hotいま読まれているエントリ

Arsenal, Controversy, Emery

ウナイ・エメリ 7つの大罪 by チャールズ・ワッツ

3. 混乱した選手とチームセレクション

選手が混乱しているもっとも大きな原因はやはり、彼のプレイのスタイルだろう。プレイング・フィロソフィ、チームのアイデンティティは何なのか。エメリは口では理想を語るが実際にやっているプレイが違う。だから、ますますわからなくなっている。アタッキングフットボールを標榜しながら、試合を見ればプレイはとても保守的。まるでちぐはぐだ。

ボールポゼッションとプレッシングに関しては、アーセナルに来た当時の自分の発言を忘れてしまったみたいである。

何度でも繰り返そう。

エメリ:ここでは歴史的にボールポゼッションが好まれると思う。わたしはそのパーソナリティが好きだ。わたしはボールを持つのが好きだ。もしポゼッションしていなければ、スクワッドにはとてもとても激しくプレッシングすることを求める。

選手たちが試合を主導するために重要なふたつの事柄がある。ポゼッション、それにボールを持っていないときのプレッシングだ。

ぼくはつねづねエメリは選手たちにはどのようなインストラクションをしているのか疑問に思っていたが(われわれは攻撃チームだといいながら、1点でもリードしたらチームを後ろに下がらせることなんてできるのかとか)、ここ数日メディアから伝えられているところでは、やはり選手たちがエメリのコンサヴァな戦術や、アイデンティティのなさを指摘しているのだという。そりゃこんなフットボールをやっていればいつかはそうなるよねっていう。

自分たちはどういうチームなのか。これはチームをつくるうえでもっとも根幹にあることで、局面の戦術などよりももっと重要なことだ。それが歪めば、自分たちがどういうプレイをするのかがわからなくなる。いまそれがあいまいになってしまっているから、アーセナルは弱体化したのだろう。

そもそもエメリにはアーセナルで守備的に戦うなんて選択肢なんてなかったのだ。攻撃をしないアーセナルなど最初からありえないことはエメリだって知っている。だから自分のチームは攻撃チームだと云った。

ポスト・ヴェンゲルのアーセナルでは守備改善が最大のタスクでありつづけているが、それは攻撃をしなくてもいいという意味じゃない。あくまで攻撃ありきで、求められているのはそのうえでの守備バランスだ。一部の例外を除けば、ビッグチームはみんなそういうプレイをしている。

MFに3人のDMを並べたり、ウォルヴズでもエジルを入れるためにぺぺを外したように、いつまでたってもチームを積極的にセットアップできない。ビッグクラブのマネージャーとしてのメンタリティに疑問があると云わざるを得ない。

エジルといえば、リヴァプールでもウォルヴズでもだいぶ効いていた。彼がいるおかげでほかの選手までいいプレイをしていたくらいだ。

ぼくの見立てでは、カラバオカップのリヴァプール(A)とPLのウォルヴズ(H)、この2試合でアーセナルがしばらくできていなかったボールを持っての試合コントロール(ポゼッション)は、エメリの戦術的なセットアップではなく、単にエジルの個人的な能力によるものだ。

若い選手たちは、エジルが明確な理由も示されず試合から干されているのを間近で見ていた。エジルが戻ってチームが息を吹き返すといういまの状況を、エメリは彼らにどう説明できるだろうか。

最近立て続けに伝えられいる報道を見るに、いまはもう選手たちは混乱しているというよりも、エメリをもっとネガティヴに見始めているフェイズなんだろうと思う。

4. 守備の改善なし

昨シーズンの51失点は、ヴェンゲルさんの最悪と思われたファイナルシーズンと同じ。今シーズンは11試合で15失点しているので(クリンシートはたったの2つ)、このまま行けば、シーズン終了時にはほぼこれらと同水準(51.8失点)になる。一貫性あるなあ。

