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アーセナルのユース戦略、アカデミー選手に冬の時代到来? ミカ・ビエレスのインタヴュー

先日のPLシェフィールド・ユナイテッドのレヴューエントリで、ベンチ選手たちの時間切れみたいなことを書いた。

ベンチ選手とは、具体的にはエディ、ネルソンとESRのヘイルエンダー3人。キープレイヤーたちが続々とケガから復帰して、彼らのチャンスは今後かなり限定されそうという残念な話。

その後、たまたま観ていたアーセナルがテーマのThe AthtleticのYouTube動画で(デイヴィッド・オーンステインとエイドリアン・クラークがゲスト)、それと同じトピックで議論していた部分があって、たいへんに興味深く視聴した。

アーセナルは「若い選手をプロモートするクラブ」にもかかわらず、それがチームのレヴェルが上がってますます難しくなっているというジレンマ。

それと、アーセナル周辺でもユースにまつわるニュースは最近はなにかと多いので、そちらもいっしょにまとめて紹介しよう。



エイドリアン・クラーク、デイヴィッド・オーンステインに訊く by The Athletic (March/2024)

オーンステインは、このブログの読者さまには説明不要のTier 1ジャーナリスト。エイドリアン・クラーク(49)は、90年代後半にアーセナルでプレイした元ガナーで、現在は評論家? このブログでも試合エントリで戦術解説などでお世話になっている。わたしがSPOTVの音声を消して利用している、アーセナル公式ライヴ中継番組のホストでもある。

このテキスト起こしは、46分も尺がある動画の一部に過ぎない。アーセナルにまつわるたくさんのトピックがあるので、興味あるかたはフル動画をご覧あれ。

ではHere we go.

ユース育成とトップレヴェルでの競争力の間にあるジレンマ。アーセナルのエートス?

Ayo Alinwolre:エイドリアン、昨日のベンチについては心配しているアーセナルファンもいる。そこにはエンケティア、ネルソン、スミスロウがいて、いまやアーセナルにはマストウィンの試合しかない。そうなれば、彼らを使うのは躊躇されるかもしれず、今シーズンはもう彼らの多くがピッチでは観られないのではないかと。

だが、同時にここで注意したいのは、アーセナルというクラブは若いタレントを育成するクラブとして知られてきたということ。もちろん、リーグを勝ちたいならこうした無慈悲さもなければならないだろうし、つまりアーセナルのエートス(ethos=価値観)や、アーセナルのユースシステムについてどう思う?

クラーク:アーセナルのエートスはいまも同じだよ。彼らは、つねにベストなヤングプレイヤーを育てるために、巨大な投資とエナジーを捧げているし、選手たちが十分よければチャンスも与えている。

歴史的にも、アーセナルはいつも自分たちのタレントを使ってきたし、いまはそこにかなりヘヴィに集中している。何人かのとてもよい若い選手が出てこようしているし。

だから、問題はそこじゃないんだ。問題は、アーセナルのチームのスタンダードが著しく上がっているということ。ブカヨ・サカやエミール・スミス・ロウがシーンに登場したときにくらべても、入っていくにはとてもハードルの高いチームになっている。ボトムラインでひとを運んでいくこともできない。

選手にはひとつのキャリアしかないということもある。ラムズデイル、ネルソンにエンケティア、もしかしたらスミス・ロウ。彼らのような選手たちにとって、もしこのようなかなり限定された時間したプレイできないことがつづくなら、彼らのキャリアを活かすためにどこかほかへ行くほうがいいかもしれない。

わたしが若い選手だったころ、ちょっとだけ年上だったAndy Coleのことを思い出すね。

彼のアーセナルでのキャリアは、Kevin CampbelやAlan Smith、Ian Wrightによって阻まれてしまっていて、だからアーセナルは彼を売却し、その後の彼はご存知のようにニューカッスルやマンチェスター・ユナイテッドで素晴らしいゴールスコアラーになった。それが、彼にとってキャリアが途絶えたことにはならなかったのだ。

いまは、さきほどの言及された選手たちにとっては、若干キャリアがブロックされたように感じても、それは彼らがアーセナルのチームに十分じゃないというわけではない。彼らは彼らでそれを証明もしてきている。

だが、アルテタがこのチームを前進させる責任を担っていて、残念ながら置いてけぼりになってしまう選手もいる。だから、彼らのキャリアのために移籍する必要がある選手がいるとすれば気の毒には思う。

だが、それがアーセナルの再生を助けてもいる。なぜなら、チームはつねに前進していかねばならないのだから。トップレヴェルフットボールでは感傷に浸っている暇などないよ。

イングランドで高まるユースの重要性。アーセナルはこの夏ユースにも注力

オーンステイン:ユースという点でいくつか。アーセナルではあきらかにこれから出てきそうな選手たちがいる。イーサン・ワニエリはいくらかゲイムタイムも得ていたし、マイルズ・ルイスケリーもファーストチームの近くにいる。

彼らは非常に若いが、ときが来ればアルテタは彼らをチームに入れるだろうという信頼がある。簡単な昇格ではないけど、何人かのとても優秀な選手たちがそこにいるのはたしか。わたしはその裏側のことまではよく知らないが。

そして、その年代以外でも、マックス・ドウマン(Max Dawman)なんかは、クラブの周辺ではめちゃくちゃ騒がれている選手。彼の年齢(※14才)のことは考慮されているし、育成のチャレンジもいずれ来るだろうが、そこはまったく楽観されている。

業界では、アーセナルは夏にユース選手にかなりヘヴィに投資するんじゃないかと云われている。これはしばらくぶりのことであり、あるいは大きな投資という意味では初になるかもしれない。

