hotいま読まれているエントリ

Arsenal, Emery, Match, Tactics, UEFA EL

【マッチレビューその2】19/20UEL GS アイントラクト・フランクファート vs アーセナル(19/Sep/2019)まるでバスケだ!【マッチスタッツと論点】

依然として残るアーセナルのMF問題。トレイラのベストポジションは?

序盤こそ、お互いロングレンジのパスを多く使ったり、なるべくボールをキープしないみたいな慎重な試合の入り方だったが、序盤以降試合が落ち着いてくるとフランクファートがホームチームらしく積極的で、アーセナルの中盤のスペイスを使ってうまくビルドアップをやり、アーセナルはアウェイらしくカウンターから活路を見出すという展開に。

アーセナルはこの試合を通してカウンターを何度も何度も発動していたのは、アウェイでの戦い方としてはまったく悪くなかったが(フランクファートの守備のまずさにも助けられた部分も大きい)、エメリが云う「(自分たちがやりたい)試合のコントロール」は相変わらず全然できていなかった。

この試合もボールを持っていない局面では中盤に開けたスペイスを自由に使われるという、今シーズンのこれまでと同じような問題が見られた。あのように中盤でイージーにボールをつながれては、何度もシュートまでもっていかれてもしょうがない。ダイチ・カマーダもきっとそうとうやりやすかっただろう。

試合後にはやはり今回もトレイラのポジションの賛否で議論が渦巻いているが、エメリにはトレイラをDMロールに戻して事態を修復しようという気はないようだ。試合後の会見でもプレスの質問には「トレイラには高い位置でボールを奪わせたい」と話している。

ちなみに今回の基本フォーメイションは4-2-3-1でジャカとトレイラのダブルピヴォだが、トレイラがB2Bとして頻繁に上がるということは、要するに4-3-3ということである。エメリは最近ジャカをアンカーにした3CMの4-3-3がお気に入りだ。とくに相手のトランジションではうまくいっているようには見えないが。。

トレイラの前半のタッチマップ。

エメリの意図は十分理解できる。この試合でも彼が高い位置でボールにプレッシャーをかけているシーンが何度も見られた。高い位置でボールを奪えれば大きなチャンスになるのは間違いない。

しかし、現状の中盤スペイスを開けてしまうという問題、ジャカをひとり孤立させて晒してしまうというアーセナルでずっとつづいている問題をどう解決するつもりなのか。

ふつうに考えるとその役目にはトレイラがもっともふさわしいだろうし(しつこいようだがサンプドリアでもウルグアイNTでもDM)、今回の試合でトレイラは高い位置にいることが多いため何度も攻撃に絡んでいるが、彼はアーロン・ラムジーのような攻撃力はない。序盤のゴール前での絶好のチャンスも逃してしまった。今回もゴールを決めたウィロックのほうがよほどラムジーで、3CMでふたりのラムジーはいかにもバランスに欠いている。

ピッチの高い位置でボールを奪うことと、中盤スペイスに保険をかけること。現状を見ればどちらを優先するかは明らかに思えるが、好意的に云えば、エメリは現状でより積極的なやり方を採用しているということだ。それが正解かどうかはともかく。

ヴェンゲルさんの時代だってコクランがカソルラより前でプレイすることはけして珍しくなかったので、守備でアグレッシヴな選手をより高めの位置で使いたい欲求というのはどんなマネージャーにもあるのかもしれない。しかし、ぼくはエメリには現状の中盤のスペイスが開くという問題にもっと目を向けてほしいと思う。

それはつまりMFのバランスを欠いているということで、いまのアーセナルの守備問題における諸悪の根源だとすら思える。そこをカヴァーしなければ、いつまでたってもたくさんのシュートを打たれ続けるに違いないのだ。

バックからのプレイを諦めた件

ワトフォードの敗戦から(※敗けてません)Team bonding sessionまでやって、唯一あきらかにやり方を変えたのが、バックからのプレイだ。この試合ではエミマルのGKはほとんどがロングボールとなった。

