負けるときも一緒。勝つときも一緒。
レヴューエントリの前半につづいて、マンUをエミレイツに迎えたビッグマッチを振り返ろう。すっかり遅くなってしまった。
試合について
アーセナルのファースト11
マンUのラインナップも合わせて確認しよう。WhoScored.comより拝借。
アーセナルの3-4-1-2(3-5-2)に対し、マンUは4-4-2。彼らはポグバを上げていた時間もあったので、ときに4-3-3ぽくもあった。
まず驚いたのは、攻撃偏重とも思えるアーセナルのチームセレクションとシステム。
PEA・ラカゼット・エジル・ラムジーを同時にスタートさせるのは久しぶりのことで、しかも2トップにラムジーをCMに置くというあまりにも大胆なチームだ。とくにラムジーがこの試合のキーマンになるだろうことはすぐに予想された。
この重要な一戦で、アタッカーにはミキタリアン(※背中の故障で不在)とイウォビに格別の信頼を置いてきたエメリとは思えないセレクションだった。
そして終盤には、イウォビ、スアレス、エンケティアと前でハードワークできる選手を相次いで投入し逃げ切りを図る。まるで事前からあの展開が想定されていたかのような采配に思えた。
失点しなかったことはいくつかの幸運はあったものの、終わってみれば最初から終わりまで、エメリの事前プランどおりに試合が運んだかのようなチームマネジメント。
ビッグチーム相手の予想外の積極策は吉と出たのだった。
マッチスタッツ
BBC Sportsより。
ホームのアーセナルがやや劣勢の基本スタッツ。しかしそれも問題ない。勝てばいいのだから。
Arsenal vs Manchester United Running xG pic.twitter.com/KHWEyRy5wM
— Scott Willis (@oh_that_crab) 10 March 2019
xGでもほとんどの時間をアウェイチームが上回った。でもアーセナルが勝ったのだから何か問題があるだろうか?
どんな内容でも勝つ。それが勝者のメンタリティ。
ガナーズの面々にそれを学ばせたのもマンUだったりするのがおかしいじゃないか。アッハッハ。愉快愉快。
試合の論点
ホームとアウェイのメンタリティ
アーセナルの積極的で前掛かりな姿勢、マンUの消極的でエナジーを感じさせない受け身な姿勢。
ファースト11の布陣はもちろん、スタートから両者の試合への取り組み方の違いはプレッシングにもよく現れていた。
アーセナルは序盤かなり高い位置からふたりのFWとエジルがプレッシングをかけていったのに対し、マンUはルカクとラッシュフォード(とポグバ)がCBにはプレスをかけに行かず、やや引いてミドルサードでボールを狙ういわゆるミッド・ブロックで対応することから始めた。
これはエミレイツでのリヴァプールの戦略を想起させた。彼らと同じようにアーセナルのビルドアップを楽にさせてしまったと云える。誰かがアーセナル相手にはハイプレスがとくに効くのになぜ……と云っていたが実際そのとおりかもしれない。
この両チームで好対照なメンタリティは前半とくによく現れていたが、ジャカのやぶから棒ゴールで先行された後半のマンUは、この作戦を変えざるを得なくなった。
Graeme SounessはSky Sportsで、システムとかそういう問題じゃない、このマンUの受け身な姿勢こそが勝敗を分けたと指摘している。
Graeme Souness blames Manchester United’s ‘off-the-pace’ midfield for Arsenal loss
ホームで強いアーセナルとアウェイで強いマンU。最後はアーセナルのホーム力が勝った。
ミッドフィールドで優位に立ったアーセナル
アーセナルの勝因は中盤の攻防にあり。
3-4-1-2という基本フォーメイションだったが、エジルはポゼッション時にはたびたび中盤の深い位置まで落ちてきていた。WBも上がり中盤が厚いアーセナルは中央エリアでマンUのMFふたりに対し、ジャカ・ラムジー・エジルで数的有利をつくることに成功。得意のワイド攻撃だけでなく、センターからも効率的にボールを進めることができたこともこの試合の始まりを優位に進めることができた理由のひとつとなった。
そしてこの試合ではとくにアーセナルが中盤で囲んでボールを奪うシーン、それとプレスで苦し紛れの長いパスを出させてFWの前でパスをインターセプトするシーンが印象的だった。
