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チームセレクションというエメリのジレンマ

今シーズンここまで、アーセナルの出している結果に内容が伴っていないということはこのブログでも再三指摘しているが、ひとまず好調さの原因みたいなことは置いておいて、今回はアーセナルにはいずれにせよ問題があるとしたときに、エメリが現在抱える最大の問題は何かということについて考えたい。

連勝でポジティヴなムードが漂うなかでいくつか見た「それでもエメリ・アーセナルが心配」という記事のひとつをざっくり紹介しよう。フルアムに大差で勝って9連勝する直前のエントリだ。

そのブログ記事によれば、現在エメリが抱える大きな問題はチームセレクションである。



「キミはエメリのプロセスを信じられるか?」

xGunners: Trust the process?

記事のオーサーは、Arseblogでもby the numbersというシリーズ記事を担当しているスコット・ウィリス氏。このブログでもいつもネタ元でお世話になっている「プロジェクト24」のひとである。

彼はこんなことを書いている。

  • アーセナルはいまPLで5位といいところにいる。上位ともわずかなポインツ差しかない
  • 得点数では4位、失点数では8位
  • 新コーチで発展途上のわりにかなりいい結果
  • しかしそれは表面しか見ていない。われわれを憂慮させるデータがある

  • 上の表は期待ポインツ(expected points)テーブル
  • これは試合ごとのそのチームのxGの合計(シュートと被シュートを基にしている)
  • それによるとアーセナルはリーグで10位
  • アーセナルが実際に稼いだポイントは期待ポイントよりも「6」も多い
  • またアーセナルは7試合のうち4つの試合(ホームでの3試合、エヴァートン、シティ、ワトフォード含む)ではシュート数でも負けている
  • アーセナルが持つ戦力や野心からすればショッキングな結果
  • 昨シーズンと同じ時期を見ると、アーセナルはxGで3.1少なく、シュートで12本少ない
  • ディフェンスでも同じチームとの対戦でより悪くなっていて、被xGは1.4も増え、被シュートは23本も多い
  • 昨シーズンのアーセナルは20年間で最悪だった
  • エメリは成績こそよくなっているが、パフォーマンスは最悪だった昨シーズンよりもむしろ悪くなっている

これは各所ですでに指摘されているとおりで、アーセナルがこの序盤にいかに効率よくポイントを稼いでいたかが数字にも如実にあらわれている。

以前ヴェンゲルさんがしきりに発言していたこともあったように「効率がよい」ということは、これまでのアーセナルらしい非効率さ(いいプレイをしても勝てない)からすれば、むしろ褒められるべきことかもしれない。しかし、今回の場合は少し効率が過ぎるきらいがあるのも事実である。上の表を見てもアーセナルより期待(予想)ゴールと実際のポインツに乖離があるチームはほかにいないし、またその離れ具合も突出している。

xGというスタッツ自体、近ごろは信頼に足るかどうかの議論もありあまり過信すべきではないかもしれないが、すべての試合を観ているわれわれファンからしても、アーセナルが試合内容に比べて結果が出来過ぎなことは認めざるを得ないと思う。

ウィリスがチーム編成の問題について指摘を続けた。アーセナルはまるで四角い穴に丸いネジをはめようとしているようだと。。

  • エメリは恐ろしくアンバランスなチーム編成をしている
  • エメリはほんとうは4-2-3-1でプレイしたいが、そのシステムにハマるタレントがアーセナルにはいない
  • アーセナルにはPEAとラカゼットというふたりの素晴らしいストライカーがいるが、そのシステムではひとりしか使えない
  • アーセナルにはNo.10ではワールズベストのひとりであるエジルがいるが、そのポジションの選手にはプレスを主導してもらいたいと思っている
  • ラムジーはとてもスタミナがあって後ろからボックスに走り込むことができるダイナミックなCMだが、前目で使うと孤立しがち
  • ラムジーをうまく使うなら、4-3-3で攻め上がった彼をふたりのMFでフォローさせるようにしないと
  • アーセナルがこういった選手たちを同時に使おうとすると、数々のトレイドオフが発生する
  • その結果、アーセナルは選手全員の能力が合計されたパフォーマンスができていないように見える
  • チームの潜在的能力を最大限引き出すには、中心選手であっても、エメリはシステムにフィットしない選手を外さなければいけないかもしれない
  • エメリにとって一番キツいのは、使いたい選手を使うという決断になるだろう

以上。

4-2-3-1のジレンマ

エメリの理想のNo.10

エメリが得意な4231でプレイしたがっているというのはほんとうだろう。

そして、No.10ポジションにいる選手にプレッシングを主導してもらいたいというのも納得できる。

だからそこにプレスに消極的なエジルではなくハードワークを厭わないラムジーを置くことにこだわった。

しかしそこにはあくまで「No.10によるプレス主導」へのこだわりがあっただけで、決してエジルを右でプレイさせたいというわけではなかった。

実際は彼をベンチに置いておくこともできず、右ワイドに置くしかなくなり、その結果エジルのパフォーマンスが激落ちするという事態に陥った。もちろんファンはエメリに大ブーイングだ。

各種報道によれば、エメリは以前からセヴィーリャのエヴァー・バネガの獲得を望んでいるというが、エメリにとって彼は、4231のNo.10ポジションでプレッシングを主導できる理想的な選手なのかもしれない。彼のシステムではエジルよりもラムジーよりもバネガのほうが理想のNo.10プレイヤーに近いと。

