試合の論点
アーセナル vs ウェストハムのトーキングポインツ。
完璧リスタート。トップをキープ&暫定ポインツで差を開く
ワールドカップで中断されたリーグでの勢いを取り戻すために、われらに絶対に必要だった勝利。今回はそれをもぎ取ることができたのが最大の収穫。
前半スタート直後のゴールをVARで取り消され、ボールは持つもののWHUの硬いブロックをこじ開けられず、事故のようなサリバのプレイからペナルティ&失点したときは、ベンチの薄さを思い出し嫌な予感がしたものだった。
だが、それも杞憂。後半52分にオーデガードのスーパースルーボール(※本人はシュートだったと謙遜)からゴールすると、15分のあいだにもう2点を追加。試合を決めてしまった。
昨シーズンのアーセナルが悩んだ逆転できない症候群。今回は、みごとなレジリエンスを観せた。
アルテタやオーデガードが試合後に述べているように、前半と同じことを後半も継続しようとして、結局そのやりかたで硬いブロックをこじ開けた。力でねじ伏せた・こじ開けたという感じが非常にした。
ちょうどワールドカップ前のウォルヴズ戦のレヴューで、ぼくは「アーセナルのシティ化」について書いたが、この試合はまさにそんな感じだった。シティにプレイが似ているというよりは、やりかたを押し通すという意味で。
もういまのアーセナルのプレイのやりかた、アルテタのチームの攻撃スタイルというのは、どんな相手だって知っていて、その対策を万全にしてくる。パーク・ザ・バスもそのひとつ。この試合でも、WHUは時間帯によってはオウンサードに11人が入るみたいに守っていた。
そんななか、フロント5におけるサカ(RW)のプレイなどは、もう愚直なまでにパターン化されていると思えるほど、毎回同じように始める。相手もそれはわかっている。だが止められない。選手個人のクオリティとチームワークのクオリティが凌駕する。これはもうグアルディオラのチームみたいではありませんか。
今回の後半は、それがまさに出ていたように思える。同じことを何度も何度も繰り返して、最後には壁を破る。相手はアーセナルが何をやってくるのか、わかっていても止められない。
この試合の3ポインツでアーセナルはPLで最初に40ptsに到達。試合がなかったシティをかわし2位に浮上したニューカッスルに7ポインツ差。ちょっとした独走の趣さえある。
シーズン後半に向けて、アーセナルには内容も結果も最高の試合になった。
Arsenal’s last 10 Premier League home games:
WWWWWWWWWW
◉ Goals: 32
◉ Conceded: 10
◉ Clean sheets: 1And Arséne Wenger was there to enjoy the latest. ❤️ pic.twitter.com/JZKsueR0yp
— Squawka (@Squawka) December 26, 2022
ところで、この勝利でホーム10連勝はいいが、クリンシートがこのうちひとつしかないのが玉にキズ。今後、不用意な失点はなんとかしたいところ。
ジェズース不在の懸念を払拭するアタッカーのパフォーマンス
マルティネリG1、エンケティアG1、サカG1、そしてオーデガードA2。
フロントの全員がゴール関与・共有するという、いかにもいまのアーセナルを象徴するような試合結果だった。ひとりの選手に頼らないアウトプッツ。
ジェズース不在の悪影響がどれだけあるのかは、この試合の注目ポインツのひとつだったが、結局それを感じたファンはほとんどいなかったんじゃないか。痛々しい松葉づえ姿で試合を眺めていたジェズースも、きっと安心したことだろう。安心どころか、ちょっと不安になった可能性だってある。なんといってもエディがゴールしてしまったのだから。
まったくもって、彼に求められていたこのステップアップ。しかも、あんなファインゴール。自分はあれだけゴール不足に悩まされていたのに、今シーズンPLで初スタートのエディがあっさりと決めてしまった。それもフットボールか。
ちなみにエディは、アーセナルの直近11スタート(すべてのコンペティション)で11ゴールという化け物ぶり。さらに11ゴールはSoT16から生まれているというMr. クリニカルフィニッシャー。ミケルが絶賛するわけである。
11/11 – Eddie Nketiah has scored 11 goals in his last 11 starts for Arsenal in all competitions at the Emirates, notching his 11 goals from just 16 shots on target. Clinical. pic.twitter.com/0V7QEdy1SZ
— OptaJoe (@OptaJoe) December 26, 2022
今回の彼のゴールは瞬時の判断でターンからの、ファーサイド内側のGKの手の届かないギリギリへ決めるという、いかにもストライカー然としたフィニッシュだった。
エディのプレッシャーから解放されたようなゴールセレブレイションの表情がとても印象的だった。彼のクオリティを疑う声は根強かったし、今後もあるだろう。だから、これもまたレデンプション。おっさんはけっこう泣けたな。
試合後の彼の「自分は(ジェズースの)代替じゃない」コメントで、みんな目を覚ましてくれるといいなと思う。おれは目が覚めた。
ジェズースの代わりは誰にもできないのは明らかで、エディがそのままそれをやる必要もない。今回はゴール貢献までしてくれたし、ファンとしては大いに安心させられた。エディ・エンケティアとして、このチームに貢献してくれればいい。ジェズースが戻ったときにポジションを争うような存在を目指して、これからもどうぞがんばっていただきたい。
マルティネリに関しては、正直この試合の彼は疲労だったのか、集中を欠いていた印象があった。クロスやパスの精度が低く、出すべきじゃない(我慢して後ろに戻すことも選択肢)ときに通りそうもないパスを出したり。だがそれは、ぼくがメモに「GMがよくない」と書いた直後だった。左足からニアを抜くゴール。また弱足。あれが入るとは。
あのシーンをハイライトで見直すと、ネリが右足だと知っているDFはカットインサイドのほうを警戒して、一瞬フェイクにひっかかる。そのすきを突いた左足でのみごとなショット。サカもネリも弱足を積極的に使おうとしている様子は以前から観られたが、今回はそれがまんまと成功していた。4分のサカの幻ゴールも右足だったかも。彼らが単足から両足に進化すると、攻撃の選手としてさらなる脅威になりそうである。
マルティネリのゴールといえば指摘しておかねばならないのは、みんな気づいただろう、サカの貢献。
あのゴールの起点はサカとデクラン・ライスのボールの奪い合いにサカが勝ったところから始まるのだよね。サカの強さがなければ、あのゴールは生まれなかった。サカは特別フィジカルな印象はないが、いつの間にあんな強さを身につけていたのだろう(ライスに勝った身体の強さはティエリ・アンリにもツッコまれていた)。デクラン・ライスは、現在80mの価値があるPLを代表するCMで、そんな選手にあのように勝つとは。いつもひどいファウルばかりされているから?
サカもこちらの認識が追いつかないほど、どんどん進化している。毎試合で、進化が目に観えるみたいだ。
試合後のtweetもトリオで並んだ。
VAR?
今回もVARで重要なレフェリングがいくつかあった。が、議論になるようなものはなかったか。
まず4分のサカのゴール。
あれはリアルタイムで観ていて、試合が終わるまでよくわからなかったが、結局オーデガードのスルーボールがエンケティアに渡るまえ、サカの足にかすってしまっていたらしい。その時点でエンケティアがオフサイドポジションにいたため、議論の余地なし。
それと24分のサリバのペナルティ。
あれも、ソフトな接触といっても、サリバの足が相手ランナーの足に当たっているのはたしかっぽいので、まあしゃあない。逆の立場なら「あれは120%ペンです」と云っているようなプレイ。文句なし。
あとは48分の相手選手のハンドボール。
マイケル・オリヴァーがハンボーでペナルティを宣告しつつ、結局VARで覆った。おとがめなし。
今回に限っては、VAR判定にもとくに文句はない。文句を云わずに済むなら、そのほうがいいやね。
ジンチェンコが復帰
心強い。やっぱり彼のピッチ中央での存在感は、KTとは違うものだな。
彼がボールを求めてパーティの真ん前に立ったときは、オーデガードがもうひとり増えたみたいな感覚になった。自分がチームプレイの中心になりたいのを隠さないというか。ゲイムメイキングする気マンマンマン。
その点、KTはまだ使われる側という気持ちがあるように思う。まあ、それも選手の個性。
つぎの試合あたりから、LBは選手が入れ替わるかもしれない。
この試合については以上
正にビッグクラブ。
最高の年末、今年と最後のアーセナルで、ナイスゲームでした。
来年もよろしくお願いしますm(__)m