後ろ盾とかロシアのオリガルヒの資金提供なしに、純粋に優れた財務計画を背景になんとか生き残って、現在は繁栄しているクラブだよ。
そうだね、彼らはたしかに何も勝ち取ってはいないし、いつもちょっとした幸運があるみたいなところはある。だが、彼らはCLファイナルまで行ったし、コンスタントにトップ4フィニッシュしている。いまや世界一のフットボールステディアムだって持ってる。
彼らは、ほかのどんなクラブよりもFFPにうまく対処する仕組みをつくってる。わたしにはジョークじゃないね。
たしかに、やつらはシティとかチェルシーとかニューカッスルみたいなチートじゃないもんな。
ここでトトナムを称賛するのは、非常に気が引けるわけだが、まあそれでも彼らはうまくやってるよ。そこに疑いはない。アーセナルがヴェンゲルさん後期からずっと低迷期に入って以降、スポーツ面でもビジネス面でも、われらがずっと彼らの後塵を拝しているのは事実なのだし。
アーセナルはさっさと元通りになって、また立場を逆転してもらたいものだ。
今年のアーセナル財政は向上する?
このマネーリーグで上にいったからどうというわけではないが、まあマイチームがビジネスでもエリート扱いされればやはりそれはファンとしてうれしいことだろう。
気が早いが、来年のランキング(2024年度)でアーセナルのポジティヴ要素は、やっぱりCLだと思う。
ここは純粋に、先へ進めば進むほど試合が増えて、マッチデイ収入と放映権収入は増えて、クラブ財政に大きく寄与する。このランキングには反映されないのだろうが、少なくない賞金ももらえる。
PLでは、シーズン前に夢想したほどには現在はうまくいっていないが、CLではぜひ先を目指してほしい。アルテタが来てからヨーロッパですごく強いという印象はないし、むしろどちらかといえば下馬評でも有利と観られながら敗退したりしているが、今年こそは期待している。
おわり
興味深い記事ですね。
「バルセロナは3位から4位へ」ではなく、7位から3つ順位をあげて4位になったのでは?