移籍ウィンドウは6月1日からすでに開いているものの、いまだアーセナルでは大きな動きなし(マルキーニョスのクルゼイロ移籍が決まったくらい?)。先日はZubimendiのメディカルが報じられて、ここ数日で発表もあるかと待ち構えているのだが。
まあ気長に待つしかない。
さて、わたくしが課金購読している『The Athletic』で、3日ほど前にアーセナルに関する非常に興味深い記事があった。
What led to Arsenal’s injury problems this season?
今シーズン、つまり24/25シーズンのアーセナルのケガ問題の原因はなんだったのか?という。
メジャートロフィを期待されたアーセナルながら、PLでは3年連続の2位フィニッシュ、CLでもセミファイナルまで到達したものの惜しくも敗退し、今年もやはり不本意なシーズンになってしまった。
その大きな理由のひとつに、ケガの問題がある。キープレイヤーを中心にケガ人が続出したことは、今シーズンのアーセナルのパフォーマンスに深刻な影響を及ぼしただろう。
今シーズンのケガ人リストの名前を見るに、彼らがずっとフィットしていたらと思えば、ケガでアーセナルのシーズンが決まったといっても過言ではない。
そして、その原因はなんだったのか。今後同じようなことが起きないためにはなにができるか。あるいは起きたときに対処できるか。
今回は、この記事をざっくり紹介し、アーセナルのケガ問題について考えたい。
「アーセナルのケガ問題はいかにして起きたか?」 by ジェイムズ・マクニコラス
記事をざっくり要約しよう。
- 24-25シーズン、アーセナルのメンズチームはケガにたいそう苦しめられた
- ガブリエル、オーデガード、サカ、ハヴァーツ。チームのベストプレイヤーたちが大きなケガ。その他多くの選手もケガの修復のため手術を余儀なくされた
- アルテタは、間違いなく今年のトロフィなしの大きな原因がケガ(やサスペンション)にあると考えている
- 24-25シーズン、アーセナルのケガ人の数はリーグでワースト4位(36人)、ケガによる離脱時間もワースト4位(1297分)※Premier Injuriesによる
- アーセナルは慢性的にケガ問題に悩まされており、今シーズンだけで7人がハムストリングの問題を起こしている
- アーセナルは、総じて筋肉と腱(tendon)の損傷が増えていると感じているが、PLには公式なケガの監査機関がなく権威ある裏付けがとれない
- クラブがコントロールできない、たとえば代表義務でオーデガードがタックルで負傷したように、単純に不運と呼べるものも軽視できない
- しかし、リヴァプールのArne Slotのように、フィットネスが運に左右されることを否定するコーチもいる
- 彼らは30以上のリーグ試合をプレイできたアウトフィールド選手が11人いたのに対し、アーセナルは5人のみだった
- Slot「もしケガが運・不運で決まるというのなら、われわれは幸運だったのだろう。しかし、われわれはそれを自分たちの取り組みで防ごうとしてきた。だからわれわれには多くのケガ人はいないし、それを運とも思わない。まずなによりトッププロはケガをしないようにするし、優秀なスタッフもいて施設もある」
- では、クラブがコントロールできた要素があるとして、アーセナルはどうやってこの問題に対処できるだろうか?
完璧なスクワッドサイズ?
- シーズンの終わりが近づくにつれ、アルテタはファーストチームの選手が足りていないことを頻繁に話すようになり、もっとスクワッドの人数を増やすことが彼の一貫したテーマになっていた
- 4月のアルテタ「はじめからスクワッドが超足りないとわかっていたし、何人かの選手はケガの可能性も高かった。われわれが選手により多くの試合でのプレイや遠征、インテンシティを求めるなら、唯一の解決策はより多くの選手を持つことだ」
- こうしたコメンツが興味深いのは、以前のアルテタは小さなスクワッドを好む姿勢を見せていたから。2022年には「22人のアウトフィールド選手と3人のGK」でよいと云い、その1年後には30人のプリシーズンスクワッドは「維持できない」と述べた
- アルテタは考えを変えたようだ。今年のはじめには「つねに23-24人のアウトフィールド選手に4人のGK」がほしいと述べている
- 24-25のファーストチームは、MLS、ワネーリ、セットフォードを含めて25人スクワッドとなっている。アルテタの理想からは2-3人少ない程度
- アルテタは、問題は人数だけでなくバランスもあると考えている
- 5月のアルテタ「スクワッドの適正サイズの問題。スクワッドのなかで全員が役割を受け入れる必要がある。つまり22人のアウトフィールド選手がいて、そのなかで5人のFBが全員ファーストチョイスだと思っていたら、大きな問題になる」
- もしアーセナルのスクワッドが人数不足だったり、インバランスだったとしたら、それは部分的には自業自得だろう
- たとえばファビオ・ヴィエラ。アルテタは彼のローンの議論に加わっていたはずで、彼をオーデガードやサカを休ませるためにキープすることもできた
- この夏アーセナルには問題を解決するための機会があるが、誰を連れてくるかが決定的に重要。耐久性ある補強
- 去年夏、クラブがボローニャのカラフィオーリに向かうとき、彼のフィットネス履歴にはフラグが立っていた。結局彼はデビューシーズンで5つの異なるケガで離脱することになった
- もう一つの重要な点は、チームのデプスはアルテタからの信頼に左右されるということ。シーズンが進むにつれて、一部の選手は使えないと見なされることもあった
- もしアーセナルが選手たちをフィットさせておきたいなら、ロテイションのためのオプションがなければならない
アーセナルでなぜ手術がこんなに多かった?
