不幸にもUELセミファイナルというビッグマッチに挟まれたこの試合。アーセン・ヴェンゲルがアーセナルのボスとしてオールド・トラフォードを訪れる最後の試合となる。ほたるの光。流れてるね。
もちろん来週のアトレチコ戦セカンドレグに向けてポジティブな結果がほしいが、「本番」に向けて選手が怪我・疲労などをしてしまっては元も子もない。ちょうど昨シーズンにエミレーツを訪れたマンUが、あからさまにPLよりELを優先した状況にそっくりだ(アーセナルの勝ち)。
ヴェンゲル監督にとっては、ガナーズを率いた最後のオールド・トラフォードということで感傷もあるだろうが、現実的になれば大きなローテーションがありそうだ。
予想スターティン
4-3-3
GK チェフ
DF コラシナツ、チェンバース、ホールディング、AMN
MF ウィロック、ジャカ、ラムジー
FW イウォビ、オバメヤン、ネルソン
ちなみに先週のウェスト・ハムでもELを前にしたローテーションを予想して外した。だがきっと今回はやるだろう。その証拠にエンケティア、ネルソン、ウィロック、マヴロパノス、そしてライトバックのJordi Osei-Tutu(ジョルディ・オセイ-トゥトゥ)と、ヤングガナーズが5人もチームに帯同しているという。
公式TeamNewsによると、欠場が決まっているのはエルネニーとカソルラのみ。ミキタリアンがフィットしているようだ。彼をスタートから使うかどうか。
ボスのみことば
さすがにマンU戦ということで、ボスもいろいろなことを話している。
(オールド・トラフォードでいいレセプションを受けられますかね……)
ヴェンゲル:わたしはいつも歓迎されてたよ(ニヤリ)。
(盛大な歓迎があったらどう思いますか……)
まずわたしがどんな歓迎を受けるか。そんなの関係ないよ。試合に勝つことに集中するよ。22年もグレイトなバトルを繰り返してきた。わたしにとって、マドリッドでいい試合をするために、何が問題になるか、何がアトレチコ戦の結果から回復になるか。もしわたしがいいレセプションを受けるなら、それは喜んで受けるよ。
(あなたのチームがユナイテッドの進歩を助けたことについて……)
さあ。マンチェスター・ユナイテッドは素晴らしいクラブがいる巨大なクラブだと思うよ。わたしがいま過去を振り返ったときに、彼らが素晴らしいチームだったと改めて感じるところができることがわかると思う。彼らにはギグス、スコールズ、ベッカム、そして後にはロナウドやルーニーがいた。彼らがその後成し遂げたことを見ると、彼らへの挑戦はいかに重大か。信じられないほどのチームだ。時間の差よりも距離を思い知るよ。
(モウリーニョにお別れをいうのは申し訳ない感じっすか……)
わたしはみんなにさよならをいうよ。フランス語では「au revoir」というんだが、また会うかもしれないという意味だ。
(モウリーニョと友人になれますか……)
場合によるよ(ニヤリ)。彼のことはもちろん尊敬しているよ。パーソナリティについては突っ込みたくない……。できれば、わたしの最後の数週間くらいは平穏に過ごさせてほしいね。新たな対立なんてごめんだよ。ピースフルに行きたい。モウリーニョともね。彼は偉大なマネージャーだよ。
(マンチェスター・ユナイテッドの仕事を引き受けなかったことに後悔してますか……)
いいえ。アーセナルがラブ・オブ・マイ・ライフだから。ここにいるためにたくさんのオファーを断ってきた。スタジアム建設というチャレンジをするためにね。後悔はしてないよ。だってそれがわたしの人生だしそれがわたしにとって一番重要だった。
(マーティン・エドワーズ(※マンUのえらい人)があなたにオファーするために会ったとか……)
ルック。わたしは誰とでも話しをするよ。たしかにマーティン・エドワーズには会ったが、たくさんの人がわたしに会いにうちにくる。しかしわたしはこのクラブに忠誠を誓っていたよ。
続いて、試合についてのコメント。
(日曜には誰か休ませるつもりですか……)
ヴェンゲル:さあね。試合に出したほうがいいかもしれない。日曜にどんなふうに反応するか見るよ。
(アトレチコ戦でサブをひとりも使いませんでした……)
脅かされてるとは見えなかったのでね。ベンチには経験のあるストライカーはいなかったし、イウォビはいたが彼は自信満々でもなかった。だからギャンブルはしなかった。失点するような脅威はなかったんだけどね。
(ハイベリーにいたらいまでもリーグを支配していたっていう説も……)
さあ。エミレーツに引っ越しするときはわれわれのフィロソフィを変えなければならなかった。短期的にはタイトルを取れるかどうかに少し影響を与えたが、長期的にはいい決断だったと思う。
ボスは退任を決めてからのコメントで「I don’t know(知らんがな)」がすごく多い。ちょっとやけくそというか、やっぱり解任されたことでシニカルな気分になっているんだろうか。
マンUとのライバル関係について、勝てばファンをハッピーにできる試合だと語った。
ヴェンゲル:そうだ。われわれはリーグを勝った。ビッグゲームに勝ったし、ビッグゲームに負けた。勝ったことよりも負けたことをいつも思い出す。なぜなら勝利はふつうのことだが、負けたときは苦痛だからだ。苦痛というものは残るんだ。
激しい競争、試合前のテンション。すべてのマネージャーがビッグゲームのために生きてるというだろう。重要な瞬間だし、みんなを特別ハッピーにでき、特別な満足を提供できる。それがいつものマンUとアーセナルの偉大なライバル関係だ。われわれはお互いにいい思い出と悪い思い出があるよ。いつでも素晴らしいふたつのチームなのだから。
