昨日のエントリに追記しようと思ったら少し長くなりそうなので。こちらで。
【マッチレビュー】18/19EPL レスター・シティ vs アーセナル(28/Apr/2019)今季初の3連敗と今季初の「守ってカウンター」
3連敗、エメリに対する選手たちのネガティヴな反応
今朝こういう記事を見て、昨日のエメリのプランBについて称賛した文章は自分でちょっとはしゃぎすぎだったかなと少し反省しておりまして。
この記事の内容をざっくりかいつまむと、何人かのアーセナルの選手が連敗中のエメリのタクティクスやチームセレクション、セットアップに混乱しているということで、いまだSD/TDが決まっておらず夏の移籍市場での危機感と合わせてアーセナル大丈夫か?みたいなことが書かれている。
ぼくが昨日書いたブログ記事には選手たちの反応という視点が欠けていた。そことても重要な語りどころだったのに。
このTelegraphの記事では、チームから出ている不満についてあまり詳しくは書いていないので伝えられていることの信憑性はわからない。
が、レスターでの極端に守備的で保守的な戦い方については、ぼくは個人的に以前からそのような戦い方(プランB)も持っているべき派だったので歓迎できることと肯定的に捉えたが(別に逆張りしたわけじゃない)、云われてみればたしかに拒否反応を示す選手もいただろうなと。
だって、今までのやり方を継続するという基本的な方針はどこへ行ったんだという話しでもあるから。エメリが常々口にしている「一貫性」にも反するやり方とも云える。上司の云ってることとやってることが違ってくれば、部下は何を信じればいいのかわからなくなってしまう。エメリはカリスマでなんでも信じさせてしまうようなタイプでもないように思える。そこには納得できるロジックが必要だし、ついてくるものたちの理解が必要だ。
たとえばラカゼットのような選手が、いまさらここで戦い方を変えることについてコーチに異を唱えたとしても驚きはない。
ある意味であの戦い方でもっとも影響を受けたのはラカゼットやオバメヤン、またイウォビやミキタリアンでもいいが、彼ら攻撃の選手たちだったのだから。消極的な戦略のおかげで攻撃の機会が減って守備の負担が増えるということについて、彼らのようなスタープレイヤーのプレイ基準からすれば受け入れがたい選択だったかもしれない。大げさに云えば犠牲になったともいえる。
「適応」か「一貫性」か?
以前にこのブログでジェイミー・キャラガーとギャリー・ネヴィルの「プランB」についてのやりとりを紹介したことがある。訳が拙くて申し訳ないが未読の方はぜひお時間あるときに目を通していただきたい。おもしろい内容なので。
エメリが合わせるのか、エメリに合わせるのか。ネヴィルとキャラガーがウナイ・エメリを激論
この議論はちょうどシーズン最初の2連敗(シティ・チェルシー)があった直後のもので、連敗している相手のクオリティもエメリのリーグへの慣れもそのときの状況とはだいぶ違うが、奇しくも3連敗しているいまと似た状況であると云える。
このふたりによって熱く語られていたのは、チームが危機に直面したときマネージャーはそれにどう対処すべきか?というテーマで、キャラガーの「適応」とネヴィルの「一貫性」というまさに今回のレスター戦でアーセナルが取った戦略について議論するにはぴったりの内容だ。
この議論では「適応(adapt)」ということばの定義(受け取り方)にふたりのあいだで微妙なズレがあるのか、いまいち噛み合ってないところもあるが、それでも、この「適応と一貫性」の議論は興味深いものだと思う。
エメリはアーセナルに来て以来、シーズンを通してここまでほぼ一貫性のあるプレイスタイルを保ってきた。
戦う相手によって4-2-3-1、3-4-2-1といった具合にシェイプをいくら変えても、ボールを持ちたい、試合をコントロールしたい、攻撃したいというコンセプトはほとんど揺るがなかった。
しかし、いま、あと3試合というこのタイミングで、レスター相手に4-4-2で後ろの8人で守り前のふたりに攻撃はお任せみたいな、これまでとはまるっきり違うアプローチで試合に臨んだ。
4-4-2だって攻撃的に戦えるフォーメーションじゃないかと云うひとがいるかもしれないが、そうではない。エメリははっきりポゼッションを放棄してカウンターに活路を見出すという、これまで一度もやらなかった奇策に出たのだ。そうでなければ開始20分でポゼッションが19%なんて極端な数字にはなるはずもない。
これがキャラガーの云う「適応」の結果なのかはわからないが、選手たちにとってはネヴィルのいう「一貫性」のなさのように写った可能性はある。その結果、選手たちの一部は混乱していると。
ネヴィル:彼(エメリ)がぜったいにやるべきじゃないことは、これはわたしの経験からだが、自らを曲げて適応しようとすることだ。なぜなら選手たちは彼の後ろをついてくるのだから。
ぼくはこの暗中模索のような苦しい状況のなかで、エメリがこれまでの戦い方を変えて、それこそ活路を見出そうと工夫したことは好意的に捉えるべきだといまでも思っているが(何もやらずに敗けるよりはずっといい)、その突然で極端なやり方については議論の余地があったかもしれないと思う。たしかに選手たちにしてみれば、いつもとあまりにも違うやり方をすんなり受け入れることは難しかったに違いないのだから。
