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エポックメイキングな夏はアーセナルのターニングポイントになるか。2019夏の補強まとめ

2019夏はアーセナルのターニングポイントになるか

以上のように、ウインガーやセンターバック、ラムジーの代替となるCMなど、アーセナルは求めていたほとんどすべてのポジション、キーエリアの選手補強に成功した。

このウィンドウの序盤では限られた予算ばかりがクロースアップされ、このような結末を迎えるとはまったく想像もできなかった。

“ドン”ラウールとハス・ファーミー

この補強プロジェクトを成功させた功労者としてとくに称賛されているのが、スヴェン・ミズリンタットの退社以降、アーセナルのリクルートを主導していたラウル・サンレヒだ。

今日日、大きな金が動く移籍市場では分割払いで移籍金を支払うことはとくに珍しくないとも云われるが、そういったことをやりくりして補強予算以上のものを手に入れた。その分割払いメソッドを駆使して、交渉をまとめていってサンレヒの功績は大きい。逆に、なぜアイヴァン・ガジディスにはこれができなかったのか。そういう疑問を抱くファンも多いようだ。

移籍市場における彼のコネクションに頼ったアプローチは一時疑問を持たれていたものの、このような結果を目の当たりにして、彼の有能さを認めないわけにはいかなくなった。

以前に彼は「アーセナルが選手にアプローチするということは、ほかのクラブがそうするのとは違う」とアーセナルというクラブの特別さを指摘していたが、それにしても彼の時代になってここまで補強が改善されたということは、彼自身の功績や手腕の証明だと云えるだろう。

竹村健一みある。パイプを持たせたい。

また、もうひとり今回のタスクを担当していたハス・ファーミー(Huss Farmy)の功績も讃えられている。

BBC Sportsのデイヴィッド・オーンステインによれば、サンレヒが”deal maker”、ファーミーが”deal broker” というようなそれぞれの役割で動いていたということ。

つまりサンレヒがターゲットとの移籍交渉の端緒を開き、その後の現場の交渉はファーミーが担った(これは旧体制のヴェンゲルさんとディック・ロウの関係に近いのかもしれない)。

したがって、われわれが考えているよりももっとファーミーは重要な役割を担っていた。ぜひ名前を覚えておこう。ありがとうハッシー。

今後エドゥがテクニカル・ダイレクターとしてリクルートを主導すると云われるが、おそらくは、エドゥとサンレヒがそれを主導して、ファーミーが手となり足となり現場を仕切るのだろう。

始めは懐疑的な声もあったサンレヒとヴェンカテシャンの新体制。ひとまずはネガティヴな意見を覆すには十分すぎるこの夏の働きだった。

2019夏の移籍ウィンドウの転換点があった? KSEのポリシーに変化?

この移籍ウィンドウの期間を振り返るに、どうにも偶然に思えない転換点があるように思えており。誰も指摘していないみたいなので完全にぼくの思い込みかもしれないが。

それは、オーナーがある時点でクラブに散財の許可を出したんじゃねーのかということ。そして、タイミング的にKSEを動かしたのは#WeCareDoYouキャペーンなんじゃねーのかということ。

#WeCareDoYouキャペーンとは、USツアーの前に、ブロガーやサポーターグループなどAFCのファン有志が共同でオーナーシップのありかたを問う声明を発表した件だ。「われわれはクラブの未来を憂えている、あなたたちはどうですか?」と。

そして、それにすぐさま反応したのがジョッシュ・クロンキ(スタンリーの息子)で、彼は公式サイトでインタヴューを受けたり、その声明へのアンサーとなる声明を発表したりした(24時間もたたずに)。

ジョッシュの対応は、なぜオーナー投資がないのかなどといった疑問に答えるものではなかったが、それでもスタンと違って、ファンに直接語りかけたことは概ね好印象を与えたように思う。少なくとも誠実だったと。

アーセナルの動きが突然活発になったように見えたのはその後のことだ。

それまでにもザハやティアニーに本気オファーをしているという報道もあったが、いずれも長引きそうな印象はあった。しかし、エメリがあと数日で3-4人が来るとコメントし(サリバやセバーヨスの発表は実際には翌週)、いままでの慎重な動きは一体なんだったんだというくらいいろいろなことが動き始めた。

そして極めつけは€80Mのぺぺ。リヴァプールやバイエルンのようなクラブが本気ならアーセナルに競えるはずがなかった。しかしクラブは突然に有力候補になり、あれよあれよという間に彼を獲得。金にうるさいわれらが急に気前が良くなるなんて、いかにも不自然じゃないか。仮に今年支払う金額が少なくたって結局は総額を支払うのだから、やはり金額の大小は決定的なはずなのだ。とくに財政に神経質なクラブだもの。