- 今シーズン、アーセナルでは少なくとも7人の選手が手術をすることになった。トミヤス、ホワイト、サカ、ジェズース、ハヴァーツ、ガブリエル、そしてティンバー
- このなかで、サカ、ハヴァーツ、ガブリエルは3人ともハムストリングの手術へ。3人の選手が同じ状況。ローンでフラムへ行ったネルソンを加えるなら4人
- ひとつの仮説として、ハムストリングのケガは、ますます上がる試合のインテンシティの避けられない帰結ということ。試合でのスプリントはさらに要求されるようになり、ハムストリングはスプリントや急なターンで損傷を受ける
- しかし、なぜこれほどの人数が手術を行うことになったのか?
- 考慮すべきひとつの側面として、より多くの筋肉/腱の問題が発見しやすくなった診断技術の進歩があり、術後も圧倒的に改善されている
- もしこれが10年前なら、これらのケガでは手術をすべきとみなされなかったものもあるはず
連続するケガの連鎖反応
- アーセナルでは同じポジションの選手にケガ人が続出しているが、これは単なる偶然ではないかもしれない
- たとえばRB。トミヤスはヒザの問題で8月と2月に手術を行い、今シーズンたった6分しかプレイできていない。復帰まで今年いっぱいはかかる見込み
- ホワイトもヒザの手術で11月から2月まで14試合連続でPL試合を欠場
- このふたりが離脱しているあいだ、ティンバーはPL14試合のうち13試合で86分かそれ以上プレイ。さらにここに、CLとカラバオカップでの5試合のスタートがある
- これはACLのケガで23-24シーズンのほとんどを棒に振った選手にとって、多大な負担となった
- ティンバーの耐久性と安定性は素晴らしいものだが、彼もまた足首に問題を抱えていた。そしていま彼は手術を行い、クラブはプリシーズンまでの復帰を期待している
- それよりも大きな問題はCFだったかもしれない
- 12月11日と1月12日のあいだ、ジェズースはすべてのコンペティション9試合のうち7試合でスタートした。これは2023年12月以来では、彼にとってもっとも安定した時期だったが、残念ながらそれもケガで中断を余儀なくされた。FAカップのサードラウンド、マンUでACL断裂
- 彼の離脱により、ハヴァーツへの要求はさらに高まった
- 彼はキャリアのほとんどで大きな筋肉の問題も起こさなかった素晴らしいアスリートである。そんな彼にアーセナルは頼るようになる
- シーズンスタートから12月初旬まで、ハヴァーツはPL14試合のうち13試合、CLの5試合でスタート。そのどの試合でも彼は交代していない
- 彼のスタミナとプレッシングでつねにフィールドに立ち、しばしばかなり要求の高いMF役もこなした。それは、5-1で勝ったスポルティング、5-2で勝ったウェストハムでも同じ
- 12月にジェズースがプレイを始めると、チームはハヴァーツをより休ませられるようになったが、彼が離脱するとハヴァーツへの依存にまた戻った
- そして休養になるはずだった2月のドゥバイでのミッドシーズンキャンプで、彼はハムストリングを断裂して帰ってきた
- アーセナルは、ハヴァーツのフィットネスに賭けて冬の移籍ウィンドウでストライカーを補強せず。賭けは負けたのだった
インテンシティのレベルが問題?
