試合の論点
リヴァプール vs アーセナルのトーキングポインツ。
Battling back ⚔️
All the key moments from our 2-2 draw with Liverpool 📺 pic.twitter.com/yyb9YiSLvL
— Arsenal (@Arsenal) May 11, 2025
今シーズンのアーセナルとリヴァプールの差。ゴール前の決定力とavailability
試合前、この試合にかける選手たちのメンタリティが少し心配だった。リヴァプールはもう目標達成しているし、アーセナルは目標達成を目の前で逃した直後で抜け殻で燃えカス。結果を問われない、フレンドリーマッチのような大味な試合になる予感は十分。
でも、結果的にそうでもなかったかな。もしこの試合がPLタイトルを決めるような試合だったらと考えれば、内容からしても、お互いにそれと同じような熱意と集中力があったとは思えないけれど。
序盤は、アーセナルがボールを持って攻撃し、やや引いたリヴァプールがカウンターに活路を見出すみたいな試合展開だった。お互いにチャンスはあったし、お互いにさすがのクオリティあるプレイだったとも感じた。ともに高いプレス耐性で、そう簡単にボールは奪われない。アーセナルもボールを持っていたときはけっこうよかったと思う。
しかし、前半はアーセナルの守備は致命的だった。あまりにもらしくない。失点した1分後にさらに失点したのは、今シーズン初めてでは? いったい何が問題だったのか。
まず、MFの問題があった。
前半アーセナルの攻撃が途切れ、リヴァプールがボールを持つたびに毎回がカウンターのようになったのは、彼らのプレイスタイルに加えて、アーセナルのMF守備にかなり問題があったからだろう。
メリーノもパーティもかなり高い位置でボールを持ったはいいが、リヴァプールのゴール前で相手ボールになると、そこから一気にカウンターアタックが発動。彼らはつねに前を向いた状態でボールを持つため、反撃がめちゃくちゃ速い。そしてアーセナルは事実上ミドフィールドが素通りの状態で、何度も何度も繰り返し同じパターンでカウンターにさらされた。
これに関してはライス不在の影響を指摘する声もあるし、あるいはMFたちにいつもの慎重さが足りなかったかもしれない。いつもとは何かが違っていた。PSG後の気の緩みもあっただろうか。
それと、DFも。
最初の失点は、DFはいちおうは揃っていながら誰もゴール前にいるGakpoを観ておらず完璧なクロスに完璧に合わされたし、直後のさらなる失点については今度はSzoboszlaiのプレイもさすがだったが、Díazの背後からのランにサリバが気づくのが遅れ、決定的瞬間に出し抜かれてしまった。あのボックスのなかでのゆるゆるなボールを決められる悔しさったらない。サリバは最近とくにちょこちょこ不安定で、ガブリエルがいないせいという説もあるがどうだろう。お兄ちゃんがいない弟。
この2連発にリヴァプールは笑いが止まらなかったはず。アーセナルにボールを持たれ押し込まれながら、まさに蜂の一刺し。
そして、どちらもアルテタが激怒しそうな失点だった。正直ぼくも、あのショッキングな突然の2-0という展開に、もう試合は終わったかと思った。
しかし、これらの失点でアーセナルの選手たちに過失はあるにせよ、あれを決めるのがリヴァプールだなとも思う。現時点で、彼らとわれらで総合的なチームのクオリティ差はそこまであるとは思わないが、ゴール前での決定力にはかなりはっきりした差がある。この試合でもそれを見せつけられた。鮮やかすぎるゴール。それがそれぞれのチームのシーズンの明暗を決めたといってもいい。
PLでここまでのゴール数は彼らのほうが17ゴール多い。そして、彼らはここまでのPL36試合でゴールできなかった試合はたったひとつしかない(フォレスト)。いっぽうでアーセナルはゴールできなかった試合は5つもある。
ドロウの数は、リヴァプールが8でアーセナルが14。あともう1点が取れなかったせいで、アーセナルは28ポインツ分を落としている。
ゴールを決めることに関しては、彼らのクオリティに遠く及ばず、それが間違いなくタイトル争いにおいて決定的になっている。
という前半があり。絶望的な気分になっていたら。
後半になって、いきなりアーセナルがゴール。ちょうど、トロサールとネリがポジションを入れ替えてる?と思った矢先のゴール。しかも、あんななんでもないシンプルなやつ。ふんわりしたクロスボールとヘッダー。あれだけゴールに苦労しているのに、決まるときはあんなにあっさりなのだから、フットボールとは理不尽なものだ。
ネリはこれでリヴァプールに6ゴールで、いまのアーセナルの選手ではもっとも決めているというリヴァプールキラー。彼を中央に移した効果はかなりあったようで、後半のアーセナルはよくなった。
