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Arsenal, Behind The Scene, Transfer

スヴェン・ミズリンタット、アーセナル退団の舞台裏、アーセナル時代に獲得した選手たちについて語る

<中略>

(アーセナルと2部のシュツットガルトでは選手契約の難しさはどれほど違う?)

ミズリンタット:基本タスクは同じ。もっともいい金額でもっともいい選手と契約したい。しかし違うコンペティションで、クラブの予算を考慮する必要がある。降格となればよりトリッキーになってしまう。われわれのケイスでは、セカンドディヴィジョンにいたときにスクワッドを築かねばならなかった。そこはラフなところであり、われわれは(昇格の)本命でもあった。ブンデスリーガではフットボールがもっと洗練されている。

(コンスタンティノス・マヴロパノスはあなたがアーセナルで最初にサインした選手。彼はよくなっていますか?)

彼はグレイトなディフェンダーになるためのすべてのハードウェアとソフトウェアを持っているね。たくさんのケガがあったのは残念だった。恥骨炎(pubic bone inflammation)で1年半くらい満足にプレイできていなかった。われわれが彼をプレイさせようと思った途端に、半月板をやってしまった。彼にはマッチフィットネスを得させることが重要になってしまった。

もし彼がフィジカリーに安定できるなら、間違いなくブンデスリーガレヴェルのディフェンダーだ。リーグでもダヨ・ウパメカーノと競るくらいの最速CBのひとり。すごい漢さ。模範的なプロフェッショナルでもある。彼のエナジーは称賛すべきものだ。すべてのケガを乗り越えてきた強さも。最近は彼をレギュラースターターとして使えることがとてもうれしい。

できれば、もう1年、来シーズンも彼をローンでキープしたい。しかしそれはアーセナル次第だ。

<中略>

(ヘルタBSCのマテオ・ゲンドゥージもあなたがアーセナルでサインしたひとりです。彼は先日「思春期フットボール“adolescent football”」とPal Dardai(コーチ)に批判されました)

わたしはPalには賛同しない。マテオをミドフィールドでプレイさせないなら、とても力強いミドフィールドにはなるだろう。マテオはタイトな状況でもすべてのボールを要求するという、必要なパーソナリティが備わっているし、縦にもほかのアングルにもプレイするグレイトなヴィジョンがある。それが彼の本来の強みだ。リーグ2から来たティーンエイジャーが、アーセナルでのファーストシーズンで48試合プレイした。保証してもいいが、PLであれだけの試合をプレイした選手が、未熟なフットボールで生き残ることは不可能なんだ。

彼は若いセントラルミドフィールダーだ。そのポジションで選手がピークに達するのは、27-28才。もちろん彼がすべて正しいことをやっているわけではない。しかし彼は決意とクオリティを持ってプレイしている。それが彼を普通じゃない選手にしている。

Dardaiは、RBライプツィグでボックス内で彼がボールを失ったことを批判していたが、われわれなら選手にはボールには勇敢でいてもらいたい。ボールを持ってプレッシャーをかわせる動きができるものであってほしい。ボールを失うことはその一部だ。もしそれが起きても、われわれはつぎのボールでもそうすることを求めねばならない。それがマテオがやっていることであり、わたしがすごく観たいものだ。変えるべきは彼の試合ではない。彼を成長させるためにそのディーテイルに取り組むべきだ。もしそれができるのならば、あなたは彼を「モンスター」ミドフィルダーにできるということだ。

(でも今シーズンのミケル・アルテタにとって彼はスクワッドに必要なかった?)

わたしはミケルをすごくリスペクトしている。彼とはいつか話してみたいと思っている。どうしてマテオやルーカス・トレイラをローンで出したのか理由を知りたい。そして、彼には彼らのクオリティーズについてのわたしの考えを伝えたい。だが、もちろん決断は彼のものだ。

わたしの個人的な意見としては、マテオはいまもアーセナルのミドフィールドにクオリティーズをもたらせるし、ルーカスもそう。彼らのマーケットヴァリュはデビューシーズンよりもかなり上がっているよ。

(どうして結局エメリはうまくいかなかったのでしょう。あなたの考えは?)

