試合の論点
アーセナル vs ノッティンガム・フォレストのトーキングポインツ。
No place like home ❤️
Check out the highlights from our opening-day win against Nottingham Forest 👇 pic.twitter.com/JBk4BUOMRo
— Arsenal (@Arsenal) August 12, 2023
サカのゴール。にやにやしちゃう。
いきなり3-1-6。今シーズンのアルテタの戦術的柔軟性をかいまみる
今回のガブリエルのベンチが戦術的な理由だったというのは、正直かなり驚いた。
これまで彼はこのチームのディフェンスラインの柱みたいな存在であり、アルテタもそうとう信頼していると思っていたから。しかも、このやりかたは、プリシーズンでも観たことのないものだった。
各所で議論されている、3-1-6フォーメイション(あるいは3-1-3-3)はこんな感じか。@Orbinhoは「往年のアヤックスのよう」と述べていた。そうなの?
ガブリエルのようなレギュラーCBを外して、パーティのようなCDMをRB(インヴァート)として使うとは、ミケルはますますペップっぽくなったという声も見かけた。ほう。こういうとき、ほかのチームのことをまったく知らないのが困る。
このシステムでは、基本的に、ティンバーはインヴァートせず、LCBに残ってサリバを中心にしたバック3を形成。パーティのローン6に、ライスとオーデガードが左右のハーフスペイスにいて、ハヴァーツの基本ポジションはおそらく中央。8のふたりは明らかに左右の持ち場があったのは、ヒートマップにも現れている。このMF3人のなかではハヴァーツがもっともポジショニングの自由があったかもしれない。いろいろな場所に顔を出していた印象がある。
そしてフロントは、中央にエンケティアで、左右のタッチラインにマルティネリとサカのウィンガーふたり。
フロント6は、相手のバック5をオーヴァロードするためのプラン。
このなかでとくに興味深い動きをしていたのが、やはりライスか。彼は去年までのジャカロールをやりつつ、ビルドアップではCBを助けにディフェンスラインに入ることもあったし、攻撃にも積極的(SoTが3)。ひとつでもゴールが決まっていれば最高だった。もちろん、彼だけでなく、各所でのポジションの入れ替えもピッチ全体で頻繁に行われる。
3-1-6の解説については、以下のtwスレッドがたいへんに参考になった。このひとのtwはこのブログでも何度か取り上げたことがあるが、最近はよくぼくのTLにも流れてくるようになった。
Arsenal played Champaign football today in Arteta’s new 3-1-6.
Tactically, they outclassed Nottingham Forest. Don’t let xG without context or a nervy ending make you think otherwise for a single second.
Below, in an in-depth thread, I assess their performance & future.
THREAD! pic.twitter.com/zOFkvCa506
— EBL (@EBL2017) August 12, 2023
アルテタが今回のセットアップにした意図は、フォレストがロウブロック&非ハイプレスのチームだとわかっていたからだという。
たしかに、それについては試合後の会見でもアルテタが「相手の守備を考慮した」と述べている。だから、どのチームでもこのようにセットアップするかはわからない。コミュニティ・シールドでのそれとはあきらかに違っていた。
しかし、ここで重要なことは、アルテタが最近よく述べているように、相手が事前に予測できないやりかたを実際の本番で実践しようとしていることだろうと思う。そういう試みを、シーズン最初の試合で観ることができた。このチームにおいて予測可能性は課題でもあったので、これは明らかな進歩に思える。
そして今回はかなり効果があった。実際おそらくクーパーはこのやりかたを想定しておらず、結局前半にはアーセナルに80%以上というかなり極端なポゼッションを許すことになった。
このチームは、ライス(6/8)やハヴァーツ(8/9)の役割を試合によって変えることができるし、左右のフルバックがどちらもインヴァートできる。バック4/バック3はもちろんのこと、今回のようにフロント5/フロント6のオプションも。左右のワイドで脅威になれるジェズースが戻れば、フロントの流動性もより活性化しそうだ。ラムズデイル(あるいはラヤ)の配球だって、ロングかショートかこれからももっと予測できないようにしていくのだろう。
それによって、相手はアーセナルに対しどんなアプローチをすべきなのか頭を悩ませることになる。
近年のアーセナルのリクルートメントが、ずっと複数ポジション/ロールでプレイできるヴァーサタイルな選手にこだわっていたのは、結局こういう未来を思い描いていたからに違いない。そのことがいまだんだんと理解できるようになってきた。
今シーズンは、毎試合でチームの変化に注目していくという新しい楽しみができた。ナイス。
