こんばんは。
5シーズン連続でCLを逃しているアーセナルが、今シーズンはPL38試合中、28試合を消化して4位。消化試合のアドヴァンテッジもありつつなお、後ろにつづくライヴァルチームスを3ポインツ以上引き離している。
冬の移籍ウィンドウでは、大量に選手を放出しながら選手の補充をせず。シーズン後半に入っていく時点では、おおいにファンを心配させたにも関わらず現在の好調ぶりで、うれしい驚きになっている。
現在の経験不足な若いチームなら、今年の目標はヨーロッパ(EL)出場が及第点だと云われていたなか、残り10試合でCLの可能性も十分にある立場にいるとは、いったい誰が想像したろうか。
もちろんシーズン終了までなにが起きるかわからない。ただ、なにより、シーズン前半にくらべて、チームのパフォーマンスが安定、かつあきらかに向上しているのは疑いない。チームがチームとしてワークし始めたことを、われわれは毎試合のように確認している。その結果が現在のポジションだ。期待せざるをえないじゃないか。
アルテタの戦術と選手個人の本来の能力や前向きな意識といったものが噛み合って、チームとしてピッチ上でポテンシャルが発揮できるようになったことがもっとも大きいように感じているが、同時に、今シーズンのアーセナルのフォームを支える要因のひとつとして、最近はとくにセットピース(セットプレイ)が注目されている。
今回は、アーセナルのそのセットピースの改善について書きたい。
※「セットピース」=「セットプレイ」の定義は、一般的にはフリーキックとコーナーキックによるプレイのこと。いわゆるボールが止まったDead ball状況からスタートするプレイ。それの逆が「オープンプレイ」となる。Wikipediaによると、ペナルティやスロウインをセットピースに含めることもあるそうな。もっともペナルティをそこに含めてしまうと、パフォーマンス分析の文脈では具合が悪いので、それは含まれないと考えるのがふつうだろう。
21-22シーズンここまでPLで唯一「コーナーから失点ゼロ」のチームがアーセナル
なんと。
もうEPLもシーズン終盤に差し掛かろうとしているのに、いまだに相手にコーナーからの1得点すら許していない唯一のチーム。それがわれらアーセナルという。GW28の時点で、132のコーナーズでゼロ失点。
アーセナルといえば、以前はコーナーキックを含むセットピース守備に、かなり悩まされていたはず。
たとえば、19-20シーズン。アーセナルのシーズン総失点48のうち、45.8%がセットピースからの失点(22?)。この割合はリーグワーストで、失点のほとんど半分に近い。現代のフットボールではすべてのゴールのうち平均35%がセットピースによるものというデータがあるそうだが、それとくらべてもだいぶ劣悪である。
うーん、ムスティ…… このシーズンは彼はレギュラーじゃなかったのだから、このグラフィックはちょっと悪意を感じるな(笑い)
そして、それ以降どうなったかというと、The Analyst(Opta)によると。
セットピースからの失点 | リーグランク | |
---|---|---|
20-21 | 6 | トップタイ |
21-22 | 4 | 3位タイ(GW28まで) |
20-21シーズンの総失点が39なので、セットピース失点の割合は15%。21-22シーズンここまでは失点29なので、おなじく14%。
19-20の悲惨な結果からくらべて、それを劇的に減らしている。
セットピースコーチがやってきた2020夏
ちなみに20-21シーズンといえば、夏にはCBガブリエルが加入したシーズンでもあり、選手クオリティの向上という属人的な理由も否めないが、なにより、この劇的な変化は、2020年夏はアーセナルFCに初めてセットピースコーチがやってきた影響が大きいと思われている。
それが、ブレントフォードから来たAndreas Georgson。フレディ・ユングバーグがアシスタントコーチを辞任してから、あらたにAFCに加わった念願のセットピーススペシャリスト。
そして、早くも1年後にはそれが交代になる。
スポーツマネジャーになるために古巣のマルメに戻ったGeorgsonの後任として、2021年の夏に来たもうひとりのセットピーススペシャリストが、元マンシティのセットピースコーチ、Nicolas Jover。アルテタがペップ・グアルディオラのアシスタントコーチをしていたときに、2年間ともに働いた仲。
Joverのアーセナル加入について問われた去年のアルテタ。
アルテタ:(Joverは)その専門知識を持った人材。チームにとってとてつもなくありがたいし、価値あるものになりうる。今日日、そこは試合の決定的な部分だ。
そこは、熟知してマスターせねばならないものであり、われわれはそのプロセスのなかにいる。
今年のセットピースの著しい改善はもっぱら彼のおかげだと、いまアーセナル界隈でたいへんに注目されている人物。それがニコことNicolas Jover。奇しくも、彼もシティに転職するまえはブレントフォードでコーチとして働いていた。
このふたりの専門家が、アーセナルのセットピースを変えてしまった。
Georgsonが改善できなかったセットピース攻撃をJoverが改善?