どちらも中盤の組織が攻守にうまく機能していた結果で、3-4-1-2(3-5-2)のシェイプはマンUのフォーメイションに期待以上にハマったと云えそうだ。
ラムジーとジャカの貢献
ラムジーもジャカも批判されるポイントは違えど、CMの選手なら必ず備えていなければならない素質が欠けているとしばしば批判されてきた選手だ。
しかし、ふたりともこの試合では守備のミスをせずとてもよく集中してプレイした。
とくにラムジーは2CMだと、自由に上がりすぎてたびたびパートナーを孤立させてしまうといわれ、それもMFのバランスを重視するエメリが彼をCMで使わない理由のひとつだったと思われる。
それがこの試合ではふたりはよくお互いのポジションを確認しあって前後・左右に位置し、中盤を露出させることなくいいコンビネイションを見せていた。
ボールリカヴァリーではジャカが11(コラシナツと同じで最多はフレッドの12)、タックルではラムジーが最多の8とディフェンシヴアクションで目立った記録を残した。
云うまでもなくラムジーの最大の長所は攻撃だが、CMとしてこういったバランスの取れたクオリティの高いパフォーマンスを見ると、世界一強いユヴェントスが彼に破格の待遇を用意した理由もうなずけるというものだ。
アーセナルのファンとしては、この10年の彼の成長をいまも目の当たりにしていることには喜んでいいのか悲しんでいいのかわからないけど。。
👏 Aaron Ramsey is @premierleague Man of the Match:
• 8 tackles – most in match
• 12 duels won – most in match
• 12.7km covered – most in matchAttempted 8⃣ tackles in a PL match for the 1st time since September 2013 pic.twitter.com/rzxCPluLxU
— Sky Sports Statto (@SkySportsStatto) March 10, 2019
オバメヤンの肝っ玉
この試合のハイライトは、もちろんPEAのペナルティ。
ラカゼットがボックス内でファールを取られたシーンは、逆の立場なら怒り狂っていたところだが、まあしょうがない。それもまたフットボール。
すでに1-0で勝っていたので、その点で勝ち越せるというNLDのときとはまた状況が違う。同じ精神状態だとしたら少しは今回のほうが楽だったかもしれない。
しかし、あのシーンでもし外したらと考えると背筋が凍るじゃないか。
後半にやや押されていたことから考えると、あそこでもし止められていたらその後の試合展開に影響を与えた可能性は高い。その重圧たるや想像を絶するものだったに違いない。
ゴールが決まった瞬間のサポーターたちの大歓声にはほんとうに鳥肌がたった。
この試合では、あんなに大きなノイズは聴いたことがないというレヴェルのサポーターの声援があったそうだが、ジャカのゴールよりも大きな歓声だったのではないだろうか。
Moment of the game for me. Pierre-Emerick Aubameyang with Alex Lacazette before taking Arsenal’s penalty for the 2nd goal. #afc #arsenal #Laca #Auba pic.twitter.com/OltQhYXo92
— Stuart MacFarlane (@Stuart_PhotoAFC) March 10, 2019
PEAの勇気が報われた。そしてキッカーを譲ったラカゼットの愛が報われた。尊い。。
これが叫ばずにいられようか。
これでオバメヤンはめでたく自信を回復したのであった。
Omfg wait… so Aubemeyang doesn’t even look at the ball when he hits the penalty??? The bottle shown from him today after last week 👏🏼👏🏼 @Aubameyang7 pic.twitter.com/uayQx9Ml1w
— Michael Timbs (@MichaelTimbs) March 10, 2019
ボールをまったく見ないでよく蹴れるな。。
ふたたびレノがチームを救う
レノはすごい。すごくてすごい。お買い得すぎる。GKに60Mとか70Mとかバカじゃなかろうか?
