18-19 UELクォーターファイナルをホームで快勝したナポリ戦。コメント集にひきつづき、試合の論点を。
試合について
アーセナルのファースト11
フィットネスが危ぶまれたキャプテンが復帰。スターティンに。
ぼくはコシエルニのいないバック4を予想したが、もしかしたら彼の復帰がシステムに影響したかもしれない。バック3。
そして2トップ+エジル、CMにラムジー。このかたちでここしばらくは成功を収めている。
ちなみにこの4人がスタートしたのは今季6試合しかなく、そのすべてに勝利しているとのこと。シーズン序盤と最近ということになるかな。知らんかった。
ただ、そろそろジャカが復帰しそうではあるので、彼が戻ったときにCMをどうするかは考えどころではある。
マッチスタッツ
またまたポゼッションが低いほうがいい試合をやる説が裏付けられたかっこうだ。
見た目の印象に反して6割近くボールを持たれているが、ボールを持たれたアーセナルがシュートもSoTも圧倒した。
ナポリはゴール前でビッグチャンスを何度か迎えながら、ボールを枠に飛ばすことができず。SoTはたったの2本。
Arsenal vs Napoli Running xG pic.twitter.com/oJ4OMpn9eK
— Scott Willis (@oh_that_crab) 11 April 2019
xGはアーセナルの2.36に対し、ナポリが0.85。内容にほぼふさわしい結果となった。
試合の論点
クオリティの差かモチベーションの差か。アーセナルがホームでナポリを圧倒
後半はやや盛り返されたものの、前半は今季ベストパフォーマンスの数えられるほどの強さを見せた。
つい先日のエヴァートン戦の悲惨なパフォーマンスがウソのようで、あらためて不可解と云ってもいいホーム・アウェイでのメンタリティの落差を感じたものだ。アウェイは悪すぎるし、ホームは良すぎる。
しかし、アーセナルのパフォーマンスもたしかにすばらしかったが、思ったよりナポリに歯ごたえのなさを感じたファンも多かったのではないだろうか。ぼくはそう思った。セリエAで2位だというからけっこうビビっていたのに。インシーニェも試合後にナポリはエミレーツで最低の試合をやったと認めているので、もちろん彼らもふだんの調子でもなかったんだろうが。
実際ナポリのショッツ・オン・ターゲット2本は、今季彼らにとって最低の数字らしい。それほどまでにアーセナルはナポリを圧倒した。
ここまでパフォーマンスに差がついた原因については、いくつか理由が考えられる。
そのひとつはやはり彼らにとってはアウェイだったということ。どんなチームでもアウェイでパフォーマンスがある程度落ちるのはふつうのことだし、アーセナルが今季ホームでかなりいいということは、エミレーツを訪れる相手チームにとってはかなり嫌な雰囲気になるということでもあるだろう。
そういう意味ではナポリがまだリターンレグで巻き返す自信を持っていることも十分理解できる。アンチェロッティがコメントしていたように3-0だったらともかく、もし敵地で先制点を奪われる状況を考えると2-0はまだ微妙な差だ。
誰もが、ナポリではまったく違った試合になるとコメントしているが同感である。相手はともかく、アーセナルがアウェイではまったく違うチームになることはわれわれが一番よく知っている。3点目を入れてトドメをさせなかったことを後悔するようなことにならなければよいが。
もうひとつは、クオリティの差。イタリアリーグで2位のクラブというのはきっとイングランドのトップ6レベルくらいかなと、イタリアンフットボールを知らないぼくはざっくり考えていたけれど、もしかしたら違ったのかもしれない。少なくとも今回の試合に関しては、彼らにはPLトップ6レベルの強さは感じられなかった。
この試合の前にイタリアとイングランドとのリーグを「戦術的」「フィジカル・スピード」の違いで論じていたひとがいたが、たしかにイタリアとイングランドではフットボールのタイプも違うし、とくに今回のようなハイインテンシティ+ハイプレッシングで来るような相手はリーグにおらず、少し面食らったのかもしれない。前半に比べて落ち着きを取り戻した彼らの後半のプレイを見ていてそんなふうに感じた。
タイプの違うリーグ同士で優劣を論じたところであまり有意義な結論は出そうにないが、ナポリのクオリティはヨーロッパのメジャーリーグ2位のフットボールとは到底思えなかった。
それとナポリがアーセナルの勢いに対処できなかったもうひとつの原因は、ぼくはこの試合に対するモチベーションもあったと思う。
PLトップ4フィニッシュが不透明な状況で、来季CLに出るために絶対にこの試合に勝ちたいアーセナルに対して、ナポリはトップに20ポインツと大差をつけられているもののリーグ3位には7ポインツの差をつけており、仮にELで勝てなくても来季CL出場はほとんど確定だろう。
ELに対する本気度・真剣度・切実度の面ではアーセナルが何倍も彼らを上回っている。ぬるま湯の彼らとはやる気が違うのである。
アンチェロッティはこれまでCLを3度も取っているという名将だが、彼のキャリアにELのタイトルはないという。しかし、そんなもの別になくても彼はまったく困らないだろう。