すでにわれわれも、ウォルヴズを退団する選手についてはThe Athtleticで記事にしていて、彼はアーセナルに加入すると観られている。これはもちろんすごく大きな移籍案件というわけではないが。

だが、マンシティやリヴァプール、トトナム、チェルシーでさえユースには注力しているし、とくにマンUはユースマーケットにアグレッシヴに攻勢をかけている。

とくにポストBrexitで、18才になるまでヨーロピアンプレイヤーが取れなくなったこともあり、国内選手の重要性が非常に高まっている。だからこそ、彼らはユース育成にかなり力を入れており、その努力が実を結びつつある。

アーセナルでは、その伝統、FFPとPSR(Profitability and Sustainability Rules)、ホームグロウンのアイデンティティ、とくにリヴァプールで観られるようなこれまでの選手たちがクラブのためにどうプレイしてきたか、コミットメント、その他、そういった多くの理由で、ユースエリアが非常に重要になっている。

それが今後どうなっていくか、わたしたちも注視すべきところだと思う。

変わる「アーセナルウェイ」

クラーク:わたしが14とかの子どもだったころ、アーセナルで16才までの学生契約(school boy forms)にサインしたんだ。16でまたべつの契約をオファーされるまで。

クラブには、たくさんのヤングタレントがいて、そこでは、長期契約とか大金のオファーの話がよくされていた。

わたしも、そのときアーセナル以外からいくつかかなりいいオファーをもらっていて、アーセナルに戻ってからその話をした。「観てください。こことこことここからオファーがあって、こういう契約で……」と。

そうしたら彼らはこう云ったんだ。「われわれはそれはしないよ。キミがアーセナルでプレイしたいかどうかは自分でわかるだろ。われわれはキミには必要なものがあると信じているが、アーセナルのためにプレイするのに十分な力があることは、キミが自分で証明しなければならない」

それで、わたしは結局それをやったし、うれしかったんだけどね! それがアーセナルウェイだった。つねに彼らはやや伝統的な感じで、大成しそうにないキッズに大金をつぎ込むようなラットレイスには首を突っ込みたくなかった。

だが、ときは変わったのだ。わたしはそのシフトもよくわかる。それはおそらく賢い動きだと思っていて、なぜなら若い選手はどんどん機会を得られるようになってきて、16、17、18でも当たり前になってきているから。

以上。Max Dawmanは2009年生まれとか笑える。ついこないだである。

 

これはとてもおもしろい動画だったんじゃないか。「トップレヴェルのフットボールで感傷に浸っている暇はない」。おもわず蛍光マーカーしたくなった部分がいくつもある。

後述するように、最近ミカ・ビエレスもまったく同じことを云っているのだけど、いまはサカやESRがブレイクしたときとは、全然チームのレヴェルが違ってしまっていること。生半可なクオリティではユースからファーストチームに上がることは難しくなっているという。

アーセナルがいまワールズベストのようなスクワッドで、レヴェルもトップオブトップのクオリティでプレイしているのだから、アカデミーの子どもたちには、これまでだって厳しかったのに、もうほとんど絶望的といってもいいくらいかもしれない。クラブが買う選手だって、もはや£50m以上は当たり前で、100mレンジだって非現実的でなくなっている。アカデミーのなかでちょっといいくらいではダメで、ベストでなければ話にならない。

だから、これからブレイクスルーしようとしている選手たちにとって、タイミングとか運はものすごくだいじだとしみじみ思う。

イウォビもウィロックもタイミングが違えば、まだこのチームにいたかもしれないし、エンケティアやネルソンも自分のクオリティを証明できる時間をいまよりもっともらえていたかもしれない。マンUで、ボーンマスで、彼らが劇的ゴールを決めたくらいでは納得させられなくなった。

運という意味では、このブログではいつもESRの話で恐縮だけど、彼がここまでの数カ月間、何度かもらったプレイタイムのなかで、いくつかの決定的なショッツを放っているが、もしこの短いプレイタイムのなかでふたつかみっつゴールを決めていれば(そのチャンスはあった)、彼の存在はいまは全然違うものになっていたように感じる。彼は、運悪くそういったチャンスをものにできなかったおかげで、アーセナルでの将来はとても不確かになってしまっているのが現実である。

若い選手にチャンスを与えることについては、去年から今年くらい、アルテタは「リーグでもっとも若いスクワッド」としばしば誇らしげに云うのだが(実際はリーグで2位だか3位?)、ティーンエイジャーのプレイタイムランキングでは驚くほど下にいる。17位。

アーセナルのこの「13分」は、WHUでのワニエリ(16才)のプレイ記録で、彼の特例的存在からすると、アーセナルのそれはワーストのゼロに限りなく近い。

これも、いかにいまのアーセナルでユース選手のチャンスが少なくなっているかの、ひとつの証拠だろうと思う。たしかにレギュラーには若い選手が揃っているが、いっぽうではその完成度のおかげでティーンがチャレンジできる余地はほとんど残されていない。

それと、「アーセナルウェイ」について。アルテタがつねづね「どんな選手もアーセナルでプレイしたがっている」「選手を説得する必要はない」みたいなことを云っているが、クラーク氏の実際にあったエピソードが知れるというはなかなかナイスだった。うちはうちでプレイしたい選手だけで十分です、と。誰かにうちに来てくださいなんて決してお願いしたりしない。まあ実際の交渉では、それなりの譲歩もあるだろうけど。

かつてラウール・サンレヒが述べた“different knock”。全アーセナルファンが誇らしく思えるもの。

アーセナルがシリアスに低迷していた時期、これは笑いのネタですらあったのに、いまやふたたび本来の意味を取り戻してきた。

 

つづいて、最近のユース周辺のニュース。

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