サー・アレックス・ファーガソンとのかつてのライバル関係、現在の良好な関係についても。
ヴェンゲル:いまは平和なものだよ。お互いに落ち着いて、時間がたつにつれ尊敬の気持ちが出てくる。いつもケンカしてたふたり、わたしたちのことかもしれないが、長い間一緒にいてお互いのクラブをよく認めるにいたった。
われわれふたりにとっては、プロフットボールクラブのマネージャーであるということ以上の意味があるんだ。強い結びつきによってお互いを認め合い、(クラブとの)ラブストーリーをつくっていった。
彼はマンユナイテッドとのラブストーリーがあり、わたしにはアーセナルとのラブストーリーがある。だからそれには試合に勝つこと以上の意味がある。
われわれはすでに仲良くしているよ。彼とはいい関係があるし、お互いに個人的な思い出も忘れないだろう。
ラブストーリー。詩的だねえ。ボスらしいや。
ラスト、冬にアーセナルを去っていったアレクシス・サンチェスについても語っている。
ヴェンゲル:彼がわれわれの契約オファーを受け取らないとわかったとき、彼が去ることで得られる何かについて考えて、それは結局ミキタリアンの獲得だった。
彼にとってはまた別のビッグクラブへの移籍だ。全体的に、どちらのクラブも成り行きを見守っているという状況だった。
もちろん彼と戦うことになるのは少し奇妙な気持ちだ。彼が変えなかったのは色だけ。それはまだレッドだ。
彼が違うシャツを着ているのを見るのは変な気分だよ。だってわたしたちと強い絆で結びついていたしここにも数年いたんだから。彼は恐ろしいくらいわたしたちのチームに貢献したよ。
そうかそうか。
モウリーニョのコメント「友だちになれる」
モウ様のヴェンゲルについてのコメントも紹介しておこう。
モウリーニョ:われわれの間には、ビッグマッチがあり、ビッグファイトがあり。それには感謝している。
後悔? ちょっとしたネガティブな件なら、そうだね。まあ確かにいくつかのことばやジェスチャー、そういったものはないほうがよかったかもしれない。そうしたことがなければ、安らかにいられただろうね。それは間違いないよ。
もし彼(ヴェンゲル)がわたしが彼を尊敬している50%でも尊敬をくれたら、いつか友人になれる。わたしは彼をとても尊敬しているからね。
しかしこれが現実だが、アーセナルでは彼はチャンピオンだった。わたしが2004年にイングランドに来たとき、彼のタイトルを奪いたかった。それがフットボールだ。
しかし結局わたしは彼を尊敬している。わたしはここ数年はその気持ちを示そうとしてきたよ。何も問題はない。
わたしはキャリア的に彼とは別のステージにいるし、別のプロファイルを持っている。
だからサー・アレックス後の存在として、彼の決断で去ること、サー・アレックスを継ぐ存在、次の大きな存在、次の象徴、彼がプレミアリーグを去るのを気の毒に思う。
そうなんだ。まああなたはとりあえず口を慎もうか。それだけで多くの諍いを起こさずに済むぞ?
マンチェスター・ユナイテッドについて
怪我人はヴァレンシアとロメロ。
マイケル・コックスによる分析。
コックス:今シーズン4-3-3から4-2-3-1にスウィッチして長い時間がたっている。あとポグバを使わなかったりしてる。ポグバを使うなら3人のMFの左が快適に見える。マティッチが後ろめで右にはエレーラ。モウリーニョがその3人を使ってこなかったら結構驚き。
フルバックのふたり、ヴァレンシアとヤングはウインガーからコンバートされたが、若いときよりスピードが落ちている。ふたりとも今シーズンはソリッドだけど、彼らはナチュラル・ディフェンダーじゃない。
とくに最近はこの人たちって全然強そうに見えないんだけど、なぜか勝てない。なんでだろう。
マンUとアーセナルで何が違うか
ちなみに今季、マンチェスター・ユナイテッドというチームの成績を見ると、アーセナルのファンとしては非常に複雑な心境になる。ご覧いただこうか。今季ここまでのデータを。
マンUは2位、アーセナルは6位。ポイントにして17の差がある。
ご注目いただきたいのは、「F」の欄=得点である。マンUが65、アーセナルが66。なんと6位のアーセナルのほうが得点が多い。この控えめな得点数で2位にいるのはなぜか。「A」欄=失点を見ると合点がいく。34試合でたったの26。アーセナルの失点は46で、マンUより20も多い。
これはどれだけ攻撃力があっても失点していればポイントを重ねることはできないということを意味している。アーセナルにマンUのようになってほしいとはまるで思わないが、とにかく守備を改善すること。それが来季以降の最大の課題である。
前回対戦はどうだったか
そりゃ例のやつですわ。さすがにアレは思い出せる。
【マッチレビュー】17/18EPL アーセナル vs マンチェスター・ユナイテッド (2/12/2017) 奇妙な負け試合
10分間で2失点。怒涛のシュート打ちも打ったり33本。結果はゴール1。
これね、ボスがコメントしていたとおり、アトレチコ戦そっくりなんだよな。つまり、このアウェイの試合に万が一勝つことができたら、アトレチコ戦のセカンドレグに向けてこれ以上の弾みはないのだ。だから一瞬ローテーションしないんじゃないかと頭をよぎった。
試合結果予想
WhoScored.com 2-0でホームチームの勝利
BBC SPORTS(ローロ予想) 2-0でホームチームの勝利
SKY SPORTS(ポール・マーソン) 3-0でホームチームの勝利
これみんなローテーション予想で、アーセナルが1.5軍か2軍で戦うという前提。さすがに半端なチームじゃ勝てないよな。しかもアウェイだし。