わたしの雑感
まず、バイエルンはこのホーム・アウェイのどちらでも、アーセナルをすごくリスペクトしていたなと。前回のアウェイはともかく、今回ホームでプレイする彼らが、あれほど慎重にプレイするとはミケルですら思っていなかったことは、彼の試合後コメントのとおり。
試合前のトーマス・トゥークルは、サカとオーデガードというアーセナルの右サイドの攻撃脅威を指摘していて、彼らの左サイドはふたりのフルバックをスタートさせるという用心ぷりだった。
アーセナルがボールを持ち右から攻撃をしていたとき、時間帯によっては、ファイナルサードはびっくりするほど両チームの選手が密集していて、意地でもサカやオーデガードにスペイスを与えないという覚悟を感じさせた。それでも無理くりこじ開けようとするアーセナルと、なかなか見どころのある攻防だった。
バイエルンは、もしこの試合でアーセナルに敗けていたら、守備的アプローチをとったマネジャーはさらなる批判にさらされたことだろう。なにかがちょっとだけ違えば、それもありえたかもしれない。決して大味ではない、1点を競うような接戦だった。結果的にバイエルンは、いかにも経験者による、成熟した大人のパフォーマンスを称えられることとなった。
バイエルンは、今回も前回と同じようなミッドブロックで守り、右サイドのスペイスを消され、アーセナルは、ストロングポインツを封じられたときの対応に課題が残ったのだった。
世界トップレヴェルのビッグクラブでさえ、いまのアーセナルの攻撃をかなり警戒する。10-2でコテンパンにやられていた時代からは、隔世の感がある。いまのわれわれは、確実にトップレヴェルに近づいていること。それは多少の慰めにはなる。
アーセナルのパフォーマンスに関しては、試合後には、アウェイだったとしても慎重すぎるアプローチだったんじゃないかという指摘が少なくないようだ。そのおかげで大きなチャンスはあまりなかったし、実際スタッツ上でも、それを裏付けるデータがいくつもある。
右サイドだと、ベンジャミンがつねにサリバと同じラインにいて攻撃参加も少なかったし、また、サカが守備で目立つことが多かったのは、彼がそれだけ後ろを気にしながらプレイしていたからだろう。彼で守備的に助かったシーンが何度かあったが、当然攻撃のほうはその分おろそかになる。左サイドは、もちろんLBとしてスタートしたトミヤスも悪くはなかった。だが、ジンチェンコがいるときほどにはエリアが活性化しない。
フルバックのバランスでは、トミーをLCBにしてベニーをInvertするほうが攻撃のバランスはよかったんじゃないかと思うが(実際は逆だった?)、アルテタはバイエルンが右サイドの守備を厚くしていたことに対応したのかもしれない。
そのおかげで、アーセナルがボールを持ったとき、全般的に前にかける人数がいつもより少なくなってしまった。TVではわからなかったが、DFラインもいつもより低かったのかも。
もしかしたらアルテタは、この試合は0-0で終わっても構わず、なんならペナルティ戦で勝負を決めてもいいと思っていたんじゃないか。攻撃にはかなり慎重で、少なくとも、先日のエミレーツでのウナイ・エメリのように、勇敢と云われるような戦いかたではなかった。
それと、やはりチームには連戦の疲労の影響は感じた。前半や後半にゴールが決まるくらいまでは、お互い省エネなアプローチで、アーセナルの肉体的疲労は心配していたほどは目立たなかったと思う。が、失点した直後はなぜか相手にさらにプッシュされることになり、肉体的な疲労だけでない、精神的な疲労も感じた。
あそこは、本来は追いかけるほうが積極的に行く時間だったろうが、チームには残り時間をフルパワーでプレイする足が残っておらず、そのときのために、むしろ自分たちから忍耐する時間帯と設定したみたいだった。
しかし、結局はその後の30分でアーセナルにギアを上げる時間帯はやってこず、試合の流れが自分たちのほうにやってくることを受け身で待ちながら、なんとなく過ごしてしまったみたいに観えた。流れを変えることを期待されたであろうジェズースやトロサールも、その流れのなかに埋もれた。
それにしてもこのチームは、あらためて、スクワッド的にこの過密日程を乗り切れるキャパシティはなかったんじゃないかと思える。この試合に関してはわりと接戦で、違った未来も想像できるが、いずれにせよ勝てない可能性は高かった。終わってみると、PLヴィラとこの試合は、その必然があったと感じる。
何度も繰り返すが、ベンチを含めていくら人数が揃っていても、マネジャーが彼らを信頼していないのではいないのも同じだ。今回もこれだけ肉体的にタフな試合で、ふたつのサブを残して終わった。レギュラーと非レギュラーでアルテタからの信頼度に差がありすぎる。
いまはほとんどフルスクワッドが揃っている状態なのに、チームは相変わらず選手が足りていないみたいなふるまいで、去年のスクワッドデプスが問題だったときからあんまり状況が変わったような感じがしない。つねに制限されているみたいな。
ベンチを温めつづけたヴィエラやESRのような選手たちも、このような大きな試合で信頼してもらえず、たいそうがっかりしただろう。
ネガティヴなことだけ書いていると心が荒むので、ポジティヴ面についても少しふれておこう。
ひとつはもちろん、若い選手たちがこういうトップレヴェルの試合を経験できたこと。バイエルンのような相手とはつねにプレイできるわけではないので、とくにアウェイの今回は貴重な体験だった。プライスレス。試合後のライスも学びの重要性を訴えている。
それと、敗けたときはいつもそうだが、チームとしての課題が浮き彫りになること。このチームはまだ完成に向かって築いている途中なので、こうした機会を利用する必要がある。
PLヴィラと今回は、どちらもひとつもゴールできなかったことで、あらためてゴールスコアラーの重要性がフォーカスされているし、試合中に流れを変えることの重要性も考えさせられることになっただろう。それは、選手でもあり、戦術でもあり。強いチームは、劣勢でも流れを変えるすべを持っている。だから強い。
新ストライカーについては、必要だとか必要じゃないとか議論がぐるぐるまわっているが、もちろん優秀なストライカーはいて困るわけじゃないので夏の重要なターゲットには違いない。クラブにそのための動きをあらためて促せることができたのなら、これらの敗戦も100%ネガティヴではなかったかも。などと考えてみたり。
そういえば、PLヴィラの前に戦術エキスパートのマイケル・コックスがアーセナルについて、「タイトルを競うチームにしては無得点の試合が多い」と話していたとか。「アグレッシヴなミッドブロック」は対戦相手のアーセナル対策として最近この界隈でもよく話題になるが、それをやったチームとの試合で無得点が多いのは事実である。ニューカッスル、フラム、ポルト、ヴィラ、そして今回のバイエルン。これはもう、かなり効果的と云わざるを得ない。今後、もっと採用するチームが増えてもおかしくない。
ま・がっかりしすぎて死にたい気分だけど、しょうがないね。さっさと頭を切り替えてPLに集中してもらおう。
この試合について以上! つぎだつぎ。