というわけで、ぼくはUSツアーでオーナーと直接接触したときにサンレヒたちは何らかの許可を受けたのではないかと考えている。

「You、金使っちゃいなよ」ってね。いやマジで。

節目を野心とともに。エメリはもういい訳ができなくなった

ヴェンゲルさんとガジディスが去って、サンレヒとヴェンカテシャンがアーセナルを率いる新体制となったアーセナル。

いままさに変革をやっている時代なんだという認識はあったが、この夏の移籍ウィンドウこそ、そのことがはっきりわかるものになっているのではないか。

チェフやラムジー、コシエルニといったチームの主軸とも云える選手たちがつぎつぎに去り、新しい血がどんどん入ってきている。しかも若い選手が中心だ。

9年プレイしたコシエルニが去り、ジェンコが最長在籍、そしてそのジェンコも去って、モンレアルが最長在籍だとか。彼はついこないだ来たみたいに思ってたけども。。そして、ティアニーが来たということはモンレアルにもこの夏退団の門戸が開いている。新陳代謝。この変化はなかなか強烈だ。

ブリティッシュ・コアもついにジェンコを最後に消滅した。これはひとつの時代の終わりの象徴的なできごとのように思える。

このような急激なチームの変化は、ともすれば、アーセナルの根幹が揺らぐ危険性もはらむ。しかし、いまのアーセナルが素晴らしいのは、新しい血が外からだけでなく内側から、アカデミーからも流れ込んできているということ。イウォビの退団やエンケティアのローンは残念だったが、ウィロック、ネルソン、サカといった生え抜きのタレントが今年ファーストチームに入ってこようとしている。

おそらくエミレーツ以降の時代では、今年クラブは最高/最強のスクワッドを抱えることになる。もちろん、まだPLでトップを狙えるほどではないが、この夏の補強だけで戦力的には彼らにだいぶ近づいただろう。

本気の補強でクラブはやっと野心らしきものを見せている。いまわれわれは完全に節目にいると思う。

インヴィンシブルズの栄光は遠い昔、いつの間にかトップ4フィニッシュやELのタイトルがアーセナルの目標になってしまっているが、少なくとも数年前まではPLのタイトルが目標だと云っても笑われるようなクラブではなかった(15/16は2位)。

今夏の補強はファンに大きな安心を与えるものだ。これによって、今年、来年、再来年必ず強くなる。そしてPLのタイトルを争うクラブになる。そういう予感(期待)がある。

一方で、ウナイ・エメリはこれでもうほとんどいい訳ができなくなっただろう。

去年のウーナイは最悪だった一昨年(ヴェンゲルさんの最終年)の守備と攻撃をさらに悪化させたが、新任であるとか、ヘボいスクワッドとか、ムスタフィとか、いい訳できる要素はたくさんあった。

2年めのプレッシャーは1年めとは比べられないほどキツいものになる。

もうなんのいい訳もできない。とにかく前に進むしか道はない。

以上。

とにかく、よかった。それしか云えない。

Welcom to The Arsenal and COYG!

※放出のほうのまとめはいずれ。まだこれからもつづきそうですし。イウォビ(泣)。。

P.S.

ガジディスが最大の功労者説。でかした。そしてこのクラブからいなくなってくれて本当にありがとう。



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12 Comments on “エポックメイキングな夏はアーセナルのターニングポイントになるか。2019夏の補強まとめ

  1. この夏に選手放出で得た移籍金は6300万£。一方で獲得で使ったお金は分割がある分5800万£。
    なんと500万£の黒字。
    有能すぎますね、ホント。

  2. イウォビの売却は瓢箪から駒だけど、今後はシーズンで多く先発した若手の売却が多くなるんだろうね
    そういうサイクルで有望選手を獲得していく
    40mという夏の予算を使わなかった分、これを有効に使うか、将来のために貯めておくかは、冬のPLの順位次第だろうなあ

    1. > そういうサイクルで有望選手を獲得していく

      や、そういう話しなんすよ。まさに。

      アカデミーが充実するってのはファーストチームが潤うだけでなく、売却することでクラブの財政が潤って、また新しい血を迎え入れることができるっていう好循環しかないわけで。

      イウォビの売却は悲しいけれど、そういうビジネスモデルあるいはフットボールクラブの運営モデルからすると、しごくまっとうでもあり。

      アヤックスやなんならバルセロナがやってるアカデミーから利益を生むモデルを、アーセナルも取り戻しつつあるという。

      それもこれもアカデミーに投資したヴェンゲルさんの遺産だってことも忘れないでおきたい。

  3. まさにデッドラインディ。ペペのディズニーが遠い昔のことのように感じる1日でした。
    かつてのパニックバイと同じような人数の補強ですが、クオリティは段違い。そこそこの選手はおらず、ワールドクラスばかり。
    seasonが終わったような満足感に満たされてますが、これから始まるんですよね。
    ほんと、あとはこのビッグスカッドをどうまとめるか。タノムゾエメリ‼️

  4. イウォビよりも、ネルソン、サカ、マルティネッリに機会を与える判断は正しい(イウォビの位置づけはもはや若手ではない)→ペペラカオーバレベルまでは育てられなかった。セントラルもウィロック筆頭に、ジュンジュールス、エミルロウがいるわけですし。その意味で、このタイミングで35M売却はクラブにとっても本人にとっても最適では(あわよくばもう少し下位クラブ、というのもあったが・・・まあじゃないとこの値段つかないとも思いますが。)

    最近の放出後をみて、悲しいのがジャックテオアレクシス。中くらいに嬉しいのがガブとコクラン、ジルーあたり。とっても嬉しいのがナブリ(プレシーズン戦の躍動に涙)。チェンバレンが悲しいと中くらいの間くらい。イウォビは15~20得点、10アシストをコンスタントにあげてエバートンのベストプレイヤーになれるよう、頑張ってほしい(もちろんうち以外で→遠回りに他のTop 6対策になっていたりする?!)