無理してショートパスでつながないことは、最初から決めていたのだろう。のっけからロングボールがオバメヤンにつながったのは、準備ができていた証拠だと思う。

成功率は高くはないが、ゴール前で奪われれば即BCとなることを考えれば、アウェイのタフな試合でこの選択は間違えていなかった。

むしろエミマルが相手ハーフに3本のロングボールを通していること、オウンハーフでもミドルレンジのパスをいくつか通していることをポジティヴに捉えたい。この試合の彼はビッグセイヴもさることながら、配球も称賛されている。

これは、エメリがこれまでチームと一緒に継続すると宣言していたバックからショートパスでつなぐという重要なコンセプトを根本的に変えたことになる。

この決断を柔軟性があるとポジティヴに捉えることもできるし、あるいはアイデンティティが揺らいだ、基本方針を曲げたとネガティヴに捉えることもできる。

個人的には以前にも書いたとおり、やれるときはやればいいし、やれないときはやめればいいと思っている。だから今回の決断は英断だと思う。アーセナルのバックの選手たちがいまの状態から、インテンスなハイプレッシングをショートパスのコンビネイションで破る自信をつけるにはまだまだ長い時間がかかるに違いない。

ニコラス・ぺぺについて

ぺぺは今回スターティンから外れてサブから30分のプレイとなった。

この試合は彼がアーセナルに来てから6試合めとなるが、いまだにノーゴール(2アシスト)と去年フランスで爆発したような本領を発揮できていない。エメリも彼ならもっとできるはずとコメントしていた。

われわれファンもやきもきしているところだが、そんななかでアーセナルレジェンドでぺぺと同郷のロベール・ピレス氏が彼を辛抱強く見守ろうとコメントしていた。UKロイターのインタヴュー。

Henry deserves to coach in the Premier League, says Pires

ピレス:リールで彼はファンタスティックだった。昨シーズンの彼はベストプレイヤーのひとりで、21か22点ゴールした。彼はグレイトな選手だ。

いま彼はPLのアーセナルでプレイしているところだが、そこに適応する必要があるね。それはとても難しいんだ。とてもタフだよ。だからぼくはファンのみんなにはこう云いたい。ぺぺのことは辛抱強く見守ろうと。

たしかピレスは以前にもPLへの適応がいかに難しいか、これと似たような発言をしていたと思う。新しい選手はとかく活躍を期待されがちなもの。それがクラブレコードとなればなおさらだ。ぺぺにかかるプレッシャーは重い。

しかしぺぺにはなるべくプレッシャーを感じずにプレイをしてほしいし、早く得点でその重みを軽減してもらいたい。気長に待とう。アンリだってベルカンプだってアーセナルに来て最初に得点するまでに10試合とかかかってるんでしょ? まだまだ待てるぜ。

ピレス氏は最近もたびたびアーセナルのトレイニンググラウンドなどでの姿が写真に捉えられているが、この記事によるとどうも現在はアーセナルで「アンバサダー(大使)的」なことをやっているそうである。マネージャーの仕事はあまりにも大変そうなのでまだやりたくないのだということ。エメリを見ていてそう思ったんですね。わかります。

その他試合について

気づいたことなど。

  • このエントリのタイトルに入れた「まるでバスケだ!」っていうのは、ぼくが観てた中継(寝落ちしてライヴで観られず朝起きてから観た)でコメンタリが云っていたこと。あんまりにオープンでカウンターの応酬で、最後の方はもうお互い両手ぶらり(©ちばてつや)みたいな打ち合いだったから「まるでバスケットボールの試合だ!」ってのはいい得て妙だなと。まあはっきり云って、アーセナルもたいがいだが、フランクファートもたいがいだった。ミスは多いし、あいつらカウンターにやられすぎである。どこがCLクラブやねんと。
  • 「ムスタフィ再評価」ってのが試合後のトピックとしては一番笑えた。個人エラーは個人エラーじゃない論が行き着く先でもある。
  • ホールディングはドイツまで行ってベンチにも入らなかったということで、どういうことなのか。
  • ウィロックはアーセナルのアウェイマッチ6試合で4得点だとか。持ってる。
  • ESRは右サイドは合ってないという指摘。たしかにビルドアップではいつも背中に敵をしょっていて窮屈そうだった。ほぼ1年ぶりみたいなアーセナルでのプレイだから、あれで判断しちゃあかわいそうだ。おれは彼にとても期待している。
  • ジャカ、ルイス、ムスタフィ、みんな大きなミスをやらかさなかっただけで、すごいいい試合をしたみたいに感じる不思議。まあでもジャカはかなりよかったか。

ムスティはGTAの新しいやつにカメオ出演するらしいね。ウソだけども。

※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

4 Comments on “【マッチレビューその2】19/20UEL GS アイントラクト・フランクファート vs アーセナル(19/Sep/2019)まるでバスケだ!【マッチスタッツと論点】

  1. ムスタフィ、良かった。てか今までで一番。
    PLはフィジカル(というかラフプレー)の問題があるので別かもしれないが、ELでの戦力だけでも貴重だ。

    しかし依然として中盤はゲームを作る能力が低く、カウンター中心の不器用なチームという印象は拭えない。
    セスクのいた頃と比べちゃいかんなと再認識した。

    ただそれだけに、ハードワーカーでボールを運べてキープもできるウィロックの価値は大きい。
    正確に速いカウンターを仕掛けるサカの特徴も生きる。
    当面はハードワーク→ショートカウンターの方向で良いんじゃないかと思う。

  2. ワトフォードの敗戦から(※敗けてません)はずっと滑ってますねー

    「細かく繋がずにシンプルにやる事と、敵がホームで気持ち良くやりたい事をやろうが
    決めさせずに前掛かりの敵の裏を使ってカウンターで少ないチャンスで決める」
    それがアウェーでの勝ち方。

    格下ならどこ相手でも、または格下ならアウェーでも
    「スタッツの量で圧倒出来る」時代は終わっていますね。

    シュートを多く打たれても「枠内シュート」と「得点」が上回ればそれで良いし、
    アウェーでは「枠内」の数字でも上回れるとは限らない。

    特にこの試合でのポイントは
    「DFに本職でない選手を使うと決定機の対応が緩く(悪く)なり、逆に本職を使うと良くなる。」
    という好例があった。
    長谷部のシュートブロックは全て緩かったし、チェンバースのコスティッチへの対応は
    最後の最後で自由を奪っていた。ナイルズコラシナツは最後淡泊で緩い。」
    結局スコアに直結するのはスタッツではなく「最後の質」かミスで、
    それが勝敗を決めますよね。

  3. サカはもっと内に切り込む(持ちたがる)タイプかと思っていたけど、周りを生かしたり守備の貢献もあり、今後もかなりプレー時間は割いてあげたいですね(成長しかない)。ESRはピークの時みているとドリブルの切れ味が無双だったのが、やはり怪我明けという部分もあるのかな、と。あと中で使ったほうがいい印象ですよね。
    何より結果がチームを明るくする、という点では、あともう数試合みて問題点を分析したほうがいいかもしれません。エミマルは自分的にはベストプレイヤー。チェンバースもとてもよかったです。何気にブンデス経験者が多数(ムスタヒ、コラシナツ、ジャカ、オーバ)いたことは、ホーム無双の難敵を破るのに大事だったような気がします。COYG!

  4. 3CMで二人のラムジーのくだりで爆笑です。そのあとに控えるのが孤立したジャカ、ルイスとムスタフィ氏とかすごい。
    プレミアでやったらどうなってしまうのか。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *