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【マッチレビュー】23/24 EPL チェルシー vs アーセナル(21/Oct/2023)勝てないなら敗けないこと

試合の論点

チェルシー vs アーセナルのトーキングポインツ。

こういう日もある? オーデガード、ジンチェンコの不調?

2-0の劣勢からあの終盤で追いついた試合展開からして、われらがなんとかポイントを持ち帰れたことはポジティヴではある。最後まであきらめないレジリエンスがあったし、結果的にPL無敗も継続できた。インヴィンシヴルシーズンにも、最後の最後で追いつくみたいな試合あったよね?

だがしかし、そもそもあのパフォーマンスは一体なんだったのだろうと思ってしまう。ナショナルチームでの疲労とか、油断とか。SBで油断? それはないか。長いシーズンでこういう試合もある、みたいに思っておけばいいんだろうか。

アーセナルは今シーズン悪いパフォーマンスだった試合が何度かあるが、今回はさすがにワーストパフォーマンス認定されてもしかたないだろう。

とくに前半。いくらボールを持ってもバックラインで回すだけで試合をコントロールしている感が皆無。デュエルでは負けるし、パスはつながらず、なんというかグルーヴがない。ビルドアップがままならず、プレイが循環しない。密集地帯で50/50でボールがそこから転がり出ると、全部チェルシーのボールになるみたいな感じもあった。ふだんだと、そういうところでボールを拾って、リズムとテンポをつかんでいくような感覚があるが、その逆というか。

そんなチームがなかなか調子に乗れないなかで選手では、HTにファンからの不満の声が多かったのはやっぱりオーデガードとジンチェンコ。あとジョルジーニョも。あんなふうにミドフィールドが機能しなければ、当然批判されるだろう。前半、ミドフィールドは完全にチェルシーに支配されたなんてことも云われていた。実際、彼らの戦術的意図もそこにあったんだろう。

この試合のオーデガードはまったくどうしちゃったのか。78分のプレイでタッチが36。ポゼッションで圧倒されたのならともかく、チームとしてあれだけのポゼッションがあったのに。ぼくのメモによれば、39分のチャンスでジェズースとの息の合わないプレイにスタンドからため息がもれたが、そこはなんだかこの試合の彼の波長の合わなさを象徴しているように思えた。

彼のような安定してハイレヴェルでプレイしている選手が、あんなふうに目立たないのはちょっとめずらしいと思う。アーセナル加入当初の数ヶ月やや停滞していたあの時期以来かもしれない。

そういえば、たしか後半のどこかだったと思うが、ビルドアップに苦しむバックラインを助けにオーデガードが深く下がっていったときがあった。コメンタリによれば、あれはアルテタがタッチラインから指示を出していたようで、そういうカメラに映らない部分は、現場にいない日本の中継コメンタリだと伝えてくれないんじゃないかと。ちょっと話が逸れた。

あとは、ジンチェンコ。今回は前半だけで下げられてしまった。あれは正直ぼくには妥当な決断に思えた。

彼はちょっとここ最近は悪い部分が目立ってきているような印象を受ける。この試合だとSterlingとの1 v 1には心配があったし、10分というかなり早い時間にカードももらってしまっていた。試合序盤では、おかしなパスミスも。

基本的には、彼のパスのヴィジョンは相変わらず非凡だし、彼がいるといないではチームプレイのクオリティに差が出るくらいの存在感はある。だが、攻守の全体で観たときには若干のとレイドオフが発生するというか。技術的には彼にやや劣るだろうトミヤスのほうが、守備能力が高い分、DF(FB)としては総合的に安心できるようなところもある。

最近どこかでイヤな記事を読んだんだけど、それによればジンチェンコがペップの下でレギュラーを確保できなかったのは、その(いまアーセナルで起きている問題)せいだとかなんとか。だからティンバーを買ったとかなんとか。うろおぼえ。

こういうミドフィールドで好き勝手できない試合で、彼の悪い部分が出やすかったということなのかもしれない。

……とまあこんな調子で、チーム全体に血がめぐらず、観ていてたいそうイライラさせられた。チェルシーが特別よかったとは思わないので(あの2点はどちらも彼らが実力で奪ったというものじゃない)、つまりわれらは自分たちで自分たちの首をしめてしまっていたのだった。

