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シティの支配とファンのあきらめ。TOTMCIで起きたことから

先日のトトナムとマンシティの試合は、ああいう結果で終わってからも、いろいろ議論が尽きないという感じがする。ToTのファンが試合の対戦相手を応援し、ボスがあんなに怒ってという異様な状況。

彼らはアイデンティティが問われるような事態になっているんじゃないか。いくらライヴァルが憎いといっても、あの試合には彼らのCLもかかっていたのだし、試合に敗けたことを喜んでいたら本質を見失っていると云われてもしょうがない。なにか大切なものを失っている。

さて、そういう世論のなかで、興味深い記事を読んだので、今回はそいつを紹介したい。



「マンシティの支配がフットボールファンダムを歪めている」by The Athletic

Manchester City’s dominance distorting fandom shouldn’t come as a surprise

※『The Athletic』は『NY Times』に買収されてたんだな。しらんかった。ここ数日でURLがnytimes.comに変わって気付いた

これを書いたのは、The Athleticのトトナム担当のライター、Charlie Eccleshare氏。以下に記事を要約しよう。※小見出しは訳者による ※詳細はオリジナル記事(要課金)を読んでください。リクエストあれば30日間無料コードあげます

アーセナル憎しで対戦相手を応援するToTファン

  • 2024年5月14日、トッテナムはホームでマンシティと対戦、スパーズのファンはライバルのアーセナルにタイトルを獲得されるよりは負けたほうがマシとマンシティを応援した
  • スパーズのファンは普段通りチームを応援する人も多かったものの、いつものビッグゲームの雰囲気とは大きく異なり、失点後にはアーセナルのチャントが響いた
  • 彼らのファンの一部には、シティの“Poznan”ダンスを踊るもの、ライトブルーの旧アウェイキットを身に着けるものもいた。またバーンリーに勝った土曜には、シティのアンセムである“Blue Moon”を歌うものすらいた
  • Ange Postecoglouは、試合前に自分たちのチームに勝ってほしくないという気持ちはまったく理解できないと述べ、試合後には激怒した
  • 彼らのファンを批判するわけではない。フットボールのファンとはそんなもの
  • しかし「マイチームの敗けを支持することの是非」の議論は若干的外れ
  • むしろ、いまほとんどのチームのファンが、ライバルの不運を祝うことくらいしかできなくなってしまった理由を考えるべきでは?
  • フットボールファンがライバルを嘲笑することはある。だが、それだけになってしまったら

マンシティの支配と寡占化

  • マンシティは日曜にはプレミアリーグ4連覇を達成する可能性が高い。英国フットボール史上、4連覇を達成したチームはない
  • シティはPLだけでなく国内カップも取っている
  • イングランドで、過去10年間に主要トロフィ(PL、国内カップ、3つの欧州カップのいずれか)を獲得したチームはわずか7。それ以前の10年間(2005年から2014年)は10だった。1995年から2004年も10回、1985年から1994年は13回だった。非エリートクラブが英国で何かを勝ち取ることは、今日ますます難しくなっている
  • 2019にはワトフォードがFAカップファイナルまで進出したが、シティに6-0で敗けた
  • これは前例がないほど支配的な時代であり、他クラブのサポーターは自分たちにできる限りの方法で楽しみを見つけなければならなくなっている

もはや相手にも感情を抱かせないマンシティ

  • スパーズのファンのふるまいで奇妙なのは、彼らがアーセナルの不幸をどれほど楽しみにしていたかではなく(それは完全に予想できた)、いかにシティが彼らに感情を抱かせていないかということ
  • シティが英国フットボール界を支配するチームである以上、憎しみと憧れが入り混じった感情を呼び起こすのは当然
  • しかしながら、そうした感情を抱くかわりに、相手ファンはシティに対しては概して無感情であるか、ライバルチームを否定する上での便利な役割への感謝がしばしば観られる
  • よく考えると状況は奇妙。この高い競争力を誇るリーグにおいて、(おそらくは)4年連続かつ過去7年間のうち6年、同じチームが優勝している。一方そのチームはPLの規則違反の疑いで115件もの告発を受けている最中(※彼らは否定)
  • しかし、そのチームが嫌われているかといえば、そうでもない
  • 誰も彼らを憎む気力もないし、代替案も思いつかない。シティのリーグ優勝を気にするのは、もはや空の色を気にしたり、1週間が7日しかないことに文句を言ったりするようなもの
  • ゆえに、このような奇妙な事情を知らない人々が巻き添えになることがある。火曜日のPostecoglouは、シティ戦での前進よりも自滅を好むクラブ内外の人々の偏狭で小市民的なメンタリティに激怒した
  • Postecoglou「この48時間で、基礎がまったくお粗末だということがわかった。他の人が何を考えているのか、どのように感じたいのか、何を優先するのか、わたしにはまったく興味がない」
  • しかし、Postecoglouはシティに対抗しようと躍起になっているが、それは果たして現実的だろうか? アーセナルやリヴァプールは、正しいことをすべてやってもまだ足りないことがわかった。Postecoglouにそれを目指してほしいのは山々だが、ほとんどのクラブのファンはおこぼれはもらえるうちだと考えている
  • スパーズが火曜日の夜にシティに勝っていればCL出場権を獲得できる可能性があったことは、アーセナルのおかげで忘れ去られようとしている

