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2018年1月冬の移籍マーケット雑感。晴れぬこのモヤモヤ感

日本時間の今朝10時をもってイングランドの2018年冬の移籍市場は幕を閉じた。終わってみれば、今回のウインドウではアーセナルが主役だったといっても過言ではない。

サンチェスミキタリアンというビッグトレード、クラブ史上最高という高額で獲得されたオバメヤン、そして去っていったジルーウォルコット。多くのスター選手に動きがあった。これらの取引には数々の疑問も残るが、とにかくアーセナルがやっと金を遣ったことに喜んでいるファンも多い。瞬間的にでもあのスウォンジー戦が忘れられたひとがうらやましくもある。



まだ公式発表はないみたいだが、ようやくエジルもアーセナルとの契約更新オファーを受け入れたということで、もろもろがひと段落した。ここで、ファンの祝福ムードに水を指すのは承知ながら、それでも残るクラブに対しての疑念について書いてみたい。

疑念1:クラブはオバメヤンとラカゼットをどう使うつもりなのか?

ぼくのなかでのオバメヤン獲得で最大の疑問はこれである。

夏に、決定力の向上という積年の課題を解決するためにラカゼットを獲ったばかりで、さらにジルーすら控えにいたアーセナルの優先順位を考えれば、CFの補強は必要なかったとはいわないまでも、もっとずっと補強が必要だったポジションがあったし、それに比べてCFのプライオリティは低かったといわざるを得ない。

現在のクラブの成績と試合内容を分析すれば、目下の課題である守備の再構築をするためにCBやDMの補強は明らかにCFよりも優先されるべきだったはず。ラポルテはシティではなくアーセナルこそに必要な選手ではなかったか。

ここで、ミキタリアンもオバメヤンも「チャンスがあったから」と衝動的に獲得したのではないかという疑いがもたげるのである。いわゆる無計画なパニックバイではないのかと。

エジルとミキタリアンのふたりもゲームメイカーというキャラがかぶる部分はある。しかしこっちほどややこしい話しではないだろう。ふたりをCFのうしろに並べてもいいし、ミキをCMに下げてもいい。ミキタリアンが複数ポジションをこなす能力があるおかげでだいぶアーセナルは恩恵を受けるはず。

問題は、「専業フィニッシャー」という特殊なキャラクターが丸かぶりのこのふたりをいったいどう使うのかだ。これははっきりジレンマではないだろうか。

彼らは、持てるアビリティのありったけを「フィニッシャー」に全振りしたキャラクターであり、その他の役割はフィニッシュほど期待できない。というかいろいろな情報を総合するに、得点すること以外は何もできない/しないくらいに見ておいたほうがいいみたいだ。ラカゼットがいまそうであるみたいに。とくにわれわれのオールタイム懸案である守備にももちろん貢献しない。

どちらかをCFにしてどちらかを一段下げたり、あるいは2トップでもいいが、そうすることで、ラカゼットにワントップをやらせていたときよりも確実に守備力が下がると考えていいだろう。もうひとり守備をしない選手が入りさらにエジルだっているんだから、下手すると前の3人はまったく守備に関与しないという、一時のマドリッドやバルセロナみたいなクラブになってしまう。それがボスの目指すところであるわけがない。

これらの事態を避けようとすれば、ラカゼットのサブは免れないし、実際にそうするしかないだろう。クラブ史上最高額で獲った選手が1年もたずにベンチ行き。なんてこった。半年は様子を見るといわれていたのに。ジルーの役を今度はラカゼットが引き受けることになるなんて、悲劇的である。こんなことなら早まってアーセナルに移籍なんてしなければよかったとラカが後悔しているかもしれない。

アーセナルはいったいどういう計画でオバメヤンを獲得したのか?

BBC SPORTSのトランスファー特集を朝眺めていたら、パンディットのダニー・マーフィがMOTDで、こんな発言をしていたらしい。「アーセナルにとってはロナウドですら意味なし」。

ダニー・マーフィ:オバメヤンをラカゼットと一緒に使う? それともラカゼットがベンチ?

そりゃアーセナルはロナウドだって買えるかもしれないよ? でも守れないんだから意味ないよ。無駄無駄。どんないいアタッカーを買ったって意味がないんだよ。だって彼らはいつまでたっても失点を防げないんだから。アッハッハ。

よくぞいってくれた。そのとおり。1000%アグリー。これがぼくがいまいち浮かれた気持ちになれない一番の理由である。

や、オバメヤンが来たのはうれしいよ。うれしいけど、やったぜヒャッホーと素直に喜べない部分があるってこと。

もし仮に、オバメヤンがめちゃくちゃ活躍してアーセナルの問題を解決した(勝てるようになった)としよう。でもそれはね。ただの偶然ですよ。まぐれ当たり。この局面での守備の補強が正道だとすれば、守備崩壊を放置したうえで攻撃を補強をするというのは邪道あるいはギャンブル。それがいまアーセナルで行われていることだ。ぼくはそういうアンチ合理主義こそ、アーセン・ヴェンゲルが一番キライなことなのかとずーっと思っていたんだ。

疑念2:ジルーを売ってよかったのか?

