試合の論点
アーセナル vs マンUのトーキングポインツ。
The standards we demanded ✊
Enjoy the highlights from tonight’s 2-0 victory over Manchester United 👇 pic.twitter.com/8mcL5tHIr2
— Arsenal (@Arsenal) December 5, 2024
おれたちにはセットピースがある。苦しみつつ勝ちをつづける
アーセナルのここまでの3試合が最高だったから、この試合のパフォーマンスのギャップがすごかった。あのWHUのような、やることなすことうまくいくみたいな神がかった全能感ある試合をこの日も期待していたのだが、この試合のとくに前半はアーセナルのふだんのスタンダードすら下回っているように観えた。
とにかく、われらのプレイにテンポがないのと、パスがつながらずリズムが生まれない。右サイドのケミストリがどうとかそういうとこまでも行かない。パスはつねにオプションがなく苦し紛れで、こぼれたセカンドボールはことごとく相手のボールになるような感覚で、いつまでもプレイが連続せず、つねに相手のターン。4-4-2ブロック守備もちょっと下がりすぎでは?とか。
ビルドアップが膠着するなかでサリバが何度か自分でボールを持って前進していて、CBのああいうプレイは意表を突くものであり非常に効果的に観えたが、あれも相手に強いられていたと見るべきだろうと思う。ほかにプレイの選択肢がなかった。相手がもうちょっと上手ければ逆襲のリスクだってあった。
HTには、マンUが意図的にスタート&ストップのスロウペイスでプレイしようとしているという感想もけっこう観たが、ぼくはもっと自滅っぽい感じがした。相手の組織的守備を前に悪いプレイが悪いプレイを呼び込み、悪循環に陥るみたいな。最近はずっとあんなにシャープだったパーティが簡単なパスミスをやったり。オーデガードさえも簡単にボールを失うことが何度かあり。なんでだろ?
フェアに云えば、その原因はマンUにもあり、そこは彼らを称賛すべきかもしれない。こちらの強みはかなり消されていた。
試合前彼らのマネジャーは「勇敢にプレイする」と意気込みを語ったが、まさにそれがチームにあったように観えた。インテンスなハイプレスと組織的守備。サカやオーデガードらキープレイヤーのマーク。あのアウェイの環境のなか彼らのプレイには勇気を感じたものだ。アーセナルは、ビルドアップでも縦に出したいパスが出せず、逆にアーセナルのほうが積極的なプレイに弱気だったかもしれない。いいときの「絶対縦にプレイする」という姿勢はあまり感じなかった。
そんな前半でポゼッションはアウェイチームが上回ったという。もっとも、マンUはさすがに優秀なコーチのチームで守備でよくオーガナイズされているとは思ったが、攻撃面はあまり脅威ではなかったが。
そしてアルテタがHTで少し調整したという後半。何を調整したのかはよくわからないので、エキスパートの戦術解説を待つとして、とにかく54分にコーナーキックからティンバーがゴール。彼のアーセナルでの初ゴール。彼はもちろん身長は高いほうではないのでヘッダーのゴールはあまり期待されていないだろうが、ライスのボールが鋭かった。
オレンジな方々からもジュリアンにおめでとう。
Crucial first goal for @Arsenal! 💥@JurrienTimber scored the opening goal against Manchester United! 😍#NothingLikeOranje #ARSMUN pic.twitter.com/HiMotiDZIC
— OnsOranje (@OnsOranje) December 4, 2024
Amorimも認めるように、これで試合が変わった。それはアーセナルの6つめのコーナーだった。そのゴールが決まると、さらに勢いづいたアーセナルは立て続けにチャンスをつくることに。
そして、その後もコンスタントにコーナーの機会を得ていたアーセナルは、73分にまたもコーナーからゴール。今度は右からのサカのボールをファーポストのパーティが中央へ戻し、サリバの背中に当たってゴール。ラッキーもある。そのあとも、また1点めと同様に勢いが増してチャンスをつくる。同じような展開が二度つづいたことで、ゴールを決めることによる心理的ブーストの効果がとてもわかりやすい試合だった。そのような勢いある時間帯もあったので、ライスも云っていたように、アーセナルはもっとゴールしているべきだった。
この2ゴールだけでなく、アーセナルは何度もコーナーから危険な状況をつくっていて、今回はなぜにコーナーがこれほどうまくいったのだろうかと考える。アーセナルのセットピースはすでにペナルティのようになったと云われたりするが、今回はほんとうに毎回なにか起きそうに思えたくらい危険で、いつも以上に効果的に観えた。試合前はビッグガビの不在で、セットピース脅威はかなり減るとさえ思われていたのに。