わたしがちゃんとした評価をするのは不可能だね。わたしは2019年の2月にはアーセナルを去っている。彼がファースト・シーズンでうまくやらなかったとは云えないんじゃないかと思うし、わたしが彼と一緒にいたのはそのときだけだ。彼のセカンドシーズンについては、そこで何が起きていたのか観ていないのだから意見を云う立場にない。

(あなたがアーセナルでした契約を振り返ってみて、ドルトムント時代のよく知る選手ばかりを取ったことは間違いだった? 少しありきたりに見えたところもあります)

「彼はドルトムントの選手しか知らない」そんなふうに云われていたことも知っているよ。でも決断には何の影響も与えられない。できるだけそういった意見や政治からは自由でいなければならない。それで自分が正しいことをしていると確信できる。間違うこともある。しかし間違いに正直ならなければ、間違いに気づかなくなる。見た目のためにある動きをしなければならないと感じることになる。

しかしとにかく、元ドルトムントの選手たちとのサインについては話すのは問題はないよ。

オーバから始めようか。彼はアーセナルのキャプテンだ。それはいいね。彼のPL移籍してからのスタティスティクスはそれだけで際立っている。彼がチームに入ってからもっともゴールを取っている。FAカップの勝利も彼のクオリティと得点がキモだった。

ヘンリク・ミキタリアンはアレクシス・サンチェスとのスワップだった。彼はクラブにとってほとんど価値はなくなっていた。ミキはスクワッドにもいい取引だったし、お財布にもやさしかった。それよりも7つのことばがしゃべれて、ドレッシングルームでみんなとつながりがある選手ということがあのとき重要だった。彼はトッププロであり、人としてもすばらしかった。彼はリードしたしハードワークした。マテオのような選手も彼が導いていた。みんな彼をあなどっているよ。わたしは決してそんなことはしない。彼がローマでまた出てきたことはとてもうれしいんだ。

ソクラティスもグループにもたらすものがあった。アグレッションやウィニングメンタリティ。試合にしがみついていくところ。美しくなくても勝つこと。忘れてはいけないのは、彼はディノスにとっては完璧なメンターだったことだ。

わたしの見立てでは、ソクラティスはローラン・コシエルニとお互いによく補完できるはずだった。彼ら以外ではロブ・ホールディングがいてディノス・マヴロパノスがいてカラム・チェンバースがいた。それと若い選手の購入候補リストもあった。ウィリアム・サリバも入っていたよ。安かったし。

ソクラティス、コシエルニ、ペトル・チェク、アーロン・ラムジーらに、ステファン・リクトシュタイナーとグラニト・ジャカがいた。このグループはハイパフォーマンスメンタリティでドレッシングルームをほんとうにプッシュしていた。このグループがハンガーを維持していくことが理想だった。

ペトル・チェクとステファンはとくに重要だった。若い選手もいるなかでのリーダーシップの模範をつくるという意味で。ESR、サカ、エンケティア、ウィロックにネルソン。彼らはみなこの当時にプロの環境に入ってきたものだ。

<後略>

以上。

これで全部のインタヴューの半分くらいか。あとは、シュツットガルトのことやBVBのこと、リヒトシュタイナーのこと(笑い)などについて話している。興味があるひとはぜひ、『The Athletic』に登録して全文を読もう。

おれの雑感

ロールモデルだったころのアーセナル

スヴェンは「2006年のアーセナルはロールモデル」だったと語っている。

このあたりはたしかにアーセナルは過渡期と云える時期だったろう。それ以来ずっと過渡期といえば過渡期だが、細かく観ていけばそこはあきらかに大きな過渡期ポインツのひとつではあった。

