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25/26 UCLラスト16でEPLの4チームが同時敗退。なにが起きている?

われらが強敵レヴァークーゼンに勝ち、クウォーターファイナル進出を決めた翌日。つまり昨日。

CLの残りの4試合が行われ、その結果、ラウンドオブ16に残っていたイングランド6チームのうち、なんと4チームが敗退するという事態に。アーセナルとリヴァプールがQFに勝ち抜けただけで、シティ、チェルシー、ニューカッスル、ToTが敗退してしまった。しかも、2レグスのアグリゲイトスコアではわりと大差をつけられて。

ついこないだまで、CLラスト16に初めて6チームも進めた世界最強リーグ=EPLだったのに、なんという突然の凋落。

ちなみに、UCL史上、同一国の4チームが同一ステージで敗退した例はないということ。

この理由について、BBC Sportの記事がちまたの言説をふくめてよくまとまったいたので今回はそれを紹介しよう。

PLとほかのリーグの違いについて考えることはけっこうあるので、今回のできごとと考察はなかなか興味深いと思う。



「24時間で英国4チームが敗退。いったいなにが起きている? その理由は?」by BBC Sport

今回ラスト16で敗退した英国4チームと、その対戦相手とのアグリゲイトスコアは以下。

PSG 8-2 Chelsea

Barcelona 8-3 Newcastle

Atletico Madrid 7-5 Spurs

Real Madrid 5-1 Man City

けっこう悲惨なことになっている。4チーム合わせて28失点。相手も強いとはいえ、さすがにここまで大差がつくとは誰も思わなかったのでは。

それと彼らの名誉のために云っておくと、トトナムはセカンドレグはアトレチに勝ってはいる(3-2)。だがファーストレグの5-2敗けが高くついた。試合に勝っているのに勝負に敗けているのは、今シーズンの彼らを象徴しているとも。ウケる。

さて、BBC Sportの記事はこちらである。紹介しよう。

Champions League: What has gone wrong for Premier League teams in last 16?

理由1:PL勢がもっともタフなドロウだった?

  • CLのフォーマットでは有利なドロウになることはかなりまれ
  • イングランドの6チームのうち5チームがリーグフェイズでトップ8に入り、自動的にラスト16へ進んだ
  • プレイオフを通じてこのラウンドに進んだのはニューカッスルのみ
  • ヨーロッパのビッグチームでトップ8フィニッシュを逃したチームもいくつかあるが、2レグのプレイオフではシードの高いチームが概ね勝った
  • そのおかげでPLチームはラスト16でタフな試合に直面することに
  • しかし、だから大半が敗退してしまったことは驚きだろうか?
  • マンシティとレアル・マドリッドはCL7シーズンで6度めの対戦で、15回優勝しているチームは国内リーグのフォームをものともせずアグリゲイト5-1で勝ち進んだ
  • チェルシーは、ディフェンディングチャンピオンのPSGとアグリゲイト8-2で敗退
  • ニューカッスルは2レグの135分間はバルセロナと競っていたものの、セカンドレグの後半に4失点し、アグリゲイト8-3で敗退した
  • やや驚きは降格危機が迫っているトトナム。ヨーロピアンジャイアントのアトレチコを倒せなかったものの、2レグで7-5と善戦した
  • ファーストレグ以前、Optaは6つの英国チームのうち4チームがつぎのラウンドに進出すると予想していた
  • ファーストレグ以降では、アーセナルとリヴァプールだけが勝ち抜け予想となり、それは当たった。そしてそのどちらもレヴァークーゼンとガラタサライという有利なドロウがあった

理由2:試合数の多さ。疲労とケガ?

