Hi.
シーズンが終わった直後でブログもちょっとゆっくりしようと思っていたら、驚きのニュースが。これは無視できず。
ジェイムズ・マクニコラスが書いた、今シーズンのアーセナルの舞台裏で起きていたできごとをまとめた記事で、なんとガブリエルことビッグガビが、去年夏アーセナルで売却が検討されていたとあきらかにされていた。
Arteta’s gatherings, Werewolf and a Gabriel close call – the inside story of Arsenal’s season
ガブリエルといえば、今シーズンのアーセナルにおける記録的な守備の堅牢さを支えたDFであり、チームのPOTSの候補であってもおかしくないほどの活躍をしたCB。リーダーグループのひとりですらある。その彼が、なんと売られるかもしれなかったという。やや信じがたし。
ただ、シーズン開始当初を思い起こせば、思い当たるふしもある。
2023夏、ガブリエルのサウジ行きは目前だった
ジェイムズの記事の一部を引用しよう。
アーセナルのシーズン開始当初、ひとつ興味をひいたことといえば、スターティングラインアップからのガブリエルの不在だった。アルテタは、シーズン開始からのPL3試合でガブリエルをスターティングから外し、彼のPL73試合連続出場を突然に終わらせた。
73 – This is the first time Gabriel Magalhães has not been named in a Premier League starting XI for Arsenal since August 2021 in a 5-0 defeat to Manchester City. It ends the Brazilian’s run of 73 consecutive league starts for the Gunners. Tactical? pic.twitter.com/z0WMVTHeFW
— OptaJoe (@OptaJoe) August 12, 2023
メディアに対し、アルテタはガブリエルの排除は純粋に戦術的な理由だったと主張。たしかに、云われてみれば筋は通っていた。ジンチェンコが不在で、アーセナルはナロウなLB、トーマス・パーティをInverted RBとして起用した(※訳注:初戦はティンバー、サリバ、ホワイトの3CB)。
ただ、ガブリエルの不在にはべつの側面もあった。その裏では、サウジプロリーグからのオファーが想定されていたのだ。
アーセナルでは、そのオファーは差し迫ったものだと信じられており、彼の代替についてリストアップすらされていた。そこにはMarc Guehi(パレス)とAymeric Laporte(シティ)の名前もあった。
しかしマンシティには、前年の夏にジェズースとジンチェンコを譲ったことでアーセナルを強化してしまったという考えがあり、Laporteの取引に応じるつもりはなく、結局サウジアラビアにはLaporteが行くことになった。彼は、€27.5m (£23.23m)でAl Nassrに加入している。
その後、移籍ウィンドウが閉じると、ガブリエルはただちにチームのスターティング11に戻り、アーセナルの残りのPL試合すべてでスタートした。
アーセナルがガブリエルを売却したかもしれない理由?
