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No.1ショットストッパーは誰だ? 「セーブ効率」でゴールキーパーを比較する。そしてアーセナルの新GKはレノで大丈夫なのか問題

アーセナルが今夏取るべきGKについて書き始めていたのだけど、その元ネタからリンクされていたとあるアナリストによるGK分析が大変に興味深かったので、そちらをまとめて紹介してみたい。

現在アーセナルとリンクされているGKも何人か登場するので、われらがこの夏に取るべき/取るべきでないGKについての参考にもなる。

失点やミス、配球やセーブ率など、GKを評価するときのスタッツデータはいくつもあるが、純粋にGKの能力を測ろうとする場合には、それぞれの選手で置かれているチーム状況が違うため、多くのスタッツデータは単独で使用するとノイズが入りやすいという難点がある。

ここでアナリスト氏が独自に?使っている「セーブ効率」(xGを使用して予想失点をどれだけ防いだか)というスタッツは、なかでもチーム事情や戦況に左右されにくく、純粋なGKのクオリティを測るのに比較的適した指標だといえる。

「xG」ってなんだよという方は、当ブログの過去エントリで詳しく紹介しているのでそちらをご覧いただければと思う。ざっくりいうとシュートしたときの「ゴールの可能性」を表した、最近使われるようになった新しいスタッツである。

最近見かけるようにった「xG(エクスペクテッド・ゴールズ)」とは?

ではとあるアナリストの連続ツイートから。

※今回はツイートがメインなので、ツイートの埋め込みが見られない方がいたら大変に申し訳ない。



ゴールキーパーの「セーブ効率」

アナリストと書いたが彼のツイッターの自己紹介を見ると、今は以前ほどそのようなツイートはしていないようだ。

まあいい。Colin Trainor氏の2017年末の連続ツイートから紹介する。日本ならお正月休みである。ご苦労さまである。※2017年は年末までのデータとなる。

「SaveEff」(セーブ効率)は、各ツイートの表の一番右にある。セーブ効率は100%が平均となるので、100%以上(予想失点 > 失点)なら優等、100%以下(予想失点 < 失点)なら劣等と見ることができる。計算式は以下。

Save Efficiency(セーブ効率) = Post Shot xG(xGからの予想失点数) / Actual Goal Conceded(実際の失点数)

以下、ツイート順。順番はとくに意味はなさそうだ。

フレイザー・フォスター/Fraser Forster(サウサンプトン)

彼の昨シーズンは、シュートセーブがうまくいかないシーズンだったね。それ以外では、だいたい予想失点数と同じくらいの失点だ

ダヴィド・デ・ヘア/David De Gea(アトレチコ・マドリッド、マンチェスターU)

みんなが知りたかったグレイトなGKのデータだよ。まあデ・ヘアをちょっと見てみてよ。どのシーズンも予想ゴール以上のセーブを記録。今季の記録なんかスゴイぞ!

ヤン・オブラク/Jan Oblak(アトレチコ・マドリッド)

オブラクもヤバいよね。彼の若いときのデータがないんだけど、この数字は間違いない

チボ・クロトワ/Thibaut Courtois(チェルシー)

これは議論を呼びそうだなあ。チボ・クロトワ。数字は彼をグレイトなショットストッパーじゃないといってるね。どのシーズンも平均か、あるいは平均を下回っている

ペトル・チェフ/Petr Cech(チェルシー、アーセナル)

年齢のわりには、ここ数シーズンでもアーセナルにとってはいまだグレイトだ。今シーズンは少し落ちてきているが

トム・ヒートン/Tom Heaton(バーンリー)

彼は怪我から復帰していたらイングランドのGKにふさわしかったね。この5シーズンの安定性は素晴らしい。ちょっとしたダイク効果(バーンリーが被ったシュートはxGモデルより低いクオリティかも)かもしれないが、彼はショットストッパーだよ

ジャック・バトランド/Jack Butland(バーンズリー、リーズ、ダービー、ストーク)

わりと予想ゴール数と横並びのセーブ数。彼の数字じゃヒートンと比べられないな

ウーゴ・ロリス/Hugo Lloris(リヨン、ToT)

