意外なチームセレクション。セバーヨスの起用にはリスクがあった?
今回まず驚かされたのはアルテタが選んだファースト11だ。アルテタが来て以来、あまりチームを変えず、わりと保守的なセレクションをするという印象があるが、今回はさすがに意外だった。
ラカゼットoutとエンケティアinも少し驚いたが(しかもマルティネリでなくエンケティア)、個人的にはムスタフィにも少し驚いた。今シーズンはこれまでほとんどカップ戦要員になっており、1月にも本人が望めば退団もありえたようだが、アルテタの下で2試合連続でスタートし、まるでレギュラーに返り咲いたようだ。
そして本人もいままでずっとそうしていたかのようにふつうにプレイしている。今回は「あいたたた」と云いたくなるようなミスパスも一度やっているが、概ねハイパフォーマンスだった。とくに空中戦は7/8という圧倒的勝率。
アルテタがソクラティスのパスワークに疑問を持っているという説があるが、たしかにムスティはうっかりさえなければパスも上手で、ヴァーティカルパッシングにも積極的だ。アルテタの攻撃的なセットアップのなかでは適応しやすいプロファイルではある。
それとコラシナツがフィットしていたにも関わらず、またサカが選ばれたのは、LBとしての信頼の現れだろうか。
ファースト11のなかで誰の目にももっとも意外だったのは、やはりダニ・セバーヨスだろう。いきなり来たという。
彼は以前にアルテタからいくつかの問題を指摘されていて、今回の起用は余計に驚きだった。
そしてその決断はチームの勝利というかたちで大いに報いられた。彼にとっては、シーズン序盤のバーンリー以来のベストゲイムという評判である。
アルテタも試合後に彼の起用についてこんなふうに語っていた。
アルテタ:彼はケガをしていて、トレインをはじめはしたが十分フィットしているとは思わなかった。
彼は振る舞いを完全に変えた。彼はまるでアニマルのようにトレインしていた。わたしは彼がピッチのベストプレイヤーだと思った。
ダニは今日のような試合では理想的だった。彼のトレイニングでの姿勢は完全にチャンスに値するね。
わたしは彼のパフォーマンスに大満足だ。
アニマルて。
彼のタッチをまとめたハイライトヴィデオを見てもわかるように、この前向きなプレイスタイルでパスアキュラシーが95.5%を記録したというのだから驚異的としかいいようがない。この試合エジルも輝いたが、その一端はセバーヨスが担っている。
エジルが最高に輝いた15-16シーズンよもう一度。もちろんセバーヨスはサンティ・カソルラ役である。個人的に「エジルの後ろにセバーヨス」はずっと見たかったコンビだったので今回それが見られて、そしてうまくワークしていてとても満足である。「な?」て云いたい。ボスありがとう。
ジャカとセバーヨスのCMのコンビネイションは、「パスの砲台」がふたつ設置されたようなものでアーセナルのパスゲイムに大いに貢献したし、セバーヨスのよりNo.8ぽい前後の大きな動きが出るときはMFでのとてもいいアクセントになっていた。
一方で、守備の面ではセントラルエリアでジャカのとなりに守備的な選手を置かないという選択はハイリスクだったという指摘もある。セバーヨスの守備の時間はさほどなかったし、むしろ守備のときはがんばっているように見えたが、実際に残した数字はそうでもない。SofaScore、WhoScoredによれば。
- グラウンドデュエル 4/14
- エアリアルデュエル 1/5
- インターセプション 1
- タックル 1
- ドリブルパスト 3
No.8だったとしても、MFとして最高に褒められるスタッツではない。もちろん守備以外の数字はすばらしく、ゲイムメイカーとしてかなり効いていた。場合によっては彼がこの試合のMOTMだった可能性もあるくらいだと思う。だが、彼が守備寄りの選手じゃないことはこういった数字からもよくわかる。
上の動画にもあるが、前半にミゲル・アルミロンにドリブルで中央を突破されたシーンは、ジャカとともにセバーヨスもちぎられた。あそこはアルミロンのペイスを称賛すべきところかもしれないが、ジャカやセバーヨスはフィルタしなければいけなかったし、ちぎられたあとの彼らがアルミロンに追いつけるようにはまるで見えなかった。リスクが露呈した瞬間だっただろう。
あそこはジャカがいる限りは、もうひとり守備的なCMを置かなければならないという鉄則を思い出させるシーンだったように思う(まあもっともあのシーンはトレイラでも怪しかったかもしれないけれど)。罰を受けていた可能性はある。
とはいえ、アルテタは闇雲にこういったセレクションをしたわけでもない。当然だろう。
