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ファンによるフットボールクラブのオーナーシップの可能性と「50+1ルール」

こんちは。

ESLが頓挫して以降、参加する予定だった各クラブが直面している制裁やら損失やら謝罪やら、さまざまなニュースが界隈にあふれている。いまだ混乱は冷めやらぬといった感じ。

アーセナルでは、マネイジングダイレクター(CEO)のヴィナイ・ヴェンカテシャンが、昨日チームを集めてマネジャーと選手たちにあらためて謝罪。また、VVはESLに参加しなかったPLの14クラブのエグゼクティヴたちにも謝罪をしたようである。

クラブステイトメントもそうだが、アーセナルFCは、ほかの参加クラブより率先して謝罪を実行し、いちおうは誠意あるところを見せようとしている。

一方で、リヴァプールやマンUのオーナーたちがファンに対し直接謝罪のことばを述べているのに対し、AFCのオーナーであるスタン・クロンキはこれまで完全に沈黙を保ったまま。ESLの首謀者のひとりがだんまりを決め込んでいることに、ファンはさらにストレスを貯めている。#KroenkeOutのムーヴメントはますますヒートアップするばかりだ。

そんななか、ファン界隈では「ファンによるオーナーシップの議論」が盛り上がっている。

今回はそのことについて少し書きたい。



「ひとり£200出してアーセナルを買おうぜ」

というジョークをtweetをしたのはぼくなのだが、あんまりウケなかった(笑い)。

そして奇遇にもr/Gunnersにかなり似たサブがたった(アップされた時間もほとんど同じだったという)。

The Feasibility of The Fans Buying Arsenal FC

この投稿は暫定的なもので、他の人の意見を聞いて、議論を始めたいと思っています。

このGoal.comの記事によると、アーセナルには世界中におよそ800万人のファンがいるそうです。

一方、クラブの評価額は(確か)およそ£2,000m/£2bn(£20億)です。

仮にその80分の1(100万人)のサポーターだけが貢献したとすると、一人あたり£2,000を提供しなければなりません。しかし仮に400万人が寄付をしたとすると、£500になります。もちろん、他の人よりも多くの金額を支払うことを喜ぶ人もいるでしょう。

これは、そのようなことが調整できると仮定しての話ですが、現代の技術をもってすれば可能だと思います。もう1つの前提は、スタンがクラブを売ってくれるということですが、それはどうでもいいことです。

このような数字を考えると、ファンが組織化してこれを実現しようとするケースはあるのでしょうか?私よりもビジネスの知識があり、財務を理解している人の意見を聞けるのは素晴らしいことです。個人的には、私のクラブには少なくとも£500の価値があり、このようなプロジェクトがあれば非常に興味があります。

皆さんの意見を聞かせてください。

ぼくは1000万人で£200(約3万円)づつ、3万くらいの金額だと非現実的でもないような……と考えたわけだが、1000万人のファンが参加というほうはかなり非現実的かもしれない。

このひとは400万人なら£500(約7.5万円)ずつという試算。You、さては金持ちだな?

いずれにせよ、そのくらいの人数規模と単価で、いちおうアーセナルFCの資産価値だと云われている金額にマッチするという話。

ワクワクする?

ブンデスリーガの「50+1ルール」

このサブのなかでのやりとりを観ていたら、この手の議論はこの数日、各所で繰り返されているという指摘あり。ごめんわしも気づかんかった。

現実的には持株会社をつくって、その株式をみんなで持つとか。そしてファンがオーナーシップをとるためには、100%の株式を買い占める必要もなく、全体の51%の過半数を取得できればよいとか。なるほど。

そのやりとりのなかで「50+1ルール」というのがあって、それがいわゆる51%の過半数のことを指すのだと知った。

云われてみれば、最近はたしかにtwitterなどでも「50+1」という数字を各所で見かけてはいた。

今回のESLの一件で、最初からESLに参加しなかったブンデスリーガクラブのオーナーシップについて好意的に言及されることが多いが、調べたところ「50+1ルール」というのは彼らの独自ルールということ。

これは2018年のブンデスリーガ公式サイト(英語版)の記事。ブンデスリーガの魅力のひとつには、50+1のオーナーシップのルールがあると説明している。

German soccer rules: 50+1 explained

以下、一部を引用。

ボルシア・ドルトムントのCEOであるハンス・ヨアヒム・ヴァツケは、2016年に「ドイツの観客は伝統的に自分のクラブと密接な関係を持っています。そして、もし彼がもはやファンとしてではなく、顧客としてみなされていると感じたら、我々は問題を抱えることになるだろう」と述べています。

