まとめ:今後の課題と期待
当然のことながら、パスもポゼッションもそれ自体が目的なわけではない。
それを増やしたいなら相手からプレッシャーのないオウンハーフで延々とボールを回せばよい。もっと云えばパスもポゼッションも重視せず、ロングボールでいきなりFWにボールを運ぶような手数をかけないダイレクトに攻めるやり方は戦略としてはよりモダンなものだろう。だからそれが減ったからといってそのことだけを憂う必要はない。
だが、アーセナルのあるべきプレイスタイルについて考えれば、またアーセナルの現在のチャンス不足やゴール不足を思えば、これらは大いに憂うべき数字になる。
少なくともミケル・アルテタはこの状況を憂えていないとは考えにくい。彼はアーセナルでアーセン譲りの「ポゼッション&アタッキングフットボール」をやるつもりなのだから。
ということで、このように前任者の時代からは概ね守備は改善の傾向が見られるものの、攻撃はいまだ改善が見られない。改善どころか少し悪くなってすらいる。それがアルテタ・アーセナルの45日間の大雑把なまとめである。
ヴェンゲルさんの時代から長らく、誰もがアーセナルの根本的な問題は守備にあると指摘し、ウナイ・エメリはその改善が期待されるも、最後には攻撃も守備も進歩どころか後退させてしまった。数字や結果が出ないだけでなく、ドレッシングルームのコントロールを失ってしまったのでは、残念ながらもうそこから何かを改善できる余地は残っていなかった。
そしてミケル・アルテタは、この短期間で壊れかけたチームに驚くほどの安定をもたらしているように見える。選手たちもアルテタには大きな信頼を寄せていることはコメントなどからも察せられる。
だが、その安定は、まだ守備面以外では結果や数字には表れていない。勝つためには得点が必要なのだから、攻撃に進歩がないということは依然として残されている課題は多いということだ。
当面アルテタのチームにとって最大の課題は「現状の守備の安定を維持しつつ、攻撃力を取り戻すこと」になる。攻撃力とはつまり、自分たちがボールを持ったときのパフォーマンスそのもの。
フットボールにおいて攻守のバランスはつねに核心的テーマなのだから、そう簡単にものごとは運ぶはずもないが、この短期間で守備を改善した実績や、現在のチームの(いいときの)見違えたようなプレイ内容を考えると、ミケル・アーセナルの今後に期待をせずにはいられない。
おわり
夏の移籍市場でアルテタのフットボールにフィットできるいい選手が獲得できることをただただ願う。