ジルーはチャンスを決められなくてずっと批判されてきた。それがアーセナルのストライカー待望論につながってもいた。

でもね、ぼくはこの前ジルーがアーセナルで成長したと書いたけど、彼は皮肉なことにアーセナルで出場機会を減らしながらも、このところずっと調子は良かったのだ(※アーセナルで成長したというのは語弊があるかも。アーセナルでの出場機会と関係ないところでフランスで大活躍していたから)。

毎試合のように得点していたフランスではもちろんだし、アーセナルでもとくにスーパーサブとして特筆すべき得点率を持っていた。少なくとも以前とは違ってチェルシー、BVB、モナコなどのビッグクラブがほしがるような選手になっていた。チェルシーが当初ほしがっていたというジェコとのスタッツ比較では、90分あたりの得点など多くの項目で彼は勝っていたくらいだ。

知ってのとおり、ジルーは長身でフィジカルが強いというわかりやすいキャラクターを持ったCFだ。ジルーというオプションはアーセナルにとってレギュラーのアタッカーでうまくいかないときに投入され、ゴール前で特長をいかんなく発揮し「プランB」というかたちで戦術の幅を広げるという重要な役割を担っていた。ボスも語っていたようにジルーが救った試合もいくつもあった。

だからむしろ彼は手放すべきではなかったと主張するひとがいるのも大いに理解できる。

ガナーズOBのポール・マーソンはSKY SPORTSの番組で「ジルーじゃなくてラカゼットを売るべき」と語っている。「これでアーセナルにとってのプランBがなくなった」とも。

‘Arsenal should’ve sold Lacazette’

Arsenal should have sold Alexandre Lacazette and kept Olivier Giroud – Paul Merson

オバメヤンを獲るためにやむを得ず、安価で(報道では18Mポンド)、しかも宿敵のチェルシーに放出されてしまったジルー。これがアーセナルの弱体化とライバルの強化という不幸な結果を招くような気がしてならない。

疑念3:なぜディフェンスの補強を優先しない?

WBAのジョニー・エヴァンスは結局来なかった。アーセナルは興味を失ったわけではなく、報道によれば最終的に12MポンドのオファーをWBAに断られたのだという。12M? エヴァンスは20Mとか30Mという評価では? おそらくアーセナルにはもう予算が残されていなかったのだろう。まさかリヴァプール戦のあれが影響したとか。そんなわけはないか。

30才の選手を割高で獲らずに済んだといえば聞こえはいい。しかし、パンディットやファンから叫ばれていたディフェンスの補強はどうなったんだ?

そしてマシュー・ドビュッシーがまったく誰にも注目されずに移籍していった。これでただでさえ層の薄いRBのオプションを失った。ベレリンが怪我したらどうすんだと。何回おれはここに書き込めばいいのか。

アーセナルが低迷している原因は100人に訊いたら100人が守備と答えるだろう。これでは「クイズ100人に聞きました」という番組も成り立たない。あるあるあるあるー!

いくらここで騒いでもしょうがない。しかし、このあと、アーセナルは守備をどう構築していくつもりなのか。非常に興味深い。

ジャカはレギュラー落ちさせるべき

ところで先日のスウォンジー戦のあと、もしかしたらボスがジャカをレギュラーから落とすことを考えるのではないかと予想しているひとがいた。デニウソンがレギュラーから落ちたときと状況が似ているという。ぼくはそうなればいいなと思っている。

おそらくジャカはあのポジションでプレイするにはちょっと限界だろう。集中力が足りなさすぎる。彼の良さを活かすには、彼のうしろに守備をカバーするもうひとりの選手が必要で、彼レベルの攻撃クオリティなら彼のフォローをさせる選手を余計に置く余裕はアーセナルにはない。アンカーのフォローってどういうことだよ。お前がフォローするんだよ。

スウォンジー戦の最初の失点シーンもそうだし、彼が絡んだ数々の失点シーンを振り返るに、もしかしたら彼は最初からいないほうがマシなのかもしれない。

話しがそれた。

疑念4:エジルの待遇はそれでいいのか?