以前レノについての分析でも紹介したことがあるStatsBombのCEO氏は、レノの変わりように驚いている模様。「ここまでのベルント・レノはバイヤー・レヴァークーゼンにいたときよりも「かなり」いいね」
Berndt Leno has been a LOT better than he was at Bayer Leverkusen so far for Arsenal, and the combination of early-season Cech plus Leno deserve a lot of credit for Arsenal’s league position right now.
I did not expect this, but long may it continue.
— Ted Knutson (@mixedknuts) 10 March 2019
アーセナルのGKにここまで期待できるのはいつぶりだろうか。
エミレイツは要塞
これでアーセナルはホームで9連勝。やったー。つよし。
でもPL残りの8試合はホームが3試合、アウェイが5試合。。
アウェイをどう切り抜けるかでシーズンが決まるっていう。
ビッグチーム(トップ6)との対戦成績が改善
この試合でアーセナルは今季のトップ6対戦のすべてを終えた。
過去3シーズンの比較。
- 16/17シーズン W2 D3 L5
- 17/18シーズン W1 D3 L6
- 18/19シーズン W3 D3 L4
この前のNLDは実質Wだから。今季はかなり改善したことに。
もちろん、トップチーム相手だけでなくリーグ全体でもポイントはかなり改善している。
たとえば去年のアーセナルは38試合で63ポインツでフィニッシュとなったが、今季は30試合ですでに60ポインツ取っている。この先にはまだ24ポインツの余地がある(全部勝てば84ポインツだぞ)。
エメリのファースト・シーズンでこれなのだから、来シーズン以降も期待していいのではないだろうか。
試合については以上。
アーセナルニュース
リース・ネルソンがホッフェンハイムでピンチ?
今シーズンをドイツでプレイしているネルソン。今年に入ってからチームでの出場機会を失っており、先日のニュルンベルク戦ではベンチにも入らなかったそうで、その理由がマネージャーに明かされたことが話題になっていた。
Nicht-Nominierung von Nelson als “erzieherische Maßnahme”
ドイツでの報道によると、ナーゲルスマンはネルソンについてディシプリンの問題があると考えているようで、”educational measure”(教育的指導)が理由でベンチに入れなかったとコメントしているとのこと。
ネルソンといえば、シーズンの始めには短い出場時間にも関わらず得点を重ね、BVBにいるベストフレンドのサンチョとともに一躍注目の選手になったが、その後は守備の貢献ができていないなどの理由で徐々にナーゲルスマンの信頼を失っていったといった話しもあった。
ネルソンがいまどういった心身の状態にあるのかはわからないが、ほとんど同年代のサンチョがあれだけ活躍して100Mポンドプレイヤーともいわれるなかで、なかなか活躍できないことに焦りを感じていてもおかしくはない。
おそらくいまの状態では来季アーセナルに戻ってもファーストチームではプレイできないだろう。
彼はまだ19と若い。ここで心が折れることのないよう、大人たちのケアが必要なときだと思われる。
ゲディオン・ゼラレムがMLSへ
以前より噂されていた、ゼラレムのアメリカ行きが決まった。行き先はMLSのスポーティング・カンサス・シティ(SKC)。
聞いたこともなかった。
It’s official. @Arsenal ➡️ #SportingKC#WelcomeToSporting Gedion!