※アーセナルにおける3-1-6のフロント6は、20-21シーズンのアルテタの初年度にも観られた時期があったようで、このブログでも書いていた(自分でも忘れていた)。あのときとは完成度がだいぶ違う。
ハヴァーツウォッチ
彼は9でスタートするというぼくの予想は外れたけども、いずれにせよスターティングメンバーから外れることはなかった。やはりアルテタからの信頼はかなりある。
実際この試合の彼のパフォーマンスはどうだっただろう。
ファンのあいだでも、試合後すごくよかったと評価するひともいるし、いっぽうでまだ懐疑的なひとの見方を変えるところまでは行ってないというのが全体的な感想か。空中戦(3/7)はもうちょいがんばってほしかった。
Kai Havertz stats against Nottingham Forest
51 – Pass Attempts 88.2%
3 – Prog Passes
2 – Key Passes
0.22 – xA
2 – Shots
0.12 – xG
4 – Fouled
6 – Prog Carries
10 – Prog Passes Received
5 – Touches in the box
1 – Tackles
2 – Fouls
1 – Interceptions
3 – Aerial Duel Won (of 7) pic.twitter.com/MiBU3RmAuQ— Scott Willis (@scottjwillis) August 12, 2023
褒めているひとの評価ポインツは、クレヴァーなポジショニングだったり、相手DFを引き連れてスペイスをつくるおとりのランだったり、守備のハードワーク。それもまあ通好みなポインツだよなあと。
彼は、あいかわらず守備貢献も素晴らしいが、攻撃的なMFとしてはゴールやアシストのようなわかりやすい結果を残さないと、チェルシー時代に培ったマイナス評価はなかなか覆せないのかもしれない。彼には、オーデガードやライスのようなオーラ?がないからとくにそう思う。
あらためて彼の今回のプレイを確認できないかYouTubeで探していて、ひさしぶりにAFTVのファン反応を観てしまった。ハヴァーツのアンチは、否定したいから否定しているみたいな支離滅裂なロジックだったりして(ハヴァーツはストライカーじゃない!ハードワーカーじゃない!とか)、ああいうのはうんざりしてしまうな。
ということで、ぼく自身も彼についてはまだなにか確信できているわけではないが、今後も彼を気長に見守っていきたいと思う。いずれにしても、彼には成功してもらわねばならないのだから。
今回の試合後、ジェイムズ・マクニコラスがすごくいいことを云っていたので、最後にそれを引用しておきたい。
Arsenal still look like a work-in-progress to me. That may be no bad thing.
If the last two years have taught us anything it’s that we want them to hit their peak in May, not August.
— gunnerblog (@gunnerblog) August 12, 2023
マクニコラス(gunnerblog):わたしには、アーセナルはまだ発展途上(work-in-progress)に観える。それも悪いことじゃないかもだけど。
わたしたちがこの2年で得た教訓があるとしたら、チームがピークがに達してほしいのは5月なんだよね。8月じゃなく。
昨シーズンのことを考えると、ワールドカップを堺にして守備の成績がぐっと落ち込んだりしていた。じつは不調に陥った直接の原因だと思われているサリバの離脱前にそういう傾向があったというのは、そのとき話題にもなった。
そしてタイトルを争っていたシティはといえば、彼らのシーズン終盤のランは見事だっただろう。シーズン全体を見れば、終盤をターゲットにフォームを上げたようなもの。アーセナルのフォーム管理とはまさに対照的だった。もちろん、アーセナルはただでさえ薄いデプスのスクワッドで余裕もなく、ずっとギリギリで戦っていたのだから、それも無理もないことだった。彼らとは最初からキャパシティが違っていた。
アーセナルは、長いあいだ「ハイクオリティの選手」がいないことが根源的な悩みだっただろうと思う。チームにいる数少ない優秀な選手たちは、毎年のように売られてしまっていたし、そもそもトップクラブにくらべてスタンダードがかなり下がっていただろう。レアル、バルサ、PSG、バイエルン、PLのライヴァルたちとくらべて、アーセナルのスクワッドのクオリティが低いのは当然だった。
だが、いまは選手の総MVが€1bn超えで世界でトップになってしまったりして、もはやそこは問題ではなくなってしまった。いまや、チームフォームのピーク時期について語られたりしている。これこそ隔世の感がある。つぎのフェイズに進んでいる。
今回のノッティンガム・フォレスト戦は、アーセナルの華々しいスタートを期待していたから、2-1で勝ったとはいえ、あの内容には若干フラストレイションはたまっているが、チームのこともハヴァーツのことも、ぼくらもきっと気長に観ていく必要があるんだろう。シーズンは長いから。選手もフィットネスが100%じゃないのは、サリバだけじゃないはず。
今年は、これからチームがどんどんよくなっていくのを毎週目撃する。なんという楽しみ。PLもCLも勝てるのでは?