50+1ルールはこれを防ぐためのものです。つまり、クラブが、ひいてはファンが、自らの議決権の過半数を保有することを意味しています。ドイツサッカーリーグ(DFL)のルールでは、商業投資家が49%以上の株式を保有している場合、サッカークラブはブンデスリーガでプレーすることができません。

つまり、民間投資家がクラブを買収して、サポーターの意向よりも利益を優先する施策を推し進めることはできないということです。この判決は、無謀なオーナーからの保護と、ドイツのクラブの民主的な慣習を守ることを同時に実現しています。

※太字は筆者による

まさにドイツでは、今回のESL参加のようなファンに不人気なことはクラブのオーナーシップ的に起こり得なかった。

Wikipediaにも項目がある。

50+1 rule – Wikipedia

リード文より。

50+1ルールとは、ドイツサッカーリーグ(Deutsche Fußball-Liga)のレギュレーションにある条項を指す非公式な用語です。50+1ルールとは、ドイツサッカーリーグ(Deutsche Fußball-Liga)の規約にある条項で、ブンデスリーガに参戦するためのライセンスを取得するためには、クラブの議決権の過半数を保有しなければならないというものである。これは、クラブのメンバーが株式の50%を所有することで全体的な支配権を維持し、外部の投資家の影響からクラブを保護することを目的とした規則です。

これがジャーマンフットボールのフェアネスを担保し、資本家の暴走を許さないという。

※このWikipediaによると、50+1ルールはEU独禁法に抵触するというような批判もあるそうだ。それとRBライプツィグがルールの抜け穴?を利用しているとかなんとか。

「クロンキが去ってもあらたなビリオネアが問題を起こすだけ」

ところで、もし仮にわれわれがKSEをアーセナルFCから追い出した(彼が株式を売却)として、それで何かが解決するのだろうか? という問題意識がファンによるオーナーシップの議論の根底にある。

現状のルールのままなら、つぎもまた、どうせ自分の利益を追求するオーナーがあたらしい問題を起こすに違いないし、ファンである自分たちの意見には耳を傾けることはない。そういう懸念がある。また、それは非常に起きそうなことだ。

なんの根拠もなく、ビリオネアのような人種の云うことを信じるのは無邪気すぎるような気もする。

かねてよりアーセナルFCの買収を目論んでいるといわれる、ナイジェリアの富豪Aliko Dangoteに関していえば、彼にAFCを買収してもらいたいという考えは比較的ファンのあいだでも人気のものだと思われるが、昨日シェアされていた情報によれば、彼は彼の会社(工場)で7人が射殺されたと告発されているそうである。

INVESTIGATION: Massacre in Gboko: Soldiers at Dangote’s factory kill 7; company, govt. abandon victims’ families | Premium Times Nigeria

彼はアーセナルの熱心なファンで、KSEと違ってクラブに愛情があるのだから、きっとアーセナルに投資してチームを強くしてくれるはずだと信じられているが、われわれはこうした非人道的な側面を見過ごしていいのだろうか(もしこれが事実なら)。

個人的には、アーセナルがエジルのチャイナウィグル発言から距離を取ろうとしたことと同種の嫌悪感をおぼえる。

偏見で何かを書きたくはないが、このAliko DangoteにKSEとはまた違ったダークサイドがあってもぼくはとくに驚かない。

ASTがUK政府に訴えていること

いまESLが結局ああなったということもあり、フットボールの未来について憂えているひとが増えているように感じる。

フロレンティーノ・ペレスが述べていたESLの理念というのは、突き詰めれば、フットボール世界の枠組みを健全化させたいということだった。フットボールをエンタテインメントとしてもっと進歩させて、もっと公平に収益を上げて、クラブもファンもハッピーになろうと。「90分は若いファンには長すぎる」と試合時間の短縮にまで言及したというのはちょっと笑えたけど。

主役だけ集めて映画を撮れば最高のエンタテインメントが完成するみたいな幼稚なアイディアは、ものごとの本質をまったく理解していないと思えるし、一部のエリートだけで富を独占するようなやりかたは、まったくもって間違えていたと思うが、そういう現状を改革したいというモチヴェイションはきっと今後も残りつづける。彼らも諦めていないみたいだし。

それと、今回まるでUEFA(のコンペティション)が、取り戻すべき大切なもののように扱われていることに納得いかないファンも多いのではないかと思う。

CLアンセムをたどたどしく奏でるロブホの絵面はかわいいんだけども、ん?てなるよね。ん?て。

最近もUEFAが、金のためにアゼルバイジャンのような人権後進国のスポーツウォッシュに加担したことは忘れていない(紛争を理由にミキタリアンが入国を諦めたとか、いま思い出してもありえない)。

