試合の論点
サウサンプトン vs アーセナルのトーキングポインツ。
📺 Match action from our 1-1 @premierleague draw at Southampton#SOUARS pic.twitter.com/5RZRAUA08P
— Arsenal (@Arsenal) October 23, 2022
リードを追いつかれる苦い展開。試合中の急速なパフォーマンスの低下は疲労が原因か?
ずっと勝ち続けるのは無理なので、いずれどこかでポインツは落としたのだろう。が、それがよりによってこことはなあ。セインツは14位である(※この結果で15位へ)。また苦手神話がつづいてしまう。
アーセナルはここまで10戦9勝で、そのなかにはもっとタフな相手もいた。だから、ここでつまずいてしまったのは、よけいに残念だった。
が、終わってみればなんとなく、ここに至る伏線はあったような気もしている。
なぜならアーセナルは、先週のリーズでも今回と似たようなことをやってしまっているので。
リーズもセインツももちろん強かったが、どちらの試合も相手理由というよりは、自分たち理由のパフォーマンスに思える。本来のクオリティを出せていなかったことは、マネジャーも選手たちも試合後に認めているとおり。
であるならば、問題はどうしてこうしたアウトプットになってしまうかということ。2週連続で。
ひとつフォーカスされているのは、肉体的な疲労だ。先日のエントリにも貼ったように、アーセナルはPLでもっともスタートの選手を変えていないチーム。これは去年の8月からのデータだが、今年だけでもやはり上位なんじゃないだろうか。試合後のプレス会見でもチームの同じ8人がずっとスタートしているという質問もあった。毎試合観ていて、そういう実感もある。
アルテタはその質問に対し、彼らはほかの試合に出ていないというが、そんなことはないだろう。ミドウィークの試合でも、云うほど毎回ヘヴィにローテイションしているわけでもなく、必ず何人かはPLのレギュラーがスタートしたり、サブで出てくる。多くのレギュラーが完全に休んだりしない。
それだけ、アーセナルはレギュラー選手に対する依存度が高いし、彼らは肉体的にも疲労している。最近、若年選手の燃え尽きという意味でもっとも注目されているのは、21才のサカだろうが、彼だけじゃなく、みんな疲労しているだろう。
CLクラブはミドウィークも本気チームでプレイしているように観えるが、ビッグチームであればあるほどスクワッドデプスもある。上のデータでもシティもリヴァプールもPLのスターティングを変えまくっている。
それと、これは今回とくに感じたことだが、肉体的な疲労と同様、精神的な疲労もかなりあるように思えた。
ぼくはこのブログのために毎回ノートにメモを取りながら試合を観ているのだが(仕事みたいだろう?)、今回の最初の20分あたりは、チームも個人も際立ってすばらしいプレイの連続で、もうメモが追いつかないほどだった。
あの時間帯は、この10年のアーセナルでもベストパフォーマンスのひとつだったんじゃないだろうか。ボールを持って試合を完全に掌握したし、プレイスピードと意思決定で相手を確実に上回っていた。そして、ボールを失えばアグレッシヴなカウンタープレス。自分たちがやりたいことがすべてやれていた理想の時間。
そして、その後に相手の連続コーナーキックもあったりと勢いを奪われそうになりつつも、それでもレジリエントに勢いを維持しつづけた。
そこからの後半だ。
あれは、つまり前半のランニングハイ状態で、肉体的だけでなく、頭のほうもだいぶ疲弊してしまったんじゃないかと思えたのだ。プレッシャーでもなんでもないところから、パスをミスして簡単にボールを渡してしまうのは、つまり集中力の欠如であり、それは肉体だけでなく、知らずに頭のほうも疲れ切ってしまったから。そういう意味では、前半は良すぎた。
だから、やはりアーセナルはいい時間帯で試合を殺していなければいけなかった。前半で2点か3点入っていれば、あとはゆっくりやればよかった。それがクレヴァーな試合マネジメント。それが、まさに経験がものをいうところだと思う。が、それこそがいまこのチームに決定的に欠けている部分である。
今回は、それでも敗けなかったことが大きい。アルテタが「勝てないなら敗けないようにしなければ」と述べていたのは、まったく同意できる。長いシーズンのなかには、そういう試合もあるから。
だから、今回の試合もまた教訓として、今後の成長の糧にすればいい。
だが、それでも今後心配なのは、やはりスクワッドデプスだろう。
アーセナルはギリギリすぎる。このギリギリのチームでよくここまで結果を出してきたものだ。もちろん、いまチームのクオリティが上がっているのは大部分が補強戦略のおかげだから、そこは称賛されるべきだが、少数精鋭になってしまっている現状は、何かアクシデントがあればすぐにでも打撃を受けることは明白。非常に危険な状態だ。
それに加えて、アルテタが(レギュラー以外の)選手をあまり信用していないという問題もある。
もし、アルテタがもっとベンチの選手を信頼していたら、ここまでレギュラー選手を酷使していないはず。シーズン前には、アルテタは5サブズの恩恵についてよく述べていたが、彼が今シーズン実際の試合で5人使いきったことは何回あるだろう? 今回は3人である。それだけ、レギュラーを欠いたチームはバランスを欠くと思っている。
選手のフィットネス(健康)を考慮したサブというのは、アルテタはほとんど意識してないんじゃないか。もちろんそれだけ余裕のないタフな試合がつづいているのもあるんだろうが。
