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ミケル・アルテタの「フロント5」4つの論点

ウィンターブレイクのドゥバイキャンプも終わり、ロンドンに戻ったチームはもう日曜の試合に備えている。長い休みがようやく終わるとはありがてえ。。

さて今回は一昨日のエントリと対になるエントリ。

ミケル・アルテタが来て1.5ヶ月、アーセナルで採用しているシステムを特徴づける「フロント5」について、考えてみたい。

アルテタ以降のアーセナルでは守備面では一定の進歩を見せながらも、いまだチャンスクリエイトやシュートといった攻撃面で苦しんでいることは、一昨日のエントリでも書いたとおり。そのおかげでアーセナルは試合で勝てておらず、アルテタが来て以来PL7試合でW1 D5 L1と成績が低迷している。

そんななかで、最近はラカゼットやエジルといった選手個人のプアなパフォーマンスがますます注目されるようになっているが、このチームの攻撃の停滞という問題は個人のフォームや能力だけに帰結すべきものではなく、チームセットアップや戦術的・構造的な影響を受けていることも見逃すべきではない。そこには、おそらくは両方の側面がある。それがこのエントリの趣旨になる。

現在までに見えている、アルテタの「フロント5システム」における論点をおさらいしたい。



アルテタ・アーセナルの基本戦術「2-3-5」

まずはあらためてアルテタが採用しているシステムを振り返っておこう。

試合前に配られるチームシートには基本的には毎回「4-2-3-1」と表記されているようだが、試合が始まってしまえば、

  • ボールを持っているときは「2-3-5(3-2-5)」
  • ボールを持っていないときは「4-4-2」

と可変になる。

このポゼッション時(攻撃時)の2-3-5になるとき、前のアタッカー5人のことを「フロント5」と呼んでいるわけだ。これは、いわゆる「ポジショナルプレイ」で想定されるピッチを縦5分割にしたときの5レインそれぞれに、アタッカーをひとりづつ配置するというやり方である。

4-2-3-1(基本フォーメイション)

これが、ボールを持ったときには、2-3-5(あるいはジャカがLCBの3-2-5)になり、5人がフロントに並ぶ。

2-3-5(攻撃時)

このフロント5を形成する際に特徴的なのはFBのポジショニングで、左はLBサカが最前列まで押し上がり(ジャカが後ろをフォロウ)、右はRBベレリンがInverted-FBとしてCMに加わりミッドフィールドでトランジションに備える。

ここで左右での非対称があるのは、ナチュラルLBがおらずウインガーのサカをLB/LWBで使わざるを得ない状況のせいもあるだろう。

サカが左ウイングに入ることでオバメヤン(マルティネリ)が内側にずれてインサイドFWとなり、さらにCFのラカゼットはFalse#9として彼らのためにゴール前のスペイスをつくりフィニッシュを促すという構造になっている。

一方ボールを持たれているときは、オウンハーフに引いて4-4-2(4-4-1-1)のブロック守備に。

4-4-2(守備時)

試合によって多少の調整はあるが、アルテタはアーセナルのすべての試合でほぼこのかたちを踏襲している。ウナイ・エメリのように毎試合でシステムを変えたりはしない。

<フロント5>というトレンド

なお、以前にも少し書いたがこのフロント5については、戦術エキスパートのマイケル・コックスによれば、100年前に見られたフットボール戦術であり、PLのトップサイドではもう3年くらい前から使用されるようになってきたということ(リヴァプール、シティ、チェルシー、スパッズ等の事例)で、すでに珍しくなくなってきていると指摘している

この一見攻撃偏重でやぶれかぶれに見えるフォーメイションがPLではトレンドのようになっており、われわれもようやくそこに追いついたのは喜ばしい事態と云えるのではないだろうか。。

そしてわれらアーセナルに関して云えば、この極端な前掛かりのシステムになってから守備がむしろ改善されているという事実は、なかなか興味深いように思える。

「攻撃は守備から」とはよく云ったものだが、アルテタの戦術アプローチはあきらかに攻撃ファーストで、むしろ「守備は攻撃から」とでも云いたげなものになっている。

エメリが後ろを厚くすることで守備を改善しようとしたことは、極めてまっとうな正攻法だったと思う。誰でも考えつくことだ。いつも相手をリスペクトし適応しようとする彼らしい考え方でもあった。だが、毎試合で数多くのシュートを浴びるなど、決して守備がよくなることはなかったのだった。

