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アーセナルの秘蔵っ子、マテオ・ゲンドゥージ。彼を育てたもの

夏の新加入ながらいきなりのプレミアリーグデビュー。チャンピオンチーム相手に印象的なパフォーマンスを見せ、一躍時の人となったMFマテゥ・グウェンドゥージ。

Independentが彼の人となりを紐解くべく長文の特集記事を掲載した。「ゲンドゥージを育てたコーチたちがアーセナルの秘蔵っ子の裏側を語る」

The coaches who made Matteo Guendouzi reveal the story behind the Arsenal protégé

ざっくり紹介してみよう。※見出しはブログ主によるもの



それはマテオ・ゲンドゥージの人生において最大の決断だった。この夏を前にしてこの19才は自分の成長のためにどのような環境が必要か選ばなければならなかった。彼の次のフットボールクラブを。

リーグ2のFCロリアンで難しいシーズンを過ごした。マネージャーのMickael Landreau とは反りが合わず、たびたびチームの外に追いやられた。6月にはフレンチU-19スクワッドでヨーロッパ大会を戦ったが、彼は自分の将来を決めたかった。

アーセナルFCを優先

ヨーロッパのトップクラブで彼のポジションで起用されるティーンエイジャーは少ない。しかしゲンドゥージは違った。ヤングタレントの目利きであるボルシア・ドルトムントが彼に興味を示していた。また4年前に彼を手放したPSGも彼の買い戻しを希望していた。

しかしゲンドゥージが唯一行きたかったのはアーセナルだけだった。スヴェン・ミズリンタットとウナイ・エメリの両者は、彼の元雇い主たちと同じく彼を追っており、アーセナルが最初にロリアンに接触したとき、ロリアンは彼らが本気だとすぐにわかった。

ロリアンのプレジデントLoic Feryは回想した。

「アーセナルがコンタクトしてきて、すぐに彼らがゲンドゥージと本気でサインしたいんだとわかった。一度、われわれは彼に興味を持っているクラブを並べて彼に訊いたんだ。どこに行きたいか?ってね。彼はアーセナルを優先したいといったよ。彼はプレミアリーグでプレイしたがったし、アーセナルは彼にとってグレイトな選択だった」

ロリアンは喜んで彼を売った。

「わたしたちがロリアンでやらないことがひとつある。それはこんなにも大きな可能性を秘めた選手を最高じゃないクラブに出すことだ。われわれはアーセナルは彼にふさわしいと強く感じた」

7.5Mポンドの移籍金を残し、彼はアーセナルの選手になった。そして日曜にはゲンドゥージはエミレーツ・ステイディアムでマンチェスター・シティ相手にプレミアリーグデビューを果たす。プレミアリーグチャンピオンとの対戦で、最初は居場所がないように思えた。しかしやがてホームのように快適に見えた。スターリングのファーストゴールでは恥をかかされてしまったが、彼はどのチームメイトたちよりも中盤でクリエイティブなパスを供給した。ポゼッションにおいては安定して、鋭く、彼はすでにグラニト・ジャカよりも恵まれたディープライイング・パッサーに見えたほどだった。

それは約束されたかのようなゲンドゥージの印象的なパフォーマンスだったが、経験のなさもまた露呈した。彼はキャリアにおいて、この試合の前にはたった4試合トップフライトでスタートした経験しかなかったし、フレンチ・シニア・フットボールにおいて実際まだ何も成し遂げてもいなかった。

ロリアンでゲンドゥージと仕事をしたひとにまだ聴いていないことは、彼の類まれな才能、それと扱いづらい気性についてだ。

ゲンドゥージの類まれな才能、情熱と気性の荒さ

ゲンドゥージはブルターニュではなくパリ出身で、ポワシーの外れ。少年時代はPSGのアカデミーで過ごした。しかし彼らは彼が14のときに放出を決め、やはりアカデミー組織を持っていたロリアンが彼を受け入れた。彼はすぐに生来のボール扱いのうまさ、試合への情熱で印象を残した。彼の才能に恵まれた兄弟Milanもすぐにこれに続いた。マテオは彼がプレイしたどのチームでもベストプレイヤーになった。

「U16、U17、U18、どのアッパーレベルでテストしても、たった数回で彼がチームのボスになった」Feryは述懐した。ゲンドゥージは2015に行われたフランスのU17トーナメントを優勝して、ロリアンを驚かせ、正式契約を勝ち取った。