彼はキャリアを通して素晴らしいショットストッパーだ。わたしの計算した予想ゴール数よりもつねに実際の失点のほうが少ない。そういう意味では昨年のパフォーマンスは普通なら繰り返されないだろう外れ値だった

テア・シュテーゲン/ter Stegen(ボルシア・メンヘングラッドバック、バルセロナ)

シュテーゲンもリクエストが多かった。彼は浮き沈みがあるね。でも今年はなかなか素晴らしいシーズンを過ごした。2017の数字は続かないだろうね

ジョーダン・ピックフォード/Jordan Pickford(プレストン・ノースエンド、サンダランド、エヴァートン)

彼はまだキャリアの初期にいるが、それぞれのシーズンを通して見てみれば、悪い部分は何もない

ケイラー・ナヴァス/Kaylor Navas(レヴァンテ、レアル・マドリッド)

彼のシュートストップの数字はずっとグレイトだね。昨シーズンに少しだけ落ちてしまったが、それを抜きにすれば彼は安定して予想より失点が少ない

マヌエル・ノイヤー/Manuel Neuer(シャルケ、バイエルン・ミュニック)

彼はもっといいGKだと思ったんだけどな。。予想より少ない失点しかしない素晴らしい安定性がある

ルーカス・ファビアンスキ/Lukasz Fabianski(アーセナル、スウォンジー)

彼はなんとかレーダーに引っかからないようにがんばってるね。。でも彼は本当にソリッドなショットストッパーだ。どのシーズンも予想の前を走っている

エデルソン/Ederson(ベンフィカ、マンチェスター・シティ)

今日はエデルソンについてたくさんのリクエストをもらったよ。2シーズンしかデータがないんだ。良さそうだよ

ダヴィド・オスピナ/David Ospina(ニース、アーセナル)

十分素晴らしいセーブ記録だね

アリソン/Alisson(インテルナシオナル、ローマ)

ローマは2つのグレイトなシーズンを過ごしたGKを取った。でも今季の彼はさらにいいシーズンを送っている。17の予想ゴール数に対して11しか失点していない。どんなに良くてもシーズンの終わりまでそれがもつかわからないが、彼がグレイトGKなのは明白だ

ヴォイチェフ・チェズニー/Wojciech Szczesny(アーセナル、ローマ、ユヴェントス)

オウ、見てくれよ、また元アーセナルのまともなGKだ!

シモン・ミニョレ/Simon Mignolet(サンダランド、リヴァプール)

この数字はすごいね。サンダランドでの3シーズンは平均を超えていて、リヴァプールの4.5シーズンでは平均以下になってしまった。コンパクトにしてGKを守っているチームとオープンなチームのいい実例だね。分析モデルの不正確さがここにちょっと出ちゃったな

ロリス・カリウス/Loris Karius(マインツ、リヴァプール)

彼はドイツでは平均以上のGKだったし、今季ここまでリヴァプールで1つでもリーグゴールが少なかったらそのセーブ効率を続けられたのに。3シーズン平均を上回ったことはよかったけど、アリソンやデ・ヘアのような数字になることはない

ベルント・レノ/Bernd Leno(レヴァークーゼン)

これはリクエストだったんだ。6.5シーズンにもわたって平均以下のセーブ効率しかできていないGKも珍しいと思ってね。直近の1.5シーズンはかなり悪い

ティモ・ホルン/Timo Horn(ケルン)

若いGKにしては、3.5シーズンの数字はかなりいいね

ジャンルイジ・ブッフォン/Gianluigi Buffon(ユヴェントス)

これがヤバいディフェンスのチームにいるグレイトなショットストッパーの数字だよ。どの年も失点数の少なさはクレイジーだね。

(質問者に:PostShotxGというのは、枠内シュートのxGバリューの合計で、シュートする場所や位置を考慮してあるよ)

ロマン・ビュルキ/Roman Burki(フライブルク、ドルトムント)

14/15のセーブ数はとてもよかったね。そしてそれ以降はだいたい平均的と

引用以上。

なかなか興味深かっただろう?