アルテタが逆に前を厚くして結果としてそれが守備の改善にも貢献しているというのは、なんというか皮肉なことである。

しかし、考えてみればヴェンゲルさんの時代はまったく守備のことなど顧みず(笑い)、とにかく攻撃することでいまよりよっぽど守備も攻撃も機能していたのだから、そういう意味でもアルテタはアーセナルらしさを取り戻しているとも云える。

お互いのアプローチでそれぞれ違ったアウトプットになったことについては、一概にアプローチのおかげだとは云えないが、単純に守ればそれで守れるわけではないというところには真理があると思う。フットボールとはかくも奥深くおもしろいものである。

 

つづけてアーセナルの攻撃「フロント5」における論点を整理してみる。

12 Comments on “ミケル・アルテタの「フロント5」4つの論点

  1. 更新お疲れ様です。ドリブラー大好きなのでペペが躍動するのがみたいですね。あんなに1人2人平気で剥がせる選手はなかなかいないと思うので…。
    おっしゃる通りティアニーが戻ってきてからが本当にアルテタのやりたいサッカーになると思います。何にせよ楽しみです

  2. 興味深い内容ですね。素人ですが、個人的にはB2Bの選手やMFの攻撃関与についてはちょっと疑問があるような。ピュアLBが復活した場合は置いといて、アルテタ体制になってからの5レーンで考えた場合、既に前線に5人並んでいるわけで、それ以上守備のリスクを冒して攻撃にシフトしてよいものかと思います。

    後ろに控えているのがファンダイクとかスピードも1VS1も強い選手が控えているならともかく、うちのCBは明らかにそのレベルからは劣っています。来シーズンサリバが戻ったら劇的に変化するかもしれませんが。ラポルトなどの主力CBが痛んで守備に綻びが生じたシティがいい例じゃないでしょうか。

    また、モウチェルシーみたくゴール前にバスを止めるほど守備が密集しているならともかく、今のアーセナルに向かってくるチームでそんな戦術取ってくる相手はいないように思います。

    いろいろ言いましたが、基本は最前線の5人。空いてるスペースを見てもう1人飛び込むもしくは、サイドに出て、前線の一人が中に入るってのがいいバランスのような。ペナルティエリア内に5人飛び込んでも相手DFも寄ってくるし、スペースを消すだけでボールが回ってこないんじゃないかと思います。エリア内にはニア、中央の奥と手前、ファーの4人並べば十分だと思うんだけどなぁ。

    エリア外からジャカとかのミドルを刺すってのがバランス取れてると思うんですけどねぇ。

    ペペとラカゼットには期待してるんだけどなぁ。キャンプでの成果を見せてほしい!

  3. 全体にまったく同感。ヒネクレ者の僕にしては珍しく、というべきかw

    あと先日のヒートマップでエジルがサイドに開いて受けようとしてるデータが出てたけど、あれは同時にエジルがラカのすぐ後ろにいないという事でもあると思う。周囲と絡んでこそのラカにとって、これは致命的に痛い。エジルがサイドに流れるならジャカあたりが押し上げるべきで、実際その連携は過去には機能してきてるけど、今はサカの後ろをカバーする関係上そうも行かない。ここでもやっぱり本職の左SBが必要、という話になると思う。

    余談だけど、ラカ・エジル・ジャカの3人が近くで絡む連携は相手CBから見ると「そんなもん予測できるかあ!」ってモノを投げたくなるレベルだと僕は思ってる。(ちなみに僕は少年時代ヘッポコCBだった)

    左SBにKTが復帰できれば一番いいけど、僕はソアレスも面白いと思ってる。両足を使える左SBはプレスする側から見ると非常に追い込みにくく、低い位置でも普通に機能する場合が多い。右のペジェリンとAMNはかなり高いレベルで見てもリプレイスする必要のないSB(ただしかなり攻撃的)なのだから、どっちかと言うと左SBに守備的なオプションを持つべきだと思う。

  4. ポジショナルプレイの代表格がシティだから、攻撃に速効性があるかと思ってましたが、適切な位置に適切な選手を配置することの効果は守備に現れやすいのかもしれません。