逆にエメリは「EL3連覇」という奇妙な記録を持つマネージャーだ(そんなにすごいマネージャーならCLで結果を出していないことがおかしいという笑える矛盾)。対EL専用マネージャーみたいなもんである。ELのタイトルがないと困るのだ。モチベーションには雲泥の差がある。
Unai Emery in @EuropaLeague:
2008/09 – round of 32 / @valenciacf
2009/10 – Quarter-finals / Valencia
2010/12 – Semi-finals / Valencia2013/14 – won 🏆 / @SevillaFC_ENG
2014/15 – won 🏆 / Sevilla
2015/16 – won 🏆/ Sevilla2018/19 – at least Quarter-finals / @Arsenal pic.twitter.com/ADdWx0kjru
— Dino Grgić (@Dino_Grgic) April 12, 2019
ラムジーの代替はできない問題
アーロン・ラムジーが良すぎて開いた口がふさがらない。ここへ来てキャリアのピークみたいなパフォーマンスをつづけている。
ユヴェントスが彼に€400kpwを出すと報じられたとき、そんなバカなと誰もが思った。いくらなんでも評価高すぎである。少なくともAFCにとっては180kpwの価値もなかったのに、エジル以上の給料を出すクラブが現れるなんて。
それがいま、彼はプレイタイムを重ねるたびに、あのユヴェントスが認めた、世界一のクラブにふさわしいフットボーラーになりつつある。
AFCは後悔しているというよりも、ぼくらファンと一緒に驚いているんじゃないだろうか。
ここまでの選手になるとはつい半年前ですら想像もできなかった。最近のラムジーはそれほど進化を感じさせる。
いまのラムジーのパフォーマンスを見て、給与予算の都合でフリーで放出しようなんて判断ができるクラブがあるだろうか。むしろラムジーのためにほかの選手を犠牲にしても予算を開けようとするはずだ。
今季のアーセナルはエジルやラムジーの適性ポジションを探し続けた1年だったと思う。エメリはふたりの扱いを迷いつづけた。ふたりがベンチにいるなんてことも珍しくなかったが、ほかのクラブなら考えられなかっただろう。
ラムジーについては、エメリは彼をNo.10で起用してみたりさまざまな試行錯誤をしてきて、もうシーズンも終わろうとしているところで、やっと適性ポジションとロールを見つけたのだ。
皮肉にもそれは、おそらくエメリがヴェンゲル時代を見ていて彼にあまりやらせたくないと考えていたCMだった。エメリがラムジーをCMより前に置きたがったのは、彼を深い位置に置くことで守備のリスクをかけたくなかったからに違いない。
いまの状況は中央のポジションを維持しながら、まるでヴェンゲルさんのラムジーの(間違った)使い方を、エメリが(適切に)アップデートして、その結果花開いたという感じだ。
ヴェンゲルさん時代と違うのは、やはりポジションの規律ある動きだと思う。
このナポリ戦でもラムジーを見ながら思ったのは、彼はチャンスのときにボックス内に侵入して決定的なシーンに関わるのはこれまで通りだが、ビルドアップやボールを持たれている時間ではちゃんとCB前にいてCMのタスクをこなしているということ。
これまでさんざんラムジーのCMはバランスを欠くだとか、上がりっぱなしで彼が空けたスペースを悪用されるといった批判を受けてきたが、いまはチャンスでもピンチでもボールのあるところに必ずいるみたいな、試合の流れの読みとアウェアネスがとくに洗練されてきているように感じる。あるいは、ラムジーを含めた全体的なポジションのバランスが改善している。
そして、もちろん攻撃での脅威は云うまでもない。CMながら、毎試合のようにアシストにも得点にもからんでいる。アーセナルにおいて歴代でもっとも得点の多いMFが彼なのだからもうレジェンドと認めるべきかもしれない。
今季のアーセナルを来季CL出場という成功に導く選手がひとりだけいるとしたら、それはアーロン・ラムジーだ。彼よりふさわしい選手はいない。
来シーズンに向けての補強について、ラムジーの代替選手をどうするかがよく話題になるが、彼のようなMFを連れてくるのはかなり難しいだろう。
イングランドでの長い経験、90分上下動できる無尽蔵のスタミナ、パス・シュート・ボールキープ等基本能力の高さ、攻撃センスと守備マインドのバランス、周囲の雑音にとらわれずピッチ上ではただ仕事を遂行するというプロフェッショナリズム……。
ここにアーセナル愛を加えれば、代替はほとんど不可能になる。(ため息)
ラムジーは来シーズンからユヴェントスの一員ということで、ナポリにとってはこれから憎い敵になる選手だ。来週もナポリのファンの前でイヤというほどそれを見せつけてほしい。
This @aaronramsey debate is interesting. He’s playing as well as he’s ever played for us & deserves full credit for giving it 100%. But he’s leaving & will do so without a League title under his belt in 11yrs.