ちなみに、ミニョレのところで触れられているように、この「セーブ効率」にはアナリスト独自のアルゴリズムが入っているのか、この分析モデルに不正確なところがある可能性について認めている。

本来はクラブの戦い方が変わったからといってここまでてきめんに数字に影響が出るものじゃないはずだから。でもそれもまたデータ分析のおもしろさのひとつだとぼくは思う。

GKを正しく評価する

ところで、このフットボール・アナリティクス業界ではゴールキーパーを正しく評価するということが、ひとつのテーマになっているようだ。つまり、現状では彼らは正しく評価されているとはいえない。

正しく評価されていないから、ゴールキーパーは高値で取引されない。これまでの市場最高値のGKはエデルソンで34.7Mポンド。フィールドプレイヤーではネイマールに198Mポンドが支払われているし、フィールドプレイヤーなら昨今35Mポンドくらいならもっと平均的な選手にも支払われている額である(ジャカとかムスタフィとか……)。もっとも今夏には、アリソンやオブラクでこれが大幅に塗り替えられる可能性はある。

そのあたりはこのプレゼンに詳しい。デ・ヘアとチェフの比較なんかもされている。GKのスタッツはもっと突っ込んだものを利用できるはずであると。

そしてGKが正しく評価されていないことは、実際ちまたで喧伝されている評価と、今回のセーブ効率のような実際の成績がマッチしていないことからもうかがえる。

セーブ効率から見える、過大評価のGKと過小評価のGK

一連のGKの分析を見ると、評価の高いGK(デ・ヘア、オブラク、アリソン、ノイヤー、ブッフォンなど)はセーブ効率もそれなりに素晴らしいものがある一方で、世間で広く優秀だといわれているほどには成績のよくないGKもいる。

もちろんシュートを防ぐだけがGKの能力ではないので、このスタッツだけでGKの能力を判断することはできないが、それでも彼らの実力を測るうえで重要な指標には違いない。いくらそれ以外の能力が高くてもシュートを防げないGKは誰もほしくはない。

余談だが、グアルディオラがシティでエデルソンに求めている能力は、明らかに配球だろう。とくに手でなく足を使ったもの。チームの戦術にもよるが大きな流れとして、そういったものも今後はGKを正しく評価するスキルセットの一部になっていくはず。余談ここまで。

過大評価で真っ先に目につくのが、なんとわれわれの今夏のNo.1ターゲットといわれているベルント・レノであった。。彼は2011年からのデータですべてのシーズンを平均以下のセーブしかできていない。ショットストッパーの悪い見本みたいな選手だった。

またチボ・クロトワのスタッツもこのセーブ効率モデルではじつに平均的なものだ。彼はデ・ヘアとともにレアル・マドリッドが長い間追っているGKであるはずだが、このスタッツだけを見ればやや過大評価といわざるを得ない。

逆にこのセーブ効率だけだと、過小評価と考えられるのは、バーンリーのトム・ヒートン、元ガナーのファビアンスキあたり。

彼らはアーセナルとはリンクされていないが、新しいゴールキーパー・コーチを雇ったいま、ファビアンスキを買い戻すというアイディアはないんだろうか? しかも新しいコーチはファビアンスキを指導したこともあるという。ユーヴェからチェズニーを買い戻すよりは現実味がある。

ベルント・レノで本当に大丈夫なのか問題

このエントリを書いているところでレノの最新情報を目にした。アーセナルが22Mユーロ+ボーナスでレヴァークーゼンにオファーとか。

Esclusiva: Leno, l’Arsenal offre 20, il Bayer chiede 22 più bonus. Il Napoli… | Alfredo Pedullà

まじですか。。

アーセナルは本当にレノに行くんだろうか。彼がアーセナルでエメリや新GKコーチの指導のもと改善しないとはいえないが、このようなデータを見てしまえばちょっと心配になってしまう。

ペトル・チェフの後任はオレだ! アーセナルが獲得すべき7人のGKを比較【後半】

以前にアーセナルの新GKについて比較したなかで、たしかに彼はエデルソンのような、フィールドプレイヤーのようにボールにさわっていくタイプのGKらしいが、シュートストップに問題があるGKがアーセナルにとって果たしてベターな選択なんだろうか。

IRSがまだなにかわれわれに見えていない、隠れた彼の能力を見出しているならいいのだが。

以上

 