    一方、攻撃はパターン化すると、対策されやすくなるのではないでしょうか。それに対して、今回のドバイキャンプではポジショナルプレイを自動化するトレーニングをしたのではないかと思います。

    ポジショナルプレイではピッチを5分割にし、それぞれに選手を配置するものの、誰がどこにいるかについては決まりはありません。例えば、ラカゼットが左のハーフスペースに落ち、オーバメヤンが中央に侵入するなど。

    ポジショナルプレイを自動化することができれば、様々なパターンを見せることができ、相手を迷わせることができます。

    と、いう妄想でした。

    ティアニーの復帰が大きな意味を持つことははげしく同意します。

  5. エンペラータイムをもっと増やせればいいんですけどね、なかなかうまくいかない。当初に比べたらボールを持ってるときとそうじなないときのチーム全体の連動が明らかに違うのはわかるんですが、シュートを撃たないとゴールは生まれない。
    もう撃つしか選択肢がないってゆうパスを出すのはやっぱエジルだないと。アルテタになって出るのが当たり前になって信頼もされてるのでしょうし、グーナーも彼の活躍で勝つ試合が見たいのですが、このままだとダメですよね。ペペが右サイドで孤立するのもエジルのパフォーマンスの問題でもあると思います。いっそエジル外してペペ、左右にオバガビの方がうまくいくんじゃないかと。
    2週間も試合がないといろいろみんな考え事がふえますね。早く試合が見たい。
    それにしてもやっぱアーセナルはビッグクラブだと思いました。ドバイでのみなさまのパートナーとか見ると、明らかにセレブですね。

  6. 更新お疲れ様です 時間をかけて、ゆっくりじっくり読ませて頂きました
    左サイド偏重の攻撃も見ていて楽しいですが、対戦相手から見れば対策もしやすいですよね
    KTの復帰でRBも攻撃参加ができるようになれば、両サイドから強烈な攻撃ができるようになるのでしょうか

    ラカのフォルス9を監督が必要としているのはわかるのですが、今のチームに必要なのは得点率の高いCFに思えてしまいます トップにオバかエンケティア、トップ下にエジルかラカ、WGにペペサカネルマルで試して欲しい

    ふと思ったのは、私も長いことガナーやってますが、守備に満足できるチームはソルやジウビーが居た時以来で、攻撃に全く満足できないチームは初めてです

  7. ティアニーが戻ってきたら今左サイドでやってる崩し方が右のサイドでも見れるようになるのかもしれませんね、右センターバックのダビドルイスとかムスタフィがジャカのようなパスの出し手になれればですけども
    エジルは以前よりドリブルとかキープ力は衰えてると思いますけど、オフザボールやひらめきやパス能力については衰えてないので心配してません。
    ぺぺの魅力はスピードと加速力、大きなボディーフェイントを使ったドリブル、左足のシュートだと思うんです。でも、今のところマイナス要素、たとえば右足が使えない、ロングレンジのパスが蹴れない、視野の狭さ、テクニックがないとか、そういう部分が目立ってるんですよね。24歳っていう若くは無い年齢ですけど、成長して移籍金が無駄じゃなかったって思わせて欲しいです

  8. そう、得点ですよね。ちょっとこの試合数でこの得点数はみたことがない。エジルが停滞しているのは、ショートパス交換ができる相手か、アレクシスのようにエジルのビジョンを理解できている人がいないからでは?あと、エジルがカウンター発動して、かけっこでどん、とか、ジルーやウェルベック時代のセットピースからのヘッダーとか、まわしてまわして、ミドルをずどんとか・・・いやー、いまそういうバラエティーが全く無いなあ。再現性ありそうなのは、サカにあわせてガブが高速に飛び込むぐらい。特に右はご指摘の通り、停滞しちゃっていますよね。ネルソンのほうが確かにオーバラカはいきる。

    1. 攻撃型布陣で攻撃により注力したことにより防御がよくなったというよりは、アルテタになって無気力守備からハードワークさせているだけという気も
      後ろが弱いのは明白なので、帰陣の速度やネガトラ時の対応を間違えればかつてのベンゲルアーセナルのような失点を繰り返すような