諦念がはびこりファンダムが荒む現在のPL

  • PL最終日、ドラマが起きる可能性が低いことは誰もがわかっている
  • マンシティが、たとえ4年連続のタイトルをとっても世間は無関心だろう
  • アーセナルのタイトルを阻止したスパーズのファンを除いては。それは、2年前の最終日にリヴァプールがタイトルを取り逃したときのエヴァトンのサポーターと同じ
  • 2024年、ほとんどのサポーターにとりそうした感情は十分満足できるものだし、これまでもある程度はそうだった。しかし、かつてこれほどだったことはない

以上

わたしくの雑感

これは非常に興味深い記事だったんじゃないだろうか。

英国フットボールにおけるファンダムの歪み。荒廃はいいすぎか。ファンがみんな、もはやマンシティに戦意喪失して、諦観がはびこっている。憎しみの対象ですらない。そのことに気づきもしない。だから、TOTMCIみたいな歪んだことも起きる。

ToTの皆さんがアーセナルをひどく憎んでいるのはいいとして、シティのことは全然憎くないの?という疑問はあった。彼らだってこのさき成功するためには、シティが必ず立ちふさがるもっとも大きな邪魔者になりえるはずなんだが。

まあ、彼らにしてみればそれほど成功が遠いということか。少なくともいまはアーセナルと違い、シティとトップを競うステージにはいない。あのCLファイナルはなんだったんだ。

それにしても、やっぱり多くのファンが希望を持てないリーグというのは、健全ではありませんな。ゲームバランスが崩れてる。

イングランドは、ほかのメジャーリーグとくらべて寡占じゃないリーグだと思っていたが、実際は近年シティがほぼ独占支配しているのは事実なわけで。

これは、ますます彼らの115違反を追求しなければならなくなった。なによりPLの未来のために、そんな法外な存在を認めちゃいけない。誰もがチャレンジでき、成功の可能性を感じられる魅力的なリーグでなければ、いい選手もいいコーチもやってこなくなってしまう。

シティにとり皮肉なことは、今回もしタイトルが実現したとしても、この記事が云うように世間の関心は薄く、なんなら115違反のほうにあらためて関心が向く可能性があること。前人未到の記録は、前代未聞の違反でつくられた。見飽きた彼らのリーグタイトルなどより、そちらのほうがよほどおもしろいコンテンツ。どんな大きな罰になるのか想像もつかない。フォレストが単違反で4ポインツ剥奪なら、115違反で460ポインツ剥奪?

昨日は、シティの訴訟手続がなぜこれほど進まないかを解説するtwが注目を集めていた。彼らはそれを遅らせようと3年近くもせっせと妨害工作しているという。

シーズンが終われば、もっともっとメディアがこの問題を取り上げるだろう。いつまでも先延ばしできないだろうし、すべきでもない。今シーズン中に見逃されて、タイトルも許されなるならそれだけでもとてつもなく大きな優遇だ。

いったいどんな落とし所になるのか、そこは非常に楽しみ。彼らが消えれば、より多くのチームがトップを目指すことになるだろうし、PLはいまよりもっと面白くなるに違いない。すべてのクラブに恩恵がある。

 

※5月17日追記:たまたまべつの記事で見かけた情報によれば、シティへのヒアリングは2024年の8月から11月に行われ、最終的な判決は2025年夏までに実施とのこと。つまり24/25シーズンは、このまま??

 

おまけ

今回、Angeがクラブやファンを痛烈批判していることで、ToTがいろいろ蒸し返されてる。メンタリティに難あり。3人ものマネジャーからこんなふうに云われるクラブもなかなかない。ひとりは現行コーチ。これはアウチ。

「どうでもいい。わたしは勝ちたいだけ」。これは重い。mate.

 

ぜひ、いつまでも末永くそんなToTでいてほしい。

 

おわり



※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

2 Comments on “シティの支配とファンのあきらめ。TOTMCIで起きたことから

  1. 去年のシティのトレブルの時も言われてましたね
    シーズン中はメディアもあまりら騒ぎませんが終われば115件の違反があるのにシティはおかしいと
    プレミアリーグに非協力的な態度でエヴァートンは-2ポイント余計にくらってるわけですから
    取り敢えず09シーズンから今までのシーズン仮に剥奪してもよいのでは

  2. まぁ115件の話はフットボール外でのことだから成り行きに任せましょう。
    ここ10年での人件費はチェルシーやマンUの方がシティより多く使っているので、そこに賢さや継続性のエッセンスが不足していた、ということでしょう。
    「正しい」レアルを仰ぎ見るラ・リーガの困窮した「1部のクラブ」、
    バイエルンに戦力もタイトルも奪われまくるブンデスリーガのクラブ(財務的規制によりオーナーの投資で挽回が難しい)、
    言うまでもないPSGを擁するリーグアン。

    それらから比べれば遥かに、本当にはるかにプレミアは健全ですよ。
    アーセナルと競り、リバプールと競ってるし、
    8位くらいまでのチームでも状況によってはシティもリバプールも倒しうるメンツと資金力を持つリーグなんて、そうそうない。
    クロップに資金力、チェルシーとユナイテッドに継続性と忍耐力と名監督がいれば、というところだったでしょう。

    「115件」の話は内容が良く分かってないのに
    「なんか悪いことをしたスキャンダラスなNews出してた芸能人」へのバッシングみたいで、、
    あまり声高に言わないようにしたいと個人的には思います。
    それってよくわからんけど皆が叩くなら俺も叩いておこうっていういじめ的な温床になりそうな考え方も裏にありそうだし。
    決定すべき機関・しかるべきスキームにていろいろの決着がついたらで良いかと。

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