おまけ

ジョー・ハート……

ジャックとジョー・ハートが今回のワールドカップに選ばれなかったことが話題になったがこれではしょうがない。。週給120kの価値なし。

おまけ2

リヴァプール……

今日GKの数字についてツイートしていたら、たくさんのリヴァプールファンから彼らのGKを比べてみてくれと頼まれたよ。まあ驚きはないけど、その返事は「悪い」だ。2011年からリヴァプールのGK(300分以上の出場)でシーズンを通して予想ゴールより多くのシュートを止めたGKはゼロだよ

リヴァプールはずっとGKに悩まされている印象があるよなあ。アトレチコと正反対すぎる。あのタコ踊りみたいなGK誰だっけか。あの時代はいまほど悪くなかったのか。

カリウスその後元気にしてるかなあ。。CLファイナルはさすがに気の毒だった。



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6 Comments on “No.1ショットストッパーは誰だ? 「セーブ効率」でゴールキーパーを比較する。そしてアーセナルの新GKはレノで大丈夫なのか問題

  1. レノに関してはレバークーゼンの攻撃的なスタイルも影響した上の数字だと思います。
    とはいえカリウスが1年目順応しきれなかったことを考えてもレノに過剰な期待はしないほうがいいでしょうね。まだまだチェフは必要になりそうです。

    1. おはようございます。

      > レノに関してはレバークーゼンの攻撃的なスタイル

      これなんですけど、本来このスタット(セーブ効率)はそういった攻撃的だとか守備的だとかのチーム事情に関わる要素を排除する分析モデルのはずなんですよね。

      あくまでxGがベースなので、攻撃的なスタイルのチームだからシュートを打たれやすいということなら、その分xGの値も大きくなるはずで、理屈としてそのせいでセーブ効率の数字が落ちることはないはずなのです。

      守備の選手たちのクオリティが低いとかそういう個別の事情も排除して、できるだけ純粋にGKのショットストップ能力だけを計測しようというコンセプトではないかと。

      ミニョレの数字が思いっきりチーム事情を反映してしまっているので、本人がそのモデルに不備があるかもと認めちゃってますけどね。。

  2. xG自体、曖昧さが残る数字の積み重ねなんで
    (野球で扱われてるUZRのように、状況区分の曖昧さを人が判断してる部分が存在してると思う。。)
    かつ被ゴール数という1,2の数字が大きい意味を持ちすぎるから単年を比較するのにはむいてないが、3,4年を見るのには十分すぎるというか、
    数字の小さい差についてはそこまで信用おけるものではないでしょうが、明らかに一線を画す数字を残してる面子を発見するには今回のSaveEffはわかりやすいですよね~

    そして結構自分の(ってかほとんどの人?)の心象をそこまで裏切ってない結果ではないでしょうか?
    デヘアがやばすぎるとか、チェフは最初の2シーズン素晴らしいとか、ミニョレ、カリウス、オスピナとかはステップアップする前のシーズンたちは素晴らしいかったんだなあ~とか。

    ミニョレに関してはまあこの数字の裏というか、仮説としては
    あくまでxGと失点数なんで、DFのギリギリの数センチの足伸ばしでの相手FWへのプレッシャーとか、年数度あるかないかDFがライン上でのシュートブロックとか、、実際GK以外が影響を及ぼす余地は残ってるわけで(xGがどこまで考慮してるかわかんないけど)サンダーランドのDF陣が優秀だったとか
    移籍時のチーム戦術の変化に対応できず、シュートブロック能力までその被害に、、自信を失ってさらに翌年以降も、、
    とか、まあいろいろ考えられるでしょうし。。

    長々と書いてしまいましたが、レノはとりあえず「スーパーなGKではない」ってのは間違いなさそうですかねえ~
    まあシュートブロック以外にもGKの仕事はあるんですが、それでもやっぱり。
    しかしながら予算内で他に目ぼしいのがいるのか?という問題が、、
    こういうときに動画のようにSaveEff以外にもシュートに対して正しいポジショニングしてるかだとか、カウンターへの意識が高いかとか、色んな数値みて掘り出し物を獲得してほしいですが。。

    あとなんだかんだ言っても今までのアーセナルのGK関連の人って育成も、スカウト部門も結構素晴らしい仕事っぷりしてるんだな~っと今回改めて思ったんで、新スカウト陣も誰かわからんが、旧体制のその人たちの意見聞いてあげて欲しいかもと勝手な妄想で失礼しますw

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