アーセナルのゴールが決まる終盤まで非常にフラストレイションのたまる内容で、最後には1ポイントで十分満足できてしまうような試合だったという。

結果だけ観れば失望しかないけど、内容を観ていれば、敗けなくてほんとによかったと思える。

すこしまえ、ミケル・アルテタが云いました。「勝てないなら敗けないこと」。悪いときにも悪いときなりで、最低限のパフォーマンスをやる。今回はそれを実践したところがある。それに相手と場所を考えれば、2-0から追いつくのはやはり立派ではある。

そういうことができるのが強いチーム。そうポジティヴにとらえておこうか。

ラヤとラムズデイルのGK問題は終わらない

ラヤは今回も危なかったなあ。

56分。相手が真ん前にいるのに、不用意なショートパス。即座に奪われて危機的状況に。なんとか自分でセイヴできたからよかったが、致命傷になりかねないエラーだった。

じつは、ラヤが問題を起こすのはこれで3試合連続だ。

CLランスではトミヤスへのミドルレンジのパスを奪われて失点につながった(ここは彼の過失はそこまで大きくはないが)。そしてシティでのアレ。アルテタの指示だったというボールを持ちすぎた結果、クリアランスのボールがディフレクションであわやゴールに。そして今回のこれ。

彼がラムズデイルに変わってプレイしたCLとPLの最初の2試合について、そのときぼくは「(わざわざ議論を起こしても)アルテタが彼を使いたい理由がわかった」と書いたんだけど、それ以降の彼はあの試合ほどいいパフォーマンスは見せてくれていない。そしてこの3試合での目立つミス。ちょっと不安定すぎる。

これはアルテタには頭の痛い問題だろう。

トップGKがふたりいるのだから、こういうときこそGKをラムズデイルに変えてもよさそうだが、現状でそれはやりにくいと思うのだ。

なぜなら、いまそれをやると罰みたいになってしまうから。すこし調子が悪いからといって変えていたら、GKにいらぬプレッシャーを与えることになりかねない。これは、ピーター・シュマイケルがこのアーセナルのGK問題について懸念を表明したときのことを思い出させる。彼は「GKは安心を与えなければパフォームしないポジション」というようなGKポジションの特殊性について述べた。アウトフィールド選手とは違うのだと。

そもそもアルテタだって、そういう意図で各ポジションにトッププレイヤーがふたりほしいと云っていたわけではないだろう。メインの意図は、優秀な選手がポジション争いでお互いにさらに高め合うことのはず。

あとは、ラヤがやったこの3試合のエラーは、どれもGKとしての積極的なプレイの結果だったということ。

ショートパスによるバックからのプレイを志向するチームでは、極論、どんな優秀なGKだってやらかすものである。ブライトンなんて、あんな極端なプレイスタイルだから、毎回のようにGKの危なっかしいプレイやパスミスが観られるだろう。

今回は相手GKのやらかしが、チェルシーには致命傷になった。2-0リードからアーセナルに希望をもたせてしまったライスのスーパーゴールのきっかけは、相手GKの中途半端で意図不明のパスだった。

この試合のラヤの不用意なパスは、ただの愚かしいプレイと断じることもできるかもしれないが、あれはラヤがもっと慎重にプレイするオールドスクールなGKなら、そもそもやらなかったかもしれない。つまり、少なくとも彼はチームの要求に応えてプレイしているということ。リスクをかけている。その結果。

試合後は、多くのファンがラムズデイルの復帰を熱望しているようだが、むしろここは不人気な決断であっても、アルテタはラヤに信頼をおくべき場面のように思えるし、実際にそうしそうである。

もしアルテタがGKのローテイションをするとしたら、個人的にはどちらかといえば歓迎だが、こうしたあまりポジティヴじゃない理由でそれをやるのはいい効果を生むように思えない。やるならあくまで戦術的な理由で行うのが理想的ではある。

※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

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