アーセナルvsサウサンプトンの一戦、コメント集エントリにつづいて、マッチスタッツと論点をば。
試合について
アーセナルのファースト11
4-4-2ダイヤモンドの予想をだいぶ外した。まあそんな奇をてらって勝負をしかけるような相手でもなかったということか。
ラカゼット(G1)、ミキタリアン(G1 A1)、イウォビ(A1)と前の3人が結果を出したということで、エメリもしてやったりのティングであった。
なお、ぼくは大穴でムスタフィのRBスタートを予想したが、リヒトシュタイナーが後半早々(56分)に負傷でコシエルニと交代になってからはRBでプレイしたはず。これまでにも試合途中のフォーメイション変更でエメリはムスタフィに何度かRBをやらせているので、いうほど大穴でもなかった。
なお、リヒトシュタイナーはBATE戦ではUEFAのTeam of the week(ベスト11)に名前を連ねていたし、この試合でエメリも今シーズンでベストのパフォーマンスだった(前半のみ)とわざわざコメントしていたくらいで、ちょっと見違えるようなパフォーマンスだった。何試合か前にもう二度とプレイするところを見たくないと書いたが、訂正しよう。どうしてもほかの選手がいないというときはがんばってほしい。
マッチスタッツ
シュートとSoTがほぼ互角というのが、試合を見ていた印象からするとちょっと意外に思えるが、「セカンドハーフFC」のアーセナルにしては珍しく後半で元気がなくなってしまったことを考えれば、そのような結果であってもおかしくはない。
xG map for Arsenal – Southampton.
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— Caley Graphics (@Caley_graphics) February 24, 2019
ラフなxGは2.8 vs 0.8ということで、基本スタッツの競った数字にも関わらずチャンスのクオリティには大きな差があり、試合後のおのおののコメントを待つまでもなく、アーセナルはこの試合で2点以上を取って勝っているべきであった。
チェルシー、ユナイテッド、アーセナルの4位争いはいまのところかなり接戦で、最後にポイントで並んでGD争いになるなんてこともまったく想像できないわけではない。であれば、こういった試合でもゴールにはもっと貪欲になっていなければならない。
試合の論点
前半のラッシュと後半の停滞
アーセナルのこの日のシュート12本のうち11本は前半のものだということ。あのようなイケイケな前半を過ごしながら、後半のシュートはたった1本だった。
しかもその前半のシュート11本のうち6本は2点目が入った17分までで記録されたものだということで、要するに、前半の前半にラッシュして奪ったゴールがそのまま試合を決めてしまったということだ。
前半に停滞してハーフタイムの調整を経たのち後半に盛り返すという、一時のチームでよく見られた流れが最近は見られなくなってきた。
前半がいいというだけではなく、単純に後半に盛り返せないということでもあるので、これをポジティヴな兆しと見ていいのかどうかは微妙なところだが、今回のように結果が伴うのであれば歓迎すべきことだろう。
本来、事前に対戦相手を徹底的に研究して試合に臨むエメリだと云われていたので、前半にその効果が出ていなかったことはおかしなことであった。
これからヘッドコーチのインストラクションで前半のフォームが改善されるのであれば、それは理想的なことではある。
なお、今シーズンのアーセナルは先に得点した25試合中22試合で勝利しているということ(先制して負けたのはたったの一度きり)。かつ後半に盛り返す印象がありながらも、実際は先に失点を許した13試合では二度しか勝っていないという。
つまり、最初のゴールが試合を決める確率がとても高く、先制点がいかに重要かということである。
アーセナルの前半のフォームを改善することはそのまま勝率につながる非常に重要な改善ということになる。
エメリのハードワーカーたち
この試合、ラカゼット、イウォビ、ミキタリアンのアタッカーの3人が得点に絡んでエメリにとってはチームセレクションがドンピシャで当たった采配となった。
(ラムジーだけは若干パフォーマンスが振るわず63分にエジルと交代になった。ぼくはそんなに悪いとは思わなかったが、この日記録した8つのポゼッションロストはチーム最多で彼個人にとってもシーズンワースト級だったらしい。またパスの冴えもなく彼のすべてのパスのうち1/3は相手に渡ってしまっていたという。早い時間帯での交代もやむなしのパフォーマンスだった)
ラカゼットはシュート5本(今季最多タイ)を放ちながらも、試合後にはビッグチャンスを外してしまったシーンがまるでルネサンス絵画だとネタになっていたり、大事な場面でチャンスを決めきれなかった印象もあるが、
Hard work always pays off.#MondayMotivation 👊 pic.twitter.com/mI7khPlEO4
— Arsenal FC (@Arsenal) February 25, 2019
彼が試合を通して誰よりもエネルギッシュにハードワークしていたことを否定できるものは誰もいまい。
2点目はラカゼットのDFへのしつこいチェイスからGKのパスミスを誘って生まれたものだし、チームへの貢献度は計り知れないものがあった。この日のハードワークにはハットトリックがふさわしかったがそれもまたフットボール。
そしてSky SportsのMOTMに選ばれたイウォビは、攻守で効果的にプレイし最多クロス(5)とチーム内で最多キーパス(3)を記録。
ミキタリアンはあのポジションでありながら、この日両チームでもっとも多くのタックル(4)を決めた。
ラムジーと交代で入ったエジルも随所でさすがというべきアクセントをつけるプレイを見せたが、残り30分で入ったにも関わらず彼がラカゼットやイウォビ、ミキタリアンらと同じインテンシティでアグレッシヴにプレイしたかといえば、首をひねらざるを得ない。
このあたりの対比に、エメリの好むプレイスタイルが今回もまたよく現れていたように思えた。
いい悪いではない。とにかく彼はそういったがむしゃらでガツガツ行く、ガッツを見せるプレイヤーが好きなのだ。
レノの貢献と安定感
この試合の隠れMOTMはベルント・レノだろう。彼が見せたいくつかの重要なセイヴが結局はチームを救うことになった。
とくに前半試合開始直後のオフサイドトラップをあっさり破られ、レドモンドにひとり抜け出されたシーン。あそこで失点していたらこの試合内容もだいぶ違っていたものになっていたはずだ。前述したようにアーセナルが先に失点した試合をひっくり返したケイスはあまりないのだから。
トレイラがレノはシーズンを通してずっとよくなってきているとコメントしていた。
そのコメントどおりならいいのだが、一方でバックからのビルドアップやプレスを受けたときの対応にはまだ不安定な様子を見せるときも多い。
この試合でもハイプレスを受けるシーンで何度か危ないパスをDFに出していた。
彼はもともとドイツで「スイーパーキーパー」の異名もあったような、果敢な飛び出しやバックでのパス回しに積極的に参加するGKであったはずで、ぼくが最初に彼のことを知ったときにはドイツリーグでもっともタッチ数の多いGKという触れ込みであった。
ということはつまり、彼にまだ安定感があまりないのだとしたら、彼個人の問題というよりはまわりの選手たちとの連携のほうが問題なのかもしれない。
この夏のアーセナルの補強プライオリティは当然ディフェンダーだと思われている。
シティがラポートを、リヴァプールがVVDを獲得してバックからのビルドアップを改善したように、アーセナルもボールプレイングCBを補強してビルドアップの質やプレス対応をぜひともに改善してほしい。
ムスタフィとジャカの致命的ミス
概ねいい試合だったが、一応悪かったところも覚えておこう。
レノとワンオンワンにさせるという序盤の大ピンチのシーンを招いたのは、バックラインの選手たちのラインコントロールのミス。
あのきれいな抜け出しはパスを出した選手と抜け出した選手のサウサンプトンのふたりを褒めるべきでもあるが、抜け出したレドモンドの一番近くにいたムスタフィがやはりギルティだろう。
そしてジャカ。ボックス前の絶好の位置にいたウォードプラウスにナイスアシストレヴェルのやさしみあふれるパス。いかにも集中力を欠いたパスミスでこれもまたギルティ。
今回はどちらも幸いなことに失点には結びつかなかったものの、チームを大ピンチに陥れたことには変わりがない。
このふたりの選手の最大の欠点はアウェアネスや集中力の欠如で、ここでも彼らの典型的やらかしをまたやってしまった。
ミスが失点に直結するポジションのふたりなので、アーセナルはこのふたりのやらかしをどうにかマネジメントせねば、今後も大きなリスクになりつづける。
エメリのヘッドコーリ就任以来、USBメモリどころか、ハードディスクとかディスクアレイとかラックマウントサーバを渡されてこのザマなのであるから(いや知らんけども)、アーセナルにとって彼らの根っこの部分を改善することはかなり難しい課題だと云える。
チームから追い出すのがもっとも手っ取り早いが……
試合については以上。
トップ4フィニッシュに向けて
ウナイ・アーセナルの成績はそれでも過去の数シーズンよりも上回っているという。
ヴェンゲルさんの過去4シーズンと比べて現時点での53ポインツは最多である。
過去5シーズンのなかでトップ4でフィニッシュしていた3シーズンと比べても多いポインツなのに現状ギリギリ4位(暫定)ということから、今季のトップ4フィニッシュが高ポインツで争われることが予想される。
Emery 3.75 points better off at this stage of the season than Wenger if you average out his last 4 seasons.
2014-15: 51 points
2015-16: 51 points
2016-17: 50 points
2017-18: 45 points
2018-19: 53 points— Le Grove (@LeGrove) February 24, 2019
最近見たいくつかのリーグ最終順位予想では、今シーズン4位に滑り込むには72ポインツ程度が必要になりそうだ。
Arsenal ending fourth rank? pic.twitter.com/QXkEabKUKi
— Goalimpact (@Goalimpact) February 25, 2019
Arsenal and Chelsea look virtually identical according to most models. Wonder if Sarri’s season comes completely unhinged after that loss today. pic.twitter.com/nVIlVSQR4g
— 7amkickoff (@7amkickoff) 24 February 2019
つまりPLの残り11試合で72ポインツまで到達するには、あと19ポインツが必要になる。1試合平均で約1.7ポインツ。
以下今後のアーセナルのフィクスチャ11試合。
19ポインツはちょうど、W6 D1 L4の結果と同じになる。
トップ6相手はふたつ。アウェイは6試合。ホームでのトップ6外の4試合に全勝はマストとして、
- ToT(A)
- マンU(H)
- ウォルヴズ(A)
- エヴァートン(A)
- ワトフォード(A)
- レスター(A)
- バーンリー(A)
この試合で敗けていいのは4試合(分けていいのは1試合)だけとなる。けっこうキツい?
以上。
つぎの試合はまたしても中二日でボーンマス(H)。絶対勝たなければならないホーム。そしてさらに中二日でNLDが控えるという鬼フィクスチャ。大丈夫かな?
おまけ
前代未聞の珍事が勃発ということで。
😳 – Have you EVER seen anything like it!?
Maurizio Sarri tries to substitute Kepa Arrizabalaga for Willy Caballero, but Kepa refuses to come off and Sarri is absolutely FURIOUS! 😡 pic.twitter.com/Q81v6ry3Kk
— Sky Sports Football (@SkyFootball) February 24, 2019
試合中にチェルシーのGKケパが交代を拒否してサリが激おこという、かつて誰も見たことがなかったシーン。サリはベンチでまじで怒り狂ってるからすごいよ。
まあ実際はこの前にケパが足をつっていて(?)、ケガを案じているならおれはもう大丈夫だよって主張だったんだと思うので、単に交代拒否という事実だけで見るよりはスキャンダラスでもないはずなんだけど、いずれにしてもピッチ上でボスの指示に従わないというシーンはなかなか見られるものじゃない。
シティがせっかくカラバオカップを取ったのに、この件のほうがよっぽど世間で注目を浴びてるっていうのも笑える。
チームや選手マネジメント失敗の極めて極端な例を見たよね。
もしエメリが同じ状況に立たさていたら、どのような対応をしたのだろうか。対立を避けて選手に従うかな。そんな気もする。