昨日、アーセナル界隈のあちらこちらでgood pieceと称賛されていた『The Guardian』によるダニ・セバーヨスのインタヴュー。
Dani Ceballos: ‘I’ve hardly noticed any difference between Real Madrid and Arsenal’
早くもファンフェイヴァリットとなった彼がアーセナルライフを好意的に語ったインタヴューなのだから、ファンが喜ぶのも当然のことだろう。熱狂的なサポーターについてもいくつかのコメントがある。
これは彼がノースロンドンに来てからは、初めてのちゃんとしたインタヴューなのかもしれない。『Sport』などスペイン誌もこれをネタにした記事をアップしていた。
スペインNTの本拠地、Las Rozasにて行われたインタヴュー。おもしろい内容なのでコメント部分だけシェアしたい。コメント以外の全文も興味深いので気になる方はオリジナルを訪れてください。
ダニ・セバーヨス、インタヴュー by The Guardian「RMとアーセナルでは違いがほとんどない」
※見出しは訳者による。
ノースロンドンでの歓迎
(「♪オー、ダニ・セバーーーヨス!」ファンのチャントについて)驚いた。あれはとてもありがたかったね。ぼくの初日だったけど、イングランドでもう10年もプレイしているみたいだった。
街も大好きだし、プレミアリーグもアーセナルも大好きだ。ただもうこの偉大なクラブの一員になれたことがほんとにほんとにハッピーだ。クラブの規模のうえではレアル・マドリッドとアーセナルで違いを見つけるのは難しいね。ファンはとても情熱的で、彼らは選手たちをとても愛している。適応するのは簡単だったよ。だって彼らが、ぼくがもうこのクラブにずっといるかのような気持ちにさせてくれたのだから。みんなからの扱われ方はとても気に入っている。ぼくにかなり信頼してくれている。
(ジダンからの扱われ方)現実的にならないとね。アーセナルではもうすでに2つのいい試合をやっていて、それはマドリッドにいた2年間ではついぞできなかったものだ。RMではたくさんの試合をプレイしていなかったけど、プレイした試合でも自分がやれるようなプレイができていなかった。それは自信の影響もあっただろうけど、自分を甘やかすのもいけないね。
アンフィールドの洗礼
(リヴァプール戦について)(少し考えたあと)ぼくがアンフィールドで見たようなものは、かつて見たこともないようなものだった。あんなにうまいチームは見たこともないし、あんなプレスもそう。ファンがもたらすものも。
彼らに空気を奪われてしまうんだ。長い時間守備に忙殺されて、ボールを持ってなにかやりたいとなったとき、息継ぎをしたいとき、彼らが立ちふさがる。百戦錬磨だった。
(リヴァプールはウナイ・エメリがエミュレイトしたいものなのか?)現時点では比べることはできないね。ぼくたちもいくらか似たようなことに取り組んでいるところだけど、ユルゲン・クロップがリヴァプールに来たのは2015年のことで、ウナイはまだ去年だよ。
アーセナルはCL出場に1ポイント足らない位置でのフィニッシュとなって、ELでの勝利にも少しだけ足りなかった。彼の就任はポジティヴだろう。あと数年でアーセナルはグローバルでもトップ10チームになるはずだ。どことも戦える。
アーセナルのチームメイトたち
ぼくたちはとてもいいチームで、コンパクトにプレイするし、アップフロントの3人は違いをつくることができる。ある意味では、オバメヤンはRMにいたときのクリスチャーノと比較することもできるね。彼はゴールの近くでプレイして、得点を糧にするような選手だった。彼はチームにとってとても重要で中心的でもある。
ぺぺはとてもダイレクトで、ラカゼットは、ぼくにとって彼がベストプレイヤーだね。彼は試合を完璧に理解して、もし彼が100%ならチームにたくさんのものをもたらすだろう。
すべての選手が同時にフィットしたらマネージャーの頭は沸騰しちゃうかもね(笑い)。ぼくは彼が4試合で同じ11人を繰り返すとは思わないんだけど、それがぼくらにアラートとなる。トッナム戦ではスタートに入れなくてベンチから出ることになったけど、ぼくは自分の役割を理解したんだ。
エメリの信頼と自分のキャラクター
