試合の論点
FCチューリッヒ vs アーセナルのトーキングポインツ。
どうやって「試合を殺す」のか?
最初のゴールが15分に決まるまで、この試合のアーセナルの入り方は、ぜんぜんよくなかった。
いくつか単発でチャンスはつくったものの、相手のいわゆるミッドブロック/ディープブロックに対して、外側をU字にボールを回すばかりで、スピードもテンポもなく、物理的にも心理的にも相手の裏を取れない。
チューリッヒはボールを奪ってもチームとして満足にボールを前進させることもできず、アーセナルとのクオリティの差は歴然に観えた。しかし、そんな相手でもなかなか攻略できず手を焼く。あれはなんだろう? 集中力? あるいは、パーティやオーデガードのような積極的パッサーの不在の影響は感じた。
15分のマルキーニョスのゴールは、この試合でアーセナルがほぼ初めてのカウンターをばっちりハメたものだった。あそこは、完全にトランジションで、それまで崩すのに苦労した相手のブロックは存在せず。この試合のなかでは、そう何度もなかった機会だったろう。あれをきっちり決めたのはナイス。
しかし、その後もアーセナルはかなり支配的に試合を進めるものの、決定的になれず。終始ボールを持って攻めているはずなのに、いつまでもゴールができないと、疲労感とともに集中力とエナジーのレヴェルが落ちていき、試合に勝てるという信念も落ちていく。そして次第に勢いがなくなっていく。そんないやな空気が漂い始めたところで、藪から棒にペナルティから失点。この展開は、既視感がありすぎる。
この試合の感想をまとめるなら、やっぱりアーセナルは「支配を結果に変換できない」ということになるだろうか。最近のこのチームは試合後に、いつも「あと3-4点は取れた」みたいに後悔している。
この試合でもまた、いまも昔もあるアーセナルの課題があらためて浮き彫りになったように思う。
それこそ10年くらいまえの、アーセナルがもっとマシなフットボールをやっていた時代には、これがかなり大きな問題だったと思う(このまえアブー・ディアビのハイライト動画を観ていて印象に強く残っているのでよけいにそう思う)。そういう意味では、フットボール上の課題においても、徐々によかった時代に戻っている感覚はあるけれども。ほんの数年前は、これよりもっともっと低レヴェルのことで、ぼくらは嘆いていたんだから。
いくらボールを持って優勢でいても肝心のゴールが決まらないため、アルテタがよく云うところの、試合を殺すことができない。それによって、自分自身が苦しむ。
とはいえ、今回それでも苦しみつつもちゃんとオープンプレイからゴールを決めているし、マンUでの試合だって、あのマルティネリのゴールが認められて試合に勝っていれば、キラーインスティンクトがないなんて云わなくても済んでいたかもしれない。
しかし、とくにELグループステイジなどで、実力差がある相手と今後もこのような傾向の試合がつづくとなれば、やはり今回のような試合を戒めとせねばなるまい。
今回の試合だって結果は最小得点差しかないのだから、偶然敗けちゃったなんてことも起こりえた。そんな試合をやっていたら終わるまでまったく気を抜けず、毎回ミドウィークにチームは消耗して週末のPLを迎えるみたいなことになりかねない。
ゴール前で決定的になること。無慈悲な鉄槌を下すこと。そこにもっともっとこだわらないと。今回は、エンケティアもマルティネリもだいぶ良質なチャンスをお膳立てしてもらいながら、ショッツを外してしまっている。
以前と違い、良質なチャンスをたくさんつくれるようになったのはとてもポジティヴ。こんどは、それをゴールにコンヴァートしていかないと。それがわれわれにとって「つぎのレヴェル」というものだろう。
マルキーニョスが戦力になりそう
M Oliveira Alencar。誰だよ。。そういう登録名なのか。
きーにょす(こう書くとかわいい)こと、マルキーニョスがRWでスタート。アーセナルデビューを果たした。現在19才ながら、あのノイジーな環境のなかでもひるまず、だいぶ大人びた様子でプレイしていたのが印象的だった。G1 A1と結果も十分。
この試合の彼は、控えめに云ってもかなりよかったんじゃないか。想像以上によかった。
あのポジションに必要な意思決定も速く正しいし、ミスをやらず、プレイがシンプルなのが個人的にはよかった。RWとしては、ぺぺより安定しているように見える。今回のゴールは弱いほうの右足できれいに決めていたのも好印象。
また、エンケティアのゴールをアシストしたクロスも秀逸だったが、11分のクロスなんかもドンピシャだった。あれはマルティネリは決めないと。マーティン・キーオンは「彼はセルジ・グナブリタイプの選手のようだ」と述べていた。それも彼には大きな賛辞だろう。
何度か観せた、ボールへの執着もブラジル人ぽくていい。50/50で間に合わないかな、というところでも猛然と突っ込んでいく。ハイプレスもいとわないので、アルテタのスタイルにも合う。
彼のこのパフォーマンスにいちばん喜んでいるのは、アルテタかもしれない。
この夏は結局RWの補強に失敗したので、ここで彼がサカのバックアップとして戦力になるかどうかは、週3でプレイするなかではかなり重要だった。さすがに、PLの重要な場面でも起用できるところまで、彼がこの試合で納得させたとまでは思わないが、すくなくともアルテタは、彼の堂々たるプレイっぷりに安心したのではなかろうか。19才のデビュー戦としては、これ以上は望めないほどの好パフォーマンス。
そして、あの正確なクロスボールなど、まだ今後も驚かせてくれるかもしれない彼のポテンシャルも観えたと思う。それは、この試合の大きな収穫だった。
アーセナルのファンとしては、彼がゴールしたときの喜びようもうれしかった。デビュー&ゴール。ELのこの試合でそこまで……と思わないでもなかったけど、彼はよっぽどうれしかったんだろう。あれはアーセナル愛だと思っていんだよね?
