試合の論点
アーセナル vs アーセナル オリンピアコス vs アーセナルのトーキングポインツ。
順調EL
8 – Arsenal have won eight of their nine UEFA Europa League games this season (D1), and are the highest scorers in the competition so far this term (27 goals). Control.
— OptaJoe (@OptaJoe) March 11, 2021
今回の勝利で今シーズンのUELでのアーセナルの成績は、9試合でW8 D1 L0。
総得点27(※試合平均でちょうど「3」)は、ここまでで最多得点チームということ。
R32のベンフィカであれだけ苦労はしたものの、グループステイジも危なげなかったし、アーセナルはここまでおおむね順調にコンペティションを進んでいると云ってよさそうである。
今回はアウェイゴールズを3つ取ったことで、まだセカンドレグを残しているとはいえ、R16の勝ち抜けの可能性もかなり高まっただろう。
このラウンドオブ16の結果を受けて、538こと『Five Thirty Eight』では、ついにアーセナルがELタイトルの本命になった。つぎのラウンド(クウォーターファイナル)への勝ち抜けも98%と極めて高評価。
もちろん現時点でタイトルについて語るなど取らぬ狸の皮算用ではあるが、いまチームが行っていることを継続していくために、この高評価が選手たちの自信にはなればいいことだ。
PLでどんなにひどいパフォーマンスをしようとも、ELから来シーズンのCLを取れれば、今シーズンはそれで目標達成。ひきつづき、ELでの勝負強さを継続してもらいたい。
バックからのプレイと個人エラー
今回もまたやってしまった。
個人エラーから1失点。試合の流れや相手の脅威とは、ほとんどまったくなんにも関係ないところから。
そしてそこから流れが変わって自らを苦しく。毎度おなじみすぎる見慣れた光景。あんまり毎回同じなのでびっくりする。
これだけつづけてやらかしていれば見慣れもする。
Arsenal’s recent games
Wolves A – penalty & red card
Villa A – Error >> goal
Leeds H – 2 goals conceded
Benfica A – Penalty conceded
Man C H – Concede inside 2 mins
Benfica A – Error >> goal
Leicester A – Error >> goal
Burnley A – Error >> goal
Olympiakos A – Error >> goal— Orbinho (@Orbinho) March 12, 2021
The trend is clear – Arsenal have gifted 5 of the last 6 goals they’ve conceded with individual errors
— Premier League Panel (@PremLeaguePanel) March 11, 2021
この試合で相手のショッツにつながるエラーは、失点したプレイを含めてなんと3回もカウントされている。
失点1で済んだのは、相手の拙攻に救われただけだろう。とくにルイスがボックス内でかっさらわれた40分のあれはかなり危なかった。よく外してくれたものだ。
もうアーセナルの最大の敵はアーセナルとしか云えないんじゃないか。
失点になったシーンは、57分。レノがセバーヨスに短いパスを送り、そこにふたりに寄せられたセバーヨスがボールを奪われるという、先日バーンリーでレノとジャカに起きたことと少し似た状況だった。
だが、今回はレノの過失が大きいように見える。
バーンリーでのあの事案の過失がレノ20/ジャカ80だとすると、今回はレノ70/セバーヨス30というところか(セバーヨスはより余裕がなかった分ジャカよりやや罪が軽い)。たしかにセバーヨスにはもう少しうまくやってほしかったとは思うが、今回そもそもレノは危ない場所にいた彼にボールを預けるべきではなかった。彼が判断を誤ったのは明白。
アルテタが述べていたように、それはリターンに見合わないリスクだった。
しかし今回はそれだけではなく、ほかにも危ないシーン/余裕なのないシーン(あるいは過度に余裕を持った?)、自分のゴールの前で相手選手の足が届きそうなギリギリでパスを通すような、やらかしの伏線と云ってもよいシーンは幾度もあった。
