ホームでのNLDもひとまず終わりすでに旬の時期は過ぎてしまったが、そのノースロンドンダービー関連でSKY SPORTSがティエリ・アンリを聴き手にハリー・ケインのインタビュー企画を行っていた。対談というのは少しウソで、あくまでケインの話をアンリがホストとして聞くという企画である。日本だとお正月とかにテレビでやりそうな感じ。
いま乗りに乗るToTのCFハリー・ケインに、元アーセナルの伝説CFティエリ・アンリが鋭く切り込む。面白そうでしょ?
ということで、アーセナルホームでのNLDも終わったタイミングで非常に今更ながら、SKY SPORTSのNissanプレゼンツ「日産マッチゾーン・ケイン&アンリ」をざっくり翻訳してお届け。現役野球部とそのOBという感じで読んでみると味わい深くおすすめ。
Nissan Match Zone: Harry Kane with Thierry Henry
ストライカーとしてだけ評価されるのってどう?
アンリ:みんながキミのことをゴールだけで判断しようとすることについてはどう思ってる?
ケイン:ああ、そっすね。数シーズン前になかなか得点できなかったときがあって、みんながぼくをそんなのハリケーンじゃないっていうんすよね。でもまあその後はとてもうまくやれたし、自分のプレイスタイルにも満足してるんでアレですけど。ボールを持ってほかのやつらを動かすのが好きなんすよ。
単なるゴールスコアラーというだけでもなく
アンリ:キミは典型的なNo.9とかボックス内で勝負するタイプとかと違うよね。それはどんなところだと思う?
ケイン:あんまり自惚れないようにいいますけど、ちょっとしたところだと思いますよ。そうしたいなと思ってやってますね。ボールキープするというのは大切なことじゃないですか。ほかの選手が動けるし。スイッチングするプレイとか、走ってほかの選手のためにスペースを開けたりだとか。
ストライカーにとっては試合への入り方もいろいろあると思うんすけど、ボックス内でただ待っているだけとか、自分だけが得点してハッピーとかそういうのはあんまないです。
ゴールした日とか家に帰ってときどき思うんすよ。あーなんか今日おれもっとうまくやれたんじゃないかなあとか。ああすりゃよかったこうすりゃよかったとか。反省っす。ぼくにとってのワークレイトの話ですけど、そういうことがぼくがいわゆるストライカーと違うとこかなあと。
おれの誇れる部分すか……
ケインはジェイミー・ヴァーディと並んでプレミアリーグのストライカーのなかではトップクラスの走行距離(9.6km)を誇る。それは24才の彼にとってどれくらい重要なのか。
ケイン:みんなはオフ・ザ・ボールの動きとか、守備に戻る走りだとかを観てくれてると思うんすけど、それもそうだけど、何度もいうように、スペースをつくる動きだとか周りを動かすための動きとかをけっこうやってるんすよ。それはまあ、自分らしいっていうか誇れる部分っていうか。
もちろん、ボスがぼくらにやってほしいプレイだと思ってますし。とにかくインテンシティ高くとか、めたくそプレッシングとかも。成長することももちろん、ワークレイトだって一番でいたいし、それができてこそなんすよね。それがぼくががんばっていることだし。ほかの選手のために走ったりとかもそうです。
アシストが増えてる件
アンリ:16/17シーズンは8アシストしているね。そこはロメル・ルカクのほうが多かった。最終的にはゴール数で判断することになるんだろうけど、キミがもうひとつ試合に加えたいとするなら、シーズン10アシストとかかな?
ケイン:そうなんですよね。ぼくのプレミアリーグのデビューシーズンはたったの1アシストしかできなくて。去年を振り返ると、最低でも5以上はアシストすべきだったなと思ってたんです。デビューシーズンのあと7つアシストして、それからぼくの目標はシーズン20ゴールと10アシストになりました。
ファンの人たちはみんなもっとシュートしろとか、もっとたくさんゴールしろっていうんすけど、ときどきいいボールが来たときにはシュートよりいい位置にいる味方を探しちゃって。テヘヘ。
最終的には自分でゴールするより試合に勝ちたくて。まあ成長しなきゃいけない部分だなって自分でも思うんすけど。もしシーズンで二桁得点できるとしても、自分のためじゃなくてチームのために使いたいっすね。
アンリ:今シーズン、リヴァプール戦でのアシストを振り返ってみようか。
ケイン:あのときは足の速いソンがスピードでジェイムス・ミルナーに勝って、裏のスペースに走り込むとわかってました。ほかの選手ならボールキープして一対一に持ち込むかもしれなかったけど、そのときはジョエル・マティップに引っかからないように少しボールを浮かせてスペースにパスすることだけ考えてました。
ソンのスピードは知ってるんで、そこはそんなに強いボールじゃなくてよくって、インターセプトされないような膝くらいの高さでの少しチップさせるのがいいかなと。その結果、いい高さで彼の走りにばっちり合って、そしてファンタスティックなフィニッシュ。一連のプレイのなかではそのフィニッシュが一番よかったかもしれませんけど。
アンリ:おいおい、キミはあのパスをずいぶん簡単なことのようにいうんだな。つまりそれがまさにキミがどういう選手かってことなんだろうね。試合を観ていた人たちにとってはあのパスこそがゴールみたいなものだよ。当然そう思うはずさ。
キミの立場で想像してみよう。ソンのためにどこにボールを出すべきか。彼のスピードを計算し、ボールがどのようにバウンドするのか考えて、マティップが届かない範囲でソンがボールを受け取れ得点できるポイントを探したと。
そここそが、キミの素晴らしいところだよ。そこにキミが行うような思考プロセスがあることをぼくも知っている。「なぜ」への答えを持っている。なぜキミがそれを行ったのかキミが説明できるという事実が素晴らしい。10人いたら9人がグラウンダーのパスを選択する場面なんだ。
ケイン:そういうのよくありますよね。些細なとこなんでみんなが見ていない。それが試合のなかでは大きな違いになってくるんですけど。
<後略>
以上。
ケインを見直した
いやあ。利他的ですな。そして謙虚さ。滅私(メッシ)っていうのか。
往年の柳沢選手が「ゴールだけで判断されたくない」といったときは何いってんだこいつと思ったけれど。同じことをワールズベストともいえる死ぬほど点を取りまくっているトップストライカーがいうとまったく違った印象に。
アーセナルのファンでありToTが大嫌いなぼくがなぜ今回このインタビューに興味を持ったかというと、単純に読み始めたら面白かったから。あとNLD前に敵を知るのも意味ないことじゃないよなあと思ったので。
ToTのファンはここに来ないだろうし、アーセナルのファンのために載せてみたつもりなので、ぜひグーナーのみんなも読んでみたらいいと思う。割愛した後半部分はいくつかの印象的なゴールを振り返ったりNLDの意気込みを語ったりしている。気になる人はSKYのサイトで読もう。
もともとハリケーンて冗談みたいなネーミングだなあと思ってたくらい(親はやっぱりそういう語呂も考えたのだろうか?)で、ぼくは彼について大した興味もなかったし、何にも知らなかった。そして結果的に知れてよかったと思う。
相変わらず目の上のたんこぶで、大怪我でシーズン棒に振れと願っているけど、こうして選手のパーソナリティを知ってしまえば、敵味方を超えて彼のことはフットボーラーとして尊敬せざるを得ない。アンリがべた褒めするくらいの選手だもの。それにそのうちビッグクラブに移籍する運命だしな。
もっともNLDで勝った余裕もあってのことである。次回ToTのホームでアーセナルがちんちんにやられるようなら、このエントリは消すかもしれない。