彼が今度活躍すればするほど、ウォルヴズのファンは怒り狂う。それもまたよし。
マッティ・ターナーはやや不安定なデビュー
レノの「彼はマーケティング理由の獲得」発言もあったりで、ターナーにはけっこう期待していたのだが。
マルキーニョスが、満点デビューをやったのと比較すると、不満が残るパフォーマンスだったように思う。相手のxGを観ればわかるように、ほんとうにゴールが脅かされたことはほとんどなかったので、ショットストップのような彼の得意な技術を見せる機会はほとんどなかったが、何度か、GKとしてあるまじき痛いミステイクスをやらかしていた。失点しなくてよかった。
やっぱり彼はデビュー戦ですこし緊張していたのかもしれない。
アーセナルでは、ルナーソン、オコンコといった最近の若いGKが、せっかくめぐってきたチャンスでやらかしている。GKコーチからのプレッシャーがあるとか?
せっかくペナルティで見せ場をつくるチャンスもあったものの、セイヴならず。まあ、ペナルティストップできなかったといって、GKを責めるのはさすがに気の毒だろうが。
こちらは、逆にアルテタは彼に不安になったかもしれない。ラムズデイルになにかあって、PLでこの状態のターナーがプレイするとなれば、かなり怖い。
一般的に、カップ戦でセカンドGKをプレイさせるのは、ファーストGKを休ませるという理由より、彼にチャンスを与えてモティヴェイションを保つ理由のほうが大きいと思われるが、GKのパフォーマンスは試合の結果にとり決定的になりうる。
彼がこの試合で「準備不足」の烙印を押されて、つぎのELの試合でラムズデイルがプレイしようものなら、かなり残念だろう。
さすがに、グループステイジのようなラウンドでどうこうなるとは思えないが、仮につぎのEL試合でもターナーが不安定なプレイをつづけるなら、アルテタも考えなきゃいけなくなる。
試合後のプレス会見があれば、アルテタの感想も聞けただろうに。
Matt Turner is the first USA international to play for Arsenal in European competition.
— Orbinho (@Orbinho) September 8, 2022
せっかく歴史もつくったのだから、なんとかがんばってほしい。
彼だって、今年のワールドカップでUSMNTのNo.1としてプレイしたいのだから、本来はこんなところで足踏みしているわけにはいかないはず。
ファビオ・ヴィエラもよかった
ヴィエラもやっぱりよかったな。1点めのプリアシスト。エンケティアへの彼の気の利いたパスがなければ、マルキーニョスのゴールもなかったはず。
さすがにまだ強い自己主張は遠慮しているのか、同じ8としてはジャカより存在感があったかといえば、そうでもないだろうが、パスや動きにはやはり非凡なものがあると感じた。クリエイティヴ。一瞬のひらめきみたいなものを見せるタイプ。
また、彼のいいところはジャカやオーデガードにはあまりない(足りない)、積極的なボックスへの飛び込みだろう。ポルト時代は、自分でゴールも決めるMFだったということで、アーセナルとしては待望のゴールが取れるアタッキングMF。そこは注目して観ていた。
ぼくのメモによると19分に、サンビ・ロコンガがわりと得意としているOTTのスルーボールから、彼がダイアゴナルにボックスに走り込んでショットを試みている。GKのうえを行くロブのショットは外れてしまったが、彼のランとサンビのスルーボールは完全に合っていて、じつに惜しいシーンだった。
いっぽう、気になるところは、あのプレイスタイルだとファウルを受けやすいということ。今回も何度か足を蹴られて痛そうにしていた。
PLのDFだと躊躇なく蹴ってくるので、フィジカル面では適応に悩まされるかもしれない。
今後のヴィエラは、かなり楽しみ。彼のようなタイプには、もっと自己中心的にプレイしてほしい。
トミヤスの
昔のマンガのキャラみたいな前髪ちょろり。メモせずにいられなかった。
この試合については以上!
週末の試合が中止になる可能性が高いので、レギュラー組を試合に出してフィットネス調整という意見もありましたね。
女王陛下のアーセナル。
勝利を贈れて良かった。(T_T)
富安の髪型、ビーバップ・ハイスクールでも読んだのですかね?(^_^;)
中間トオルversionですね。
フル出場でしたが、堅実なパフォーマンスでしたね。
間は空きますが、10月の勝負どころに向けて、コンディションを大事にして欲しいです。
マルキーニョスは足元で受ける時に、ちゃんと前を向いて、すぐに相手に仕掛けられるようにマークから距離を取りながらポジショニングできるのがとても良いと思いました。サカもそれが素晴らしく、マルティネッリはあまり得意ではないやつ。クロスのタイミングも引っかからないように読まれにくいタイミング、モーションであげていたのも好感が持てた。なんというか大人しくなったサカみたいな印象を受けました。