バロガンとサリバの成長と今後
先日、ダーウィン・ヌニェスとコーディ・ガクポについて書いたときに、フロ・バロガンのことも触れようか迷ってやめた。ちょっと長すぎるエントリになりそうだったので。夏のストライカーの補強について考えるなら、もちろん彼のことも思い出さなきゃならない。
バロガンは冬にローンでミドルスブラへ移籍してからかなり好調のようで、先日もイングランドU-21(アルバニア)で2つのゴール。その前のアンドラ戦でもG1。これでイングランドU-21では7試合でG4。
今回の会見で、彼の成長について問われたアルテタも満足そうに語っている。
以前、イングランドU-21のマネジャーがバロガンについて「彼にはU-23フットボールはもうイージーすぎる」と、彼のシニアフットボールの必要性を説いていたが、実際そのあとにチャンピオンシップでプレイするようになり(ミドルスブラでここまで12試合でプレイG2 A2)、よく成長しているところをみせている。このローンは成功の匂いがする。
本人も充実した時間を過ごしている模様。最近のバロガンのコメント。『football.london』より。
バロガン:(アーセナルでは)チームに入りたい選手ひとりひとりがすごくいいプレイをしている。それが仕事をやりやすくしている。ぼくは彼らのことを観ているけど、自分がやらなきゃいけないことにも集中してる。自分のクオリティをチームに与える。外側から観るのもとてもいいものだね。
ぼくのゲイムはかなり成熟してきた。U-23でのプレイでは、ときどきやらなくてもいいこともあった。メンズフットボールへの移行で、もっと頭をつかってプレイする必要があるとわかったんだ。いつやるかもわかった。ぼくのゲイムになってきているが、まだ成長する余地がかなりあることもわかってる。
ぼくにとって最大のことは、もうちょっとということ。もっと高くに行くこと。ボールを失えば相手に得点のチャンスを与えるし、ボールを持ってなにかをさせれば傷つけられる。そこにはプレッシャーがあるし、それはそういった状況にさせないために賢くいる必要があるというプレッシャーなんだ。
そういう環境。ミドルスブラでは隠れるところはない。ぼくらはPLに昇格しようとしている。それがクラブの目標で、ぼくも適応しなければならなかった。いいプレッシャーがある。ぼくが避けて通れないもの。
どんな選手にも違う道がある。ぼくのそれを観れば、ローンはいいことだったので、前を向いてやりとげる。
(エミレーツでベンチに座っているよりよかった?)そうだね。学びの機会だ。その価値がある。活躍しなきゃと思って試合に出るとは云わない。ぼくがそこにいるのはぼくにクオリティがあるから。それがぼくが示さねばならないものであり、より安定的にやらねばならないこと。
バロガンがローン先でうまくやればやるほど、来シーズン、彼をどうするかはわりと悩ましくなる。
もしラカゼットが、一部でうわさされているように短期で契約延長のような場合は、もう一年ローンで実戦経験を積むほうが本人のためにはいいかもしれない。しかし、ラカゼットとエンケティアのふたりとも同時に退団となれば、メインでプレイするひとりは確実に必要として、セカンドのストライカーを取るか、あるいはバロガンをセカンドにするかは、けっこう悩ましいように思える。
マルティネリのCFオプションもあるし、なんならアルテタはESRにNo.9適性があるとも述べたことがある。
もうひとりのうれしい成長がサリバ。先日21才になったばかりで、今回早くもフランスNTシニアスクワッドでデビュー。彼にはうれしいことが重なった一週間だった。
Happy birthday, Wilo! 🎈 pic.twitter.com/f2TT633EMb
— Arsenal (@Arsenal) March 24, 2022
彼はここしばらくはOMで若干フォームを落としている様子もあったが、故障したBenjamin Pavardの代替だったとしても、こうしてこの若さでナショナルチーム(しかも現時点で世界最強の一角・フランスである)にも選出されるということは、やはりフランスでの評価はかなり高い。
アーセナルのファンも来シーズンに彼がチームに戻ってきたときのCBの充実ぶりにはかなり期待が大きい。
ただ、彼の場合バロガンと違うのは、アーセナル(アルテタ)との関係がやや微妙なところ。すくなくともここまでは毎度の彼のコメントをみるかぎり、相思相愛という感じではない。
比較的最近の彼のコメント。フランスNTに招集されたあと、3月23日の『RMC Sports』より。アーセナルに関する部分だけ。※けっこうロングインタヴューで内容もおもしろい。
(2019にアーセナルとサイン。しかしここまで計画どおりにはいってない。その3年後にはキミはフランスチームにいる。あれは正しいタイミングだったのか、あるいは早すぎた?……)
サリバ:ビッグクラブとサインすれば、当然そういうこともある。もしいいプレイをしていてレギュラーなら、フランスからだってチームに入っていくチャンスがある。逆にいうと、プレイしないのなら、そこにいないほうがよかった。マルセイユではぼくはプレイをつづけている。チャンスもある。
それはフランスチームでもそう。すべてのポジションでかなり競争がある。とくにディフェンスでは。誰かがそこに呼ばれたり、呼ばれなかったりする。競争は激しい。だからつねに集中している必要がある。つねにワークする。なぜならぼくは呼ばれたし、ここに到着した。
(キミの今後について、いまのところマルセイユとは進展なし?……)
ない。でも、ここで居心地がいいことは隠すつもりはない。自分の将来についてはわからない。あと2ヶ月ある。もっとも重要なことはCLを得ること。そしてECLで行けるところまで行く。
たぶんそのあとにアーセナルとマルセイユで話があるんだと思う。5月末から6月のはじめあたり。そのときに決断する。でも、たしかなことは、ここでつづけることも悪い考えじゃないということ。ぼくは街を知っているし、チームメイツもコーチも。自分だけでは決められないけど。
(マルセイユはキミをキープしたがっている……)
イエス。そうだ。どうなるか成り行きを観てみよう。アーセナルが賛成するかどうか次第でもある。
フランスのメディアなので、フランス寄り?の質問になっている。
これまでの彼のコメンツからも察せられたとおり、彼はもはやどうしてもアーセナルでプレイしたいというスタンスではなくなっているのだよね。これまでの謎の冷遇っぷりからすれば、そう思ってもしかたないかもしれない。
アーセナルとしては、来シーズンはヨーロッパもあるだろうし、当然成長した彼をチームに加えたい。だが、サリバは残り契約2年でアーセナルとの契約延長にサインするかは微妙。
もっともありえそうなシナリオは、夏には契約延長なしで来シーズンはアーセナルに戻る。カップ戦中心のプレイで、PLではベンチ。そうした一年を過ごし、残り契約があと1年となった時点でどうなるか。彼にとって、その来年がどういう一年になるかが問題だが、それは蓋を開けるまで誰にもわからないという。ガブリエルかベンジャミンのどちらかが、なんらかの理由で離脱したときに大活躍で本人も大満足みたいなことがあるかどうか。
彼のフランスNTデビューは、ヴァランと交代だった。NEXTヴァランとしては、象徴的なデビューだったかもしれない。
彼についてなにか書くときは毎度同じ結論ながら、アーセナルはここで手放しちゃいけない選手なんじゃないですかねえ。
ぺぺ発言について
フランス戦でゴール。右足? くしくもサリバがデビューした試合のオープナーはぺぺだった。
Nicolas Pépé gives Ivory Coast the lead against France!
Make sure you stay for the celebrations 🕺 pic.twitter.com/t1WCGLeJpk
— ESPN FC (@ESPNFC) March 25, 2022
この会見でぺぺについての質問が出るかなと思っていたら、どうも出なかったようだ。
というのも、彼は先日の試合のあと、アーセナルについて語った内容が話題になっていたから。
ぺぺ:ぼくはシーズン終了まで集中していく。クラブの目標であるCLへのチャレンジもある。そのあと、どうなるか観てみよう。
ミケル・アルテタはぼくに説明してくれたように、コーチはぼくの考えをわかっているし、どれだけハードに取り組んでいるかもわかっている。
コミュニケイションのこともある。ときどき、ランゲッジバリアでコミュニケイトが難しいことがある。ぼくにはタフなシーズンだった。
もちろん、プレイしないのはフラストレイティング。プレイせずに楽しむ選手はいないよ。でも、ぼくもコーチの決断は尊重しなければならないし、チームもいまうまくいっているから。
今後のアーセナルでの去就について問われたのだろうが、シーズン終了したら……とある意味退団の可能性を匂わせていること。
先日、アーセナルがリーズのラフィーニャを狙っているという報道もありで、ファンのあいだでは、もし彼に行くならぺぺの退団が見込まれているのでは?という憶測が広がっていた。
現在のぺぺのチームでの立場はあまりにも微妙すぎて、来シーズンもこれをつづけるのかと考えると、ちょっと想像しずらくはある。
それと、もうひとつこのコメントのなかで注目ポイントがあって、それは「ランゲッジバリアでコミュニケイションが」のくだり。彼が英語の習得に苦しんでいるということ?
それでもアーセナルにはフランス語話者は多いし、アルテタもフランス語が使えるはず。以前に、試合のなかで相手を混乱させるためにスペイン語とフランス語で選手に指示を出していたというエピソードも(笑い)。
試合のなかで、右サイドの連携ではトミヤスやセドリック、オーデガード、パーティあたり? 彼らとうまくコミュニケイトできないことに困っているのか。よくわからない。
この件がさらに興味深いのは、アルテタがつい先日、40才誕生日のインタヴューでことば(英語)の重要性についてアツく語っていたばかりだから。
アルテタ:彼らは、来たときには英語を話さないかもしれない。しかし、1ヶ月あるいは2ヶ月で何ができるか? こういうかもしれない「ぼくには難しいです」と。しかし、どれだけマジにやったのか? なぜなら、わたしにとっては言語というのは、完全に基礎なのだ。全員にとってのプラットフォームだ。そうでないのなら、誰もコミュニケイトできない。自分をわかってもらえないし、気づいてもらえない。自分のかたちをつくれないし、アイデンティティをつくれない。ドレッシングルームでもクラブのなかでも、コミュニケイトできないのならそうなる。それは不可能。
だから、わたしはいつも選手が来たときには強調するんだ。まずキミはことばを覚えねばならぬ。コミュニケイトできるようにならねばならぬ。アカデミー出身だろうとそうでなかろうと、そんなの関係ねえ。チームメイツと話せるようにならないと。それがわたしが話すことだ。わたしの意見ではそれが成功へのカギだから。
「ぼくには難しいっす」と云っているのは、もしかしてニコなのか? 実話?
そしてアルテタから「キミはまじめに勉強しているのか?」と詰問。真顔で。これは怖い先生。やめたくなっちゃう。
試合プレヴューはつぎにつづく。