昨日『テレグラフ』が報じたところによると、現在アーセナルのなかでもヴェンゲルの後任マネージャーの人選について意見が割れているという。
Arsenal split on who they want to succeed Arsene Wenger
仮にヨーロッパリーグに勝ったとしても、契約を1年残して今季いっぱいで解任されるとも噂されるヴェンゲル監督。後任探しはこのヴェンゲル退任プロジェクトのなかでも中核になるはずで、同時にもっとも困難なタスクになる。
現在アーセナルFCで、実質的にクラブ運営の中心的な実務を任されているキーマン3人それぞれが注目している新マネージャー候補とは。
サンレヒ、ミズリンタット、ガジディスが希望する次期アーセナルマネージャー
テレグラフの記事で言及されている3人それぞれが希望しているという次期マネージャー候補をまとめるとこうなる。
役職 | 希望の次期マネージャ | |
---|---|---|
ラウル・サンレヒ Raul Sanllehi | フットボール・ディレクター head of football relations | Luis Enrique (*Free) |
スヴェン・ミズリンタット Sven Mislintat | チーフ・スカウト head of recruitment | Julian Nagelsmann (Hoffenheim), Domenico Tedesco (Shalke) |
イヴァン・ガジディス Ivan Gazidis | 社長 chief executive | Mikel Arteta (Man City), Leonardo Jardim (Monaco), Brendan Rodgers (Celtic) |
※サンレヒは厳密にはフットボール・ディレクターではないが、実質そうだということである。フットボール・ディレクターについては拙ブログの過去エントリをご参照。
ラウル・サンレヒの希望する次期マネージャー
サンレヒはもともとバルセロナで15年間に渡りフットボール・ディレクターを務めたという人物である。バルセロナはもちろんスペイン事情に通じている。アトレチコのGKオブラクの獲得に非常に熱心だといわれているのも彼である。
そのサンレヒの望む、アーセナル次期マネージャーは元バルセロナで現在はフリーのルイス・エンリケ。バルセロナを率いて2度のリーグタイトル、そしてチャンピオンズリーグも取っている。
バルセロナでの実績は申し分なく、ふたたび気心の知れたサンレヒとタッグを組むことはアーセナルにとってメリットになりそうだ。
しかし、問題は彼がバルセロナで受け取っていたとされる年俸が高額(16.5Mポンド)で、イングランドでも同様のギャランティを要求すると思われるため、彼をアントニオ・コンテの後任に据えたいチェルシーともども、二の足を踏んでいるという状況のようだ。
スヴェン・ミズリンタットの希望する次期マネージャー
サンレヒがスペイン担当なら、ミズリンタットはドイツ担当だ。元BVBの彼はドイツ事情に明るく、ドイツ化しつつあるというアーセナルがますますドイツ化を進める可能性がある。
ミズリンタットが注目しているのは、ドイツの新進気鋭の若手マネージャー2名。
ひとりは、ホッフェンハイムを率いて現在リーグ6位につけている、30才のジュリアン・ナーゲルスマン。ホッフェンハイムでのこの2年半の実績から、ヨーロッパで最高の若手マネージャーの呼び声も高い。タクティシャンであるというだけでなく、マンマネージメントにも優れているという有望株だ。
もうひとりは、シャルケの32才、ドメニコ・テデスコ。イタリア人。こちらもナーゲルスマンに劣らずかなり若い監督だ。つい先日もシャルケとドルトムントの試合でスタジアムにいたミズリンタットが激写(死語)されていたが、フリーでの獲得が噂されるマイヤーとともに、ミズリンタットがテデスコをチェックにしにいったのではないかという憶測もある。
彼はいつもコンピュータを小脇に抱え「ラップトップ・コーチ」と呼ばていれるそうな。またテデスコはナーゲルスマンとコーチングスクールでクラスメイトだったという奇遇も。
シャルケは今季リーグで現在2位と好調を維持しており、チームを率いるテデスコも大きな称賛を受けている。
イヴァン・ガジディスの希望する次期マネージャー
CEOのガジディスは、アーセナルOBで現在はマンシティでグアルディオラのアシスタントコーチを務めるミケル・アルテタがお好みらしい。サンレヒも気に入りだというアルテタについては、まだマネージャー経験がないことが一番のネックといえる。
アルテタのAFCマネージャー就任については、このブログでもアルテタ推しの意見を詳しく紹介したことがある。なぜアルテタがアーセナルの監督に相応しいのかよくまとまっている。※翻訳エントリです。
ガジディスはほかにも、モナコのジャルディム、セルティックのロジャースにも興味を持っているとのこと。
まとめ
基本的にアーセナルは68才というヴェンゲルの後任には、若いマネージャーを選びたいと考えているようだ。35才のアルテタが若すぎるなんてことをいっていたら、ナーゲルスマンやテデスコはそこよりもさらに若く実績もあるということで、アーセナルが思い切った人選をするのか楽しみである。個人的にはアンチェロッティなんかよりもよっぽどワクワクできる。
最終的な決定はAFCの大株主であるスタン・クロエンケが行うということで、この3人の意見に耳を傾けることは間違いないが、近ごろますます影響力を増しているという息子のジョッシュ・クロエンケがどのような意向であるか大変に気になるところだ。
ジョッシュは現在37才ということで、彼が同年代のマネージャーの力を信じてもおかしくはないのかもしれない。以前にはティエリ・アンリをヴェンゲルの後任に推薦しているという噂もあったが……。
ところでこのテレグラフの記事によると、アーセナルFCはアーセン・ヴェンゲルをリスペクトして、彼が退任を決めるまでは後継探しをしないようにしているという。マジなのか。
今年はワールドカップも重なって期間中の交渉を避けたがる選手もおり、次の移籍市場はますます忙しくなるといわれているのに、そんな悠長なことで本命の監督を招き入れることは可能なんだろうか。
水面下でのネゴシエーションは当然あるだろうが、突然のようにAFCの監督に決まってシーズンが始まるまで一ヶ月も準備期間がないなんて新マネージャーがかわいそすぎる。また敗戦から始まるリーグなんて見たくないというのに。