試合の論点
アーセナル vs リヴァプールのトーキングポインツ。
2分のハイライト。なんて試合だよ。
A super Sunday 🤩
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— Arsenal (@Arsenal) February 4, 2024
タイトル争いにとどまる大きな勝利。自信がブースト
いやあ、勝っちゃいましたね。
この勝利のおかげで、アーセナルは暫定的に2位浮上。1位のリヴァプールに2ポインツ差に迫った。ちまたでは、アーセナルがPLのタイトル争いに踏みとどまったという論調が多い。すくなくともここで脱落はしなかった。
今シーズンはまだ残り16試合もあるため、ここで仮に8ポインツ差になったとしても、あきらめてはいけない時期だったかもしれないが、そうなればショックは大きかっただろう。勝って2ポインツ差とは大違い。それが6ポインターである。
なにより、リヴァプールのようなチームにああいうポジティヴパフォーマンスで勝てたことが大きい。PLアウェイとFAカップの2つの大戦でも、アーセナルは同じようなポジティヴパフォーマンスだったが、結果が出なかった。ようやく、このチームの持っているものが結果にもつながった。これが、三度目の正直というやつなのか。
今回のわれらの勝因はなんだろうと考えるに、やっぱりふだんどおりの実力か、それ以上を本番で発揮したことが大きいように思える。ここで敗けられないというプレッシャーも大きかったはずだが、そういうことをこの若いチームは感じさせなかった。
ホームサポーターの熱烈な声援も、よいほうに作用した。試合後のマネジャーや選手たちが口々にファンへの称賛を述べていることからも、それがいかに大きかったかがわかる。彼らがスタンドからつくったアトモスフィアは圧倒的だった。アルテタは今シーズンでいちばんだと述べている。
DFもMFも終始落ち着いていて、相手のプレスにめげず忍耐づよくボールをつなげ、危ない場所でボールが奪われるみたいなことがほとんどなかったし、タッチの少ないボールまわしに、相手はついていけていなかった。
こんなパスは、クールで落ち着いて、気持ちがノッていなければ生まれない。つまり理想的なメンタリティでプレイできた。
Odegaard is a magician pic.twitter.com/DGOyMTSffL
— Renato (@orehnato) February 4, 2024
フロントでは、マルティネリが水を得た魚のようにプレイし、ある程度ポジションの自由があるだろうハヴァーツはいい潤滑油&アクセントに、サカも右サイドでいつもどおり脅威になっていた。
つまり全体的にかなりうまくいっていた。結果だけまぐれで出たのではなく、ちゃんと実力で、パフォーマンスで相手を上回ったという実感がある。
トップチームとの試合といえば、去年8月にやはりホームで勝ったPLシティを思い出すが、あの試合と似たようなところはあるかもしれない。相手のSoTが「1」も同じ。もっともわれらのチャンスは今回のほうがもっともっと多かったので、気持ちはよいわけだが。
【マッチレビュー】23/24 EPL アーセナル vs マンチェスター・シティ(8/Oct/2023)PLでの悪夢のおわり | ARSENAL CHANGE EVERYTHING
さて、こうしてリヴァプールに勝ったことで、このチームが得るものはなにか。もちろん3ポインツは貴重。でも今後のチームにとってそれより大きいのは、経験であり、自信だろう。
なにしろ、アルテタが繰り返す指摘しているように、リヴァプールというのはあきらかに世界最強の一角である。近年PLもCLも取っているということは、世界一強いのと同じ。そのようなチームにこうして勝った。強いチームには勝てば勝つだけ、得るものも多い。
今後、アーセナルのチームの勢いがブーストされるのは間違いない。トップからも陥落し、しばらく停滞していたフォームが、またふたたび勢いづく。この3連勝は大きい。
しかし、こんな試合を振り返っているときに、いかにも無粋なことを指摘するようで気が引けるが、現在のアーセナルの大きな課題は、トップチーム以外との試合である。引いた相手からどうゴールするか。今回はその点でテストにならなかった。リヴァプールがロウブロックをやるはずもないのだから当然。
この勢いをつかって、ミッドテーブル、ボトムテーブルのチームにどう対処していくか。
これからもビッグチャレンジはつづく。アーセナル先生の次回作が楽しみだなあ。
お互いにエラーから失点
さてこの試合、アーセナルもリヴァプールもお互いにディフェンダーのエラーから失点した。ちょっとめずらしい試合では。スコアを1点づつ増やしたので、それが試合を決めたということはない。
が、このようなビッグゲイムで、両チームともに信頼できるディフェンダーが致命的エラーをやったというのは、ちょっと興味深いできごとだった。
ガブリエル、サリバ、VVD、Konateの4人のCBは、前回のPL@アンフィールドでも、もっとも重要な選手たちだったと試合後には云われていたほど、優秀なDFたちである。
まず、HT直前でサリバとラヤのミスコミュニケイションでから失点してしまったアーセナル。てっきり1-0で前半を終わるものかと思った試合が、なぜか1-1に。HTに入った瞬間は正直ぼくも呆然としてしまった。
サリバはボックス内でLuiz Diazを背負ってボールからブロックし、ラヤが来るのを待ったが来てくれない。そして、ブロックのスキをついてDiazにボールに触られるとそれがビッグガビの手に当ってオウンゴール。あの緊張感ただよう試合にはあまりにも似つかわしくない、あっけないエラーだった。
あそこは、試合全体からしてみれば、たいして危なげのない局面ではあっただろう。が、あんなふうに失点してしまったショックは大きかった。前半アーセナルはかなり優勢に試合を進めていて、リヴァプールは前半SoTがゼロだったのだから、まさに藪から棒。まったく不必要な失点だった。
