EPLで久々の快勝。今季アウェイマッチ初勝利となった。とくにマンU行きの噂が大きく報道されたメスト・エジルは、生まれ変わったかのようなキレキレのパフォーマンスでチームを牽引。アーセナルのゲームメイカーに相応しい活躍を見せた。
Everton 2-5 Arsenal: Pressure piled on Ronald Koeman as Gunners run riot
アーセナルのスターティングイレブン
メルテザッカー、コシエルニ、モンレアルの3CBはソリッド。スターティングメンバーでは唯一コラシナツだけが心配な状態だったが(腹でも痛かったのか)、失点の場面だけを除き、守備も攻撃もほとんどの局面でうまくいっていたといえそうだ。
エジル、サンチェス、ラカゼットの3人が同時にスタートするのは意外にも今季初だったという。この3人に随時ラムジーが加わった攻撃は厚みがあり、われわれの期待を裏切らない非常に見応えのある攻撃となった。この4人が仲良く1点づつ取ったというのもうれしい。
交代で入ったウィルシャーもしっかり存在感を出しており(ラムジーにアシスト)、エヴァートンがいろんな意味で酷かったにせよ、アーセナルにとっては今後に向けてポジティブインパクトのある試合となった。
エヴァートンvsアーセナルの論点
今回はSquawkaのポスト「エヴァートン戦に勝利したアーセナルの14のおかしなスタッツ」が面白かったのでそちらをネタに書いていきたい。
14 ridiculous stats from Arsenal’s win over Everton
その1、EPL昨季と今季合わせて、アシストとスコアラーのコンビでは「サンチェス to エジル」が最多
サンチェスがアシスト+エジルがゴールした6得点は、昨シーズンのど頭からこれまでプレミアリーグで一番多いということらしい。たしかにマンU戦とか、エジルの印象的なゴールを思い出すとサンチェスがアシストしていた気はする。それももう観れなくなるんだね……
その2、アーセナルは11/12シーズン以来、EPLでもっともヘッダーで得点したチーム
これは意外だなあ。やっぱりジルーの貢献が大きいんだろうか。今回のエジルのゴールはアーセナルにとって11/12シーズン以来78個めのヘディング・ゴールだったとのこと。そのうちエジルは3得点している。これも意外だなあ。
WhoScored.comなんかを見るとアーセナルは「セットピースが得意なチーム」となっていて、それも意外な気がしていたけど、そんなことないのか。
その3、アーセナルはエヴァートンにもっとも得点しているクラブ
EPL史上。そういえば、エヴァートンといえば開幕戦で6点くらい取った試合をいつも思い出すんだよな。開幕戦に劇的に弱いアーセナルだから余計に印象に残っている。エヴァートンはお得意様。この試合、ルーニーに先制点を取られてすら、あんまり心配はしなかった。
5点も取るとは出来過ぎだけど、エヴァートンもなあ。下位クラブのように守ってカウンターという戦術ならこんなことにはならなかったろうに。中途半端に攻撃に色気を出して結局逆襲されるという。何をやってもうまくいかない悪いときのアーセナルを観ているようだった。
Arsenal have now scored 100 Premier League goals vs. Everton; the first team they have reached triple figures against in the club’s history. pic.twitter.com/zQglA4jAHZ
— Squawka Football (@Squawka) 2017年10月22日
その4、エジルは前半、ひとりでほかの全選手を合わせたよりもチャンスをつくった
前半だけでひとりで6チャンスクリエイト。ほかの全選手を合わせて5チャンスクリエイト。いつもこの調子なら、全力で引き止めたいんですがねえ。
その5、前半のアーセナルはEPL過去6シーズンでもっとシュートを放ったクラブ
前半のシュート17本は、2011年以来のEPL記録とのこと。アーセナルは攻撃はまあまあいいのだ。問題は守備。失点しなければ負けないということを彼らに知ってほしい。
それと、これがあんまり褒められた記録だと思えないのは単に効率が悪いということでもあるからだ。シュートを打つのは結構だけど、だったらもっと入れようよという話である。
その6、GKピックフォードは前半にもっとも多くのセーブを記録
その5と対になっている。なぜか相手GKが覚醒してしまうというアーセナルあるある。17本も打って1点しか取れなかったというのはそういうこと。8セーブ。
優秀だといわれるGKってこういうところで記録をつくっていくから、弱いチームにいると余計にスタッツが上がっていくような気がしないでもない。
その7、モンレアルがシーズン2得点したのはキャリア初
おれたちのナチョがブライトン戦に引き続き得点。ノッている。最後のバックパスだけはいただけなかった。不思議な選手である。
この試合、モンレアルだけでなく、コシエルニも結構積極的に攻撃に参加していたが、それだけエヴァートンのプレッシャーがなかったということだ。CBの選手にアレだけ攻撃参加されては、守るほうもキツいはずだ。
その8、ジャカは昨季今季合わせて、アーセナルでもっとも失点に直結するエラーをやらかした選手
その数ふたつ。しかしフットボールではたった1点でも十分に危機に陥る。ジャカは集中力が足りないのか、今回のようにヴァイタルエリアでボールを奪われたり、不用意な横パスをかっさらわれたりと、何かとやらかしがちだ。彼のポジションからするとミスが相手の得点チャンスに直結するので致命的である。今回も先制点を奪われる直接のきっかけとなった。自陣深い場所で絶対に行ってはいけないエラーだ。
加入当初に比べイエローカードも減ったし、中盤底から長短で繰り出すパスはいつも上質だが、相変わらずこういうプレイをやらかすので、信頼していいのかどうかわからない。今のところボスはジャカをスターティングから落とすということは考えてはいないようだが、アンカーポジションならジャカよりもっと適したタイプの選手はいるだろう。ボスは彼をもっと前目で使いたかったんじゃないだろうか?