  • PLマネジャーたちは、もう長らく試合数と休養のための期間がないことに不満を述べている
  • CLのリーグフェイズでトップ8フィニッシュするということは、2レグのプレイオフを避けられるということ。しかし、すでに過密日程はあり、そこがやや違いになっているようにみえる
  • CL敗退を受けてチェルシーのボスLiam Roseniorは、国内リーグと代表試合で「18ヶ月間休みなく100試合以上」をプレイすることの疲労を訴えていた
  • シティのボスPep Guardiolaもスケジュールについてはしばしば述べている。以前はそれを選手にとっての「危機(disaster)」と述べたことも。彼らはレアルとのセカンドレグを前に休養を優先してトレイニングをキャンセルしていたほど
  • 元リヴァプールのボスJurgen Kloppも変化の必要性を訴えていたし、Arne Slotも英国でウィンターブレイクがないことについて「無益」と云った
英国のCLチームはリーグ平均よりもケガに苦しんでいる
  • 対照的に、フランス、ドイツ、スペインの各リーグではおよそ10-17日間のウィンターブレイクを楽しんでいる
  • シーズンのこの時点で、こうしたカップコンペティションに残っているPLチームはとくに、ほかのヨーロッパのクラブよりも多くの試合をプレイしている
  • CLのラスト16に残っているチームのなかで、もっともプレイ時間の長い選手トップ8は、すべてPLのクラブ。(リヴァプールのVirgil van Dijkがトップ)
  • 必然的に、あらゆる面での競争が求められることは負担となり、それがケガにもつながる。とくに今シーズンのトトナムがそれに苦しんでいる

理由3:PLのタフな競争?

  • PLはしばしばヨーロッパでもっともタフで競争力のあるリーグだといわれる。そしてスタッツもそれを裏付ける
  • Opta Power Rankingsによれば、PLで最低ランクのバーンリーより下のランクのチームが、ラ・リーガには9、セリエAには11いる
  • それはつまり、ヨーロッパのトップチームは国内での要求が少ないことで、CLを優先することができるということ。スクワッドはより頻繁にロテイトでき、ビッグプレイヤーはビッグゲイムのために休める
  • 今シーズンのレアル・マドリッドはケガに苦しんでいるが、彼らはラ・リーガで32人の選手を使っている。それが示唆するのは、ヨーロッパ試合のために選手を温存できるということ
  • 元リヴァプールDFのStephen Warnock「PLでは気を緩めることはできないが、ほかのリーグではそれができるように思える。PSGは現在リーグアンであまりいい調子でもないのに、チェルシーのために選手を休ませたし、イングランドでタイトル争いしていないチームが翌年のCL出場のためにリーグに血眼になっているのに対し、レアルではCLがすべてだ。チームのCLの見方はちょっと違う」
  • BBC Sport戦術担当Umir Irfan「PLにおける試合というのは疲れる仕事だ。チェスの世界で有名なプレイヤーの相対的スキルレベルを測るELOを使うと、PLチームの相対的強さはほかのヨーロッパのチームよりも高いと算出される。単純にいえば、PLにはCL圏外のベストチームの多くが集まっているということ。PLの決まり文句“anybody can beat anybody”は、ラ・リーガやブンデスリーガよりも事実に近い。それがマネジャーにとりロテイションの代償を高くしている」
  • しかし、リーグ内での競争はタフかもしれないが、今年のPLでは多くのチームがグッドフォームを維持することに苦しんでおり、不安定さが特徴になっている
  • 元トトナムMFのAndy Reid「現時点ではPLが最高だと断言することは難しい。わたしはPLはとても断片的で安定に欠けると思う。だからイングランドのグラウンドにやってくるクラブは、これならいっちょやれるんじゃないかと考える」

理由4:セットピースとロングスロー。スタイルの変化?