Fery「わたしたちは全員、彼の顔を上げて堂々とプレイするさまにとても強い印象を持った。ロリアンが歴史的にずっとやってきたスタイル、パッシングゲームだった。それが彼のキャラクターだった。彼がディフェンスの前でプレイする選手だと知っている。しかしディフェンシブMFというよりはもっとオフェンシブMFなんだ。彼はいつも不可能に思えるパスコースを探している。パスで違いをつくるんだ」

結果、ロリアンは彼らがかつてやったこともないことをすることになった。アカデミーで急速に成長するゲンドゥージにプロ契約を提示することを決定。2016/17シーズンの始まり、彼の18才の誕生日には契約が成立することになった。

そのシーズンはスタートからひどかった。初戦から9戦で7敗。そしてコーチSylvain Ripollは、早熟でひょろ長い17才(彼はこのとき”David Luiz”のあだ名がついていた)を呼ぶことに決めた。このときRipollにとって彼の何が際立っていたかといえば、ヘアスタイルでもテクニックでもなく、パーソナリティだった。

「彼はフットボールを愛した。フットボールを食し、飲み、フットボールで眠った。彼はトレイニングが終わる頃にはフラストレイションを見せた。2時間みっちりやったあとでもだ。もし彼にもう1時間あったら、ボールを使って練習を続けただろう。右足、左足、右足、左足」。

Ripollをそれよりもっと印象づけたのは、ゲンドゥージの勇敢さだ。いつでも競争を求めたし、難しい状況でも自分自身にチャレンジしていた。とくにピッチで。「彼は大きなパーソナリティを持っている。そして若い選手には稀なパーソナリティだ」

ゲンドゥージは彼のリーグデビューであったディジョン戦で輝いたが、ロリアンは最後には負けてしまい、Ripollは解任された。ゲンドゥージはその後リーグ1の2試合連続でベンチスタートになったが、それでもトップフライトで彼のベストな活躍が見られることとなった。なぜならRipollの後任Bernard Casoniでもなかなかうまくいかなかったから。

ウインター・ブレイクのあいだに、ロリアンのスタッフはシーズン後半にはゲンドゥージをもっと使っていこうと決めた。

「クリスマスブレイクのときに、Casoniとミーティングしたんだ。そしてなにがあってもゲンドゥージを使うと決めた。われわれはゲンドゥージを使うべきだったんだ」元副社長のAlex Hayesは語った。

そして、Casoniは1月8日にはニースとのカップ戦でゲンドゥージをスターティンに起用した。彼は12分にはイエローカードを受けてしまったが、無謀なタックルをやり続けて、Casoniはレフェリーから彼がこれ以上やり続ければ退場させると伝えられた。この後にもう一悶着あったあと、Casoniは55分に彼を下げざるを得なかった。このとき17才は、怒りを隠そうともせず出ていき、マネージャーとの握手も拒否した。この後、彼はこのシーズンで1試合出たのみで、ロリアンは降格してしまった。

Hayes「彼は自分にたいそう自信があり、自分の考えと違うことをされると癇癪を起こしてしまう。彼の本当の問題は彼の気性にある。彼は悪い子じゃないよ。ナスティでもない。ただちょっとした天然(innate)で、自分自身を信じ込みすぎるきらいがある」

ゲンドゥージを指導する難しさ

昨シーズン、新マネージャーMickael Landreauを迎えて、ロリアンはリーグ2で過ごした。18才になったゲンドゥージはそこで新しいスタートを切った。彼は最初こそチームに入れなかったが、なんとかそこへ食い込んでいきいい調子を続けていた。しかし、11月のValenciennesとの試合のハーフタイムにはLandreauと激しく口論し、3ヶ月干されてしまった。このときに彼がチームを去る決心をしたのは明らかで、ユヴェントスが興味を示すなか新契約のサインを拒否することに決めた。

しかしFeryは、Landreauが示したファームでの彼の扱いについて、ゲンドゥージのキャリアを考えれば妥当な行いだったと考えている。

「昨シーズン、コーチは彼には安定性が示すことが必要なんだとわかってほしいと思っていた。そして彼の態度もパーフェクトでなければならないと。だから彼はゲンドゥージを何試合かバックシートに座らせる決断をした。それは彼が戻ったら彼のためになることだった。彼は才能豊かな選手であり、あとはワークエシックや姿勢についてトップ、トップレベルでどのようなものが求められるか知ってほしかったから」