その9、ルーニーがアーセナルに12得点。アーセナル相手にもっとも得点した選手
アーセナルキラー。なんかそういう選手多い。この世にアーセナルキラーはどれだけいるのか。
その10、ラカゼットがアウェイマッチ初得点
今季5ゴール目はアウェイでの得点。おめでとう。
ラカゼットの得点はカウンターだったのだけど、直前に並んでゴールに向けて走り込んでいるラムジーとアイコンタクトをしていたのが印象的だった。わざわざあとからビデオで確認してしまった。
ラムジーが相手DFを引きつけて走り込むと、一緒にボックスに侵入したラカゼットが急減速、DFが剥がれたところにエジルからドンピシャでグラウンダーのクロス。フリーで右足を振り抜いた。美しい。この時間エヴァートンの選手たちはもう戦意喪失していたとはいえ、ここで外さないのがストライカー。
その11、今季ここまでラカゼットが90分フル出場したのは1回だけ
Alexandre Lacazette’s minutes by game in the Premier League:
90′ ⏱
78′ ⏱
28′ ⏱
75′ ⏱
66′ ⏱
83′ ⏱
71′ ⏱
68′ ⏱
77′ ⏱Just one full game. 🔁 pic.twitter.com/YeYUNblgBf
— Squawka Football (@Squawka) 2017年10月22日
先日、拙ブログでも「なんでラカゼットを90分使わないのか?」というエントリを書いたけど、やっぱりおかしいよな!
その12、エジルはこの試合が今季最初のアシストでそれまでに24個のチャンスクリエイト
要するに最初のアシストを記録するまでにどんだけ時間がかかっているんだという話。24個もチャンスをつくらないとお前ら得点できないのかと。
しつこいようだが、「Chance Created(チャンスクリエイテッド/チャンスクリエイト)」の定義については、当ブログの過去エントリもご覧いただきたい。「Key Pass(キーパス)」の意味含めて、フットボール用語を紹介している。
チャンスクリエイト = アシスト + キーパス(ゴールできなかったアシスト/アシスト未遂)
その13、エジルはこの試合で8チャンスクリエイト。今季のEPLの単試合では最多
うん。
その14、ウィルシャー、アーセナルでアシストを記録したのは2014年9月以来
ラムジーにアシスト。ウィルシャーは復帰してから、かなりいい動きを見せていると思う。リーグ戦でジャカに変えてみてほしい。
以上。
おわりに:エジルのモチベーション
この試合、とにかくエジルがキレていた。もちろんMOMである。これまでのパフォーマンスと比べればそれはもう豹変といってもいいくらいだったので、何かあったのかと訝しまれてもしょうがないかもしれない。
エジル批判の急先鋒、いつものマーティン・キーオン氏はこの試合のエジルについて「マンUに対してのデモンストレーションだったんじゃないか」と穿った見方を崩さない。この人は一貫してエジルの忠誠心を信じない派である。
しかし今回それが単なる戯言とも思えないのは、エジル自身はアーセナルを出て勝てるクラブに行きたいと思っているにも関わらず、いまエジルを本当に必要としているビッグクラブがほとんどないという現実だ。
If Mesut Ozil leaves Arsenal in January, which clubs would want to sign him?
このエヴァートン戦の前日にポストされたESPNの記事では、事実上エジルをほしいと思っているビッグクラブは「リヴァプール」と「バルセロナ」くらいしかないと断じている。移籍が噂されるマンUも、マドリーもバイエルンもPSGもみんなこの高齢の高給取りが現時点でどうしても必要というわけではない。
しかし、もしかしたらこのエヴァートン戦でのハイパフォーマンスでこれらのクラブもエジルの見方を変えるかもしれない。もしこのパフォーマンスを持続できるようなら、1月あるいは来夏に格安で手に入ることは獲得を希望するクラブにとって大きなチャンスとなる。代理人は週給300kを要求しているといわれるが、逆にエジルがプレイを望むようなビッグクラブが手を挙げるならエジル側でこの法外な要求を妥協しない理由はない。
いずれにせよ、それだけで判断するにはエヴァートンは弱すぎた。2週間後のアウェイマッチ、マンシティ戦で真価が問われるはずだ。とくにビッグマッチでファイトできないといわれているエジルだ、格別のモチベーションで臨んでもらいたい。