彼は、ハイラインの背後を狙う動きもかなりやってた。ロングボールはまったくおさまらないけど。
just look at martinelli pic.twitter.com/YtBWxJUED9
— George (@George_Zur) May 11, 2025
それと、後半目立っていたのはベン・ホワイト。彼が右サイドでWB的にどんどん前に出るようになり、アーセナルはチャンスをつくり始めた。彼自身もドリブルから単独でシュートに至るような積極的プレイも。この日もまだ100%には見えなかったが、それが指示だったのか後半の彼の攻撃マインドは上がった。
そして、70分のメリーノのゴール。オーデガードの強烈な左足ショットをGKが弾いてポストから跳ね返ったボールをメリーノが押し込んだ。MØに0.5ゴールくらいあげたくなる(安太郎)。これで2-2。なんと前半の彼らのリードが帳消しに。これにはさすがに目が覚めた。
ちなみにアーセナルがリヴァプールに2ゴール先行されて敗けを免れた試合は、1908年以来初めてのことらしい。なんと100年以上前である。
このゴールの直前には、RM移籍で一気にアンフィールドのパブリックエナミーみたいになったTAAがピッチに入っており、リヴァプールファンの皆さんはせっせと裏切り者にブーを浴びせていたところで、スタジアムにネガティヴな空気が蔓延。試合の流れ的には2ゴールのリードを追いつかれるしで、アンフィールドのファンには最悪の展開となった。メリーノのゴールはオフサイドラインギリギリで、そこにいたのが当のTAAだったのがまた皮肉。それにしても、彼のなんとも云えない悲しそうな表情が印象的だったな……
アーセナルは、あのあとさらにプッシュしていれば、もしかしたら逆転できたのかもしれない。アンフィールドのあのおかしな空気のなかならどさくさ紛れで。
しかし、79分にメリーノが2枚めのカードで退場し、アーセナルは万事休す。相手に背中を押されてもんどりうって勢いで相手を削ってしまった。あれって、プッシングのファウルが認められてたらその後のファウルとカードも無効になるのかね?
もともとメリーノは疲労の色が濃かった。とあるブロガーが指摘していたが、ぼくもまったく同じことを考えていた。彼はあの直前にもボールを持ってなんでもないところでスリップしてしまい、あのプレイに至る伏線はあった。PSGでもそうだったように、彼はほんとうにハードワーカーで走ることを全然さぼらない。だから、当然疲れる。彼を替えるベンチもいない。にっちもさっちもいかぬ八方ふさがりである。彼がこうなるのも時間の問題だったのかもしれない。
そして残り時間、アーセナルは10人で守りきって試合終了。最後の96分のリヴァプールのゴールが認められなかったのはオフサイドかと思ったら、オフェンスファウルがあったようだ。ああいうのを決めるチームだから、かなりあせったけども。
2-2は、チーム状況や内容からしてもフェアな結果に思える。とくにアーセナルは十分受け入れられる。
しかし、今シーズンのリヴァプールとアーセナルの大きな違いとしてチーム事情もあるが、アーセナルはあまりにもひどすぎる。補強のようなスクワッドマネジメントの過失もあるが、それ以外の誰も責められそうにない部分も。
この試合では、トロサールも負傷した可能性がある。ライス、ティンバー、トロサール。そしてメリーノもオーバーワークで退場。このチームは、シーズン終了に向けてもうガス欠寸前で動いているという感じがしている。酷使され、ひとりまたひとりと脱落していく選手たち。もうかわりの選手がいないので、ひとりひとりの負担が増えざるを得ない。悪循環に陥っている。
結局、試合前にアルテタも認めていたように、満足にやりくりできない人数でシーズンを始めたことがそもそも間違いだったんじゃないか。人数というか、アルテタの場合はレギュラーを固定するから、基準以上の選手じゃなきゃいくら人数がいても使わないから意味ないのだけど。ローンで出した選手、売却して代替を取らなかった選手。少しでも挽回できたはずの1月も補強なし。
これじゃあなあ。
今回、リヴァプールはアーセナルに勝てなかったことで、残り2試合で2勝しても最大ポインツは89ポインツ。これはアーセナルの去年(23/24)と同じ最終ポインツだったりする。やっぱりタイトルはタイミングも大きい。
直近3シーズンでは、アーセナルはリヴァプールよりも9ポインツも多い。しかし、リヴァプールはふたつめのタイトルを取ろうとしている。われらはシティとだってたった4ポインツしか違わない。しかしタイトルはない。
アーセナルのright momentは、間違いなく25/26シーズン。悲願のPLとCLのトロフィのために、すべてをぶち込むならここだ。それをクラブではっきり共有してもらいたい。