エメリがこんなに攻撃を犠牲にしてまで守備のことを気にしているのに、一向に改善の様子は見られない。むしろ悪くなっているくらいだ。

しかし、逆にエメリはそれが仇になっているという感じがとてもある。守備バランスを取ろうとして裏目に出ている。

エメリのリードしたら消極的になる戦いかたがうまくいっていないことについては、すでにこのブログでも書いた。むしろそのことが相手を勢いづかせている側面がある。

つまり「攻撃しないのは最大の防御にならない」ということなんじゃないだろうか。

CBのクオリティや、CBの前をフィルタするDM不在といったそれぞれの問題も依然としてある。アーセナルではずっと指摘されつづけている問題だ。

しかし、いまのアーセナルの攻撃のされかたを見るに、消極的なプレイマインドやそれと前述したようなポゼッションの低下なんかが理由としては大きいような気がしている。

被シュートのチャンスのクオリティは低くても、たくさん打たれればそれだけ失点は増える。なぜたくさんシュートを打たれているのかといえば、相手がたくさんボールを持っているから(&前に進んでいるから)で、相手にたくさんボールを持たれたくなければ、こちらがボールを持つしかない。

相手のシュートのクオリティが低いままならば、相手にボールを持たせずシュートを打たせる機会を減らせば失点も減るだろう。あたりまえのことだけど。

いまさらポゼッションの有用さについて再認識するなんて皮肉なものだ。そしてこの2試合で見せたように、ずっと干していたエジルがいまのアーセナルのダメさをカヴァーできるとわかったこともまた皮肉なものだと思う。

なんならエジルを入れると失点が減るみたいな不思議現象が起きかねない。その原理をアーセンは知っていたが、ウーナイにはきっと一生理解できない。

5. オバメヤンとラカゼットの契約に懸念

おそらく彼らとは夏からずっと新契約の交渉をしていて、それが進展していないと。理由は彼らはほかのどんなトッププレイヤーと同様、CLフットボールを望んでいるからで、来シーズンのCLが怪しくなればなるほど彼らは新契約を結ばない。ほかのクラブに移籍しにくくなるからね。つまりエメリが悪いと。

残念ながらこれは不可避ではないだろうか。

ぼくはエメリがいればいるほどこのチームは悪くなると思っている。そしてアーセナルボードはいまだに、エメリの後任を真剣に検討していないと云われている。若干その兆しもあるようだけれど、そのあたりはオーンステインのリポート待ちである(The Athleticの今日のオーニー・マンデイ・リポートには新しいニュースはなかった)。

いまだいぶ話題になっているモウリーニョについては、サンレヒと夕食をともにしただとか、エミレーツに招待していただとか、いやいや彼らはこの数年は直接会ってもいないだとか、いろいろ情報が錯綜しているが、ぼくは彼がアーセナルに来ることはまずありえないと思う。まずファンが許さない。

レスターのあともエメリが更迭されないとなれば(最大に長くてもクリスマスまでだと思う)、それだけCLが遠のくことになる。後任で劇的に改善するかどうかもわからないが。。

もしオバメヤンを失うようなことがあれば、おそらくアーセナルには大打撃になるだろう。いまのアーセナルは勝利の多くをオバメヤンに頼っているのだし、ゴールデンブーツを失えばどんなチームでも痛手だ。

オバメヤンやラカゼットも心配だが、ほかの選手についても心配だ。いまCLクラブ並のスクワッドを抱えていて、とてもELの予算では賄えない。来シーズンもEL(あるいはそれもなし)となると、とくに有望な若い選手を手放さなければならなくなる可能性も出てくるかもしれない。リース・ネルソンが放出される未来(その後大ブレイク)とか想像したくねえ。

※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

15 Comments on “ウナイ・エメリ 7つの大罪 by チャールズ・ワッツ

  1. 今日明日にでも解任するのかと普通に思ってました。クラブには、まだ静観する理由が何かあるんですかね。金の問題?