もっと早い時期に、もう少しマイルドに段階を経ていれば、また選手たちの受け取り方も違っていただろう。そんなことが可能だったかはわからないけど。
キャラガーとネヴィルの議論を単純化すれば、おそらくそれは、フットボールチームをマネジメントするときの「現実」と「理想」についての議論であるとも思う。
誰だって理想を求めたいが、それだけで結果が得られるわけではない。みんなどこかで妥協できるポイントを見つけてそれぞれのやり方で理想を追っているのだ。
今回エメリがレスターで取った作戦は、これまでのアーセナルにしてみれば大胆すぎるチャレンジで、かけたリスクも虚しく3失点して惨敗するという結果に終わった。
この結果や選手の反応が、ずっと理想を追い求めてきたエメリの今後の考え方にどういった影響を及ぼしていくかはわからない。しかし、ふたたびチームが勝てるようになるまでは、大胆すぎる戦略を取ることは今後自重するようになるかもしれない。
ぼくはそれでも、勝ちたくて勝ちたくて震えているエメリの気持ちを尊重したいと思わずにはいられない。
レスター戦の前に語っていたことばを思い出す。
エメリ:競争力を持つということは、相手に良さを消されて勝ち方がわからないときでも、試合に適応して勝つための、あるいは引き分けるための別の道を見いだせるということだ。それはわたしがこのチームに成長して身につけてほしい側面だ。
プランBとは、試合の中でうまく行かない場面・時間帯に別プランを動かすことなのか、
それとも出かける場所に合わせて着ていく服を変えるかのように、
試合によって全く別のプランを持つことなのか。
個人的には後者はあまりいい印象がありません(うまくいったトップチームをあまり知らないからかも・・・)。
今回の試合でこれまでのスタイルを意図的に放棄したのか、レスターに単に圧倒されたのか、私には分かりません。
ただ意図的に放棄したなら、ボス自らがこれまで構築してきたチームの良さを否定した、
それも、バルセロナやマンシティなどではなく、
アウェイとはいえ”レスターの順位・規模のクラブに”通じないと宣言したに等しいのではないでしょうか。
この悲惨なアウェイレコードだからというのは分かるのですが、、、
アーセナルはもはやその位置のクラブなのか。私にとってはとてもやるせない試合でした。
プランBで一番に思い出すのはやっぱりジョゼ・モウリーニョではないですかね。
いわゆる”Park the bus”みたいな戦い方を恥ずかしげもなくやれるっていうのは、また別の意味で尊敬できるというか。
ロマンは微塵もないけれど、CLでバルサに勝ったときのチェルシーのサポーターはやっぱりうれしかったと思いますよね。
個人的にはエメリのやり方に賛成です。
惨敗しましたが新しいプランを試していくのはプレミアに来て一年足らずの新監督にとって許されるべき行為なのではないでしょうか。
(この大事な時期にそれをやることにたいする是非はあると思いますが..笑)
変化があることに対して選手からも不満は出るでしょうが、指揮官が選手の不満に合わせる必要もないので自分を信じてやって欲しいですね。そのためにガナーズに来たのですから。
やりたい戦術に既存の選手を当てはめるか、選手に会う戦術を選ぶのか、どちらも難しいですよね。。リーガ時代のエメリは奇策に出て、バルサ相手にも負けない試合を何度もやったと記憶しています。(もしかしたらこのブログで読んだかも)ですが、今回は裏目に出てしまいましたね。個人的にはコレがウナイ・エメリだ!って感じがするんですよね!
個人的には今回のレスター戦の戦術は有りだと思っている。
たられば、は良くないが、イウォビがビックチャンスを決めて、AMNの退場がなかったら(少なくとも、もっと遅かったら)、引き分け程度にはなったのではないか?(それでも負けたかもしれないが)
エメリは現状のスカッドと相手の状態から、完勝は無理と判断して、最悪引き分け狙い、良くて1-0のスコアを狙いにいったのではないか。
選手から本当に不満が出ているのであれば、マンマネジメントの部分でエメリに多少問題があるのかもしれない。パリでも問題になってたし・・。ただ、パリとアーセナルではクラブの立ち位置も選手のクオリティも全然違うから、エメリが完全に悪いとは思えないけど(パリはエメリが折れて改善したけど、アーセナルではそうはならなかったと思う。その例がウルブズ戦)。
あと、レスター戦は後方からのビルドアップをほとんど放棄してたように見える。後方からのパントを前線・中盤で競り勝ってマイボールに出来るメンバはいないので、ボールを保持されるのは当然だと思っていた。これがエメリの指示なのかは不明だが、少なくともマンUを除くビック6よりは足元の技術に長けたモダンCBがアーセナルに足りないことは事実だと思うので、そうなっても全くの驚きはなかったが。
ホームで出来ることが、ここまでアウェイで出来ないことは全くの謎だが、そのあたりは来シーズンに向けたエメリの宿題として、スカッドの刷新はフロントの宿題としてがんばってもらいたい。