でも、それがつまり「バックからプレイする」ということなのだとも思う。リスクは覚悟。なぜならリウォードがあるから。
シティやリヴァプールのようなバックからプレイするビッグチームでも、ハイプレッシングに窮してGKやDFがミステイクをやることはある。われらだって以前にはプレスで彼らにそういうプレイを強いてチャンスをつくった。
中継のコメンタリでも指摘されていたように、レノにはロングボールを蹴らないようコーチからかなり強く指示が出ているというのは、おそらくほんとだろう。観ていればわかる。複数の相手選手が付近にいて一見危ないように見えるシーンでも、なかなかロングボールに逃げない。落ち着いた判断は、さすがレノと思うようなときもある。
今回アルテタは選手の意思決定について苦言を呈している。だが選手にしてみれば、どこまで指示に従うべきか、どこまで味方を信じるかの難しさもある。GKがロングボールだけを蹴ればいいなら、そんなに簡単な仕事もない。
GKもDFもオウンハーフのゴールに近い場所であっても、ロングボールに逃げずに確実にボールをつなげるようプレイしろという司令のなかで、どこまで逃げずにいればいいのか。どこまで大胆にプレイすべきなのか。加減はいつだって難しい。
バックからのプレイは諦めない。選手ひとりひとりがその都度適切な決断をしていくしかないと云い続けて、いまがあるはず。
アルテタやコーチらは、そんななかで繰り返される個人エラーズをどうやって改善していくのだろう。
これは現在のプロセスにおいては、決定的な課題克服になりえる。なぜならば、そういった愚かしいエラーズさえなければ、このチームはかなりいいパフォーマンスをつづけているから。
失点するまでの今回の試合もそうだし、この悲惨なエラーばかりやっている期間でも、ウォルヴズやレスターなど、強敵を相手にシーズンベストのようなパフォーマンスを何度も見せている。以前の何をやってもうまくいかないという時期から比べれば、チームプレイに進歩があることは疑いない。
だからもしこのやらかし傾向をいつしかチームが見せなくなり、90分を通して安定してプレイのクオリティを維持できるようになれば、突然そこにCLレヴェルのチームが出来上がっているというのは、決して夢想でもないように思える。最近のチームを観ているととくにそう思う。
激しいプレスのなかでも安易にロングボールに逃げない勇気を持ちつつ、瞬時にプレイのリターンとリスクを計算できる冷静な判断力。
何よりも進歩すべきところはそこである。
奇妙な試合
Scott Willisによるこの試合の両者の総xGは、1.1 v 1.1。なぬ? 同じとな。
Olympiacos (1.1) 1 – 3 (1.1) Arsenal
LOL pic.twitter.com/dzMzyHf7TR
— Scott Willis (@oh_that_crab) March 11, 2021
The xG Philosophyでも、0.93 v 1.07と大きな差はない。
Olympiakos (0.93) 1-3 (1.07) Arsenal
— The xG Philosophy (@xGPhilosophy) March 11, 2021
アーセナルの与えたエラーズからのオリンピアコスのチャンス(0.7)があまりにも大きかったということかもしれない。それをカウントしなければ、オリンピアコスの総xGは0.4程度。それなら観た感覚に近い。
また、このxGの奇妙さはそれに加えて、アーセナルの3得点がどれもびっくりするほど低いチャンスから生まれているということもある。
Arsenal’s goals this evening were worth 0.02(xG), 0.04(xG) and 0.01(xG).
— The xG Philosophy (@xGPhilosophy) March 11, 2021
- オーデガード 0.02xG
- ガブリエル 0.04xG
- エルネニー 0.01xG
xGというのは、つまりパーセンテイジなので、それぞれゴールが決まる確率は、2%(1/50)、4%(1/25)、1%(1/100)というショッツだった。
あれだけチームとして支配的にプレイして、じつは大きな得点チャンスはつくれず(アーセナルのいわゆる「BC(Big Chances)」はゼロ)、決まったゴールは個人技のとても可能性の低いショッツから決まっているということ。
この試合を奇妙な試合を云いたくなるのはそういう理由である。
トマス・パーティが消えるストラクチャ?