- フィジオ、あるいはクラブドクターの仕事は効果的なリスク管理。だが、それは科学と完全に同じものではない
- 選手のavailabilityは交渉次第でもある
- ふつう、マネジャーは選手をプレイさせたいし、選手もプレイしたい。クラブの医療部門の仕事は、必要なときにそこに情報や助言をもたらすこと。しかし彼らの権威も絶対ではない。そうした会話のなかでは、マネジャーや選手本人の意向が重視される
- たとえばホワイトやガブリエルは、医療リポートがそれをリスクだと指摘してもプレイしたがる選手として知られている。それはマネジャーとしては価値ある素質ではあるが、アスリートというものは自分で自身を守る必要もある
- アルテタはトレイニングセッションでもインテンシティを重視するコーチだが、それは近年のPLクラブにとっては珍しいことではない
- アルテタはロンドンコルニーでは支配的なパーソナリティのマネジャーであり、そうなるとhead of sports science and performanceのTom Allenや、クラブドクターのZafar Iqbalが、アルテタにどの程度物申せるかは疑問がある
- ただ、今シーズンのアーセナルのケガ問題によって、クラブのなかでこのふたりはとても重要視されており、今後これらと同じか、あるいは似た問題を防ぐために彼らのインプットが非常に重要になる
アーセナルが学ぶべき24-25シーズンの教訓?
- レヴューのプロセスはもう始まっている
- アーセナルでは、シーズン中にも微調整を行えるよう2ヶ月ごとのパフォーマンス評価がある
- そして現在は、より大きな報告をもってシーズンを深く分析し、プリシーズンの計画は、選手に最高のフィットネス基礎をもたらすよう調整される
- 3月にクラブに来た新SDのアンドレア・ベルタもこの議論に加わる。なぜなら、この問題に対する解決策は、いかにスクワッドを構築するかにも関係するから
- 選手のフィットネスに関するギャンブルの要素は消えないにせよ、ファーストチームのグループをより大きく、よりよいものにすることで、ギリギリの状況に対してもっと保守的な選択ができるようになるはず
- アーセナルは次のシーズンで似たような結果は絶対に避けなければならない。そして、移籍市場がそのための最高の機会をもたらす
以上
つまりアーセナルのケガの原因は選手の過負荷? アルテタのレギュラー固定?
もちろん、そこまで単純化できないし、さまざまな原因があるとして。
ひとつは運。純粋に事故によるケガはある。
記事のなかで例にも挙げられているように、オーデガードのやつは完全に運のように思える。タックルの標的になりやすいプレイスタイルとかそういう要素は除くとして、基本的に試合中に起きる事故は避けられないし、今後もほとんどどうしようもないだろう。相手のプレイが悪質でない場合すらある。
トミヤスやカラフィオーリの足首をひねったケガも、彼らがケガがちとはいえ、偶然性が高いかもしれない。
そしてこれはアーセナルに限らず、どこのクラブでも同じこと。これはひとまずこのケガ問題の議論から除外して考えてよいと思う。
いっぽうで、ハムストリングのケガなどは運とは無関係の要素が多いだろう。リヴァプールのボスが云うような、常日頃の取り組みから避けられるやつ。そこが問題だ。
24-25シーズンは、アーセナルだけでなく多くのPL選手がハムストリングのケガに悩まされていて、それこそ毎週のように頻繁に選手のケガ情報を見かけた。日々のニュースを見るだけでも、全般的にそれが増加している感じはある。
ハムストリングのケガの大きな理由のひとつはやはり長時間のプレイや、高いインテンシティなどの身体的な過負荷にあると云われている。試合数の多いトップチームでレギュラーでプレイするトップ選手であればあるほど、その負担は大きい。これにさらに代表義務まで加わるため、選手の負担はほとんど限界に近いというのが現状だろう。
ブカヨ・サカの長期離脱が確実に。アーセナルはどう対応する | ARSENAL CHANGE EVERYTHING
ただ、これはある程度チームでコントロールできることでもある。アルテタがよく云う「コントロールできる/できない」の、できるほう。プレイ時間を管理して負荷を軽減すればよい。
そして本来はそれをもっと注意すべきだったのだろう。クラブと代表チームと休みなくプレイするサカのケガなど、もう長らくずっと危惧されていたのだから。同じことをつづければ持続可能性はなく、ケガは時間の問題だとすら思えた。
今回紹介した記事のなかでは、控えめに指摘されているだけだが、やはりアルテタのローテイションには不満を持っているファンも多いようだ。今年も特定の選手が酷使される傾向がはっきりだった。そのいっぽうで、ベンチにはつねにプレイ機会に不満な選手がいる皮肉。
ちょっと話はそれるが、個人的には今シーズンのジンチェンコの扱われ方にはずっとモヤモヤがあった。彼も間違いなく今シーズンの自分の扱われ方に不満だったひとりだろうと思う。
今シーズンの彼は多くの期間でフィットしていたのに(ケガによる離脱はPLで7試合)、なんとPLで最初から最後までベンチで試合を見守りつづけた試合が16もある。そしてプレイしたPL15試合でスタートした試合はわずか5、その合計プレイ時間は500時間とちょっとしかない。たったの6試合分に満たない程度。彼はそんなに使えない選手だったかね?