BBC SPORTSの事情通、オーンスタイン氏などによればエジルの新契約は、週給が350k(税引き後230k)といった金額になるらしい。これだといきなりアーセナルを飛び越えてワールズベストのひとりになるのでは。いくらインフレしているとはいえ、なんとも目が飛び出そうな金額ではないか。

チーム内で給与のバランスを取りたいアーセナルは一選手とそういう契約をするべきじゃないと思っていた、だから契約交渉が難航していたのではないのか。ここへ来て折れた(まあアーセナルがエジルサイドの希望条件に歩み寄ったということだろう)理由は何か。

アーセナルは現時点でエジルを絶対に失いたくなかった。それに尽きる。だから足元を見られたクラブはエジルサイドの要求を飲まざるを得なかった。なんという失態。

サンチェスとエジルは現在のアーセナルのなかで唯一のワールドクラスといわれた選手でこのふたり同時に手放すようなことがあれば、対外的なイメージダウンは避けられないと考えたのではないだろうか。それを避けることができるのなら週給350kという法外な金額でも払う価値はあると判断した。

以前にぼくはいまのアーセナルはアーセナルのブランド価値をどんどん毀損していると書いたことがあったけれど、サンチェスの慰留に失敗したこの状況でエジルまでが去っていくくらいなら……、と考えて非常手段を取ったとしてもまあ理解できないということはない。世界中にファンがいるクラブなので、イメージが重要だと考えてもおかしくはないからだ。

だが、エジルに対してこの高待遇での契約更新はアーセナルにしてみれば、これまでの交渉もむなしく数々の努力は結局のところあえなく失敗に終わったということを意味している。このことがエジルの契約延長を喜ぶ気持ちにブレーキをかける。

エジルは人気選手

ちなみに改めて指摘しておくとメスト・エジルというフットボーラーはSNSでの人気が絶大である。以前にこのブログでエントリも書いた「UEFAフットボール白書」によると、FBやツイッターのフォロワー数で、ロナウド、ネイマール、メッシ(※ツイッターアカウントなし)を除いて、ほとんどNo.1の人気を誇っているのがメスト・エジルという選手である。ツイッターのフォロワー数はアーセナルFCよりも多い。

1000万人以上のフォロワーがいる選手というカテゴリには、イニエスタ、ハメロド、ベイル、ルーニー、ピケ、ラモス、スアレス、ファルカオ、アグエロ等といった錚々たる面々がいるが、SNSでは彼らよりもエジルの人気のほうが高い。SNSをやっているのは世界中で主に老人と子どもを除いた人種だろうが、もちろんエジルは子どもにだって大人気のはずだ。将来彼のようになりたいと夢見るフットボール少年が世界中にわんさかいる。このような選手を失ったらクラブのマーケティング面で相当な痛手であっただろう。

ということは、今回のエジルが受け入れた高待遇はスポーツ面での理由ではなく、客寄せパンダとしての評価だったのだろうか。たしかに週給350kをフットボールの実力だけで測れば少し無理がある。なにせ世界中で彼より稼ぐ選手はほんの数人しかいないのだから。

クラブがどのように判断のしたのかはわからない。だがわれわれはそれについては彼の今後の活躍を見て判断すればいいだろう。週給350kを払う価値があるかないかもすべて本人しだいである。ティエリ・アンリはかつて、エジルとサンチェスについて「そんな大金をもらうなら毎週ハットトリックを要求する」といったが、ぼく自身は彼がここしばらく続けている活躍を今後も続けてくれるなら、あえて給与バランスを崩してまで慰留したクラブの判断も支持したい。どうなることやら。

以上

その他移籍に関して

ウォルコットとサンチェスが出場した試合のハイライトを観た

ウォルコット活躍してたね(2ゴール)。ちょっとうれしい。彼はエヴァートンのようなチームのほうがよほど活躍できるといわれていたけれど、間違いじゃなかったようだ。週末はエヴァートンをエミレーツに迎えるということで、きっとフィオはアーセナルのファンからもスタンディングオベーションで迎えられるだろう。彼が幸せなのがうれしいよ。

サンチェスのEPLデビュー戦(ToT戦)も観た。観たけど、5分のハイライトで、もしかしたら彼がボールを持っているシーンは一度も出なかったんじゃないだろうか。どんだけ試合から消えていただんだろうか。ユナイテッドはいいところなく2-0で敗れていた。あのマンUが。笑える。

どちらもDAZNで観られる。

マレズが残留(笑)

あんだけ駄々をこねてレスターに残留とか。チームメイトたちはキミのふるまいに怒っているらしいぞ。岡ちゃんも怒っているのかな?

結局ソングは……?

昨日このブログでブレイキングしておいた「アレックス・ソング to アーセナル」。続報なし(笑)。ただ、彼は所属元のルビン・カザンが解雇すると、デッドラインデイは関係なくアーセナルが獲得できるのかもしれない。違うかな?

しかしまあソングは今のアーセナルのなかでちょっと観たいよね。



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お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

2 Comments on “2018年1月冬の移籍マーケット雑感。晴れぬこのモヤモヤ感

  1. Arsenalの幹部がオブラク獲得の必要性を指摘みたいな記事をヤフーで読んだのですが…
    ベンゲルではない、幹部?が主張するのって珍しいように感じました。退任が近いということでしょうか

    1. オブラクというのはアトレチコ・マドリッドのGKですね。
      幹部スタッフのミズリンタットとかサンレヒの獲得は、たしかにクラブがポスト・ヴェンゲルを見据えているきざしみたいに捉える向きはあるみたいですよー

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