この試合については以上
さて、つぎの試合は来週のPLクリスタル・パレス(A)。去年の初戦は勝った試合。なかなかタフな相手だろう。
アーセナルはその試合までに、ティンバー、ジンチェンコ、ジェズースなど、けが人たちがどうなっているかが気になるところ。ティンバーのケガの具合は、KTの去就に影響あるかも?
あとはもちろん、移籍関連。ここ数日のアーセナル界隈でもいろいろ動きがあるから、それもまとめておきたい。
そうそう、アーセナル関係ないけど、カイセドの騒動にはかなり楽しませてもらっている。あんなことあるんだねえ。リヴァプールとブライトンが英国記録の移籍金(£110m)で合意したのに、本人はチェルシーにしか行かないと宣言。リヴァプールは目が点。
そしてチェルシーはカイセドをあきらめてTyler Adamsを買うことが決まっていたのに、急遽それをとりやめてカイセドを買う資金をかき集めているという。ひどい裏切り行為を観た気がするな。英国フットボール史に残りそうなおもしろ事案になった。他人事でよかった。
ではまた。COYG!
ハヴァーツはまだまだですかねぇ
9番の位置になった時はそこそこ動けてましたけど、何か周りとの連携がイマイチと言うか
ライスやティンバーがあっさり馴染んだの見ると物足りなくなるのもわかります
エディは今回仕事しましたけどジェズスいないなら9番はトロサールのが見たいかなぁ
まずは一勝、無敗継続でヨシ!
警戒しててあのパターンしかないのに早速失点してるのは何だかなあって感じでした。
攻撃に関しては上手くいってない部分は伸び代なんでしょうね。きっと。
相変わらずのサブ下手には全く同意です。
駒の配置は柔軟でも駒の選択は動脈硬化でまたボロが出そう。
スタメンじゃなければ意味が無いというバログンもきっと同じ気持ちなんでしょうね。
普段の可変の仕方だと2CBの左CBから3CBの左CBになるけど、今回は左CBから真ん中のCBに移動しなくてはならなくなるから、よりプレス耐性の高いサリバになったのでは。ティンバーの位置にもガブリエルはおけるけど、攻撃のことを考えればティンバーか冨安というチョイスなのかな。そこまで意外ではない、妥当な選択だとは思いました。まだプレシーズン継続というか、序盤は色々試したいのでしょうかね。その志は買いたい。ただ攻撃の枚数を増やした効果はこの試合そこまで見えませんでした。ライスが上がって、その代わりにウーデゴールやハヴァーツが下がってきてしまってはあまり意味がない。攻撃が何枚いようが、テンポ良くボールを回し続けないと相手はそこまで怖くない。ポジショニングが曖昧な選手のせいで、パスの出しどころを迷う場面が多かったように見えました。新加入組ではハヴァーツがむしろ一番気の利くポジショニングができていて、ライス、ティンバーはまだまだという気がしました。ライスは気合入れて動きすぎ、ティンバーは自分の役割をまだそこまで理解していない。
まずは3ポイントが一番。サカやネリにオーバーロードするパターンがもっとあれば彼らが生きると思うのですが、ホワイトの一度だけだったような。エディがらしいゴール決めたので、ひとまず序盤は彼の得点力に期待ですかね・・・COYG