そして、66分のマルティネリのゴールにつながった、VVDとAlissonのエラー。こちらもリヴァプールがあっさり失点。
ビッグガビが、バックラインからたいして明確な意図があったようにも見えないロングボールを送ると(いや、成功の確率はかなり低いという意味で)、それがいい感じにVVDとネリがハイボールを競り合うかたちに。ネリは勢いをつけてVVDにショルダートゥショルダーでぶつかっていく。
ボックス際という場所が絶妙だったのか、クリアしようとジャンプして飛び込んできたAlisson、ネリとぶつかったVVDのふたりともボールに触れず。ネリの前にボールが転がると、そのまま無人のゴールへ。
なかなか観ない光景ではある。だが、本質的にはアーセナルは狙っていたプレイではあるだろう。今回もハイプレスから、相手ハーフでボールを奪うハイターンオーヴァーを何度もかましたが、そういうケイオス状態からゴールを奪おうという意図は試合全体の戦略としてあったはず。あそこに微妙なボールを放り込むことで生まれる混沌はある。あんなふうに成功するとは思っていなかったろうが。。
時間帯や試合の状況からみて、どちらの失点がより重かったかと考えるに、やっぱりリヴァプールだったかもしれない。
アーセナルはHT直前に突然追いつかれてショッキングではあったが、すぐ15分のブレイクがあり、そこはリセットの機会にもできた。マネジャーが選手たちの目を観て、ことばで伝える時間もあった。
いっぽうのリヴァプールは、前半とは違って、1-1になって後半スタートから勢いを取り戻したような雰囲気があり、しかもあの試合の流れならアウェイであのままドロウでも満足できた。ちょうどそんなタイミングでリードされてしまったショック。しかもあんなミスで。
アルテタが高く評価するハヴァーツの貢献
この試合のMOTMは、アルテタも認めているくらいで、メディアもほぼジョルジーニョで一致している。
ミドフィールドにおけるコントロール、いやドミナンスでレギュラーチームとの違いをつくったのは、あきらかにジョルジーニョだっただろう。あの狭いエリアでボールを失わなかったことは、アーセナルの攻撃にだいぶ貢献していたし、最多タッチでリズムをつくった。チームにあった絶対に勝ちたいプレッシャーのなかで、彼の経験や落ち着きがおおいに活かされた試合でもあった。チームの中心に、百戦錬磨のシニア選手がいる心強さもない。
それでも今回は、彼の活躍と甲乙つけがたいと思う選手が何人かいて、そのうちのひとりはハヴァーツだと思う。
そして今回強く感じたのは、彼の良さのわかりにくさについて。まあ、通好みと皮肉ったりはしていたのでそういう感じはしていたが、個人的にやっとそれがわかってきたというか。
そもそも彼は、No.9としてはゴールへの積極性に欠けるし、ターゲットマンとして空中戦の勝率もあまり冴えず(今回は2/12)、あのポジションで求められるわかりやすいアウトプットがない。
だが、それ以外の目立たない部分での貢献が非常に大きい。今回もそれを大いに発揮した試合だったように感じる。
たとえば、空中戦に関して彼の勝率はあの長身で十分とは思えないが、彼が直接デュエルで勝たなくても競り合うことでセカンドボールのチャンスが生まれることが重要。アルテタが彼に求めているのは、そういう部分だろう。
また、Ibrahima Konatéのカードを導くことになった彼の身体を張ったホールドアッププレイ、あるいは彼の2枚めのカードを誘ったクレヴァーな身体の入れ方。相手がひとり減ったことはこの試合の勝利に決定的だったが、そういうプレイは、数字にはあらわれない。
サカのゴールにつながった力のないシュートも、彼のポジショニングやランがあってこそ。サカの前にボールが転がったのはラッキーだったが、BCで相手DFにケイオスをもたらしたことに価値がある。また、62分の単独でのペネトレイションからペナルティを取ってもらえたかもしれないシーンも、アルテタが喜びそうなプレイだったように思える。
もちろん、あらかじめリヴァプールのやりかたを想定して周到にセットアップされていたであろう、ハイプレスでも重要な役割を担った。
彼にいまの属性がありながら、もっとゴールも取ってくれれば云うことはないが、完璧な選手はいないように、彼も完璧ではない。アルテタは、彼にはそういった不足な部分があっても、それを補ってあまりある彼のポジティヴ面を観ている。そこは、今回の試合でわかりやすく出ていたかもしれない。
評価の大きな乖離から、マネジャーとファンではあきらかに彼の違うところを観ているという感じはこれまでもずっとしていたが、今回の彼のパフォーマンスで、なんだかミケルの視点に近づけたような気がしている。
とはいえ、今後もビッグチャンスをあんなふうに外すようなら、£65mの価値ねえなあとか書いてしまいそうだけど。GKと1 v 1であのショットはさすがにひどい。
追記
試合翌日に観たtw「ハヴァーツはリヴァプール戦で18デュエルズに敗け。今シーズンのPL試合で最多」。
😤 Kai Havertz lost a total of 18 duels against Liverpool yesterday, no player has lost more in a Premier League match this season pic.twitter.com/JqZ60F74mo
— WhoScored.com (@WhoScored) February 5, 2024
ハヴァーツ評価における典型的なミスリーディングはこういうのだろう。いや、事実はミスリーディングではないのだが、この事実が語っていない部分があるし、それが大きいという話。
ミケルはこれを観てもぜったいに失望しないはず。なぜなら、彼はハヴァーツがもたらすものを知っているから。