アルテタは、選手は年間70試合プレイできなきゃトップになれないと云っている。70試合はともかく、たしかにトップの選手は平気で3日ごとにプレイするのだから、それは正論かもしれない。だが、仮にそうだったとしても、自分たちの現実から目を背けてはいけない。
アーセナルがチームとして、今回の低パフォーマンスの原因を疲労に見つけるかどうかはわからないが、選手の肉体的/精神的な疲労がパフォーマンスにいい影響を及ぼさないことは自明である。
アルテタが、この結果をもって今後劇的にやりかたを変えないのであれば(変えないだろうが)、それでもチームのクオリティがキープできるよう、冬にはかなり積極的補強をしなければならない。これはPLでの結果にも関わる重大な問題だ。
いまは幸いライヴァルたちが、毎週続々とポインツを落としているが、アーセナルだってキープレイヤーたちを失えば、いつその仲間入りをしてもおかしくない。
もしかしたらクラブは、積極的補強は、CLを決めたフェイズ(来シーズン)からと考えているかもしれない。当初の計画としてはそのほうが自然ではある。だが、そのおかげで今シーズンのいまここにあるチャンスを逃すのはもったいなさすぎる。
ケガ人のおかげで、シーズン後半で失速するチームなんて絶対に観たくないので、冬には、最低限以上の補強をしてもらわないといけません。
ジェズースのパフォーマンスが落ちている?
この試合でジェズースは90分プレイして、G+Aなし。SofaScoreのレイティングが5.8で両チーム合わせてワースト。
シーズンここまでG5で、いまも彼はチームのリーディングスコアラーながら、最後のゴールは10月1日のNLD(H)。そのあとのリヴァプールではひとつアシストしているものの、直近4試合でゴールなし。シーズン開始当初は、ゴールデンブーツもありえるなんて話も出ていたのが、最近はめっきり静かになってしまった。
この試合でもそうだったように、チャンスはあるし、なぜそれが決まらない?みたいなショッツもあるので、そこまで深刻になる必要はないかもしれないが、さすがに一ヶ月ちかくゴールがないとなれば、心配にはなる。
Scott Willisは、彼はリヴァプールで頭を打ったあとなにか問題があるんじゃないかと指摘していた。Arseblogより引用。
ウィリス:リヴァプールでの試合から、ジェズースはちょっと落ちているように観える。わたしは医者でもなんでもないが、もしかしたら彼は、あの試合で頭を打ってから100%になっていないんじゃないか。
彼は、シーズン当初に観せていたレヴェルのサーヴィスも観られなくなってきている。リーズ以前はボックス内タッチが平均10.7/試合あったのに対し、そのあとのリーズとセインツの2試合では合わせて9しかない。
それでも彼は、この試合でショッツ4と0.6xGはあったが、試合が進むにつれてボックスから離れていくのはよくなかった。実際、この試合で彼は、試合のなかに入っていこうと、ますます深いところへ落ちていくように観えた。最終的には、ファイナルサードよりもミドルサードでのタッチのほうが多かった。
それはつまり、ファイナルサードだと毎回ベアハグされるからかもしれないが。
“Bear hug” Wikipediaより。ウケる。
今回もショットがちょっと当たりどころが違えば入っていたかもしれないし、ボックスでベアハグされたアレでペナルティからゴールしていたかもしれない。あまり心配はしていない。だが、つぎのEL PSV(A)は完全に休ませてほしいような。
レフトバックどうすんだ問題&ジンチェンコ待望論
なかなかサブの選手を信頼しないアルテタが、トミヤスをかなり信頼をしてくれている様子を観るのは、素直にうれしい。
が、KTの気持ちを考えると、少々複雑である。彼は、ジンチェンコがいない状況で、さらにRBのトミヤスにポジションを奪われそうになっているのだから。この試合で、それが決定的になったかどうか。
リヴァプールのときに、KTはアルテタから「トミヤスを選んだのは戦術的理由」と説明したようだが、逆にアルテタが戦術的じゃないときなどない。彼はいつだって戦術的である。だから、より戦術的に使えるトミヤスが重宝される。
アーセナルでKTの未来はあるのか。これからどうなるか観てみるしかない。
ところで、トミヤスのスタートについては、試合後にArseblogのひとが、この試合ならトミーよりKTのほうがよかったと云っていたのがなんとなく気になった。
トミヤスはもちろん今回も悪くなかったが(失点のところはわからん)、オーヴァラップするKTとトミーはまったくタイプが違う。この試合にはKTのほうが適していたという意見もわからなくもない。
フルバックのトミヤスは、やっぱりどちらかといえば攻撃よりも守備を重視したいオプションだろう。
70分、KTのサブで交代がトミヤスでなくホワイトが選ばれたことは、ちょっとした驚きがあったが(試合中にトミーをわざわざRBへコンヴァートした)、あの場面でアルテタはバランスとしてトミヤスの守備を選んだということなんだろう。それがこの試合にとってよかったのか悪かったのかはよくわからない。
こう考えると、ジンチェンコ、KT、トミヤスで、同じLBとしてもそれぞれ個性が違うので、なかなかおもしろい。
総合力には、そこまで大きな差はなくて、いろんなアビリティの振られ方が違う。そして、残念なことにKTがもっとも高い値を示しているオーヴァラッピングは、アルテタはあまり重視していない。アルテタがLBにもっとも望む「意思決定」「パス」「ヴィジョン」「落ち着き」みたいなアビリティをハイレヴェルで備えているのは、やはりジンチェンコだろう。
彼の復帰が待たれるのだよなあ。
レフェリー???
