フランシス・カジガオ解雇の衝撃
フランシス・カジガオは、長らくアーセナルのリクルートにおけるキーマンとも云うべき存在で、20年以上クラブにいるという古参スタッフでもある。このブログでも何度か書いてきた。
彼がクラブに連れてきた主要選手は、ロウレン、ファブレガス、レイエス、カソルラ、モンレアル、エミマル、ジャカ、サンチェス、ヴェラ、ベレリン、RVP、マルチネリ、サリバ等々(Arseblogより)。またオバメヤンにも早くから目をつけていたり、ワークパーミッションで実現できなかったが、バルサのアカデミーにいた頃のメッシを連れてこようとしたこともあったという。
The making of Cagigao, the man who found Fabregas, Martinelli and Bellerin
『The Athletic』でgunnerblog氏が書いたカジガオストーリーが、いまだけ無料解放されているようで一読をおすすめ。
そのような重要スタッフを財政難が理由にせよ解雇するというのだから、これはもうショッキングというほかない。
ちなみに、リクルーティングスタッフで解雇されるのは彼だけでなく、ほかにもUK担当のPeter ClarkやBrian McDermottといった複数の重要なスカウトメンが犠牲になるとのこと。
彼らは再就職には困らないだろうが……。
もちろんカジガオほどのスタッフなら高い報酬を受け取っていたのかもしれないが、これまでに契約した選手リストを見れば、十分にそれに見合う働きであったのではないか。よりによって削るとこがそこですかと。クラブ運営において無駄な部分だとは到底思えない。
なぜ彼らのような優秀なスカウトメンが解雇されねばならなかったのか、そして最近のアーセナルでの人事の動きや選手取引を見ていくと、単なるコストカット以上の理由があったのではないかと勘ぐりたくなる。
ラウルと仲間たちに侵食されるアーセナル
近年のAFCのリクルート活動における、「(サンレヒの)コネクションをつかったアプローチ」vs「スカウティングネットワークやデータ分析によるアプローチ」の対立構図で見ると、後者に属するカジガオらリクルーティングスタッフの解雇は象徴的だ。
ラウル・サンレヒがやってきてから、大きなクラブ人事がいくつかあったが、それはどれもサンレヒのリクルーティングでのアプローチ(コンセプト)と相容れない考えを持つものたちの解任だった。
まず、大きな期待を受けながらも、たった1年でクラブを去ることとなった「トランスファーグールー」スヴェン・ミズリンタット。そしてStatsDNAのジェイソン・ローゼンフェルト。そして今回のフランシス・カジガオ。
彼らは、優秀なデータアナリストであり、慧眼のスカウトマンであり、世界中から隠れた才能を発掘するプロフェッショナルだ。
自分たちが直接ブレイク前のダイヤの原石を見つけ、クラブが育てる。よけいな中間コストは発生しない。実際に自分たちで動いて選手を見つけてくることは、アーセナルのような健全財政にとてもこだわりを持つクラブには、ふさわしいアプローチだったろうと思う。
一方で、サンレヒは自分と関わりのある代理人や関係者のつてで選手を連れてきたい。基本的に選手はすでに評価の高まったエスタブリッシュメントで、強力なコネがあるから人気選手を優先的に獲得できる。こちらはどちらかと云えば、ビッグクラブ/メガクラブ向けのアプローチだろう。
アーセナルにとっては前者のほうが、クラブがつねづね語ってきた自分たちのフィロソフィにもよりマッチしたアプローチだと思う。ヴェンゲルさんはスターは買うものではなく、つくるものだと云ったのはあまりにも有名である。
もちろんファンのあいだでも、サンレヒの露骨な「コネ」アプローチよりも、スカウトによるリクルートのほうへの期待が高かっただろう。直近でもマルチネーリやサリバを連れてきたりと成果も出していたのだし。
ぼくは、どちらもうまくいくならアリだとは思っていた。このふたつの方向からのアプローチがクラブのなかで共存して共栄すればいいと思っていた。
だが、いまアーセナルは非常に大きくサンレヒメソッドのほうに傾斜しようとしている。大胆に舵を切り始めた。ミズリンタットやローゼンフェルトのようなデータアナリストはともかく、やり手の現場スカウトまで解任するとはさすがにやりすぎのように思えるがいかがなものか。
ジューラブシアンとの不健全な関係?