なお、なぜGeorgsonが1年にも満たない短期間で退き(※彼は2020年9月にジョイン)、Joverと入れ替わったのかの理由については、Georgsonが古巣で上級の役職につけるチャンスがあったためアーセナルでの仕事を辞めざるを得なかったということもあるが、Georgsonが、セットピースでリーグトップにした守備と同じように、攻撃のセットピースを改善させられず、それにクラブが満足していなかったという見方もあるようだ。
このデータを観ると(※2021年11月時点)、20-21から21-22にかけてのセットピース得点には大きな進歩があることがわかる。総得点のうちセットピース得点の割合が、去年から今年で11%から46%に激増。
『Sky Sports』のNicolas Joverの記事より。2020/21がGeorgson、2021/22がJover。守備(Conceded=失点)では大きな差はないが、攻撃(Scored)にはかなりの進歩がある。
※ところで、この記事のスタッツと前述のOptaのスタッツで数字に違いがある。Optaのデータはリアルテイムのはずなので今シーズンの分は時間差もあるが、19-20の数字はわりと違うので、セットピースによる得点/失点のカウントの方法に違いがあるのかもしれない。よくわからない。
Joverは、アーセナルのセットピース守備だけでなく、セットピース攻撃も大幅に改善した。※現在までセットピースでのゴールは11で、リヴァプール(15)、シティ(13)に次ぐリーグ3位。
私もニワカなので語れないのが悔しいですが、
久々にじっくり観る機会を得たヴィラ戦では、CKでFKのようにボールのところに
2人立つことを繰り返していたのは新鮮でした。
このコーチ、たいへん熱い方ですよね。
得点したらアルテタと抱き合ったり、ガッツポーズしたり。
大きな声で選手に指示している姿がカメラに抜かれるときもあります。
いつも選手と一緒に戦っているかんじがしてます。
今回、彼の人となりや彼のディテールがわかりました。
ありがとうございます。
ちょいちょい話題になってるセットプレーについてまとめてみると効果がはっきりと数字でわかりますね。素晴らしい!
攻撃はちょいちょい変化ありながらだけど、特に前任者とそこまでガッツリ変化はわからないですね。 まあ知識の蓄積があったのかな?
守備は自分も相手に合わせてやり方かえてんなーと、まあ今のメンツ、特にガブリエル、パーティ、ゆうてジャカも空中戦穴ではないし、ベンジャミン、富安もスーパーじゃないけど空中戦勝てる人だしなーと。
ただ毎年の如くあったなんだかゴチャゴチャっと混戦でヤラれる、GK狙われるケースで失点がないのはコーチとラムズデールのスーパーな働きだと思います
ラムズデール、ほんとタフで正にイングランドなGKで素晴らしいなーと
以前、若手の分析担当についても触れた記事をどっかで読みましたし、チームアルテタは期待しかないですねー
amazon が楽しみです
「偶然の入り込む余地がないんだよ」すごいな。セットプレーの話だよね!?選手との共同作業ってことは「これが正解!」みたいな話ではないんだろうけど、すごい時代になったもんだ。だいたいセットプレーの専門コーチなんてオッサンの僕の時代には聞いたこともなかった。
そういや最近マルティネリが左のコーナーキック蹴ってるのは見てて楽しい。先日のパーティのヘッドとか、強いボールでニアのCBの頭上を越えてるのに、すぐ後ろのスペースに巻いて落としてる。あれはすごい。昔からあるプレーだからから素人でも分かるのもいいw。そのスペースに走りこんだり阻止したりがコーチの専門領域なんだろうけど、僕がそれを理解する日はたぶん来ないだろうなあ。。w