先日、2019夏のアーセナルの移籍ポリシーについてのオーンステインのリポートを紹介したエントリで、来月アーセナルの新テクニカルディレクターに就任するという元アーセナルMF、エドゥについて示唆的なことが書かれたブログ記事を読んだと書いた。
その記事のなかで、2017年にブラジルで行われた「Somos Futebol 2017」というフットボールコンヴェンションでのプレゼンの様子が紹介されているのだが、デイヴィッド・デイン、ディック・ロウ、エドゥ・ガスパールという新旧アーセナルのディレクターが揃い踏みでプレゼンテイションを行うというアーセナルのファンにとっては特別に興味深い内容となっている。
なかでもEPLのクラブ運営モデルを詳しく説明しているディック・ロウのプレゼンが興味深く、今回はそれを紹介したい。
フットボールクラブの「運営モデル」という若干マニアックなトピックながら、基礎的なクラブのストラクチャについて紹介されていたり、ヴェンゲルさん時代のモデルなども紹介されているので、クラブの裏側を知りたいフットボールファンのみならずアーセナルのファンも楽しめる内容だと思う。
Who is ディック・ロウ?
プレゼンを紹介する前に、ディック・ロウ(Dick Law/Richard Law)について。
ロウはアーセナルの元スポーティング・ディレクター(※正式には「フットボール・オペレイション」のよう)で、ミズリンタットが来るまではアーセナルで移籍関連業務をまとめていた。
このプレゼンのなかでも自分がアーセナル時代にどのような役回りだったか自ら説明しているが、CEOとヴェンゲルさんのあいだに立つという大変に重要な役回りだったことがわかる。アーセナルには8年おり、ヴェンゲルさんの信頼も大変に厚かったという。
近年のロウの功績としては、エジル、チェフ、ラカゼットといった選手を連れてきたこと。一方で、イグアイン、スアレス、エンバッペやレマールの獲得には失敗している。
そして2017夏のデッドラインデイ土壇場でサンチェスの売却&レマール獲得に失敗。彼の退任は、あのドタバタ劇の引責辞任という意味もあったのだろうか。その後のことを考えれば、アレはそれほど痛かった。
ということで、このプレゼンはタイミングとしてはアーセナルを辞める半年ほど前(2017年5月)のものだったことになる。
“2017 Somos Futebol”とは?
「Somos Futebol(わたしたちのフットボール)」は、ブラジルフチボール協会(CBF: Confederação Brasileira de Futebol)が主催する大規模なコンヴェンション。ぼくは全然知らなかったが、もしかしたら誰でも知っているのかもしれない。
WEBサイトを見ると、この回の登壇者にはファビオ・カペッロやマルチェロ・ビエルサ、現在ブラジルNTのコーチを務めているチッチといった有名人も名を連ねている。
それとロウのプレゼン前の挨拶では客席のジルベルト・シルバにも謝辞を述べているので、いわゆるVIP的な参加者もそれなりにいたのだろうと推測される。
ではディック・ロウ(リチャード・ロウ)のプレゼンを見てみよう。
「プレミアリーグクラブの運営モデルについて」by ディック・ロウ
以下映像の1:02:30あたりから(※この映像はライヴストリーミングのアーカイブのようで、のべ3時間以上ある)。
ぼくの説明がまどろっしければ映像を観たほうが早い。ブラジル人たちがメインの聴衆だからか英語が比較的わかりやすい。わざと平易な単語を選んでいるためかもしれない。
スライドごとに要点を箇条書きで。
今はエグゼクティブディレクター方式ですが、ガジディスやミズリンタートがいたときはコミッティ方式だったんですかね?
お、鋭い。。
また別で書こうと思って書かなかったんだけど、おっしゃるとおりガジディスとミズリンタットがかぶってる短い期間に、アーセナルはコミッティ方式を模索していた可能性があるようっす。
メンツはガジーディス、サンレヒ、ミズリンタット、エメリ、ファーミー(弁護士・契約担当)、ローゼンフェルド(StatDNAのCEO)、あとはヴェンカテシャン? そのあたりらしいっす。
ガジディスはともかくとして、ミズリンタートはコミッティ方式に移行する際の煽りを受けた可能性がありそうですね。コミッティ方式でいけば、ミズリンタートのポジションはサンジェイの下になりますからね。あれだけ補強を成功させたミズリンタートに役職を与えないとは考えづらかったのですが…あの退任劇の裏が何となく見えてきた気がしますね。