📰 » https://t.co/2YrFSanB5q pic.twitter.com/UHMsBEKE6G
— Sporting KC (@SportingKC) March 11, 2019
一時はセスク・ファブレガスの後継者になれるとも云われたMFが、ついにアーセナルのファーストチームに上がることはできなかった。無念である。
先週はデンチことエマニュエル・フリンポンのリタイヤのニュースもあり、ケガが選手ライフに与える影響の大きさを改めて思うのであった。
アーセナルは契約更新する意志のない選手は売る
マンU戦の前にアニュアル・サポーターズ・ミーティングがエミレイツで開催されていたそうで。
今回はジョシュ・クロンキ(スタンの息子)がサプライズゲストだった。
そこでのクラブサイド(サンレヒ/ヴェンカテシャン)からのコメントが話題になっていた。
それによると、アーセナルは残り契約2年となった段階で契約を更新しない選手は売却するという。
What Josh Kroenke told Arsenal fans at surprise Emirates meeting
以前からラウル・サンレヒは、もう選手をフリーで退団させることはしないと発言していたので驚くべきことでもないかもしれない。
当然現在のラムジーの件が教訓になっているのだろうが、残り契約2年時ということは、かなり早い段階で選手を見限るということになる。
クラブの選手マネジメントに注目が集まるなか、なかなか刺激的な発言だったのではないだろうか。
以上。
つぎの試合はもちろん、木曜のELレンヌ(H)。いまの勢いでしかもホームなら勝てそうだな。うん。おれは楽観的でいられる。
ではプレヴューでお会いしましょう。COYG
更新待ってました!笑
スパーズ戦の時は最後ボールを見てしまったけど今度はボールを見ずにGKの動きをよく見て決める事ができたとコメントしてましたが、本当に全くボールを見てなかったですね。
PKのスペシャリストで親友でもあるラカゼットに教えてもらったのかな!笑
PL残りの試合で嫌なアウェーゲームを残してるけど何とか改善して3位でフィニッシュしてほしい。
筆者の考えより、翻訳のみのブログも読んでみたい…翻訳のクセも強いから一緒ですけれども…情報量多いブログだけになんか勿体ないなぁと思ってしまって…
こんなこと云われるとさすがにおれも凹むわ。。
管理人さんのサイトなんですから、気にしなくていいと思います。
翻訳のみを知りたいのであれば、御自分でソースを翻訳するのが当たり前かと・・・
Arsenal Chanさんはそのままで。
いやいやいや、私は管理人さん主観の話は大好きですよ。
ダズーンと凹まんでください。
今後も好きなように、自由にやっていただければ感謝です。
このブログが、アーセナル関連の検索で上位に来るのは人気の証拠なわけですしね。
レノやべー。髪型からしてマジメなヤツだとは思ってましたがここまでやるとわ…。今回と言いT0Tと言い、ゲームの中でのシックスポインターですよマジで。どっちがデヘアだよと思ってましたわ。
こんだけいい選手いると選ぶ方もたいへんそう。
次も行きましょう。COYG
みんな良かったですけど、ラムジーの守備での貢献が過去最高だったと思います。これがいつもできていたら、と切なくなりました。
そしてエジルも動きがよく、安心しました。
あと、今シーズンゲンドゥージ、トレイラ、パパなどの活躍が目立ってきましたが、ここに来てレノが凄い。この前行けば向こう10年君臨することも夢見てしまいます。
いつも楽しく拝見しております。初コメです。
管理人氏の意見と文体を楽しみにここを訪れているので、どうぞこのまま突っ走ってほしいと思います。
匿名氏のような考えもあるでしょうが、情報だけならほかにもあるし、管理人氏の料理の腕こそ付加価値です。
ほかの方もどこかでコメントされてましたが、字の多いのも大好物、もっと多くても良いんやで。
この試合、ゲンドゥージを最後まで使わなかったのがちょっとした驚きでした。
レンヌ戦の守備は方々で批判されてましたが、エメリのいう「ポジティヴ・エナジー」がやや切れ気味だったのかもしれないですね。
ゴールセレブレーションには参加してましたし、反省+ポジエナ充填して、またふてぶてしいプレーを見せてほしいです。
更新お疲れ様です。
いつも楽しく拝見しています。
ここのところラムジーの活躍がすごいですね…
残って欲しかったという気持ちはさておき、来季以降ラムジーな役割は誰が担うんでしょうか…