  • 今シーズンのPLには、プレイのスタイルに顕著な変化がある
  • 従来のポゼッション、パス、遅いビルドアップからのチャンス。そこから、セットピースやロングスロウのリバイバルで強化された、よりダイレクトなアプローチへ
  • 今シーズンのPLにおける210試合で、Optaは試合ごとの平均パスを873.3と記録、これは2012-13シーズン以来で最低となっている
  • 今シーズンの同じポイントで、587ゴールのうち166がコーナー、フリーキック、スロウインからとなっている。28.3%というとても高い割合
  • ロングスロウの数も伸びている。試合平均3.97で、過去5シーズンの倍以上
  • これらのトレンドは、PLチームが戦術面で後退していることを示唆しているのだろうか? 彼らは技術的な巧みさよりも、フィジカリティやダイレクトネスを重視するようになっている?
  • Umir Irfan「英国フットボールはとてもフィジカルなので、ときにはハイエンドのテクニカルクオリティを犠牲にしても、チームはパワフルなアスリートを獲得せねばならなかった。これでチームによっては攻撃面での解決策が減るだけでなく、さらにボールを扱う高度なテクニックを目にする機会も減り、守備での準備が不十分になるという問題もある」
  • 「これはバイエルンのようなチームがフィジカルじゃないという意味ではない。彼らはフィジカル。しかし、彼らにはワールドクラスの選手たちがいて、攻撃スキームと技術を毎週進歩させている。これはPLチームには大きなチャレンジ」
  • 元パレスのウィンガーAndros Townsend「わたしはCLはよりカウンターアタックがものを云うと思う。もしミスをしたりボールを失えば罰せられる。それが最高レベルのフットボールというもの。それがPLではやや慎重になる。ボールの後ろに人数をかけたり、ビルドアップが遅かったり。CLはその逆だ」
  • PLの財政力がほかのリーグを著しく上回っているということは、より良好なスクワッドデプスで全方面で競えるということ
  • しかし、大陸で英国国内でみられなくなったスタイルと対峙するとき、どうもPLチームは苦しむようだ

結び:でも、それがふつうなのかも?

  • PLの実力は、ラスト16に6チームが進出したときに強調された
  • そうなれば、英国クラブがまた記録をつくるんじゃないかという大きな期待もあった。07/08、08/09、18/19には4チームがラスト8進出を果たし、これはどの国も達成していない
  • それが、今年はたったの2チームのみ
過去20シーズンの平均でCLのQFに進出したPLチームは2
  • しかしながら、これはノーマルな年ともいえる。英国チームがラスト8(QF)に進出したのが2チームだった年は、直近10シーズンで4回。そして3回はたった1チームのみだった
  • 今年はラスト16にPLからの参加者が増えたということは、その機会も増えたのだが、実際にはその結果が平均から大きく外れることはない
  • Andy Reid「PLにはちょっとした傲慢さがあると思う。それがメディアなのか、選手なのか、コーチからなのかはわからないが、ほかのリーグやチームに向けてある程度のうぬぼれがある。彼らをあなどることはできない。彼らは間違いなくトップ。そうした試合で、相手を出し抜けると考えることはできるが、すぐに気づくのは相手もこちらに打撃を返せるということ。とくにカウンターアタックで。互角に戦えるなんて考えていると、すぐに失点してしまう」

以上

雑感

英国4チームが敗退でショックとは云っても、もともとラスト16ドロウが決まったときから、6チームのうち少なくとも半分はここで敗退すると予想されていただろう。

いまのチェルシーがPSGより強いとは思えないし、ToTはあの調子で云わずもがな。来シーズンの彼らはPLクラブでさえなくなるかもしれないのだから。ニューカッスルの相手はバルサで、ふつうに考えれば彼らの勝ち抜けは難しかった。ぼくは彼らのプレイスタイルからしてもしやと思ったが甘かったね。

敗退した4チームのうちでやや予想外だったのは、おそらくシティだけ。彼らのクオリティならレアル相手でも勝ち抜けは信じられた。

いっぽうで勝ち抜けたアーセナルとリヴァプールは、相手が相手だけに順当な結果。アーセナルとリヴァプールの対戦相手がバイエルンやPSGなどだったら、ここで敗退していた可能性もある。

だから、いろいろ理屈はあるにせよ、今回のできごとについてはドロウの問題がもっとも大きかったと云えるだろう。運の問題はどうにもできないね。

個人的にもっとも興味深いと思ったのが、リーグの競争力。よく云われることだが今回はデータがある。

偶然なのか、この記事とほとんど同じ内容がSky Sportsでも出ていて、そこからキャプチャ。

CLラスト16に残ったクラブの国内リーグのチームランク(Opta Power Rankings)

これを観るとわかるように、PLだけやけに全体のレイティングが高い。ポルトガルリーグやトルコリーグなど、PLのもっとも低ランクチームより大半のチームが下。ウォルヴズやバーンリーは外国へ行けばタイトル争いができるかも。

PL以外のトップリーグ、とくにブンデスリーガ、ラ・リーガ、リーグアンで共通しているのは、トップチームだけが突出していて、残りのチームの競争力とかなり差があること。このようにトップチームにとって国内がイージーだと、つねに余裕をもって試合にのぞめる。PLではどんな相手でも毎週まったく気が抜けないことを思えば、このアドヴァンテッジはかなり大きい。