ゲンドゥージをコーチしたどのマネージャーも彼の態度を問題視したわけではない。彼はモロッコのためにプレイするチャンスを断られたあと(※訳注:ゲンドゥージはモロッコとフランスの二重国籍)、フランスのU18、U19、U20レヴェルで輝いている。いまではフランスU21のコーチをしているRipollは、もし彼の姿勢が間違ったものだったらそもそもロリアンは彼を取らなかったと語り、彼のフットボールへの情熱を称賛した。彼はただ、マネージャーからの愛情と信頼を感じなければならないとRipollは考えている。そして彼のエモーションを正しい方向に向けること。

ビッグリーグ、ビッグクラブへの挑戦

アーセナルはリーグ2からすると、壮大なテクニック上の飛躍がある。そしてプレミアリーグはフィジカルでもかなりキツく、彼にとってパーフェクトな場所になりうる。彼は日曜にスターリングにやられたように簡単にスキップされてしまわないよう強化しなければならないだろう。また猛烈なプレッシングゲームに対応するためにはシャープさに磨きをかける必要がある。しかし19才の彼には、それを身につける時間が十分にある。

アーセナルでプレイするというチャレンジ、プレッシャー、期待、グローバルなファンベイス、才能あふれたチームメイト、新しいプロジェクトのスタート。これが19才にとって必要になる。もし彼が「パッションの昇華」ができなければ、彼がそれを知る前にリーグ1に帰ることになるだろう。だが、もし彼がそれで台頭するようなら、彼にほんとうに必要な環境になるかもしれない。

Hayes「ビッグクラブで、ドレッシングルームのビッグプレイヤーたちと、なにかをすでに成し遂げているひとたちとの競争があることを理解したとき、彼は成長し続けるだろう。彼が集中して、やるべきことを謙虚にやるなら、その決意とトッププレイヤーにのし上がるために必要な野望をキープできる」

Feryはこのステップアップの大きさ、カルチャーショックがゲンドゥージの才能をアンロックするキーになるという説に賛成している。

「彼が新しい環境に適応することについては心配していないよ。だって彼にはそれが必要なんだし、チャレンジが必要なんだ。彼はチャレンジするこころを少し欠いてしまうことがある。それが昨年に起きたことだ。コーチたちが彼にとても厳しく当たったのは、彼にとっては成長と姿勢をキープするためにはそれが必要だと思ったからなんだ」

ここ数年でもアーセナルは才能ある若手はバックアップされてきたが、なんでも教えてもらえるわけではないし、いつも起用されるわけではない。彼らはときに自分たちでポイントを見つけ出すためにチームを去った。

ウナイ・エメリはそういう感じじゃない。彼は丁寧な教師であり細かいところまで教え込む男だ。そしてこの厳格な強みは、ゲンドゥージの起用という驚くべきギャンブルに報いるかもしれない。

以上

続けて、突拍子もない内容で少し話題になっていたシティ戦後のインタビューを紹介してみよう。

シティ戦後のゲンドゥージ・インタヴュー

「ゲンドゥージがアーセナルのプレミアリーグタイトルに太鼓判。。 なんと今シーズン!」

Guendouzi backs Arsenal to win the Premier League… this season!

ゲンドゥージ:Yes。ぼくはアーセナルが今シーズンのタイトルを取れると思ってるよ。だってそのための選手もスタッフもいるし。みんなほんとに信じてるし、できるだけたくさんの試合で勝つためには何だってするし。ファンタスティックなシーズンを送るためなら。ぼくはマジでぼくらならやれるって思ってる。

マンシティはトップチームだけど、ここにはたくさんのトップチームがある。だってプレミアリーグがヨーロッパでベストなんだから。たくさんの敵がいる。けど、ぼくらはポジティブになれるし、今シーズンに何かしらは勝ち取るよ。タイトルだって取れる。なぜならぼくらが持っている環境や選手たちのクオリティがあるから。

たくさんのクラブに興味を持たれていたのはほんとだね。ヨーロッパでも最大のクラブとも話したよ。でもアーセナルからの興味を聴いたときには、決断はヴェリーシンプルだった。ここにいられてうれしい。

ジェレミー(アリアディエール)とアーセナルについて話して、彼にはここでたくさんのことが学べるといわれたよ。彼はいつもポジティブに話すし、ぼくの決断にとても自信を与えてくれる。

アーセナルはぼくのこころのクラブだ。ここにはたくさんのフレンチプレイヤーがいた。ティエリ・アンリはここでキャリアを築いてフランスのシンボルにまでなった。父さんとよくアーセナルの試合と観ていたんだ。特別な思い出だ。

優勝かあ。しれっといったなあ。

荒唐無稽なことをいって誰かにバカにされるなんて微塵も気にしない。どんなときだって優勝を目指さないなんてありえないというケイスケ・ホンダ的アティチュード。

そのうち、おめーらフットボールかぶれの常識はおれには通用しねえ! とかいいだしそう。

マテゥ・グウェンドゥージという漢

ロリアンと契約延長を拒否していたというエピソードはすでに知られていたので、大人からするとわりと一筋縄ではいかない選手なのかなと思っていたら。それどころか非常に荒い気性の持ち主だったという。

気性が激しくてめちゃくちゃ扱いにくいけど、フットボールが大好きで、自信過剰で、でも才能はすごくて、ついにトップまで上り詰めたみたいな? マンガかよ。

それを知って、写真や動画で伝えられていたプリシーズンでのチームのなかでの彼の振る舞いを思い返すと、なんだか腑に落ちるものがある。

たぶん英語はそんなに得意じゃないはずだけれど、オバメヤンやラカゼットといったフランス語でコミュニケーションできるドレッシングルームの中心人物たちといち早く打ち解け、とても新入りとは思えないほど大きな顔をしていたように見えた。全然物怖じしない性格。

シティ戦では、開始13分にはさっそく自分の過失90%という感じで失点を献上してしまい、新加入にしてPL初出場の19才が、その場の空気に舞い上がってしまっても決しておかしくはなかった。

しかし、どうだろう。彼はまったく落ち込んだそぶりも見せることなく図々しく淡々とアーセナルのミッドフィールドの中心でプレイし続けた。そればかりか、本文にもあるようにジャカの存在が霞んでしまうようなパフォーマンスを披露し続けた。

負けん気と豪胆。物怖じしない性格はフットボーラーにとってはプラスでしかない。

エメリが彼を今後どう使っていくつもりなのかは、シーズンが始まったばかりでまだはっきりとしない。

しかし、初戦で大抜擢という大きな期待に彼が応えたいま、この先本当にエルネニーどころかジャカのポジションも脅かすようなことがあれば(CMにトレイラとゲンドゥージ)これはもう大事件である。

大事件だが、彼の働きぶりを見ると「もしかしたら……」とほのかな期待をせずにはいられないのである。



※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

6 Comments on “アーセナルの秘蔵っ子、マテオ・ゲンドゥージ。彼を育てたもの

  1. シティ戦。
    ゲンドゥージへの期待と同時にジャカへの大きな不安が…
    コンデションの問題なら時間が解決してくれるのかもしれませんがどうなんでしょうか…

    1. ジャカはなあ。ちょっと深刻ですねあれは。

      あの試合で批判されていたのはジャカだけじゃなくエジルもなんだけど、エメリがああいう選手(しかもキャプテンに任命)を外せるかが見ものだなと。わっちは思いますね。

      チェルシー戦でジャカ外してトレイラとゲンドゥージが出てきたらすごいことですよ。

  2. やはり若い選手が台頭してくるとわくわくしてきますね。
    スタッフも様変わりして野戦病院のアーセナルがどうなるのか、いろいろ楽しみです。

  3. ほんと、期待しかない。
    気性がはげしいって、つまりハートが強いってことですよね、大歓迎ですよ。

    しかし、あの展開でジャカを代えたのは驚きでした。これまでどんなにしょうもないミスしても代えられたのは見たことなかったように思います。
    出てきたトレイラも闘争心のかたまりで期待しかない感じで。
    これまでアンタッチャブルだった選手も目が覚めたのでは。
    ロンドンダービー、期待しかない。

    COYG

    1. ヴェンゲルさんがやらなかった交代も見せてますよね。最初の交代も30分以上残してた時間帯だったし。COYG

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