DF(LB)としてお世辞にも守備は優秀とは云い難いので、LBとしてはティンバー、カラフィオーリ、MLSらが優先されるのはしょうがないとしよう。しかし、彼はMFでもプレイできるし、実際アルテタも今シーズン後半は何試合かCMとして起用するようになった。そして、それについて問われたアルテタは、まるで彼が新ポジションに適応したみたいなことを述べていたが、彼がMFでプレイできることなんて以前からみんな知っていることではないか。
ましてや、今シーズンはオーデガードが短くない期間離脱し、そのあいだはRCMのオプションにはいつも苦慮していた。だから、なぜアルテタはジンチェンコのLBポジションにこだわったのが最後まで謎だった。このチームでクリエイターとしてプレイできる選手はオーデガードのほかには、ほとんどジョルジーニョとジンチェンコしかおらず、ワネーリが信用できないなら、ジンチェンコをピックアップすることはいかにも自然に思えたものだったが。
ほかにも、キヴィオールはシーズン終盤ガブリエルの代役として期待以上のパフォーマンスを発揮できたから結果オーライでよかったものの、完全なバックアップから突然レギュラーになるみたいな、あんなに急激な変化に対応するのは簡単じゃないはず(※PLフラムでケガをしたガブリエルと交代する前までPL14試合連続ベンチ。フラム後はPL8試合連続でスタート)。シーズンの超重要なタイミングで、突然に大役を仰せつかったキヴィオールが機能したことは、ラッキー以外のなにものでもない。
バックアップ選手にチャンスを与えないことは、レギュラーを酷使して消耗させるだけでなく、バックアップ選手の実戦感覚も奪い、緊急時に困ることになる。だから、アルテタのようなスクワッドマネジメントは、いろいろな意味で問題が多いと思う。とくに、選手が足りないと嘆いているような状況では。
この記事に寄せられたコメントのなかにもアルテタのローテイションのやりかたに不満を持つ声が少なくない。今シーズンのケガ問題についても、「これはここ数年のレギュラー固定の代償である」というコメントにはもっとも多くのLIKE評価と反応があった。
プレイ時間の長いキープレイヤーがケガをしていることも納得だろう。サカ、ハヴァーツ、ガブリエルは、今シーズンでアルテタがもっとも重用した3人で、3人ともハムストリングをやった。これは偶然ではなく必然では。
あとは、記事でも触れられている選手のタフさ。耐久性。
今シーズンに5つの異なるケガをやったというカラフィオーリのように、ケガをしがちな選手というのはいる。アーセナルに来てから急にケガをするようになったみたいなケイスはどうにもならないが、これまでのケガ履歴から要注意人物かどうか判断できることもある。
これはアーセナルに限らないだろうが、選手リクルートメントにおけるケガ履歴の検討は、今後ますます重要になるかもしれない。Availability is the best ability.
この記事では、アルテタの「支配的パーソナリティ」に触れられているのも興味深いように思える。発言権が強い。意見が通りやすい。これには、いい部分と悪い部分があると思う。
ぼくは基本的には、チームについてマネジャーであるアルテタの発言力が大きいのは悪いことだとは思わない。ヘッドコーチが右足のLWがほしかったのに、SDが左足のRWを連れてくるみたいなトンチンカンな補強は、やっぱり最悪だと思うから。彼がつくっているチームなのだから、彼がチームにほしい、必要だと思う選手を連れてくるのが本来あるべき姿と思う。そのためにはアルテタに発言権があったほうがいい。
しかし、ことローテイションやチームセレクションのようなスクワッドマネジメントについては、マネジャーと選手の意向があろうとも、誰かが進言すべきなんじゃないかと思う。医療部門のひとたちには、フィットネス観点から、ぜひ説得してもらいたいね。
今シーズンの一時期、アルテタはよく選手の負荷管理について言及していたので、そういう問題意識もクラブのなかで共有されていたんじゃないかと推察する。それこそ、医療部門からケガ防止のために選手のプレイ時間をもっと制限させましょうと進言があったとか。それは、スターティングのセレクションにはある程度反映されたかもしれない。
時間をかけてこのチームをつくってきたことで、ベンチの選手たちに信頼がおけないような状況は、彼がエメリからチームを引き継いだころに比べてもどんどん減っているようにも感じるが、それでもやはりアルテタはレギュラーチームを固定したがる。ベストな選手をできるだけ長い時間使いたがる。バックアップを使いたがらない。
