昨日のCIES Football Observatory週間リポートが少し話題になっていた。
これによれば、今シーズンここまでのヨーロッパ5メジャーリーグスのなかで、もっともファウルする頻度が少ないのがアーセナルFCだという(※先々週末までのデータ)。その頻度は、10分44秒に一回。
このことが何を示しているのか。ちと考えてみた。
アーセナルはファウルをしない
ファウル低頻度のトップ20はこんな顔ぶれである。
バルサ、バイエン、シティといったなかなかのビッグチームが上位にいる一方で、イングランドのミッドテイボーもちらほら。というかイングランドが多いな。。半分以上。PLでは、ファウルをあまり取らずに試合を流す傾向があるということだろうか。それはそれで興味深い。試合が止まらないほうが圧倒的におもしろいし。
それはともかく。
ファウルの頻度が少ないというのは、ポジティヴとネガティヴとふたつの側面がある。
ひとつは当然、それだけうまくプレイしているということ。
基本的にファウルが必要な場面というのは、相手のボールを奪おうとするときだ。自分たちが試合をコントロールすればするほどボールを奪う必要もなくなり、自ずとファウル頻度は下がる。ビッグチームのファウル頻度が低いのはそのせいも大きいだろう。
また、ファウルをすればフリーキックを与えるわけで、相手の有利になる行為はなるべくしないほうがいいに決まっている。ファウルをしなければ、それだけ相手のチャンスを制限できる。
逆に、「タクティカルファウル(故意のファウル)」のようなプレイもあるように、ファウルをすることで相手のプレイの流れを寸断することもできるため、ファウルが少ないことがネガティヴになることもある。これは、ボールを相手に支配されるような、より競争力の劣ったチームに当てはまる。
現在の状況でアーセナルのファウル頻度の少なさを考えてみると、試合を支配しているからという理由よりも、単純にボールを持たれているときに、アグレッシヴにプレイできていないという理由のほうが大きいように思える。
アグレッシヴな守備をしないアーセナル
先日も似たような内容のエントリを書いている。
プレスが苦手なアーセナル | ARSENAL CHANGE EVERYTHING
あらためてアーセナルの直近の守備データをFBref.comでチェックしてみると。
- タックル:20位
- タックル勝:20位
- 対ドリブルタックル:20位
- プレス:18位
- プレス成功率:11位
- インターセプション:20位
20位というのは、リーグワーストということである。アグレッシヴ守備に関するスタッツでは、アーセナルが軒並みリーグ最下位だった(p90でも変わらず)。
これらのデータで小賢しいのは、「プレス成功率」だけちょっといい数字という。つまりプレスはがんばってはいないけれど、多少効率的にやっているということ。こざかしいわー。
シーズンも残り2試合の最終盤でこの数字。おそらくシーズン終了後もたいして変わらず終わるだろう。
そして、これがかなり深刻に感じられるのは、アルテタが望んだプレイの結果とは思えないからだ。
彼は、うまくいったときは、試合後にしばしばチームのハイプレスやアグレッシヴなプレイを称賛している。わざわざ口にしているくらいだから、実際チームにはそれをやらせたいのは明白。
だが、こういう結果になっている。
※ちなみにこのあたりのスタッツは、じつはマンシティも似たようなポジションにいるので、ペップとミケルの共通したコンセプトだというふうに解釈したくなる欲求にかられる。だが、それはおそらくふたりの共通点でも類似点でもなんでもないのだろう。シティは試合をコントロールした結果(※リーグベストのポゼッション)アグレッシヴ守備をやらなくて済んでいるというほうが実情だろうと思う。
アルテタやコーチたちは、シーズン中も当然チームのパフォーマンスを分析していて、このようなデータもつねに確認しているだろうが、どういう認識を持っているのだろうか。自分のチームがリーグの20チームスのなかで、最低の守備パフォーマンスしかできていないことに。
プレスやタックルといったものは、ある程度は選手マターな部分もあるだろうが、チームとしてのプレイ方針がまったく影響していないはずもない。
アーセナルがアグレッシヴ守備ができていないということは、しばらく以前から指摘されていたことで、いまに始まったことではない。にも関わらず、今シーズンはそこがとくに大きく進歩しているようにも見えない。自分たちがやりたいプレイをチームにさせることができていない。チームのプレイスタイル(アティチュード)を変えることだってできただろうに。
オーデガードが入ってきて、彼がかなりプレッシングをがんばるタイプだったのは結構だったが、あれはアルテタが指示をしたからというよりは、彼はもともとああいうワークエシックの選手なんじゃないか(アーセナル以外でプレイする彼を知らないのでわからない)。
そこが問題であり、ファウル頻度の少なさというのは、また別の側面から同じ問題を指摘されているようにも思える。
アーセナルはファウル下手?
このようにアグレッシヴ守備をしないのだから、当然ファウルをしないことについては、その恩恵を受けていなければならないが、実際はそうなっていない。
- イエロウカード:6位タイ(48)。
- レッドカード:2位(5)
ファウルの数はもっとも少ないのに、カードはそれなりに受けている。
そしてもちろん特筆すべきはレッドカード。今シーズン、というかアルテタ時代を特徴づけるのがレッドカードの多さである。
Red cards since Mikel Arteta was appointed
9 Arsenal
3 Norwich
3 Fulham
3 Everton
3 Brighton
3 WBA
3 Leicester
3 Man City
3 Palace
3 Sheff Utd— Orbinho (@Orbinho) February 2, 2021
これは今年の2/3のtweet(※ルイスとレノで2枚レッドカードがあったウォルヴズのあと)。このあとPLではレッドカードは増えていないが、ELでは1枚もらっている(※ヴィヤレアルでのセバーヨス)。
アーセナルだけ突出。3倍。
もちろん、シーズンを振り返れば、レッドカードのケイスでは異論を唱えたくなるようなジャッジメントもいくつもあったのだが、それでもやはりもらいすぎである。
ファウルはあまりしないのに、ファウルをすればカードが出る。レッドカードが出る。
レフェリーにバイアスがあるのか? どうでしょう。アーセナルのファンとしては、そういったものもつねに感じているが、どのチームのファンもある程度は感じているのかもしれない。
いずれにせよ、このチームはアグレッシヴ守備のトレイニングをもっとしたほうがいいかもしれない。
おわる