エメリはぼくのことをよく知っているから、パーソナリティや学びへの欲求を出してほしいと思ってる。ぼくはまだ若く、フットボールに情熱がある。ぼくは10でも8でもプレイできるけど、チームを導くことの責任を感じるし、難しい局面でもボールを要求したいし、隠れることはしたくない。チームをプレイさせたいんだ。それが選手をいい選手かそうでないかを分けるものだろう。こういう格言のことだよ。「チームが必要なとき、ぼくはここにいる」。
ハッピーにプレイしようとしている。自分が持てるベストをチームにもたらしたいなら、自分のすることを楽しむことだ。ぼくたちはボールを欲しがるチームだから、ぼくは快適でいられる。シーズンの後半には、きっとぼくのベストが観られるよ。
ぼくは相手に近づいていって違いをつくろうとする選手だ。“desequilibrio”をもたらすってことさ。desequilibrioというのは簡単に云えばこうだ。試合をアンバランスにさせるということ。形勢逆転させるとか、戦術とフォーメイションのいくつかの部分を逸脱して、戦術の約束事から自由になるということ。
ときどき自分の良さを活かすためにボールに寄って行きたくなってしまうのは確かだよ。ポジションを離れてしまう。ぼくには改善の余地がかなりあるとは思うんだ。できる経験は限られているし。
ウナイはぼくを信頼してくれている。彼がぼくにアーセナルに来るよう誘ってくれたひとだ。ぼくにはわかりやすい役割があるし、彼には選手にやらせたいプレイのアイディアがある。
彼のワークにはうれしい驚きがあるね。コーチが選手に対して自信を持っていてくれるような状況があれば、その選手はずっとやりやすくなる。ぼくはそれに報いたい。ぼくらフットボーラーにだって、ほかのみんなと同じように感情はある。悪いときはとても強いメンタルが必要になる。別のやり方があるとすれば、ウソをつくこともあるけれど……
選手がコーチから60%信頼されているとか、たとえミステイクをやってもかばってくれるとか…… まだ(ここへ来て)たったの4週間だから、ぼくが実際どう感じているかを云うのは難しい。けど、ぼくが見てきたものから判断するに、ここはクオリティとフィジカルの面で最高にコンペティティヴなリーグだ。最高基準で、最大に要求されるリーグだ。それに適応しなければならない。
イングランドでの生活
(レイエスはアーセナル時代、ホームシックでスペインに戻りたがった)ホセは家の外に出ようとがんばったみたいだけど、ぼくにはなんの問題もない。ぼくには15年くらいのキャリアがあるけど、ピッチでハッピーなら、プレイしている限り、ほかのことは問題にならないんだ。
(英語への適応について)あと3ヶ月もすれば会話くらいはできるようになると思うよ。
風邪をひかないようにしないといけないと云われたよ(笑い)。でもここのフットボールが大好きだ。彼らが生活し息づくところ。こんなふうなのは見たことがなかった。アウェイでプレイするときですら、最低でも数千人のファンのサポートがある。
雨だろうが雪だろうが関係ない。クリスマスにだって3日ごとにプレイしたいよ。グレイトな経験になる。
1年たって自分がなんて云うかはわからない。でもいまはハッピーだ。みんながぼくのやるゲイムを見るし、ここのフットボールが大好きなんだ。リスペクトがあるから、選手は求められていると感じる。ぼくらが彼らに拍手をし、彼らもぼくらの背中に拍手をする。
以上。
なんというか、23才とは思えない大人びた調子。キャプテンの器である。
ノースロンドンでのスタートは上々
新しいフットボールや外国での新生活など若い彼にはけっして簡単な状況ではないだろうが、ファンの熱烈なサポートもあって、うまくやれていることがことばの端々から感じられる。すばらしいことだ。
先日も別のエントリで書いたように、まだ一ヶ月ほどしかチームにいないというのにすっかり彼のプレイに魅せられてしまったファンの最大の関心事のひとつは、この関係が1年で終わってしまうのかということ。
ダニ・セバーヨス、ローン移籍の舞台裏 | ARSENAL CHANGE EVERYTHING
このインタヴューで彼自身も1年後のことはわからないと語っているが、この様子だとファンもポジティヴにとらえてよいのではないだろうか。
スペインやイタリアのような気候のよい場所から来た選手が、イングランドの曇天に慣れずにホームシックにかかってしまうという例はいくつも見てきた。最近ではルーカス・トレイラがそのような状況にあるという噂もあったし、当然セバーヨスも心配されていたから、ひとまずは安心できる。