FIFAだってそうだ。ワールドカップをやるカタールでは周辺国からの出稼ぎ労働者の安全が脅かされているというのに、そういったことに正面から向き合おうともしない。あるリポートによれば、2010年にカタールでワールドカップ開催が決定してから6,500人の移民労働者が死亡しているという。

東京オリンピック……の話はいいか。

ESLのようなフットボールワールドのエコシステムを無視した特権意識丸出しの醜悪なプロジェクトが挫折したことによって、むしろ既存のそれのバランスの取れていない部分が、あらためて注目されるようになったのはいいことだと思う。皮肉なことだが。

いずれにせよ、ローカルのファンもグローバルのファンもみんなが楽しめて、そして大きなクラブも小さなクラブもみんなが揃って豊かになれる、公平にチャンスが与えられる、誰も傷つけない、そんな改革や健全化は必要であることにはかわりはない。

そして英国フットボールを今後どう健全化するかの議論についても、ESLは大きな一石を投じたと思う。

AST(Arsenal Supportes Trust)が昨日声明を発表していた。

アーセナルFCの謝罪は歓迎するが、100%のオーナーシップを持つスタン・クロンキからなんの説明もないことに遺憾の意を表している。

ちなみにスタン・クロンキはアーセナルの大株主になって以来、サポーターたちとミーティングを行うという約束を反故にして、もう10年も放置しているそうである。信じられる?

謝罪もなし。試合にも来ない(ELファイナルにすら来なかった)。どんだけ。

ASTの声明を一部引用する。

スーパーリーグの崩壊に先立つ4月20日、ASTをはじめとするファングループは、ボリス・ジョンソン首相と会談しました。

私たちは、この計画に全面的に反対することを表明するとともに、何百人ものアーセナル・サポーターが、クラブの株式をクロエンケ氏に強制的に購入されたことを伝えました。これらの株式の多くは、100年前から同じ家族が所有していたもので、経済的な理由ではなく、クラブの一員であることを実感するための大切な財産でした。カストディアンは、フランチャイズを愛する投資家に押し出されてしまったのです。

首相は私たちに、イングランドのサッカークラブのオーナーシップモデルの見直しを行うことを約束してくれました。ASTは、他のファングループやアーセナルのサポーターと協力して、この検討会に証拠を提出し、サポーターを所有権構造の中心に戻すべきだと主張します。

オーナーシップがファンベースであるドイツのクラブが、この貪欲なパワーグラブを支持しなかったことは、注目に値します。ブンデスリーガのクラブは、より公平なチケット価格設定や、安全な立ち見席などの設備を持つ傾向があります。イングランドのゲームはこの例から学ばなければなりません。

www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。

※太字は筆者による

この場合、英国のフットボールクラブのストラクチャに対して、政府がどの程度影響力を持てるのか、法的に関与できるのか、ぼくにはさっぱりわからない(簡単ではなさそう)。

だが、ファンが本気なら、オーナーたちに納得せざるを得ないような状況に追い込むことはできるだろうと思う。

このブログでも何度も繰り返しているが、結局はフットボールもプロスポーツなのでファンがいなければ成立しない。ファンがノーと云って、試合のボイコットなどで実力行使したら、クラブとオーナーはそれに耳を傾けざるを得なくなる。

ヴェンゲルさん末期のガラガラのエミレーツステディアムみたいなことが今後また起これば、クラブには大きなショックになるはずだ。

もしいま無観客の状態じゃなければ、それがこの週末に起きていてもまったくおかしくはない。

たとえば今回のような失態もあるし、この10年で下り坂のアーセナルFCでもあるので(少なくとも彼らの期待通りの成長ではないはず)、KSEがそこまでアーセナルFCの保持にこだわるかどうかはわからないが、いずれにせよ、彼らがAFCを諦めてくれるのはファンにとってひとつのチャンスではあるだろう。

 

もしほんとうにファン全体でクラブの株式の51%を掌握しようという動きがあったら、ぼくは最少単位であっても参加したい。

それは、まあお布施に近いものだろうけど、愛するクラブに関与しているという満足感はかなりありそうだ。配当もあるかもしれないしな! 人生がゆたかになるよ。

 

ということで、英国フットボールもドイツのように、ファンによるオーナーシップに近づけるよう、このASTらの動きを支持しよう。

おわり



※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

7 Comments on “ファンによるフットボールクラブのオーナーシップの可能性と「50+1ルール」

  1. ファンによるオーナーシップは美しいですが、それでライバルに勝つ資金力が確保できるのか疑問です。
    ベンゲルの哲学の元、清く正しく美しく戦ってきたアーセナルですが、FAカップ以外は勝ち取ることができませんでした。
    そこから学んだことは、金が無ければライバルとの競争に勝てないってことです。