記事中にもあるように、彼らがほとんど自動的に毎年CLの出場権を得るのに対し、PLではCLスポッツに入るためにかなり注力する必要がある。

ところですこし前に、イーサン・ワネーリのOMでの様子を観たくて、ふだんは観ないPSG vs OMのハイライトを観たら、あまりのイージーさに愕然とさせられた。OMは悪いチームじゃないが、いくらなんでもPSGとのクオリティ差がありすぎる。こんな試合を毎週やってたらそりゃあチームとしての勢いもつくわと。思った。

そして、もしこれがPLだったらと考えると、PSGとてあのようにやりたい放題にはできないと思うのだよね。彼らが強ければ強いほど、PLのミッドテーブルチーム/ボトムチームは嫌な戦いかたを選択する。

だから、バイエルンやPSGが絶対的に強いのは疑いのないところだが、同時にPLのトップチームにはない恩恵を受けているのも確か。

あと、今回の記事にはないけど、リーグアンなんかはCLのためにリーグのスケジュールを調整したりするんだっけ? それができる(する)リーグとできない(しない)リーグがあるというのは、公平なんだろうか。

ジャーナリストのGuillem Balagueが、すこし前にイングランドとほかのヨーロッパのチームとの違いについて興味深いことを述べていた。ちょうど先週だから、ラスト16のファーストレグ8試合が終わったタイミング。

Guillem Balague:アーセナルとリヴァプールを除くすべての英国チームは、今週は実験か、あるいはいつもとは違うことをやろうとしていた。

シティはレアルよりもMFの人数が少なかったし(HTに修正された)、ニューカッスルはGordonをスタートから外し、スパーズとチェルシーはGKで。彼らはふたりとも失点の原因になってしまった。

英国では、PLとCLが同等の地位をしめているが(ときどきはPLのほうが優先される)、スペインではCLがあきらかにプライオリティ。それは彼らのラインナップや姿勢にも観られたはず。

ここで質問。もし英国クラブがCLをもっと勝ちたいと願ったら、もしファンが賛同しなくても、彼らはPLよりそれを優先する必要があるだろうか?

試合から大きな結論を出すことはできないことはわかっているが、英国チームのCLでの成功が、財政的支配ほど頻繁ではないことをわたしは疑問に感じる。

国内リーグとCLのプライオリティの話。BalagueはCLを優先するスペインの例だけを述べているが、おそらくそれはドイツもフランスも似たようなものなんじゃないか。

これはほかのリーグのトップチームが国内タイトル、あるいは翌年のCL出場がほぼ約束されているのに対し、PLではここ数年のシティとリヴァプールのように時期的な一定クラブの支配はあるものの、競争がよりオープンで、どのトップチームもちょっと成績が悪ければCLでプレイさえできなくなるという、厳しい環境につねにさらされている面が大きいだろう。CLを逃すことはビッグチームには財政的に死活問題なので、どうしたって国内をおそろかにできない。

イングランドでは文化的に国内リーグの価値が高いということもあるかもだが、やはり競争環境の熾烈さが決定的に違う。

そう考えると、PLは他国のリーグにくらべてかなり独特で、だから世界的な人気コンテンツになっているともいえる。毎年どのチームが勝つかわかりきっている一強リーグのように、最初から決まったシナリオがない。

最後、プレイのスタイルについて。PLで脳筋フットボールが跋扈して劣化して弱くなった? そんなことあるかね。

むしろ、ヨーロッパのトップチームもダイレクトプレイは苦手だと思うのだが。だから、もしPLのチームがヨーロッパで勝てば、「脳筋フットボールが世界を制覇した」も成り立ちそう。ストークやバーンリーにインスパイヤされた最新トレンドとして。なにそれかっこいい。

ということで、アーセナルが今年CLを勝つ価値はいつも以上に高い。めちゃくちゃタフなPLでサヴァイブし、未曾有の試合数をこなし、アンチフットボールだダークアーツだと悪役の看板を背負いながら、それでも勝つ。

観たいですねえ。

 

おわり



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