ふたりのトップストライカーと4231

またふたりのスーパーなストライカーを同時に抱えていることも、4231を使いたいエメリにとっては大きなジレンマとなっているのは明白だ。

ラカゼットとウェルベックのコンビだったが、この前のフラム戦で2トップを試したことはこのふたりを同時起用する道を模索した結果だと思う。

どちらも5大リーグでシーズン20-30ゴールをコンスタントにたたっこんできたクラックで、実際に今シーズンはどちらもCFで使えば高確率で結果を出すことがわかっているが、4231というワントップシステムのなかではひとりしかCFの席がなく、ラカゼットをトップに選んだ結果、オバメヤンがワイドでくすぶってしまった。

既存選手に合わせシステムの調整が続く

ここ数試合では、バック3や442など数々のフォーメーションを試すなど、最適な選手間コンビネイションを求めてシステムの調整を続けていることが見られた。それは、エジルやふたりのビッグストライカーといったアーセナルが現在持っている贅沢なアセットをできるだけ使おうというコンセプトで動いていたからだろう。

もしエメリがFIFAでアーセナルをプレイしていたら、4231でワイドにオバメヤンもエジルも置かず、心置きなくイウォビとミキタリアンを起用したかもしれない。

しかし現実では一番のプライオリティ(PL)の戦いで、フィットしているオバメヤン(ラカゼット)やエジル(ラムジー)のようなスター選手をベンチに置くことには、いまだ抵抗を感じている様子がうかがえる。

せっかくのスター選手を無駄にしてほしくないというクラブやファンからの有形無形の圧力もあるだろうし、エメリ自身だって選手の最大限のパフォーマンスを引き出すことについては責任を感じているはず。中心選手をベンチに置くことは、問題解決において消極的な選択だと当の本人が思っているかもしれない。だからこそ、選手を入れ替えることよりもシステムの調整を優先して続けている。

エメリが誰にも気兼ねなく自分の信念を優先することができる時期

思うに、エメリが既存選手にフォーメーションを合わせるのではなく、自分の好きなフォーメーションに合わせて選手を選ぶこと、たとえばエジルよりイウォビを優先するとか、オバメヤンかラカゼットのどちらかをベンチに置くとか、そういったことをエメリが外部から干渉されずに行えるタイミングが来るとすれば、皮肉にもアーセナルが負けるようになってからではないだろうか。

いまはスタッツがどうとか外野がいくらごちゃごちゃ騒いだところで、とにかく結果が出ている。その限りでは、パフォーマンスを改善するためにシステムの調整はしていくにせよ、チームセレクションを大きく変える必要性は低い。

だが、仮に多くのフットボール・アナリストやパンディットが予想するとおり、いま続いている「ラッキー」が持続しなくなったら、世間はすぐに選手とシステムのミスマッチといったチームのあら捜しを始めるだろう。

おそらくは、そのときエメリに初めて誰の意見を気にすることなく自分の信念でチームに大なたを振るう大義名分ができる。世間に対してもクラブに対しても、そしてもしかしたら自分自身に対しても。

アーセナルが危なげな試合を続けているなかでも幸いなことは、100%とはいわずとも、エメリの要求に応えられる、スター選手を代替できるポテンシャルを持つハードワーカーたちがチームにいることである。妥協なくチームを編成したそのあかつきには、いまよりももっと本来のエメリが目指している彼らしいフットボールが見られるはず。

アーセナルが試合に負け始める時期は、思ったよりすぐに訪れるかもしれない。なぜなら絶好調なラカゼットとオバメヤンのコンヴァージョンが少し落ちるだけで、アーセナルのフォームは大きな打撃を受けるはずだから。現実的になればチームパフォーマンスが改善されることなく、このフォームが長く続くとは考えにくい。



3 Comments on “チームセレクションというエメリのジレンマ

  1. 試合内容についてですが、私はxGなどの統計的な指標には前々からかなり懐疑的です。その全てを疑っているわけではなく、算出方法によってサイト(や個人的に分析してる人)ごとに差がありますよね。だからその中には釈然としないものがあります。
    例えば、フラム戦でのxGでアーセナルの成績がかなり悪く算出されているようなものは全く釈然としません。

    試合内容に関しても、個人的にワトフォード 戦やフラム戦の内容はさほど悪くないように感じました。特にワトフォード 戦は、フィニッシュまでの攻撃はさっぱりな時間が続きましたが、前半など良い守備が出来ており、相手より劣っているとは全く思いませんでした。
    この試合に比べればエバートン戦や、少し記憶が薄れてますがウェストハム戦の方がずっと悪い試合内容だと思います。

    1. 1行目「試合内容についてですが、」 の部分が意味不ですね。書き間違いです。

  2. とにかくシュート打たれすぎてますよね
    要は前線のファーストDF 、中盤のセカンドDFが機能せず簡単に突破されてシュートまで持ち込まれてて、将棋で言うなら歩が機能しない中で戦ってるようなもの
    エジルサイドのベジェリンは大変でしょう
    トレイラが援軍に来てくれるので何とか耐えてますが
    ボランチやDFラインからすると前線もうちょっと頑張ってくれ!と言いたいですが、点取ってくれてますし、何だかんだ勝ってるのでなかなか言えないのが本音
    ドイツ代表はエジルを守備時にトップにして出来るだけ前目に置いてリスク減らしてました
    守備の仕方もプレスはせずパスコースを切る事に特化
    クロップ時代の香川みたいな感じですね
    そう考えると矛盾を解消する為にはラムジー放出もやむを得ないのかもしれませんね
    いや、やっぱりラムジーだけは放出しちゃダメだ
    給料面でエジルを特別扱いしたクラブ方針は大失敗ですね

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