    じゃあリーグ全体がブンデスリーガのようなオーナーシップになればいいかというと、日本でブンデスの試合が放送されている状況を見ればわかる通りブンデスは人気がありません。
    プレミアが人気なのは、大富豪が競って金を投入してスター選手と監督を集めてるからです。
    そのおかげで、日本で毎節4試合しか放送されてなかったプレミアは全試合ライブ放送されるようになりました。

    プレミアのローカルなファンはファンのオーナーシップでクリーンになれば俺たちのクラブと喜ぶかもしれませんが、日本で試合を見ているファンはプレミアの人気がなくなって試合が放送されなくなったら「こんなはずじゃなかった…」となりませんかね。
    そしてエールディビジのように試合が消えて日本のファンがいなくなったらこのブログも読む人がいなくなりますよ。

    長く書いてしまいましたが、何が言いたいかというと、ローカルファンはグローバルを全否定できても、グローバルなファンはグローバル化の恩恵を受けているので全否定できないってことです。
    なので、自分はクロエンケアウトじゃなくクロエンケチェンジ(マインドとスタイル)と言いたいです。

    1. コメントどうも。

      グローバル化の恩恵を受けてるファンとしていまのビリオネアがヘヴィに投資するオーナーシップのストラクチャを全否定できないというのは正論だと思います。

      でも、いま深く議論されてる核心的な部分というのは、結局ローカルに立脚してる「本質」をないがしろにしてグローバルもクソもないってことだと、極東のいちファンとしては理解してます。

      そもそも熱狂的なファンダム、歴史、伝統、クラス、そういうものがないものは、そもそもグローバルでも人気は得られないんじゃないかな。そこをリスペクトせずに世界中のファンを獲得しようというのは本末転倒だと。

      そういう本質を理解できる、リスペクトできるオーナーが現れるなら、ひとまず問題は解決だと思う。

      ていうかブンデスリーガって人気ないの? 日本のDAZNがカヴァしてないってだけでは。。単純に日本人がたくさんいて放映権の競争があるからDAZNが勝てなかっただけのような。

      1. 返信どうもです。
        もちろんローカルは大事です。
        プレミアでトップレベルに高いチケット代を払い、遠いアウェイまで行ってるファンをリスペクトしてますし、ローカルあってこそのグローバルもその通りだと思います。
        スーパーリーグはつぶれて当然のクソです。

        でもクロエンケを追い出せばアーセナルが強くなってCLに優勝できるとも思いませんし、資金力に限界があるファンのオーナーシップでそれができるとも思えません。
        同じクロエンケでも、スタジアムに来ない親父のスタンと違って、クラブハウスに顔を出しアルテタと話し合う息子のジョシュは見所がありそうです。
        トーマス・パーテイの契約解除金はジョシュが出したんですよね。
        クラブでアルテタらにスーパーリーグの件を謝罪したのもジョシュでしょう。
        スタンの後継者である若い彼に「本質を理解できる、リスペクトできるオーナー」へと育ってもらうのが、現状では問題解決の最適解じゃないでしょうか。

        蛇足ですが、ブンデスの放映権は、DAZNが捨て、WOWOWも捨てて、海外サッカー放映権で負け組になったスカパーが拾って細々と放送してます。
        日本のブンデスファンの数とか知ってるわけじゃないですが、バイエルン以外は資金力に乏しくスターが少ないブンデスは視聴率が悪いのでしょう。いろんなところが獲得してはすぐに捨てるのを繰り返してます。

  2. うーん、どうでしょう?
    クラブ会員(ソシオ)に選出された代表者であるはずのバルサやレアルの会長が今回のESL構想の先頭に立って突き進んでいた事を考えるとこのアイディアもさほど有効とは言えないのでは?

    1. たしかに。株主サポーター代表として、また邪悪なリーダーがあらわれるだけってのはありそうな。

      1. Chan様、ご返信ありがとうございます。
        私の個人的な偏見に基づいた意見ですが、バイエルンが今回のESL構想に賛同しなかったのはもちろんクラブ理念的な部分もあるでしょうが、現在のブンデスのバイエルン1クラブに対し他の18クラブが総草刈り場状態になっており国内クラブから主力選手を補強する事により自クラブの強化と同時にライバルを弱体化させ、その結果現在8連覇中というこのぬるま湯のような状況を手放したくなかったからと言うのはあまりにうがった見方でしょうか?

        あっ、ブンデスは日本でも人気あると思いますよ。

  3. 私はチャンさんを支持します。
    理想を求めてもいいでしょう。
    フットボールだし。

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