理由のひとつは、マンUのコーナーの守備のやりかたがあるかもしれない。
彼らはゾーンディフェンスで、基本的にアーセナルの選手にはマークにつかずゴール前に均等に選手を置いていた。そして、アーセナルはいつものルーティーンで、ボールが放り込まれる前にファーポストから大男たちがぞろぞろとニアサイドに入っていく。そうすることで、おのずとGK周辺に選手が密集、いみじくもRuben Amorimがそのセットピースについて「たくさんの選手をGKの近くに置いて彼を動けないようにした」と説明したような状況になっていた。
ルール改訂により、相手選手がGKを邪魔したりちょっかいを出すこと(ベンジャミン・ホワイト™)は禁じられたが、ああなれば不可抗力。ルールの範囲内でGKの動きを制限することができる。それは今回マンUの守り方と合わせてかなり効果的だったように思える。動けないOnanaがパンチで逃れるしかなかったシーンが何度か。
それと、今回のコーナーで非常に印象的だったのが配球。とくにライスは、コーナーから何度も危険な場所にボールを送り込んだ。
コーナーからの危険なボールといえば、もちろんサカの評価が高いが、ライスも負けていない。彼は今回アシストを決めたことで、このふたりは昨シーズンのはじめからカウントして、お互いコーナー含めたセットピースからのアシストを7つ記録しているということ。アーセナルのセットピース脅威は、ボックスを支配する大男たちだけでなく、彼らの正確な配球に依るところも大きい。
近年、ニコラス・ヨヴァーの下で著しく進歩しているアーセナルのセットピースといえば、ほかのクラブのファンなどが、やれ“New Stoke City”だとか揶揄しがちであるが(今回ベルバトフがまさにこれをTVで云ったらしい)、The TelegraphのSam Deanが、アーセナルファンの溜飲が下がるようなことを云ってくれている。
Reminder: Arsenal don’t focus on scoring set piece goals instead of playing good football. A big reason why they score lots of set piece goals is BECAUSE they play good football (and because they are big lads who are very well coached on set pieces). These things are linked.
— Sam Dean (@SamJDean) December 5, 2024
Sam Dean:アーセナルは、グッドフットボールよりセットピースゴールを優先しているわけじゃないことをお忘れなく。彼らがセットピースからたくさんのゴールを奪っている大きな理由は、彼らがグッドフットボールをプレイしているからなのだ(大男たちがセットピースにかなり習熟しているというのもある)。それらには関係がある。
何度も云うように、アルテタは、ペップにもヴェンゲルにもモイーズにもモウリーニョにもなれる。ピューリスにだってなれる(←NEW!)。これは、毎試合つぶさにアーセナルのプレイを観ていれば理解できること。
そして、そうした「どんなアングルからも脅威になれる」プレイのスタイルの幅の広さのなかで、セットプレイからたくさんゴールを決められるという、決定的に重要な武器を持つに至った。それが重要。
そういえば、試合後マンUのファンが「めっちゃむかつくけど、アーセナルはガブリエル不在でも(個人に頼らず)セットピースというシステムがある」のように称賛していたのが印象的だった。そのとおり。
今回、もしセットピースのような武器がなければ、アーセナルは結果を出すことにかなり苦しんだはず。正直、今回のアーセナルのパフォーマンスはあまり褒められたものではないが、それでもこのように結果をもぎとれる。長いシーズン、つねに100%でパフォーマンスできるわけではないという現実のなかで、そうした武器があることの心強さったらない。
キヴィオールとジンチェンコに見るバックアップ選手のマネジメント
この日、ガブリエルとカラフィオーリを同時に欠くという左サイド守備の危機のなかで、期待以上によいパフォーマンスを観せてくれたのがキヴィオールとジンチェンコ。
ジンチェンコは(いつものように)やらかしもあったので、彼を最高だったとはやや云いづらいが、キヴィオールのほうはすこぶるよかったと思う。ガブリエルの代役としての仕事をきっちりとこなすだけでなく、攻撃では気の利いたパスまで出し、クオリティを示した。イタリアのビッグクラブがこぞって彼を欲しがる理由はある。
ステップアップした仲間をねぎらう。センターハーフユニオン。
Came in. Stepped up. Put in a shift.
Our Jakub ❤️ pic.twitter.com/1rkLh5c8Qy
— Arsenal (@Arsenal) December 4, 2024
この試合の彼らを観ていてぼくが感じたのは、ここ数試合でふたりとも試合で多少でも使っていてよかったということ。
キヴィオールが今回PLで初スタート、ジンチェンコも2試合めに過ぎず、これまでPLではベンチにも入らなかったりと、このふたりがアルテタからレギュラーチームとは違う扱いを受けてきたのは明白で、マネジャーから信頼されていないと感じ自信を失っている選手がいきなり試合でパフォームすることの難しさは、これまでもしばしば見られたこと。アルテタのレギュラー固定化の弊害とあわせて、そのことは何度かこのブログにも書いた。
しかし、このところ彼らは多少なりともプレイ機会を得始めていて(WHUはキヴィが45分、ジニーが34分プレイ。PLフォレストやCLスポルティングでも短いながら機会があった)、それがこの試合のパフォーマンスの伏線になっていたように感じる。
試合に敗けたPLニューカッスルのときなどに批判的に書いたような、ああいう自信低下した状態は低パフォーマンスの原因になる。そのような状態のままこの大きな試合でプレイしなければならないとしたら、今回のようなクオリティを発揮できたかわからない。彼らがボスからの信頼を感じ、それなりの自信をつけていたことで今回の活躍につながったはず。
だから、今回の試合から得るべき教訓は、やはりバックアップの選手も常日頃から信頼し機会を与えていくことだろう。それが、今回のようないざというときに非常に重要になる。そのことを再確認した。
そして、この試合を成功させただけではなく、彼らのようなバックアップ選手が自信をつけてパフォーマンスが安定することで、チーム全体が強化される。だから、長い目で見れば、これはいい事ずくめなのだ。必要以上にレギュラーを酷使しつづけるよりだいぶマシなマネジメントと思う。
今回はサブを3人しか使えなかったのはしょうがないとして、今後はなるべくチーム力を落とさない範囲で、どしどしバックアップ選手を使っていってもらいたい。
いま心配なのはジェズースで、彼がこれまでにチームで確立していた立場を考えると、現状とのギャップがあまりに大きく、自信低下は著しいように思える。残念ながら、彼のチームでの将来性はかなり疑問があるが、シーズン中は仕事をしてもらわねばならない。シーズンが終わるまでまだ半年、彼に頼る日もきっとあるだろう。だからなんとか彼の自信を維持して本来の実力でパフォームできるよう、うまくマネジする必要がある。
この試合については以上
サリバに法被とねじり鉢巻きはウケました。笑
マルティネッリはもう厳しい。チェンさんにすら触れられないw
トロサールのいいところを吸収してほしいが。
ネルソン君は版元とガナーとは戦えない?
どのみちケガっちゃったというニュースを見ましたが。。。