UCLセミファイナルPSGの試合プレビューエントリを時間を指定して予約投稿したあと、こちらの記事に気づいた。
Arsenal tactics v PSG: Odegaard, Vitinha and four ways Arteta can mastermind Paris win
なかなか読み応えのあるBBC Sportの記事。
毎度のことながら、ぼくの書くブログ記事は戦術的要素がとぼしいし、今回はシーズン最大のビッグマッチということで、この試合の戦術的みどころというべき記事を追加で紹介しよう。アーセナルがPSGにどうやったら勝てるかが具体的に提案されている。
「アルテタがPSG戦でアーセナルをカムバックさせる4つの方法」 by BBC Sport
戦術ライターAlex Kebleによる記事。以下、ざっくりと紹介する。ちなみにBBCはもちろん英国メディアなので、アーセナル寄りの内容である。
ミケル・アルテタは「怒りとフラストレイション、腹の底の悪感情」をCLセミファイナルのセカンドレグで利用すると述べた。水曜にパリに行ったサポーターたちにとって、たしかにアーセナルの2006年のCLファイナルでの敗けは胸をかき乱すものがある。
アーセナルは、すべてのコンペティションのセミファイナル直近7試合では、1ゴールも決めることができていない(W0 D2 L5)。
しかしいっぽうPSGにもCLの亡霊がいる。それは彼ら自身の崩壊の記憶。この勝負はいまだバランスが拮抗している。
アーセナルにはトーマス・パーティの復帰が決定的になりうるし、Ousmane Dembeleのフィットネスもある。
そして、ここからは戦術バトルだ。ファーストレグはLuis Enriqueの勝利。だが、あの試合ではアルテタの試合中の調整により、おそらくはアーセナル有利にやや傾いたかもしれない。
緊張と歴史的トラウマを乗り越え、アーセナルサポーターには楽観的になれるいくつかの理由がある。正確には4つ。
1. アルテタが試合中に変更した4-2-3-1プレスを維持せよ
- 悲観的になっているファンにはいいニュース:まずアーセナルは「これまでの繰り返し」をすればいい。ファーストレグの最初の20分でなく、そのあとの70分
- PSGはエミレーツでの最初の20分でアーセナルを圧倒した。まるでバターをナイフで切るかのように。その時間帯は彼らは77%ポゼッションを記録。何度も何度も波状攻撃を繰り出した
- Enriqueの当初のセットアップは、アーセナルの4-4-2守備を困惑させた。Fabian RuizとJoao Nevesが高いポジションを取り、ライスとメリーノを釘付け。それによりOusmane Dembeleが自由にフロントラインから落ちてきて中央であまることできた
- アーセナルの2MFがDembeleにつこうとしても、つねに高いポジションを取っていた彼らの8のうちひとりがフリーになった
ここではRuizとNevesのふたりともがアーセナルの4-4-2シェイプのライン間でフリーに
- MOTDでのパンディットStephen Warnockは、サカが4-4-2シェイプから離れるのが早すぎると指摘。それがPSGの左サイドをオープンにした
- そこでアルテタはシェイプを4-2-3-1に変更。オーデガードをフロントラインから外して深く落とし、ミドフィールドでVitinhaにつかせた
- ここからアーセナルは、Vitinha、Neves、Ruizの賢いロテイションに対応すべく、中央でひとり人数を増やしたことに。そして、PSGの支配を止めるために、DembeleにふたりのCBがよりアグレッシヴについた
最初の20分が経過してからアルテタが4-2-3-1フォーメイションに変更。オーデガードが下がってVitinhaをマークし、アーセナルのMF5人はそれぞれがひとりつけばよくなった
- これでアーセナルは自信を取り戻しミドフィールドを奪還、ボールを持って攻撃を始めた。試合の21分から95分のあいだ、アーセナルのポゼッションは55%で、ショッツでも10 v 7だった