ちなみに、レイエス(レジェス)のホームシックの件でいつも思い出すのは、彼がアーセナルに1年もいて英語がまったく話せなかったというエピソード。ほんとかどうかはわからないが、たしかにそのような状況ならきっと生活も楽しめなかっただろう。アーセナルの外人選手を見ているかぎりでは、やはり英語の習得度とチームへの適応度は比例しているように見える。その点、3ヶ月後にはしゃべれると自信マンマンのセバーヨスには心配はいらなさそうだ。なーに、いざとなればウナイ先生に教えてもらったらよろしい。去年からの彼の英語習得スピードはほんとうに驚異的だった。
クラブとサポーターと愛し愛されという理想的な関係をこれからも築いていってもらいたいものだ。
セバーヨスのポジショニングとポジションについて
このインタヴューのなかで興味深かったのは、彼自身が自分のことをややポジションを守らない(ボールを求めて自由に動きたがる)傾向のある選手だと説明しているところ。「desequilibrio」という単語は初めて聞いた。
アーセナルでプレイしたのはまだ数試合ながら、ぼくなんかは彼のプレイを観ていてとくにポジショニングが奔放だという印象はないので、そういう意味ではまだ本領を発揮していないのか、あるいは彼の基準のなかではあれくらいでアンバランスだということなのか。
われわれはAFCにおいて、これまでやたらとポジションに自由な選手たちばかりを観てきたので(笑い)、あの程度でアンバランス?という感じではある。アーロン・ラムジーの映像を見て絶句するセバーヨスを想像したらなんか笑える。
もちろんNo.10とNo.8(B2B)、どちらでプレイするかにも大きく関係することだし、いまのところNo.10でのプレイが多くなりそうだから、彼のポジションのある程度の自由さを心配することはあまり必要はないように思われる。むしろ、彼自身が自分のことをそういうふうに評価しているということが興味深かった。それもまたチームに責任を負うキャプテンの器なのかもしれない。アーセナルの選手がポジショニングのことを気にするなんて、ずいぶんと頼もしく感じられるなあ(※皮肉です)。
彼は試合の展開を読むのに長けていると云われる選手なのだから、どちらかと云えばポジショニングは彼の長所のひとつだろう。MOTMだったバーンリーでの彼のピッチ全体での影響力はすさまじかった。ピッチ上であらゆる場所に顔を出し、試合に関与していく。彼がどういう選手なのかがひと目でわかるヒートマップ。
ところで、今後彼はCM(4-2-3-1の2CMのひとり)として起用されることはあるのだろうか?
エメリはセバーヨスは10でも8でもプレイできる選手だと繰り返し述べているが、ここまでの数試合でのエメリの起用法を見る限りでは、彼はNo.8(CM)というよりはほとんどNo.10として数えられているような気がしている。まるで去年ラムジーをNo.10で使うことにこだわったように。
エメリはNo.10にハイプレッシングを主導してもらいたいと思っていて、そのためにエジルの起用をためらったというのが定説であるけれど、なるほどセバーヨスやウィロックのようなハードワーカーがエジルを差し置いてNo.10で使われるわけである。
去年のラムジーは2CMで使われる機会はあまりなかった。セバーヨスをCM(非No.10)で使うときは、やはり3CMで4-3-3にするのだろうか。
No.10/8のハイブリッドとして、彼が今季どのようにシステムのなかに組み込まれていくか興味津々である。
以前にもどこかで書いたが、ぼかあ、セバーヨスが2CMに入った意欲的なシステムが観たいのだけれど。一度やってみてくれねえかなあ。
以上。
まあとにかくセバーヨスが幸せそうでよかった。
サッリは英国選手が戦術練習をしたがらないのを驚いたとか
練習にも文化の違いというものがあるんだろう
8番のエリアの捉え方が英国とスペインで違うのかもしれない。
たしかに、ランパードみたいなゴール前に飛び込んで点をバカスカ決める8番はスペインでは見ないかも。
とりあえず、イングランドで楽しくやれてるのは朗報かな。
本人がキャリアのことを考えて一年でRMに復帰するならそれは仕方ないが、環境が原因で帰国される可能性は低そうだ。
しかしRMで激しい競争に揉まれてるせいか、冷静に自分を見てるのが頼もしい。成功する気満々なのも良い。
こういうしっかりした野心家(ちょっと言葉は悪いが)のエネルギーはチームに取り込みたいけどなあ、長期的に。