    個人的には、モウリーニョやアッレグリといったビッグネームありきのチーム経験が豊富な監督より、中堅チームでコレクティブなサッカーを実践している若手〜中堅の監督に託したいです。

    ほんと、ネクスト・クロップを探せ、ですね。

  2. 今回の試合でエジルはフルで使えないかなと個人的には思いました。攻撃時のアクセントや選手間をリンクする才能はやはりピカイチですけど、守備時の意識付け、インテンシティの面では他の選手と比較してかなり落ちますしね。後半残り30分からのジョーカー的な役割が合ってそう。そもそも年齢的な問題もありますし、エジルありきのシステムは長続きしないですからね。

    とはいえ、現状ではエジル使った方が攻守両面で良いとは思いますけども。
    今エメリがやってるサッカーでは中盤の守備力が足りなすぎると思いますし、殴り合う方がまだ勝率は上がりそう。なんといってもオーバ・ラカ・ペペ・エジルいますしね。

    後任はアルテタにお願いしたいけど、彼はもう無理でしょう。ペップが離してくれなさそう。相当ハードなネゴになるでしょうね。個人的にはモウでも有りです。クラブのフィロソフィや、過去の彼の発言からしてNGなんでしょうけど、現時点のスカッドをモウが操ったらかなり強いチームになりそう。まあアーセナルではバス停めても穴だらけだから、打ち合いした方がまだマシってのもモウならすぐに理解できるでしょうしね(笑)

  3. 今の状況はもちろんエメリの監督としての能力にあるんでしょうけど、それと同時に新加入選手が期待した能力を見せられていないということも考慮しないといけないと思います。ぺぺがマンチェスターUのジェームスのような活躍をしていれば、もしくはセバージョスが10番の適正がもっと高くエジルのような創造性やパスの正確さ視野の広さがあればおそらく今の状況にはなってないと思う。あと、コシエルニーやモンレアルの退団も
    なのでエメリが辞任しても、対して変わらないんじゃないかって気がします。監督に支払う給料も馬鹿になりませんし
    あぁ、選手の自信を回復させて実力の120%の力引き出してくれるモチベーターな監督が来て今までの不振が嘘みたいとかなったりしないかなぁ

    1. ペペ、セバージョスがこのままだと確かにこのままだとミスリンを切った弊害でしょうね、サンレヒのミスでしょうか
      ただエメリが適正に配置してない感もある気もします
      ペペはサポートが無いしそもそもボールが来ない。セバージョスは8番なのか10番なのか
      コーチ変えないとわからない気もします

    2. ぺぺはこのしょっぱいフットボールのなかでも(主にチャンスメイクで)十分に得点に貢献してると思います。それとエメリの10番像は下がって受けてボールを前に進めてくれる人(セビージャ時代のバネガ)なので、セバーヨスはけっこう希望通りなんだと思いますよー!

  4. チームにフィットする監督をみつけるのってとても大変なんですね。リバプールもクロップと出会うまでに何度も失敗してますし、ユナイテッドだってそう。エメリって対戦相手のビデオを何度も見て選手に見せて試合ごとにいろんな指示を出すってことだったはずなんですけど、今はどうなんでしょう。専用のカメラチームも吊れてきてたと思ってたのですが。サンレヒもバルサの血が流れてるならビッグクラブとしての決断をお願いしたい。
    レスターに負けたら、かなり落ちるでしょうね。

  5. コミュニケーション問題はなんだかとてもありそうで、寂しい気持ちになりますね。
    思えば昨年エジルが干された時に、コラシナツだったかがエジルを支持するコメントをメディアに出していました。
    誰かが(側から見て不可解に)干される姿は、それを目にするチームメイトにどんな影響を与えるのか。
    プロのフットボール選手の心理は想像できませんが、一般の会社などに置き換えて想像するなら、チームによい影響は与えなさそうですが。