アーセナルがビッグガビを売るというのは、シーズンが終わったいまになってみれば、あまりにも考えられないようなことなのだが、彼がシーズン開始当初にベンチスタートを強いられたことはそのときもかなり不可解であり、こういう舞台裏があったとなれば、なるほどと思えるところもある。ガセネタではなさげ。
そのときまで73試合連続でプレイしたということは、ほとんど2シーズンまるごとのレギュラー。前のシーズンの守備でも特別問題があったようにも観えなかったのだから、なにか理由はあるんじゃないかとは思われた。
ここからは想像だが、(積極的じゃないにせよ)もしアーセナルが彼の売却を検討したとして、いくつかの考えられる理由はある。
ひとつは、財政的なこと。
アーセナルは2023夏、新規加入選手に€234.94mという巨額を費やしていて(※TM調べ)、FFP/PSRルールの遵守において、健全財政にはさらに気を使わねばならなくなっていた。
相変わらず売却のほうはあまりうまくないアーセナルが、ガブリエルのような高額売却できるアセットを財政バランスのために使いたいと考えるのは、理にかなっていなくはない。
ちなみに、2023夏のアーセナルのおもな売却は、バロガン(€30m)、ジャカ(€15m)くらい。あとはすべて10m以下。総額で€69.20mだった。
ガブリエルの2023夏時点のMVは€55mで、当時€30m評価だったLaporte(※現在29才)が€27.5mでサウジへ行ったことを考えると、ガブリエルもMVと近い金額で取引が行われる可能性はあった。そうなれば、クラブ記録の売却案件になっただろう。※これまでのクラブ記録は、17-18のOxの€38m
もうひとつは、左足の単足という選手プロファイル。個人的にはこちらのほうが興味深く思う。
去年の11月の弊ブログ記事で、いまのチームで売却対象になるかもしれない選手について、手前味噌ながら、ぼくはこんなことを書いた。
DFに関しては、これは単なる予想というか予感というか、まったく個人的な考えだが、イタリア方面から引く手あまたのキヴィオールより、ビッグガビのほうが危ないんじゃないかという気が少しだけする。
今シーズン当初、アルテタは彼なしのフォーメイションを連続して試していたし、同じCBのサリバにくらべても、単足ゆえにCCBを任せられないという弱点がある。たぶん、アルテタはサリバ、トミヤス、ティンバーのような両足が使えるDFのほうが好きだ。
サリバ・ガブリエル同盟で、今シーズンのアーセナルは記録的に強固なディフェンスを誇っているが、アルテタがほんとうにそれに満足しているかどうか、若干あやしく感じている。ティンバーが復帰したら、LCBに抜擢したりして。
アルテタの理想のスクワッドを考えたとき、ヴァーサティリティのある選手で構成されたポジショナルフリーなチームというのは、かなり重要だと思う。すでにいまチームにいる多くの選手が、複数ポジションをなんなくこなす。
そして、それと相似をなすのが選手個人の利き足を問わないスキル。
云うまでもなく、片足だけでなく両足使えるということは、アーセナルのようなボールを持つプレイスタイルでは圧倒的メリットであり、とくに相手のハイプレッシングにさらされることがめずらしくなくなった近年では、DFにおけるパスアングルを広げる両足使いの重要性はますます高まっているだろう。プレス耐性。
そんななかで、ガブリエルはCBとしての多くの長所で補われてはいるが、左足の単足というはっきりとした短所がある。これはCBでパートナー関係にあるサリバにはないものだ。利き足率はFBRefで調べられるんだけど、いま観たらサイトが落ちてた。
その短所が短所として露呈してしまうのが、3CBのCCBポジションで、4人のDFの左右どちらかひとりのFBがInvertする(CM化する)システムでは、ガブリエルかサリバのどちらかがCCBを務めることになるが、シーズン中もアルテタがガブリエルのCCBに不安を感じていると思うような試合は何度かあったと思う。CCBはLCBでプレイするよりも、もっと広い視野とプレイアングルが求められる。
まあ、これもまたただの想像にすぎないが、そう考えると、アルテタとしてはガブリエルは「理想の」CBではないのかもと思ったりする。
ガブリエルは、間違いなく今年のチームのなかで際立った選手のひとりであり、シーズンが終わったいま、誰も彼の貢献を疑うものはいないだろう。しかし、もしもっとアーセナルの守備が脆弱でわかりやすく弱点を露呈していたとしたら、このことはもっと注目されていたかもしれない。
それにしても、ラムズデイルとラヤもそうだったが、並のチームなら問題にもならなさそうなことが、問題かも?と思われてしまう。そんな極めて高いスタンダード。それを獲得しているこのチーム。なんてすごいんだ。
もっとも、シーズン開始前ならともかく、いまはもうクラブとしてもガブリエルを売ろうなんて考えていないだろうけどね。彼は、この一年だけでもかなり進歩があったと感じる。
ビッグガビの現在のMVは€65m(※2024年3月時点)。そのうちセレソンの中心選手にもなるだろう。サリバのMVが€80mと考えると、彼の評価はもっともっと高くてもいい。
おわり