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ヘッドコーチ就任から1.5ヶ月。アルテタ・アーセナルの残した数字。今後の課題

ポゼッションとパス

アーセナルのフットボールを語るうえで最重要ポインツのひとつである、ポゼッションとパスについて。

ポゼッションは悪化している

「ファイトしてポゼッションする。試合をコントロールするためにいつでもボールを持つ」。アルテタのことばである。

エメリが「われわれはポゼッションフットボールをやる」と語りながら、どうも本心ではむしろボール保持を放棄し重心の低いカウンターアタックをやりたがっていた(ようにしか見えなかった)のと違い、アルテタはヴェンゲルさんがつくりあげたアーセナルFCの、いと尊き価値を取り戻そうとしているように見える。

すなわち、ボールを持ち試合をコントロールする=ポゼッションフットボールである。ボールを持ちパスを回し、自分たちが主役になり試合の主導権を握ること。ボールを持たずに試合の主導権を握るスタイルもあるが、それはアーセナルFCの価値ではないことはここで指摘するまでもない。

アルテタの時代に入り、このポゼッションに変化はあったか。

結論から云うと、アルテタの時代になってからはエメリ時代よりさらにポゼッションは悪化している。今シーズンの各マネージャーごとの平均ポゼッションの数字は以下の通り。出典

  • エメリ 56.23%
  • ユングバーグ 54.4%
  • アルテタ 52.57%

ちなみにヴェンゲルさんのラストシーズン(17-18)の平均ポゼッションが61.4%だということを考えると、この2年でポゼッションレイトは下降の一途にある。

あの後ろ向きなプレイスタイルからエメリのポゼッションレイトが低いのは納得できるが、ボールを持ちたがっているアルテタのチームにおいてもその流れをさらに悪化させているというのは少々意外に思えた。

しかし考えてみれば、ハイプレッシングやハイラインといった、アルテタが求めるインテンスなスタイルでプレイするフィットネスが現状足りていなかったのは明白で(つまり「マンシティ基準」に達していないということ)、そのせいで90分においてポゼッションできる時間帯とできない時間帯があることは、この1.5ヶ月においても繰り返し指摘されてきたことでもある。

ボールを保持しパスで攻撃を組み立てるというコンセプトについては、アルテタの時代になってからより明確化され、そのプロセスも大いに改善しているようにも見える。やることがはっきりしたというのは、エメリからアルテタに交替してからチームに見られる最大の変化だろう。

試合を通して走れるフィットネスは、今回のドゥバイでもひとつの課題になっていることだろうし、今後それがある程度身に付いてくればパフォーマンスに変化が出てくるに違いない。

ともあれ、アルテタのチームにおける現状のポゼッションレイトの低さは、チームとしての完成度の未熟さを示していると云うべきだと思う。マネージャーのやりたいことは見えているが、いろいろな意味で選手たちがまだそこに追いついていない。

パスも悪化している

ポゼッションと密接に関わるパスについてはどうか。

ポゼッションと同様、試合における平均パス数も減少の一途をたどっている。直近の3シーズンの比較が以下。

  • 17-18シーズン 526.9
  • 18-19シーズン 481.8
  • 19-20シーズン 437.6

この2年、試合平均でほとんど100本ほどパスを減らしている。

そして今シーズンのなかでアルテタの7試合についてはどうかと云えば、試合平均でなんとたったの「326」ということでこれまでから劇的にパス本数を減らしている。今シーズンの数字で昨シーズンより50近く平均パスを減らしているのはこの影響があるということ。

さらに深刻なのは、ファイナルサードへのパスの減少の割合がより顕著だということだ。

2シーズン前と比べてパス本数自体は17%の減少だが、ファイナルサードへのパス本数に限定すると今シーズンはそれが36%も減っている。

シュートを減らしている原因はここにもある。そもそもボールを危険な場所に運べなければ、シュートもできない。FWの能力以前にシュートする機会自体が減っている。

ところで、アーセナルのパスについては、下記のブログ記事が大変に詳細に分析している。以上のパスの数字もここから拝借したものである。

The 7amkickoff Index: Mesut Ozil’s stats, a deep dive – Arseblog News – the Arsenal news site

かつてこのブログのとある読者さまに「結論ありきのバイアス記事を書く三流ジャーナリスト」と酷評された(笑い)7amkickoffことTim氏だが、ぼくは相変わらず彼の書くデータを駆使した緻密な記事に圧倒されている。平たく云ってBig respectがある。彼はこの記事を書くのに20時間ほど費やしたそうで、これをタダで読めるとはまったく頭が下がる思いである。

この記事はエジルの不調を過去シーズンのスタッツ推移から紐解くという趣旨?のエントリながら、同時にシュート、チャンスクリエイト、パスなど現在のアーセナルの多くの問題点を指摘するものになっている。全アーセナルファン必読の記事なのでチェックしましょう。

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One Commnet on “ヘッドコーチ就任から1.5ヶ月。アルテタ・アーセナルの残した数字。今後の課題

  1. 夏の移籍市場でアルテタのフットボールにフィットできるいい選手が獲得できることをただただ願う。

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