- これをまたやるならパーティの復帰は役に立つ。彼の嗅覚なら、先週のDembeleのウィナーを防げたかもしれないし、メリーノよりも賢くPSGのMFたちにつけたかもしれない
4分のゴールのとき、ライスもメリーノもをDembeleをカヴァーすべきだった
- だが、注目は試合のキーバトルにある:オーデガードのVitinhoのマンマーキングの仕事だ。彼は、Enriqueのフットボールにおけるメトロノームであり指揮者でもある
- ヨーロッパのビッグ5リーグのP90のタッチとパス成功で、Vitinhaより優れいているのはバイエルンのJoshua Kimmichしかいない。彼を止めることは、すなわちPSGを止める可能性がある
2. オーデガードを深く下げてサカとプレイさせる
- アーセナルは4-2-3-1シェイプによって、多くの問題をただちに解決することでPSGに等しく対抗し、領土的にもより対等にクリエイトできるようになる
- そして、アルテタはここからさらに、自分たちがボールを持っているときにオーデガードからより多くを引き出すことに集中できる
- 彼はこのところ、ビッグゲイムでのインパクトに欠けるとファンの一部から批判を受けている
- アルテタがファーストレグのあとに述べたこと。「最初の15-20分のあとわれわれはひとつの問題を修正した。そしてそれを残り試合で維持で、それが試合を変えたと思う」
- それはどういう意味かプレスに問われたアルテタは「ボールを持ったときの問題」と付け足した。「とある非常に特定の場面で、前に出る(present)機会がなく、MFの選手全員を戻すことになれば、苦戦を強いられることになる」
- おそらくアルテタは、チームがボールを持っているとき、オーデガードの「前に出る(present)」の失敗について述べていたのだろう。彼は、最初の20分でたった3度しかボールに触れなかった
- 下の場面ではオーデガードはどこにもおらず、PSGにボールを奪われる前、サリバとラヤは二度パス交換をしていた
これが示すのは、オーデガードの位置が高すぎてサリバの縦パスの受け手になれていないこと
- オーデガードは試合が進むにつれてより現れるようになり、アーセナルのオウンサードを通してのビルドアップを助けた。もっとも、それでも彼の高いスタンダードからは限定されたインパクトだったが
- この試合の彼のパスの多くが横パスで、1ヤード(約90cm)の縦パスは、彼のパス30のうち10に過ぎなかった
- その解決策は、彼をもっと深く落とすこと
- オーデガードは、ミドフィールドの右でボールを集めることを許されたとき活きることになった。より、ポゼッションしチームメイトにボールを渡して動く
- PSGのファーストレグと、おそらくは彼のベストゲイムだった7-1で勝ったPSVとの試合の彼のタッチマップはこれほど違う
- アルテタはオーデガードをもっと深く下げる必要がある。そこで彼はプレスから解放されワンタッチパスでテンポをつくれる。そのことでアーセナルはプレスを回避するだけでなく、サカともより流動的に連携ができる
3. ヴィラのセカンドレグの猛攻のように勇気とアグレッションを見せろ
- ファーストレグからアルテタが学んだのはそれがすべてだ
- アルテタの今週は、QFのセカンドレグでのPSGに対するアストン・ヴィラの目覚ましいパフォーマンスに注がれているべき。彼らはそこで3-2でPSGに勝利したもののアグリゲイトでは4-5敗退となった試合
- エンリケ「わたしのチームがほかのチームにあんなふうに支配されたことはない。だが、相手はリスクを負わねばならなかった。なぜなら彼らはコンペティション敗退の危機があったから。彼らの攻撃はすごいインテンシティだった」
- これこそ、アルテタに必要なこと
- ヴィラの切迫感、ダイレクトネス、そして大胆不敵さはPSGを混乱に陥れた。おそらくは、過去の崩壊の傷が残っていたのだろう、彼らはMorgan Rodgersのボール運びとMarcus Rashfordのペイスに圧倒されながら、徐々に後ろに下がっていった