Good player? Yes.
Arsenal legend? No.
Replaceable? Absolutely. pic.twitter.com/5KU4Q1gUlH— Piers Morgan (@piersmorgan) April 12, 2019
ピアース・モーガンのツイートには全世界5000兆人のグーナーからツッコミが。
トレイラ・ヴェリグッド
この試合でラムジーとかなりいいパートナーシップを組んだのがルーカス・トレイラだ。久しぶりの起用で期待以上の働き。
Sky Sportsが選んだMOTMはトレイラ。それも納得のパフォーマンスだった。
- 58タッチ
- 34/40パス
- 5ボールリカヴァリー
- 3/3ロングボール
- 2/4クラス
- 2/2タックル
- 2インターセプション
- 2キーパス
デュエルの勝率が67%だったということで、もうこれは実質100%である(実質論法)。トレイラとボールを競ったら必ず取られる。そんなである。
Lucas Torreira’s heatmap against Napoli 🔥
Haters will say it’s photoshop 😉
🏆 #UEL pic.twitter.com/wqAt0m93lw
— Arsenal FC (@Arsenal) April 11, 2019
これだけピッチ上のすべてでまっかっかなのだから、どこにいてもトレイラがいてボールを奪われるのは当たり前である。
この日のアーセナルはハイプレスでパスコースを限定、苦し紛れのパスを狙うという作戦が見事にハマっていた。それも中盤のトレイラの貢献が非常に大きかったからでもある。
2点目は残念ながらクリバリのオウンゴールとされてしまったが、ボールを奪ってひとりで持ち込んでひとりで決めてしまったのだから恐れ入った。あのディフェンスが寄せてきたときの足元でのうまい切り返しといい、彼がもともとアタッカーだったことを思い出させるプレイだった。
トレイラの試合後のコメントがコメント集にもれてしまった。
トレイラ:ぼくはイタリーでプレイしていたからよーく知ってるけど、Sao Pauloでの試合はまったく違ったものになるよ。
彼らには熱狂的なファンがいるし、すごく強いんだ。最初っから集中していかないといけないね。
もしぼくらが正しいアプローチができて、冷静でいられるなら、あそこでも得点できると思う。
みんな口をそろえている。
そういえば、ナポリのファンはまじでやばいらしいね。ナポリとの対戦が決まったとき、Redditでナポリに行ったら絶対にアーセナルのシャツなんか着て外を歩いちゃダメって云ってるひとがいた。こええな。
コシエルニがボスエルニ
この試合でやっぱり言及しておかねばならないのは、コシエルニでしょうなあ。
一度は誰もがもう全盛期のコッシーを見ることはないと思ったと思うんだけど、まさかアキレス腱断裂の重症から立ち直って、しかもここまでフィットネスが戻るとは思わなかった。もしかしたらケガする前よりいいのではないか?