NUFCに対する事前のスカウティングで彼らがドン引きしてカウンターを狙ってくること、それに、フォワードの得点力が極端に低く、仮にマキシマンやアルミロンといったウインガーにボールをオウンサードまで運ばれても失点にはつながらない、そういった予想をしていただろうと。
ちなみにCFのジョーリントンは今シーズン23試合でG1 A2。ラカゼットどころじゃないスランプぶりである。それにサン・マキシマンとアルミロンは今シーズンここまででアシストがたったのふたつに、BCクリエイトもふたつしかないそうで。ふたり合わせて。どんだけ。
守備のリスクと攻撃のメリットを天秤にかけて、後者を取った。守備で慎重なアルテタにしてはいくらか賭け成分もあっただろうが、そういう勝負師なところはヴェンゲルさん譲りか。
チームセレクションについての流れで例のゲンドゥージの件についても書こうと思ったが長くなりそうなので、別エントリにしよう。
事情をご存知ないかたにざっくり説明すると、ゲンドゥージがドゥバイキャンプでアルテタやコーチとやりあったという話。それでこの試合はベンチにも入らなかったという。
まあぼかああんまりシリアスにとらえていないけど、何が起きるかはわからない。
ペペのゴールの際にゴール裏のカメラが捉えたセバーヨスの喜びようが最高だった。
やっぱり彼は、絶対にいいやつ。
試合後にこちらのブログを読ませてもらうとゆうのがあたしのルーティンです。いつもありがとうございますm(__)m
語り尽くせないほどの待望の勝利でしたね、しかも4-0。セバジョスほんとよかったし、エジルも存在感ヤバかった。若手たちも素晴らしく、いよいよ反撃開始ですよね。プレミアもカップ戦も全部大事な試合なんで、今回出てないガビやネルソン、新加入のマリたちもバンバン活躍してほしいですね。
順調に戦術もモチベーションも回復しているわれわれに必要だったのは結果で、それが最高な得点の形で、かつクリーンシートでできたことがおおいに自信につながると思います。本当に良かった。ELには、マルティネス、左からコラシナツ、マリ、ソクラティス、ベレリン、中にトレイラとゲンドゥージ、ガブにウィロック、AMNにラカとかですかね。あー、もう毎試合楽しみで仕方がない。COYG
デカ盛りエントリ、大変ご馳走さまでした (^人^ )
ご指摘の通り、予想だにしないスターティンでしたが裏を返せばそれだけチョイスの幅が広がっているということで、チームセレクションが楽しみになりますね!
おそらく、ドゥバイであの手この手を仕込んできているはず…
アルテタ恐るべし!
次のエバートンはさておき、残りのPL12試合はまあまあキツい相手が残ってる訳ですが、昨シーズンの尻窄みでは無く、尻上がりに完成度を高めて行けるなら来シーズンは大いに期待できそうです!
もう今シーズンは5位フィニッシュでいいです。
行こうCL!!!
COYG
お勉強しながら観てたのですが、時々目が覚めるようなパスが出るとエジルなのが嬉しかったです。ゲンちゃんはケンカして大きくなれ!
しかし、スタメンは全く監督の権限なんですねえ。
アルテタさんは前の方より哲学がありそうだ。
更新ご苦労様です。
最高の結果ですね。チームを操るべき選手が操り得点を決めるべき選手が決めればこうなることは必然なのでしょう。
攻撃面に関しては改めて一つの回答が示されましたね。エジルを起用する際は彼をゴールに近い位置でプレーさせる事がやはり最大の鍵だということ。それさえできれば攻撃陣は今後も期待できそうだということ。しかしながら逆を言うならそれをさせてくれない相手に対してはエジル中心の攻撃では機能しないだろうということ。です。
そう考えれば少なくても今季の攻撃面でのアルテタの仕事はいかに改善した守備のバランスを崩さずにエジルをゴールに近い位置で気持ちよくプレーさせるかの答えを見つけることだと私は思えます。ホームで引いた相手にはセバージョスの起用という新しい答えを見せてくれました。ではアウェーでは?強豪との試合では?90分の一貫性は?どう解決するのか楽しみで仕方ありません。課題に対して失望ではなく希望を感じる・・・久しくなかった感覚です。
ムスタフィの起用は私も驚きました。彼は移籍市場が開く度に放出を試みたけど出来なかったとまで言われた選手です。アルテタ招聘前は正しく戦力外だった選手です。その彼が・・・気付けばあのチェルシー戦以降全試合で先発ですよ!!
ただ・・・この起用が本物の信頼なのか消去法なのかはパブロ・マリがフィットした後にはっきりします。仮に前者ならジャカと並んで週刊ジャンプの世界です。前監督の下でどうにもならなかった選手を2名も復活したわけですから。
いつも楽しいブログをありがとう!