ベアハグ。アツい抱擁。このセインツの6番はずっとジェズースとやりあってたけど、彼はここでペナルティで黙らせておくべきだった。今シーズンからPLに来た選手らしいが、アグレッシヴなプレイにも限度があると教えてやらねばならなかった。
ところで、この事案の起きたタイミング(12分)が、ジャカのゴール(10分)の直後だったというのが、この判定に影響を与えたんじゃないかと思わずにいられない。
あそこでペナルティなら、アーセナルに与える好影響はかなりあったはずで、それがレフの逆バイアスになったとか。あれがもっと落ち着いた時間帯に起きていたらと考えると、やっぱりペナルティになりそうに思える。あんなハグしたらダメでしょ。
今回のレフは、やけにサカに厳しいとか、セインツのラフプレイに優しいとか、問題ありげな判定がいくつもあったなかでは、これがいちばん笑えた。いや笑えない。
0.0001 second advantage pic.twitter.com/grbsimcaR5
— 14 (@iOkmm) October 23, 2022
いや、そのアドヴァンテッジ短すぎw
PLはとんでもなレフェリーばっかだね。だから、そういうもうひとり敵がいるようななかでも、勝てるようにならないと。
その他試合について
- ジャカ弱足でズドン。最近ほんとみんな弱足を使っているのでチェックしてほしい。あれは、みんな意識してんじゃないの
- ジャカはあのゴールの前にも左足のフルパワーでのショットがあった。ストライカー
- サリバが珍しいミス。あわや
- KTが喉輪?でダウン。なぜかセットピースコーチがイエローカード
- KT→MØの幻ゴール。あれが決まってれば最高だった
- ヴィエラはまたしても試合に入って行けず
- パーティ?
- 88分フィオ・ウォルコットのダイヴ。ダイヴ下手
この試合については以上
Southampton fans celebrate like they’ve won the cup. Looking forward to the celebration police making a big deal of that all week.
— Orbinho (@Orbinho) October 23, 2022
セレブレイションポリス出動せよ。
ティアニーやシーズン当初のジンチェンコの使われ方だと、左サイドの三者(+ガブリエルも)がポジションを入れ替え続けないといけないので、うまくいけば流動的になりますが、やはり全員が完璧にいるべき場所にいつもいれるわけではないので、機能しないことも多々あったように見えました。一方で、冨安はビルドアップ時に内外高低をタイミングよく取れて、ジャカとマルティネッリという決してポジションチェンジが上手いわけではない2人の負担を減らしているから、必ずしも冨安の功績は守備だけに重点が置かれるものではないと思います。左サイドの人員が重くなるというのは良くないとは思いますが。
全体として重要なのは縦に急がないことですね。難易度が高いプレーを選ぶ頻度が多くて、もっとシンプルに横にふりつつ、サイドから数的優位を作ればよい。今回もうまくいったシーンはサイドからが大半だったと思います。ジェズスも真ん中で受けようとし過ぎ(あるいはそこで持ち過ぎ)ていて、適度にサイドに流れればいい。プレーの精度とというよりも、そうしたプレーに対する考え方に、疲れ?、若さ?、あるいはレフェリングからくる苛立ち、なのかが見えた気がします。もっと簡単でいい。ヴィエイラが試合にうまく入れなかったのも、状況が整理されたなかで、気の利くポジションを取り続けられるという彼の良さが、終盤の状況には合ってなかったということだと思います。
審判にはムカつくし、久々に消化不良だけど、そこまで落ち込む内容ではなかったですし、アルテタにも選手たちにも必要以上に凹まないでほしいです。
もうずっと前から言われてることですが、アルテタの試合中のシステムチェンジ含めた修正力、選手カードの切り方は一向に良くならないですね 。
交代カードの質がって言われるけど、エメリ時代はお世辞にも良いとは言えないカード、ゲンドゥージやコラシナツ、イウォビなんかを途中投入してシステムも流れも変えられてたと思うんですがね。悪くなってからはあれですが。この辺が成長してくればミケルも一流マネージャの仲間入りでしょうか。
日本代表の某監督みたいに同じポジションの選手をただ変えるだけのカードは切ってほしく無いもんです。おもんないし。