ティエリ・アンリが退団し、ハイバリーからエミレーツにホームステディアムを移動したのがこのあたりで、それはたしかにひとつの時代の終わりをすごく象徴していた。

その後は借金返済のために毎年重要な選手を売ってセリングクラブと云われたり、金満トップクラブに勝てず万年4位とか揶揄されたりしながら、やりくりをしていた。

エジル・サンチェス、ジャカ・ムスタフィあたりを取る年までのおよそ10年間は、栄華を極めたあとだっただけにファンにはツラい10年だったが、まさかその後も下り坂を転がり続けるとは誰もおもわなかったろう。

当時ファンとしてはだいぶストレスを貯めたものだが、いま振り返れば、毎年チャンピオンズリーグでプレイし、ミッドテーブルチームスやボトムチームスにもちゃんと勝っていたのだから、ここ2-3年よりはだいぶマシだった。このあいだには、クラブとしてファンが求めるスタンダードもだいぶ下がってしまった。

ファン視点だと気づかなかったこと、しかしフットボール世界のニュートラルな視点で観れば、あれだけ予算をセイヴしながら毎年のようにタレントを発掘し、チャンピオンズに出場しつづけたことは、やはりクラブとして偉業だったのだろう。

ヴェンゲルさんもアーセナルから離れるとき、20年のキャリアを振り返って充実していたのは、じつは負債を抱えて苦しんだ後半の10年だったみたいなことを云っていたはず。

当時のアーセナルは若い無名な選手ばかりに目が向いているように見えたし、30才を超えた選手には単年契約しかオファーしないだとか、いまとはだいぶ違ってビッグクラブとしてもっとユニークな戦略を持っていた。

ミズリンタットだけでなく、おそらくはもっとたくさんの人間やクラブにとってロールモデルだった時代のアーセナルが、とてもノスタルジックに感じられる。

いまこのCovidな世の中で、どのクラブも財政的に疲弊し、そのときのアーセナルの戦略がいまの時流にとても適合しているというのもなんだかおもしろい。当のアーセナル自身は、以前とは違ってシニア選手に大きな投資をしたりとあまり過去の自分たちがやってきたことには、大きな価値を見出してはいないようだが。

シニア選手への大きすぎる投資は、少し反省してもらいたいような気はしないでもない。

マヴロパノス、ゲンドゥージ、トレイラ

スヴェンの話しぶりからすると、もし彼がまだクラブに残っていたら彼らをチームに強くプッシュしていたんだろうか。

一般的には、とくにゲンドゥージとトレイラはアルテタからはもう戦力としてカウントされていないと思われているだろうが、彼に云わせればそうではないと。

アルテタに会って彼らのクオリティについて説明したいみたいなことまで云うのだから、なかなかの思い入れである。

ディノスは来シーズンはもう1年ローンみたいな話もあるし、それはそれでいいと思う。来シーズンはサリバが戻ればCBは数は足りている。1年大きなケガなしでプレイできるみたいなところは、選手本人が証明する必要はあるだろう。いくら才能があってもケガがちでは使えない。

それとトレイラは、ちょうど昨日、本人がクラブから求められれば来シーズンはアーセナルに戻ってプレイすることもやぶさかでないと考えているという報道もあったようだが、どうだろう。いま来シーズンのパーティのパートナーをどうするかみたいな話題が界隈では盛り上がっているが、パーティの隣にトレイラというのは、誰も想定していなさそうな。

個人的には彼は夏に資金捻出のための売却がもっとも現実味があるように思える。選手評価は比較的高いし、まともな金を得られるほうのアセットである。

問題はゲンドゥージか。

彼の問題はフットボールそのものよりも、メンタリティとかアティチュードみたいなところだ。彼の生来のタレントやプレイのクオリティはあの年齢なら当然ポジティヴで、アルテタのようなコーチならむしろ喜んで成長に手を貸しそうな素材ではある。

だが、思春期にいる。永遠の思春期かもしれない。成長を止めてしまったもの。それは困る。

アーセナルでほんとうのブレイクをしてもらいたいんだがなあ。



ということで、スヴェンのインタヴュー。いかがでしたか。『The Athletic』ってほんとうにすばらしいメディアですね。

 

おわる

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