パーティがアーセナルに来て以来、個人的にはどうも観ていてストレスがたまることのほうが多い気がしている。
それはべつに彼のプレイに問題があるということではない。彼はボールを持てばいつでもなにかを起こそうとしていて、彼がボールを持つのを観るのはむしろ楽しい。
問題は、彼があまりプレイに関与できないことだ。システムとしてはお隣でCMコンビを組むジャカ(まあ彼はほとんどLCBのような位置にいるが)が、いつもビルドアップのメインマンで、パーティはなかなかその輪のなかに入っていけない。
BTPのパスマップ(※再掲)を見てもわかるように、ピッチの中央にいながらも、決してプレイの中心にはなっていない。どちらかといえば、ボールが彼を経由しないので、消えている印象がある。それはこの試合だけというわけでもなく。最近の彼はいつもそんなふうに見える。
彼はケガ開けでフィットネスに問題があるという指摘もあるが、どうもぼくにはそれだけが原因のようには思えない。
彼が試合に入っていけない理由のひとつは、やはりジャカにあるんじゃなかろうか(べつにジャカを責めているわけじゃない)。
基本的にはふたりともCMなのだから当然ではあるのだが、役割がかぶりすぎていて、そしてチーム内ではジャカが信頼されすぎていて彼にボールが集まり、ジャカもジャカでとくにパーティを活かそうという気もなく、パーティはもしかしたらフィットネス理由で動きが鈍くマークを外せない…… そんな理由でパーティにボールが集まらない。
結局パーティは、ボールにあまり触れずチームプレイのリズムに乗れず。試合を経てパフォーマンスが向上していくような印象も薄い。そんなふうに見える。
皮肉なことにアルテタは今回のパーティの交代について「タクティカルリーズンであり、チームをインサイドでプレイさせたかったから」と述べた。パーティ目線だと、少々ショッキングなコメントに感じるかもしれない。
まあマッチフィットネス説は完全否定するわけじゃない。それもあるだろう。
でも、今度パーティを起用するときは、パートナーはジャカ以外で頼みたいという気はする。彼がいると彼がチームプレイの中心になり、近くにいるパーティが霞む。ぼくは彼がMFのメインマン、ゲイムの中心になる試合が観たい。その価値がある選手だろうから。
いまはなんだか彼のポテンシャルが無駄になっているように感じる。
その他試合について
- 前半のアーセナルのハイプレス。オリンピアコスに全然プレイをさせない。つよかった
- オーデガードのサンダーボルト。無回転。彼はシュートに積極的じゃないし、あまりうまくない選手だと思っていた。認識をあらためた
- ガブリエルはすごいジャンプ力。ファンが選ぶこの試合のMOTM(Sky SportsはKT)
- エルネニーのゴールはセレブレイションが印象的。本人の喜びよう。チームメイツの喜びよう。愛されてる
- これからエルネニーがボールを持ってゴール前まで来たら「シューーーー!!!」て叫ばないといけません
- オーデガード、サカ、ベレリンのトリオ。右サイドで相手のブロックを前に攻めあぐねるシーンが多々あり。あそこでクリエイティヴィティがほしいなあと。OTTのスルーボールとか、ヒールキックみたいなキラリと光るトリックをたくさん試してほしい
- ウィリアンは絶好調。これでアシスツ7。ライン間に忍び込み、よくボールを受け、よくつぎにつなげて、またつぎのスペイスへ。あのプレイをしてくれるならスターティングも文句ない。というか、最近は毎回「これまではなんだったんだ?」と思わされる
- HBとKTの危険クロスよし
- サカはおとなしかったがいい場所でファウルもらってFK。たすかる
The Egyptian King 🇪🇬👑 pic.twitter.com/tyfvv4Cu0U
— Arsenal (@Arsenal) March 11, 2021
試合については以上。
自分に勝つ。
何より難しいミッション。
でもそれをクリアするとビッグクラブ。
勝ちましょう。
パーティとジャカは本当に分離したほうがいいかも。
プレー(判断)スピードが違いすぎて、ジャカに合わせるとパーティの良さが出ないし、パーティに合わせるとジャカがついてこれない感じがする。
逆に言えばあれだけプレースピードが遅いジャカが中心になってるのは、現状このチームでどれだけジャカのキックの比重が重いかだと思う。
例えばパーティをアンカーに置いた4-3-3でやる場合、それまでジャカがキックで解決してた事でも、IHとFWのパス&ムーブで代替するのは大変だと思う。
それこそ、判断ミスしてたら務まらない。
そういう意味において、今やってる「正しく判断する」という取り組みはこのチームの未来でもあると思う。誰がプレーするかではなく、出る選手が当たり前のように正しく判断できるチーム。
見たいですナ。
ハイライトでしか見てないですが自陣でのミスはがっかりしますね。
バックからプレイするリウォードの得方がまだ定着してないような。そして基本的な手順ということは決まっているかもだけど、それが相手のプレスの仕方(深さやかける人数や位置)によって変化させる必要があるはずだけど、それが定着してないというか決まってない対応できてない、想定してないイレギュラーな相手の変化に対応できないみたいなそんな印象も受けさせますね。
それもアルテタのいう判断という部分なのかもしれないですけど。まぁこの試合フルで見てないのであれですが。
ウィリアンはハイライトでも攻撃のポジショニングが良くなっているのが見て取れました。バーンリー戦で気になった部分がすぐ修正されたのは個人的にポジティブです。てかバーンリー戦もでしたけどティアニーよりウィリアンのが低い位置で守備している場面が散見されるのがちと気にも。ティアニーの戻りが以前より遅いことがある?まぁウィリアンの守備貢献も高いで済ませればいいのかな。
ミスの部分の修正もされるといいですね。