いやもちろんある程度のレギュラー固定化はあると思うけども、5ゴールぶっこんで圧倒的に勝ってる試合でもレギュラースターターを下げないって意味わからんよね。
以前アルテタが「絶対にサブで変えられたくない選手がチームに3人いる」みたいなことを云っていたが、そんなのマネジャー次第としか。というか、それこそボスが選手のいいなりになっちゃダメなところだろう。説得してでも休ませないと。
それでもケガが起きたとき……24-25シーズンを繰り返さないために
やっぱり大きなスクワッドを持つしかない。大きくて優秀なスクワッド。ベンチも含めてアルテタが信頼できる選手だけで構成された。
プレイのインテンシティもケガの一因と思われているが、アルテタのインテンスなスタイルは新シーズンも変わらないだろうし、そこはいまのアーセナルの強みのひとつでもある。避けられるケガは防ぐ必要はあるにせよ、ある程度のケガは避けられないと思っていたほうがよい。
ケガ人が出てもそれに対応できるスクワッドのサイズ。それは現状よりも確実に大きなものになる。それにクオリティ。人数を揃えたところでアルテタが気に入らなければ使われないのだから意味がない。
もともとアルテタが小さなスクワッドのほうがいいと云っていたのは、人数が多ければ多いほど全員に平等に機会を与えることはできないし、みんながハッピーでいられなくなるからだろう。それはチームとスクワッドの一体感や士気に関わる。
しかし、だからといってあまりに小さなスクワッドにすると、いざというときに困る。それが24-25シーズンのアーセナルに起きたこと。少人数で一人当たりの負担も大きいから、よけいにリスクが増す悪循環。
オーデガードが離脱したとき、仮にESRかヴィエラか、あるいは両方いたら彼らにはいいプレイ機会になったはず。ESRなんかはアーセナルの事情を観ていて、急いでフラムに移籍なんかしないで残ればよかったと思ったかもしれない。
あるいはオーデガードが離脱しなかったとしても、フロントラインの離脱者を考えれば、やはり彼らAMの機会はかなりあったに違いない。彼らはウィングでもプレイできるんだから、試合中に流れを変えるみたいな役割もあった。今シーズンのベンチに攻撃オプションが皆無だった時期を思えば、そっちのほうが重要だったかも。
ESRは大金で買うクラブがあったから売却はやむを得なかったにせよ、ヴィエラ(あるいはネルソン)のローンはもうちょっと慎重でもよかったかもしれない。まあ、アルテタがあまり彼を信用していないから起きたローンだろうけど。
ということで、この夏の移籍ウィンドウでは買う選手と売る選手のバランスでは、売るよりも多く買う必要があるし、多少大所帯になっても無理して売らないほうがいいのだろう。
新しい9とWGが来て来シーズンはプレイ時間が確実に減るだろうトロサール、それとガブリエルが戻ったらまたバックアップになりそうなキヴィオール、彼らは積極的に移籍希望でなければ当然キープしてもらいたい。ふたりともトロフィを取るシーズンでは、超重要な戦力。
それと売却か残留か不透明なジンチェンコはどうだろう。彼が売られるのはもうしょうがないと思うが、売るなら代替はかならず必要。
トミヤスが年末に戻るから、それまでギリギリでやりくりしようなどという発想がそもそも危ない。2025冬ウィンドウのようなギャンブルはもうできない。
このブログでも何度もツッコんできたように、アルテタは「全員で戦う」と云うのだから、云うだけじゃなくて、ベンチを含めてほんとに全員で戦ってくれよと思う。
今シーズンの極薄スクワッドでも、ベンチをもっとうまく利用していれば、ここまで苦しくはなかったかもしれない。KTはウィングとしてももっと使ってもよかったんじゃないかとか。
サブを使うと戦力が落ちるのはしょうがない。しかし、それでもサブを使わないと長いシーズン、レギュラーのベスト選手たちだけで最後まで乗り切れないのは、ここ数年でももうほとんど証明されているようなもの。
そこにバランスを見出すことも、新シーズンのアルテタの超重要な仕事であり挑戦でもあるという気がする。
夏ウィンドウでレギュラーだけでなくバックアップのクオリティがもっと上がっていれば、問題の多くの部分も自ずと解決されるだろうか。
シリアスにタイトルを狙う新シーズン。われらが毎年トップを逃しているこの3年間を振り返れば、いかにケガを防ぎ、ケガ人が出てもそれをカバーできるか、いかに長くベストなチームとスクワッドで競争力を維持できるかが、間違いなく成功のカギになる。
おわり