いま明らかにコシエルニはDFリーダーで、ブロックやクリアなどのディフェンスアクションはもちろん、彼がいるといないとではディフェンスラインの統率力が違う。
この試合は、インシーニェやメルテンス、ジリンスキといったナポリが足の速いFWの選手がいつも裏抜けを狙うというやり方で、ディフェンスラインの上げ下げはかなり重要になっていたが、結局致命的なかたちではほとんど裏を取られることがなかった。
ナポリのやり方があまりにも裏抜けに一辺倒でわかりやすかったこともあるが、オフサイドはいったい何回取っただろうか。
守備だけでなく、ビルドアップでも正確なロングボールでの貢献度が高かった(ロングボールは6/7成功)。
終わりのほうでは両足をつってしまうというハードワークっぷり。
Laurent Koscielny vs Napoli (H) 18/19 | Highlights
Deserving of much more recognition for this faultless performance against the Azzuri. pic.twitter.com/ox87b547Pl
— Ali (@AFCAlii) 12 April 2019
コシエルニは33才ということで、今シーズン限りとの見方がされることが多かったが、来年1年くらいはトップレベルで戦えるのではないかと思わされるパフォーマンスだった。
その他
- チェフはロングボールをたくさん蹴っていた。もうエメリはチェフにショートパスは諦めたんだな
- この試合メイトランド・ナイルズもとても称賛されている。ぼくは八塚浩さんの「ナイトランド・メイルズ」ばかり思い出す。ジャイケル・マクソンみたいな?
- オバメヤンはあまり元気がなかったかな。やっぱり彼にはたくさんチャンスをあげないと
試合については以上。
ELクォーターファイナル1stレグのチームオブザ・ウィーク
ELのTOTW。フースコとFedEx(EL公式?)でだいぶ違うなあと。
ELプレディクション
538によるクォーターファイナル1stレグ後のUELタイトルのシミュレーション。
これを見ると今回のELは本命がいないと見るのが正しいのかもしれない。アーセナルは3位だが悲観するようなパーセンテージではない。
トップのチェルシーが35%。2位ヴァレンシアが23%。つぎにアーセナルが21%。
もしファイナルでチェルシーに当たってもあんまり負ける気がしないんだけど。。
ナポリは現時点で6位で優勝確率が3%となっており、このクォーターファイナルはアーセナルの勝ち抜けの可能性が高いと見られている。
以上
ファーストレグを2-0としたことで、セカンドレグはアウェイでも自信をもって戦えると思うけど、どんな展開になるかは始まってみないとわからない。とにかくアウェイゴールを奪えば勝ちだろう。
さてつぎの試合は、マンデイナイトのワトフォード(A)。そう日本では火曜の早朝なんよ~。MNFはまぢ迷惑すぎ。
ということで、またプレビューでお会いしましょう。
今回も勝ててよかったね。COYG
エントリ首を長くして待っておりました。
勝ってよかったですねほんと。リアルタイムで見てよかったです。
ただもう1、2点はとれてたよな、これまでの決勝トーナメントはアウェイでことごとく負けてますよね、しかもメジャーの2位とかじゃないチームに。
不安しかないけど、ナポリくらいに負けてほしくない。
その前に、玉なしワトフォード。しかもほかのチームはだいたい勝ってるので順位表はプレッシャーしかない。今夜、レッズが青いのボッコボコにしてくれるのであれですけど。
正直、今とっても楽しいです。アーセナルファンでよかったと感じてます。煩悩万歳。
とにかく勝とう!COYG
どもども毎度です。
OptaJoeによると、アーセナルはヨーロッパのコンペティションで直近9つのノックアウトタイでファーストレグを取った8試合で勝ち抜けているそうなので、ファーストレグを勝った今回もほぼ勝ち抜けのつもりでいてよさそうっすよ。
ちなみにファーストレグを取ったのに勝ち抜けなかった9試合のうちひとつは10/11のCLバルサ(ラスト16)らしいです。例のカウンターでアルシャビンが決めたやつですかね。ジャックが最高に輝いた試合としていまだに語られているという。。
お疲れ様です。
ラムジーを動かしてるのは、やはりアーセナル愛だと思います。
来季は、誰よりもアーセナル愛を持つ二人がユーベだと思うと・・・
最期にラムジーの花道を作って欲しいですね。
ユーヴェはマヴィディディもデビューしてガナー濃度が高まってんすよねえ。
八塚さんはもう何十年も恐ろしい数の試合実況をしてきて、ついに、「試合を観ずに実況する」という境地に達してきました。過去の試合どころか、今実況している目の前の試合ですらもちゃんと観ていない。それでも、喋り続ける。「最終的には」とか、「結局は」とか、全く繋がらない接続詞を使って。あれはもうロボットですね。おそろしい。
多分ナイトランド=メイルズの件も、本人の記憶にはないと思いますw
ウケるw