読み応えがあるので、長文に対する不快感は一切なし。
英語が不得手な人たちにとっては、海の向こうのサイトとかデータはホント貴重。
サンマキシマン連呼と、ムスティに対する分析がほぼ同じで笑いました。
あんまりエメリ時代は振り返るもんじゃあないんでしょうけど、セインツ戦でゴール決めたあと靴ひも気にしてたときとどえらい違いだなあと(笑) ラカ、ありがとう。
あんまり期待しすぎてもとは思うんだけど、期待せざるを得ないなあ….!でもまだ夢を見させてほしい。COYG
更新お疲れ様です。質問です。
文中に
オバメヤンが試合後に語っていたように、後半の調整でサカにスペイスを開けるために後ろ(ミドル)に下がった
とありますがin the middleとは内に絞るではなく後ろ(ミドル)に下がるというニュアンスなのでしょうか?
英語が苦手なので教えて頂けると嬉しいです。
エジルにしろペペにしろ、「後ろが押し上げてくれればやれる!」と確信できたのは大きいと思う。変な停滞感が吹き飛んだような気がする。
ただあえて言うなら、ここまでドン引きするチームはPLには少ない。より前からくる相手に対しては、このやり方は穴も大きいと思う。ペジェリンとセバージョスが上がるとムスタフィが右に開かざるを得ず、逆サイドはサカ1人になってしまう。ゴール前のサカのあの軽い対応(ルイスがギリギリで弾いたアレ)を見てると、戦術的に幅のあるチームなら当然「ペジェリンが上がった裏→ファーサイドへのクロス」を狙うと思う。
右SBやDMFが上がるオプションができたのは嬉しいが、上がるなら状況を考えて抜け目なくフィニッシュで終わらないと痛い目を見るかも。
ラカの先発外れは、前節あそこまで引っ張ったのがある意味一定のチャンスは与えたというプロセスの一環にも思えました。
セバージョスの選択も嬉しかったです。色んな意味で今後の幅の広さに期待します。
セバージョスはピッチ上の監督になれる選手だと思います。(前も言ったっけ)
守備もスピードは厳しいけど、強度自体は以前より上がった印象だが、数字は良くないのか…
ムスタフィはパス精度もそうですが、CBにプレスをかけてこない相手に対して自分からドリブルで持ち上がって相手を引きつけるプレイをするのがソクラテスと比べてポジティブな面だと思います。
ペペのポジショニング改善については個人的にはベジュリンが上がったから中央に行ったという印象ではなく、中央を使う意識が出たように思う。アルテタが指摘していた部分の改善。
そもそもベジュリンが上がることってベジュリンの復帰戦とかでもあったけど、
ペペはそれでもサイドの端の位置を変えずに中央には行かなかった。
こういうのもあってペペのポジショニングについては色々指摘されてきたと思う。(自分も)
逆に言うとベジュリンが上がらなくてもこれからは中央を使うことも増えるんじゃないかという期待も持たせられた。
エジルについても明らかにPA内に入る、高い位置を取る意識が見られた。
それとボールの受け方・寄せられたときのキープ力も改善したのではという期待を持たせる。
もちろん他の人も指摘しているように、ハイプレスをかけてくる相手、エジルにマークをつける相手だとどうなるかは今後の注目ポイントになると思います。
これがプレスをかけられて全体的に下がった位置からビルドアップになった場合に、
エジルが下りてきたりすると、そこから高い位置に移動するまでの間に攻撃が終わることもあるし、
エジルの走行距離が伸びて今回の試合のようなポジショニングに入れないことが出ることも考えられる。
(これはエジル以外の選手も起こりうる)
理想はエジル(トップ下の選手)の下りてくる頻度は少い方がいいのかなと。
ただこの辺りも、オーバ、ペペ、エンケティア、ラカ辺りがトップ下近くの位置に入る(使う)頻度増加によってエジルのフォローにもなっていたし違った状況を見られるかもという期待も抱かせます。
色々書いてますが主さんの言う事に毎度大抵同意、なるほどです。
大勝利にぼくも喜びが爆発です。
しかも、フロント4のゴールでもう絶頂。
やはりアルテタ素晴らしいですね。
ぼくが気になることがエジルの走量です。
どうしてもどなたかに共有したくなったのでこの場で失礼します。
アルテタ体制になってから、エジルの走力は
格段にレベルアップして各メディアでも騒がれてますが、これはウーナイの良い影響があるからだと思いました。
ウーナイはエジルのフィットネスについて口うるさく言ってましたが、これにエジルに火をつけ、今のエジルのレベルアップに結果として表れたんだと感じました。
ウーナイはやはりただ恨めないなと。
以上です。
今回のエントリもとても楽しかったです。
これからもお世話になります。
おやすみなさい。