とくに懸念されるのは、やはりスーパーエイジェント、キア・ジューラブシアンのクラブへの過大な関与だ。
ウィリアンもコウチーニョもやはり猛烈にアーセナルにプッシュしているのは、彼らのエイジェントであるKJだろう。(最新の噂ではアーセナルはウィリアンを取るならコウチーニョは来ないらしいが)
セドリック・ソアレス、ダヴィド・ルイスもそう。エドゥだってそうだ。実現しなかったが、レイヴィン・クルザワのようなリンクもあった。
そして半年後に契約切れになるセドリックとのローン契約は、なんだか奇妙でアクロバティックなものに見えたし、ダヴィド・ルイスの契約延長も非常にゴタゴタしているように見えた(ルイス自身はもっと早く決断しているべきだったと発言)。なんだか不穏なのだ。いかにも裏がありそうな。
彼は自らがアーセナルのファンであることを公表しているが、だからといってクラブに自分のクライアントをプッシュすることはないと話したことがある。
誰が信じるか。
ちなみにウィリアンの獲得が決まりそうな件は昨日書き、彼のコストは3年で総額£20m+アルファと見積もったが、そのアルファの部分で契約金(signing-on fee)が£10m以上発生するという噂がある。20mと30mではだいぶ違う。それと3年契約に1年の延長OPがつくかもという件を書き忘れた。32才にずいぶんと気前のいい契約ではないか。もしかして凄腕エイジェントなのでは?
前段の話に戻れば、このような太っ腹な契約を32才にオファーできるのに、なぜに55人の善良な労働者を救えなかったのか?? まあ、こういう好条件を出さないと選手契約ができないから、そのために少しでもコストカットが必要だったというロジックなんだろうが、モヤモヤしますよねえ。
この流れのなかで、ジャーナリストのクリス・ウィートリーのtweetが注目を集めていた。
Kia Joorabchian on June 18: “[It’s] not just David Luiz’s situation. There are several issues within the whole structure that will be resolved.”
— Chris Wheatley (@ChrisWheatley_) August 5, 2020
6/18のキア・ジューラブシアンの発言。「ダヴィド・ルイスの件だけではない。ストラクチャ全体にあるいくつものイシューが解決されるだろう」
むむ? なぜ、彼がアーセナルのようなビッグクラブの全体ストラクチャについて語っちゃってるの。一介の選手エイジェント風情が。まるでクラブ内部の関係者であるかのように。
この発言が示唆しているのは、彼はすでにクラブにかなり深く関与しているということ。ひょっとしたらアドヴァイザーのようなポジションにいるのかもしれない。最近のアーセナルでの存在感は尋常ではない。
ジョルジュ・メンデスが「アドヴァイザー」になって以来、ポルトガルクラブと化したウォルヴズと似たような状況なのかもしれない。その後の彼らはかなり成功したと云えるだろうから、一概にこれが悪だとは云えないのだろうが。
翻ってアーセナルは、ウォルヴズのようにひとりのスーパーエイジェントにリクルーティングで大きく依存するような状況は受け入れられるんだろうか。
もちろんクラブ(サンレヒら)はアリなんだろう。そのために邪魔な勢力も片付けた。だが果たしてファンはどうか。
もろもろの反応を見ている限りでは、とても不人気に思える。
もちろん、この方針がうまくいってCLクラブに戻るという目標が達成されるならば、好ましくなかったとしてもそれをしぶしぶ受け入れるファンもいるだろう。だが、ひとりのエイジェントが自分に都合よい選手(顧客)をクラブに獲得させて集中的に利益を得ているなんてことは、たとえそれが目標にたどり着く手段だったとしても、われらファンにとり理想的な、あるべき、あってほしいクラブの姿とは思えない。
今年1月には、チェアマンのサー・チプス・ケズウィクが退任し、後任も指名せず。クラブ運営においては、ますますラウル・サンレヒの意向が反映されやすいものになっているだろう。
われわれは、彼のことをどれだけ信じていいのだろうか?
おそらくはサンレヒの私情によるこだわりで、落ち目は明らかだったウーナイ・エムリ解任のタイミングを逸したことはまだ忘れていない。今シーズン、アルテタがもっと早くクラブに来てくれていれば、もっといいタイミングだったらと、何度思ったことか。もしFAカップを逃していたら、いまごろは藁人形に五寸釘を打ってるところだった。
blog更新ありがとうございました。
状況が改善されると良いのですが。
果たしてこれが必要な首切りだったのか、経営難に乗じて邪魔者を排除しようとした作戦なのか。
クラブはある意味でみんなのものなのだから、選手やファンが立ち上がって、どうにかみんなの力で良い方向に収めてほしいですな。
決定事項ではなく協議段階なのであれば、この決定が覆されることもありえるのでしょうか
FAカップの余韻に浸る間もなくとんでもニュースでした。
ヴェンゲルが去った影響は大きかったということでしょうか。幅広く掌握していた彼がいなくなり、本当にチームの事を考えているのか分からないような人物が暗躍するクラブになってしまったのか。
フロントはFAカップ獲ったことにより、ほら見ろうちらのやり方でやれば勝てるんやで!とか本気で思ってそうで怖い。
オーナーはもともとアレな輩ですし。
このクラブは本当にアーセナルなのだろうか。
DNAを壊さないでくれ…
組織のトップが自分のお友達で周りを固めるなんて最悪だと思う
サンジェイは自分がいなくなってもアーセナルFCが存続することを分かってるんだろうか
こんなことをしたら、選手獲得にも影響が出るのではないでしょうか…。スタッフを首にした金で、新しく雇われるのは気持ちがいいものではないかと。サンレヒこそ辞めてくれ。
僕は周囲のサッカーファンから何でアーセナルを応援するの?と聞かれていつもこう答えてきた。
「愛にあふれているから」
フットボール愛、芸術性への愛好、何より選手愛
これらはヴェンゲルのもとで確固として築かれ今までそれがクラブの代名詞として(少なくともファンの間では)語られてきた。
でもそれが揺らごうとしている。
何でスタッフ55人分の選手一人の半年分の給料にも満たない給与を支払おうとしないのか。
財政が厳しいのは事実だ。しかし代替手段がある。
その代替手段を選ばないのは単にサンジェイの政治的決断に他ならない。
ガジガオはクラブへの忠誠心が非常に強いことで有名で今のチームの核となっている選手の獲得も彼の功績が大きい。
はっきり言ってしまえばサンジェイよりよっぽどクラブに欠かせない存在だ。
クラブのアイデンティティが一つ失われた気分だ
もちろんスカウト部門だってスーパースカウトによる属人化されたもにでなく、クラブのスカウト部門として、そういった人達の知見などを蓄積した資産/資源を活用すればいいんだけど、、
正直、不安しかない。。
エージェントのcommission fee とか最初表にでなくて、後から暴露されてビックリみたいなのいくつもあったしなあ、、
アーセナルのこの酷い状態を招いた張本人は、スタン・クロエンケ。
このビジネスライクで、スポーツそのものに、愛情や情熱をみせないクズオーナーのお陰で、アーセナルは3流クラブに陥ってしまった。
多くの日本人は、中東やロシア、アジアの金持ちのオーナーより、アメリカ人はより健全だと認識しているが、このクズオーナーが、自身の所有チームでやってきた事をキチンと精査して欲しい。
アーセナルフットボールクラブの再生には、このクズオーナーやクロエンケ一族の退任、サッカーに情熱があり、正しいビジョンを持った新しいオーナーの就任が必要不可欠です。
クロエンケだけでなく、ドンラウールも何とも小さな人間でしょうか
ベンゲルを長い間見てきたせいかとても矮小な男に見えます
フロントが癌ではクラブが機能しません。更にはオーナーまで無関心では自浄作用が一切働かない事になっていてる始末
去年から不甲斐ない成績なのはやはりフロント、オーナーの責任ですよ
サンジェイ のコネベースでの選手選考は好きではないし、今回の件もあってかなり叩かれるでしょう。
ただ、サンジェイが辣腕を振るう前は、はっきり言って物足りない補強内容でした。スカウティングの見直しは必要だったと思います。
それに今のプレミアではある程度ブレイクした選手を獲得しないと通用しませんし、まして今の立場から早期CL復帰を狙うなら殊更です。
謎の若手を獲得してみて、プレイタイムを与えて育てるのは非効率的です。
アーセナルはこの深刻な財政難においても、補強の話題は盛んで、実際に何人かの強力な選手の獲得を狙っています。
サンジェイのやり方は我々には悪いものに見えても、これが現代のビッグクラブに合った手法なのかもしれません。
そしてアーセナルは今でも間違いなくビッグクラブであり、タレントを獲得すべきクラブです。