- すでにわれわれは、いかにアーセナルがPSGをプッシュしコントロールを奪えるかを観ている
- もしアーセナルがポゼッションでも勇敢にリスクを負えるのなら、彼らはヴィラを再現できる
- アーセナルがそれをやる戦術ルートは、マイルズ・ルイス・スケリーにある
- 彼は先週あの試合のキープレイヤーだった。彼がポゼッションを奪い返し、Achraf Hakimiをドリブルで抜き、ピッチを開く
- Hakimiは、マルティネリのマークとインヴァートしていたルイス・スケリーのカヴァで、ふたたび手がいっぱいになるかもしれない
- とくにもしライスが前めでプレイする役割になれば。パーティの復帰は、ボールを前進させることでヴィラスタイルの混沌をつくりだせる
4. リスクをかけたプレイからセットピースの有利へ
- もしこのすべてのプランが計画どおりにいくなら、アーセナルはファーストレグよりフリーキックとコーナーを少し増えすだけで勝つことができる。セットピースは、パリにおいても彼らのゴールへの最適なルートになりうる
- アーセナルは、今シーズンのPLでセットピースから14ゴール決めている。xGは15.91で、これはヨーロッパのビッグ5リーグでは最多
- いっぽうPSGは今年のリーグアンでセットピースから10失点している(コーナーが6)。それは、彼らの失点の30.35%にのぼる。フランスでもそれはダントツで高い割合であり、ヨーロッパのビッグ5リーグでもワースト6位
- ファーストレグの前からこのミスマッチは語られていたが、アーセナルは、前回たった3つのコーナーとPSGのハーフで6つのフリーキックを得たに過ぎなかった
- もしアルテタがこうした戦術プランを正しく実行し、チームがここ数年謳歌してきたセットピースのチャンスを得られるなら、そうした数字は上がっていくだろう
まとめ
- 4-2-3-1でPSGのMFロテイションを無効化
- オーデガードを深く落として試合を支配
- ボールを持ったときにリスクをかけ
- セットピースを最大限活用する
以上
なかなか説得力ある内容だったと思う。
ファーストレグの試合を観た直後は、ほんとうにがっくりきたし、あまり冷静に考えることができなかったけど、見る人が見れば、ちゃんとアーセナルはあの試合でも戦術的に適応し、やるべきことはやっていたのだと。じつに勇気づけられるじゃないか。
勇気といえば、あとはやっぱり心理的なこと。戦術的な議論とは違うが、それは大きなカギになるはず。
Parc des Princesは、おそらくサンチャゴ・ベルナベウかそれ以上の敵対的雰囲気になるだろうし、そのなかでいかに平常心でプレイするか。みんながみんなMLSみたいに心臓に剛毛が生えてないし。彼の剛毛はみんな見習ってほしい。見習って生える毛とは。
でも、そういう意味ではマッチプレビューに書いたように、自分たちが追う立場であることは有利に働くかもしれない。PSGとしては、最少点差で追われるプレッシャーはやっぱりあるはず。もし先に失点したら、せっかくのファーストレグの勝利がそこで帳消し。ゲイムオン。しかも彼らは勝って当然のホーム。ここは追うほうが気持ちは楽。
そして、われらはやることがシンプル。こっちが大逆転するまでは、どうすべきか悩む要素がない。ああ、早い時間に逆転しちゃったらどうしよう。アルテタはリードを守りたいタイプだからなあ。なんて、そんなことを憂う前にまずゴールを決めなきゃ。
いや、楽しみだ。アーセナル史上UCLのSFは三度め。ファイナルは二度め。どっちもファンとしてはなかなかできる体験じゃない。めったにない機会を楽しもう。※今後は毎年希望
COYG!
場所の因縁やアルテタ在籍歴などはさることながら、元PSGアーセナル監督でもあった「ヴィラのエメリスタイル」が攻略のカギというのはなんの因果か笑
あと最近のウーデゴールの積極性のなさ(シュートやドリブルでの)を踏まえても、深い位置での起用はアリなのかもと思いました。
というよりも何よりも、この試合では勝ってもらわねば困る!応援しますCOYG‼️