  5. おっしゃっている通り、こういうクラブのスタイルに変わっていくのでしょうね。
    一方で、イウォビの移籍に対して「こういう売り方するクラブになるのを良しとするならシティやユナイテッド応援してろよ」というコメントがSNSであり、なるほどと考えさせられました。
    そもそも現地に利害を持っていない日本のファンにとっては、そのクラブのウリ、特徴のようなものに惹かれてファンになるのだと思います。
    ではアーセナルの特徴はなんだったかというと、育てて強くなる、そういうベンゲルスタイルこそがファンを引きつけていたのだと思います。
    そういうスタイルがモダンなアドミンの前においてはロマン主義でしかなかったとしても、我々がそれに惹かれてアーセナルファンになったのは事実なのではと思います。
    そういうのとの別離に対して、今日本のアーセナルファンはアイデンティティ・クライシスになっているのではないか、そうおもいました。

    1. イウォビの売却には反発したいひとは日本人に限らず結構いるでしょうね。

      ただ、ぼくの観測範囲だとアーセナル方面のジャーナリストやアグリゲイター系で、今回のイウォビの売却を疑問視しているひとってほとんどいなくて、おおむね「いいビジネスだった」という反応。

      なぜかと云えば、今回の動きがクラブが目指している方向性からそう離れていないからでしょう。

      安売りしたわけでもないし、トップトップクオリティを手放したわけでもない(イウォビがこれからそうならないとは云えないけど現状ではまあ)。

      アメイチもそうだけど、若い選手の将来性なんてほんとわからないんですよ。シティなんかあのサンチョを手放しているんだから、グナブリどころの騒ぎじゃないっていう。。

      「育てて強くなる」はいままさにそれをやっていて、実際今シーズンのファーストチームには何人ものアカデミー選手が入ってこようとしている。

      ぼくはまだまだロマンを感じているけどなあ。

      まあイウォビの売却がショックだったのはたしか。

      1. 多分それって現地の人なんでしょうけど、現地の人がそういうのはすごい分かるんですよ。
        イウォビみたいな選手がほかチームにいたとして、じゃああの値段でアーセナル買いますかって言われたらもちろん買いません。損得で見ればいいディールだと思います。

        自分は野球はジャイアンツファンなんですけど、それは東京にいて、親が巨人見てて、自分も小さい時から見てたから。だから巨人が育成下手とかホームラン打線とかいう特徴は全く気にならないし、無くなっても気にしない。
        多分向こうのグーナーもそういう人が大部分でしょう。彼らはベンゲル以前のサッカーも知ってるし、純粋に「アーセナルが上位に行くためには何をすればいいか」について真剣に考えているんだと思います。だからイウォビ売却はいいディールという評価は大部分でしょう。

        でも日本でグーナーになる人は、まずサッカーそのものが大好きで、そしてベンゲル時代の華麗なサッカー(そしてその華麗さが後半に失われてからは、買わずに育てるという哲学)に惚れ込んだ人が多いでしょう。
        じゃあそれが無くなったら自分はなぜアーセナルファンなのか?ベンゲル時代の惰性のまま応援しているだけじゃないのか?みたいに自問自答しています。

        もちろんアカデミーへの投資、という面は変わってないんですけど、今回のイウォビ売却は、要するそういう選手にプライスタグをつけることをよしとしたわけで…
        じゃこれから出てくるウィロック、ネルソンなんかもブレイクしたら売るんでしょ?みたいな疑念も出てくるので。
        まぁベンゲル時代もソングペルシとか、成熟した選手は買われてましたが、まだ伸びる年齢の選手を売ることはあまりなかった気がするので(能力不足とポジションが埋まっている以外の理由では)

        また長文すみません、ディールが良かったことは理解しているし、クラブの方向もいつかの優勝に向けて期待できるものは理解してるんです。
        ただ、自分としてはベンゲル時代のキラキラ、アーセナルのアイデンティティを何か犠牲にしたのでは…と寂しく思うのです。

  6. イウォビにとっても良かったんじゃないだろか。
    エバートン後ろのほうは揃ってるし、人数をかけない攻撃ならイウォビの能力はかなり高い。
    チームの王様になれる可能性があるよね。

    しかしエバートンは補強も順調で、ヘタすると食われる可能性もある。
    イウォビ活躍してほしいやら、ほしくないやら微妙な気分。
    ワトフォード・ウルブズも強化してるし、アーセナルが強化されたからって4位にすらなれるとは限らない。

    しかし!それでもアーセナルの物語はここから始まるんだ。(。。。と思ってる。w)

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