    ラムジーやコシエルニーは、それぞれああいう形で出て行ってしまったわけですが、
    彼らにはエメリ監督はどのように映っていたんでしょうねぇ。

  6. オーバメヤンはまだ高値がつくであろう今のうちに売却したほうがいい。もちろん彼の得点力は高く評価しているが、それ以外の能力が平均以下で、細かいミスが多く、サイドでは何もできなくて、アーセナルのサッカーにあっていない。幸いアーセナルにはオーバメヤンがいなくてもラカゼットがいる。このクラブで最高給与に値するのはエジルでもオーバメヤンでもなくラカゼットだと思う。オーバメヤン放出で浮いた金をラカゼットとの新契約に使い、獲得した移籍金でジャカの後継となるトップクラスのMFを獲得すべきだと思う。

  7. 現時点でエメリ に希望を持っているというフロント。この人たちのフットボール感は寂れているのではないか?それが一番不安です。

  8. エメリの失敗はジャカを重宝して相棒にグエンドゥジを選んでしまったこと。ボルシアMG時代のジャカの相棒はクラマー。どんな選手かと言うとミルナーより走りまくる汗かき役であり守備専ボランチ。あの頃のクラマーは世界一走ってました。そんなジャカの相棒にフランス2部から移籍してきてまだ2年目のクラマーとは全然違うタイプの若手を起用するのは無謀で酷でしょう。最近のグエンドゥジは守備で劣勢の時に毎回パニック起こすようになってます。イップスになりかけなんじゃないかと思うくらい。可哀想に。ジャカを使うならトレイラ。コクランと相性が良かったように。グエンドゥジも守備寄りボランチと組んだ方が良いタイプですしね。今更もう遅いですけど。

    1. グエンドウジはかなり冷静な選手だと思います。若いし守備は学んでる最中なので判断を間違えてしまってるだけかと、今のプレーぶりやチームの将来を考えるとグエンドウジを使い続けてるのはエメリの素晴らしい判断だった思うし、これからも使い続けて欲しい。
      昨シーズンしばらく組んでたジャカとトレイラのコンビだとボール運べなくなりそうなのでどうかと思いますけど、よくやってると思うけどセバージョスが集中力切れてるときがあるのでグエンドウジがジャカやトレイラと組むのはバランスも取れるしいいと思います。

    2. ジャカと組ませるなら守備専ボランチにしてくれってのは全く同感です。
      僕も現状ではトレイラがベストだと思います。

      ただ将来的にゲンドゥージにアンカー役の才能がないかというと、それは別の問題だと思います。
      確かに線はまだ細いし未熟ですが、ターン・ドリブル・ロングパスなど、プレスする側から見ると厄介なスキルを持ってます。
      去年と比べると格段に強くなってますしね。

      それと身もフタもない話ですが、ゲンドゥージのパス回しの判断はお世辞にも速くない。
      スローペースのエメリサッカーですら、速いパス交換になるとけっこうボロが出ます。
      今後パスサッカーをやるんなら、ちょっと低い位置でカバーに専念させたほうが伸びるような気がします。
      当然トレイラとのポジション争いになりますが、どっちにしろPLで通年戦うならアンカー2人は必須ですしね。

  9. ローランは起用法に異議を唱えて出ていったので、すでにエメリに愛想を尽かしていたのかもしれないですね。そういう意味では、レジェンドを1人失ったという(もう1つの)エメリの罪なんですかね?

    それと、ドン・ラウルなんかがこの前のウインドウで見せた敏腕ぶりと、ジョシュがアーセナルの試合をちゃんと見てるっぽい感じからすると、表にはエメリを支持なんて言いながら裏で交渉を進めるとかやってそうな気はしますけどねー!

  10. Arsenal board本当に動いてないんですかね
    それが1番失望してますよ、エメリが失敗したのはしょうがないにしても次のステップ踏むのに判断出来ないようじゃ時間無駄にするだけです

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *