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アーセナルFCのファイナンス事情【2019夏】その1

アーセナル界隈を震撼させていた(大げさ)おとといのブロガーSwiss Ramble(@SwissRamble)の一連のツイート。

これはアーセナルの近年のファイナンス事情を網羅的にリポートしたもので、収入/支出といったクラブのお金にまつわるあれやこれをまとめて確認できる素晴らしいコンテンツだ。

とくに現在は来シーズンを占ううえで超重要な夏の移籍ウィンドウ開催中であり、多くのファンがアーセナルの移籍市場での鈍い動きや制限された予算などのポリシーについて抱いている疑問に答える内容にもなっている。

先に云っておくと、このリポートは成功というには程遠いアーセナルのクラブマネジメントの低調ぶりをあぶり出すようなものだから、ファンにとっては見ていて楽しいものではないと思う。

が、クラブ運営の力学・メカニズムにまで関心のあるような熱心なファンなら把握しておくべき内容であることも確か。

今回はその一連のツイートを紹介してみよう。ファンは苦行と思って読んでください。

ちなみに、Swiss Rambleはいまから半年ほど前にもPLのファイナンスをリポートしたツイーツをこのブログで紹介したことがある。アレも相当興味深かった。

合わせて読みたい。

オーナーシップ、キャッシュフロウ、設備投資。プレミアリーグ10年のファイナンスを俯瞰する | ARSENAL CHANGE EVERYTHING



※SRのツイーツを紹介した前回のエントリはツイート埋め込みをやったのだけど、ツイート埋め込みはちゃんと見られない環境もあるので、今回はグラフィックを拝借しちゃいたいと思う。GoonerブラザーのSwiss RambleニキにNuff respectダ。

じつはオリジナルの連続ツイートより、こちらのまとめが読みやすい。彼のブログではこのコンテンツはフォローされていない。

Thread by @SwissRamble: “As Arsenal fans nervously await the outcome of this summer’s transfer window, I thought it might be interesting to look at why the club is f […]” #afcb #AFC #THFC #LFC

アーセナルのファイナンス分析2019 by Swiss Ramble

※はじめに断っておくと筆者(ブログ主)は、経済については中学生レヴェルかそれ以下の知識しか持ち合わせていない。用語(や訳)がふさわしくない場合は教えてくれると助かります。ありがとう。

アーセナルファンはまだ夏の移籍ウィンドウでの成果をイライラと待っているところだが(※訳注:昨日7/2の時点でAFCは夏の最初のサインであるガブリエル・マルティネリの獲得を発表)、思うに、なぜ近ごろクラブはより財政的にチャレンジングな状況になっているのかを見ることは、興味深いかもしれない。

いくつかの考察を以降のスレッドにて。

アーセナルの収益トレンド 税引前

一見、AFCはうまくやっているように見える。16年連続で利益が出ているし、利益の合計は£393M、年平均で£25Mの利益がある。さらに、直近2年のアーセナルの利益は健全で、2017/18が£70M、2016/17では£45Mも出ている。

PLクラブの過去最高益ランキング 税引前

実際、17/18のAFCの税引前で£70Mの利益(最新の公開情報)は、PLの歴史のなかでも5番目に多いものだった。トテナムの£139M、リヴァプールの£125Mと比較すればなんでもないものになってしまうけれど。

アーセナルの営業利益

しかし、この利益は選手売却の£120Mのおかげで、つまりAFCはじつは17/18にはマイナス£42Mという大幅な営業損益となっていた。前のシーズンの£52Mの営業利益からじつに£94Mという減益。これはCL出場を逃したことと給与総額の高騰という「二重の打撃(double whammy)」によるものだ。

PLトップ6クラブの収益成長率

実際のところ、18/19には大きな選手売却もなく(ペレス、キャンベル、アクポンのみ)、18/19シーズンに関してはAFCはかなりの確率で大きな損益(税引前)の報告が出るだろうと見込まれている。クラブの収益が赤字に転ずるのは2002年以来初めてとなる。

AFCはイングランドのビッグ6クラブのなかで、2018年に収益が落ちている唯一のクラブだ。実際2016年以来での彼らの£38Mの成長は、彼らのメインライヴァルたちよりはるかに低い。なかでも4クラブの収益成長は£100Mを超えている。一番痛いのは、この期間にトテナムがAFCより£141Mも高い成長をして、その差わずか£10Mまで縮まったことだ。

アーセナルの収益 vs その他ビッグ6クラブ(2010、2018)

2010年のAFCの収益は£223Mで、イングランドではマンUに次ぐ2位だった。しかし2018年には£389Mで5位にまで沈んだ。いまではAFCはトップ4位内のクラブより少なくとも£50Mは少ない。

2018年のAFCとの差は、マンUが£201m、マンシティが£114m、リヴァプールが£66m、チェルシーが£59m。リヴァプールに関しては、この期間に£100M以上は振り幅が出ている。

「マニー・リーグ 2017/18」成長ランキング

2018年のマニー・リーグ(※Deloitte Football Money League。監査法人デロイトによるフットボールクラブの長者番付)を見ると、トップ20のフットボールクラブのなかで、AFCが突出して悪い収益パフォーマンスをしていることがわかる。前年度にくらべて£30Mの落ち込み。これとまったく対照的なのは、前年度比で力強い成長を見せているリヴァプールの£91M、トテナムの£74M、それにマンシティの£50M。

「マニー・リーグ」における、アーセナルとML4位のチームとのギャップ

チーフエグゼクティヴのアイヴァン・ガジディスはかつてこんなことを誇らしく述べていた「バイエルン・ミュニックのようなレヴェルのクラブと競うことができるようになるべきだ」。しかしながら、2009年のAFCはMLで4位だったバイエルンから£23M少ないだけだったが、2018年にはMLで4位のクラブとの差は£168Mまで伸び、アーセナルは5位から9位に順位を落としている。

CLクラブとELクラブの収益2018/19 イングランド(見込み)

CLの出場を逃していることは、AFCの収益にとり痛恨の打撃となっている。18/19にはELでファイナルまで到達しているけれど、それの価値はたったの£32Mにすぎない。CLに出場するイングランドのクラブなら最低でもこれが£50Mとなる。実際、ファイナリスツのリヴァプールとトテナムは、それぞれ£98M、£90Mを受け取っている。

※訳注:図表のタイトルは「ヨーロッパのTV放映権収入」となっているが、図表の内容はCLとELにおける賞金などTV収入だけではない合計収入の比較となっている。TV Pool(青)だけならCLクラブとELクラブで大きな差はない。大きな差が出ているのはむしろTV以外の部分である。

ヨーロッパ(CL/EL)のTV放映権収入 直近4年 イングランド

この2年のヨーロッパの試合(CL/EL)でのTV放映権収入で、AFCはビッグ6のなかでもはるかに少ない稼ぎしかない。リヴァプールの£189M、トテナムの£163M、マンシティの£157Mに対してたったの£74Mである。AFCは、ビッグ6のなかでそれ以前の2年間からヨーロッパでのTV放映権収入を下げている唯一のクラブだ。ピッチでの成功がいかに重要であるかということ。

PLにおけるTV分配金の成長 2016-2019

これは国内では平等性がある。公平に分配しようという仕組みのおかげで、AFCのPLでのTV収入はほかのビッグ6クラブと近いものとなっている。それでもこの3年でAFCの伸びは最低。たとえば、トップのリヴァプールが£62Mなのに対しAFCは£41M。

コマーシャル収益の成長

AFCのコマーシャル収益はこの3年では、かろうじて伸びが見られる程度。2015年からはわずか£4Mアップ。同じ期間でほかのビッグ6クラブの成長は£38Mから£79Mといったところ。ノースロンドンのお隣さんトテナムは、アーセナルとのギャップをかなり縮めてきている。

アーセナルのコマーシャル収益 vs その他ビッグ6クラブ

コマーシャル収入は、長い間アーセナルの泣き所になっているが、トップ4との差を大きく拡げられるようになったのはこの3年のことだ。マンUが£94Mから£169M、マンシティが£70Mから£125M、リヴァプールが£13Mから£47M、チェルシーが£5Mから£58M。ガジディスってコマーシャルのエキスパートなんじゃなかったっけ?

公正のために云うと、AFCには19/20にはよりよいスポンサーシップがやってくる。新しいエミレーツの契約とアディダスが、追加で年に£40M(それと18/19から袖スポンサーのVisit Rwandaが£10M)をもたらす。ただ問題は、ほかのクラブもそれを黙って見ているわけではないということ。彼らのディールもまた増加している。

マッチデイ収益の成長

エミレーツステイディアムに引っ越したことで、AFCのマッチデイ収入(※入場料収入)は£100Mあたりに増えた。しかし、それ以来成長はずっと鈍っている(チケット価格が上がってないのはいいことだね)。その間、ほかのクラブはステイディアムの移転や拡張で収益を伸ばしている。

アーセナルのマッチデイ収益 vs その他ビッグ6クラブ

これが意味することは、AFCはマッチデイ収入においては、まだほかのライヴァルたちよりもアドヴァンテイジがあるということ。しかしそれも着実に侵食されてきている。いまではその差はとても縮まってきていて、とくにリヴァプールの£52Mから£18M、トテナムの£50Mから£28M。新しい座席でこれから数ミリオンは追加されるだろう。

選手売却による収益 直近5年

17/18の£120Mを除き、近年のAFCは選手の売却を通した資金稼ぎではずっとプアな状況だ。直近の5年間で、AFCが稼いだ£165Mは、ライヴァルに遠く及ばない。チェルシーが£337M、トテナムが£265M、リヴァプールが£260M。マンチェスターのふたつのクラブよりはマシだが、彼らはAFCとはかなり違うビジネスモデルのクラブだ。

アーセナルの選手売却による収益 vs その他ビッグ6クラブ

それ以前の5年間(2009-2013)で、AFCは選手の取り引きで実際にもっとも大金£180Mを稼いでいた。しかしそれ以来、この動きがより重要になってきているにも関わらず、アーセナルは後退してしまっている。

アーセナルの選手購入(ネット支出) vs その他ビッグ6クラブ

AFCの選手購入におけるネット支出(※net spend=選手売却益を含まない支出)はこの4年で飛躍的に増えた。£40Mから£232M。しかし、これは間違いなく少なすぎるし、遅すぎる。マンチェスターのクラブは限界を超えて支出している。マンシティが£517M、マンUが£447M。チェルシーの£194M、リヴァプールの£184M、トテナムのマイナス£29Mよりは使っているけれど。

アーセナルの選手購入(グロス支出) vs その他ビッグ6クラブ

しかし、これはAFCがコンスタントに選手の売却から資金を生み出せていないからであり、グロスベイス(※gross spend=選手売却を含む支出)では、トテナムより上回っている以外、支出はほかのクラブよりだいぶ小さい。この4年間で、AFCが支出した£360Mは、マンシティの£689M、マンUの£604M、チェルシーの£546M、リヴァプールの£447Mよりかなり少ない。

アーセナルが購入した選手 直近5年

これもまた公正を期すために云うが、AFCはついに「spend some fucking money」をやるようになったけれど、その使い方は決して上手ではない。右欄に追加した選手レイティングはもちろん主観に過ぎないが、2013年以来の5年間で500M近い金を使ってきたことについて、多くのファンは獲得された選手たちがその金額に見合った価値があるかどうか疑問を感じているのではないか。

長いなこれ(笑い)。予定を変更して2回に分けよう。

つづきは追ってアップ。

Part2へ。



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