  9. KTが戻ってきても左サイド偏重のこのままでいく気がするけどなあ
    ジャカを使う、かつマリ(期待外れならDルイス)と供給する奴らが左に寄ってるし。
    なによりオーバメヤン(マルティネリ)と得点期待できる奴らが左インサイドFWに当てはまってる。

    右に関しては質的優位を生み出してかなきゃだけどペペがまあプレーが安定しない。
    ネルソンのほうがチェルシー戦とか見てるとサイドでの1対1で優位に立つんだよなあ
    正直右サイドはストラクチャアよりプレイヤー弄って
    ペペ→ネルソン (エジル→セバージョス) なんぼな気がする

    ほんとはこういう新監督の要求と陣容が噛み合っていないときほど
    ユースから選手もってこれるとこが優秀
    その点 サカ AMN がはまったんだから尚更あと1枚ぐらい攻撃陣で
    下からでてこないものか??
    近年アーセナルユースの攻撃陣 変な青田買いして 出ていかれたりで散々だったからその余波かなあ、、

  10. 更新ご苦労様です。

    素晴らしい分析ですね。そしてご指摘の通りだと思います。その上で私はアルテタを評価しています。この僅かな期間で守備面の改善が見えていますからね。この課題が解決されずに何度嘆いたことか・・・

    私もティアニーの復帰後は攻撃面で違った形が見れそうな期待があります。ご指摘の通り右サイドが活性化すれば確実にアーセナルの攻撃力は上がりますからね。

    私の注目はパブロ・マリですかね。彼がCBのレギュラーとして攻撃面でも貢献してくれないかなと。私は今週末から彼が起用されると予想しています。一気にブレイクして来夏のCB補強はサリバだけで十分だ!と言わせて欲しいですね。

    ラガゼットは不憫ですよ。少なくても私は彼を批判する気になれません。得点という結果が出ていないことは事実ですが彼が担っている役割は極めて重要です。私がアルテタなら今季の『得点』に関しては彼と心中します。

    むしろ・・・エジルとペペが入れ替え対象かなと。右からネルソン・セバージョス・ラガゼット・オーバメヤン・サカのフロント5とかどうでしょう?マルティネッリとペペが切り札として待機する布陣なら悪くないと思いますが。

  11. 「フロント5」として並べて見ると、オーバとエジルの違いにも注目出来て面白いですね。
    ただ「フロント5」というのがどういうものかしっかり把握してないですが、
    個人的にはフロント5の5レイン配置になるのはファイナルサードまで持ち上がった場合であって、
    ジャカがバックラインに下りる場合のビルドアップ時には4-3-3のインサイドハーフがそれぞれ左にズレたような形で見る方が近い気がしてて(サカが左サイドハーフ)、
    その結果右サイドはそもそもビルドアップから苦労してる印象。

    左サイドはジャカ-サカ-オーバの縦の関係になるというか、縦関係の距離が適切、効果的になる。
    ジャカから見るとトレイラ(ゲンドゥージ)も選択肢になるし、
    サカから見るとオーバとエジルが前への選択肢になりうる。

    右サイドだとこうならない。
    ベジュリンからだと一応トレイラと右サイドに寄ったエジルか、受けに下りてきたペペが選択肢になるが、
    そこに入っても位置的にファイルサードに入らないし、その先の選択肢が左サイドに比べてひとつ少ない。
    トレイラ(ゲンドゥージ)も高い位置を取らず、ベジュリンと並ぶくらいなのでそこで停滞することも。

    エジルは横に動くけどサカは左サイド固定なので右サイドは人数が少ないことになる感じ。
    エジルが右サイドに移動したときに必ず誰かがトップ下近くの位置に必ず入るならまた話は変わるんだろうけど。

    今のところファイナルサードでの崩しは選手同士の相性とかに頼ってる印象。

    ティアニーが戻ってきたら同じことを右サイドでもするのか?
    しない場合でもCMのポジショニングの是正が必要とは感じる。

    この前のバーンリー戦では前半20分くらいまではジャカが攻撃の早い段階から高めの位置を取ることを意識していた。(最終ラインに下りることもなく攻撃を組み立てていること多かった)
    こういうことは必要になると思う。
    ジャカが右サイドまでフォローするのか、右サイドから攻める場合は左CM残して右CM上げるか。

    どう改善していくのか楽しみです。

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