試合の論点
アーセナル vs ラピッド・ヴィエナのトーキングポインツ。
ラカゼットがNo.10でシャイン☆彡の理由を考える
先週に自分で書いたELモルデのレヴューを読んでみたら、みんなが楽しそうにプレイしたのに唯一ラカゼットだけがネガティヴだったと書いていた。彼のフォルス9はやめたほうがいいんじゃないかと。
図らずもそれを実現してくれたのが今回で、なんとラカゼットを最初からMFにしてしまった。そして予想外の大活躍。圧倒的MOTM。本来のポジションじゃないところで大活躍なのだから予想外と云っていいだろう。「ラカゼットNo.10論」は以前からあったが、こんなふうに実現し、功を奏すとは思わなんだ。このブログのコメントでもたしか最近誰か書いてくれてたよね。
10分の度肝を抜くスーパーゴールがあり、ミドフィールドでのリンキングプレイがあり、スルーボールでのチャンスメイキングがあり。「えっ」て云いたくなったよね。「えっ」て。
どうして彼はあのポジションでうまくいったのか。
(相手のレヴェルが低すぎるというのは考慮しなければいけないが、それを最大の理由にすると書くことがなくなるのでひとまず置いておこう)
アルテタはこのNo.10ロールでの彼の進歩したパフォーマンスについて、少し自由になったということを指摘していたが、それはわりとあると思う。
スペイスがあるという意味だけではなく、フォルス9をやっていたときの彼は、深い位置でのミドフィールドを助けるというタスクを負いながら、同時に得点というストライカーのタスクも背負ってプレイした。彼は当然ストライカーを自認しているのだから、自分で自分にプレッシャーをかけていたかもしれない。
今回はあのポジションでプレイしたということは、チームプレイを活かすことのほうに専念することになった。つまりゴールをしなければならないというプレッシャーからいくぶん解放された。もちろんそれはアーセナルに来てからほとんど初めてのことだったはずである。
そしてそのとたんにあのスーパーゴールを決めるというのがなんとも皮肉に思えるが、仮にメンタリーな理由で彼がゴールから遠ざかっていたと考えれば、それはちっともおかしなことではない。力みのない素晴らしいシュートとゴールだった。
それとポジションを下げたこと、あとはAMNがラカゼットの近くでプレイしたことで、ピッチ中央が活性化し、彼がボールを触る機会も増えた。それも彼にリズムを取り戻させた理由かもしれない。
この試合の戦術分析ではこのtweetが興味深かった。ぺぺ・ネルソン・ラカゼット・AMNでミドフィールドにボックスをつくっていたとかなんとか。
#afc deployed a box midfield with Pepe and Nelson moving centrally to form a box with Laca and AMN. The box midfield helps create attacking rotations and opens up the wide areas for the FB’s to exploit. Nelson + Pepe being closer allows them to create space with quick interplay. pic.twitter.com/28JH40cw0P
— Dom (@DomC0801) December 4, 2020
前回のELモルダでも彼は今回と似たような役割でプレイをしていたが、タッチは42/75分。今回の彼のタッチは46/63分。プレイタイムは10分以上少ないがタッチは少し多い。進歩がある。ちなみにパスアキュラシーも72%から83%にジャンプアップしている。ミドフィールドの活性化と彼のフォーム向上と、相乗効果があった。
そういったもろもろの理由でかなりうまくいったのだろう。もちろん試合の序盤でゴールを決めたことそれ自体もポジティヴに作用したはずである。
アーセナルが求めているNo.10ポジションの本来の役割からすると、ラカゼットのスキルセットとは必ずしも合っていないように思うが、もしこれでうまくいくようなら、今後定着する可能性はある。ストライカーの後ろにNo.10、あるいはセカンドストライカーとしてのラカゼットがいるという、相手にとっては非常に嫌なチームになる。
ところで、ぼくは試合を観ながら、なんとなくルーカス・ポドルスキのアーセナル時代を思い出してしまった。なんだか、ラカゼットのNo.10はポドルスキの左ウイングと似ているなと。ポジションと選手はあまり合ってないのだけど、なんだかんだそのチームのセットアップのなかでそれなりにうまくいってしまうという。そして藪から棒にゴラッソ。
まあでもポドルスキよりはラカゼットのほうが万能な感じはするので、ラカゼットのMFのほうがうまくいくかもしれない。MFの練習に近いことはそれこそ実戦でこれまでもずっとやってきているわけだし。
NLDでオバメヤンの背後にラカゼット。。正解は横配置ではなく縦配置だった。。ラカゼットがうまくいくってことはオバメヤンもうまくいくということ。こりゃあもしうまくいったら大発明になるかもしれませんな。じゅるり。
その他試合について
- ティキタカ。なにあれ
- リース・ネルソン。もっとチャンスがほしい。どんどんよくなる。ただし止まったボールを蹴る練習はもっとしたほうがよさげ
- AMN。CMで活躍すんのは初めてじゃないんだよな。チャンスがほしい
- エンケティア。今シーズン11ゴール。ゴールの平均距離は「5.4ヤーズ」とのこと。いるべきときにそこにいる。それもストライカーの才能。今回は目の前に跳ね返ってきた。それも才能
- ESR。入って3分でゴール。今回はわしのこころの叫びがボスに届いたのか30分もプレイさせてくれた
- セバーヨス。彼もめっさよかったなあ。彼のようなパスを出せる選手はいまのチームにいない
- ラピッドのGK氏はグレイトだった
- 試合中継で、せっかくお客さん入っているのにフェイクノイズを入れないでくれえと思いながら観ていたが、どうも入れていなかったらしく(BT Sportsの主張)。自分が観たのはBT Sportsのだかどうかわからないが、アレがフェイクでないならけっこうすごい
- ホームなのにアウェイキットとはこれいかに
🗣 “Welcome back, bro!”@MaitlandNiles 🤝 @emilesmithrowe pic.twitter.com/OInJPD9GSr
— Arsenal (@Arsenal) December 4, 2020
いいシーンだなあ。
試合については以上。
AMNのあんなに無邪気な笑顔は久しぶり。良いですなあ。
ミーティングで激しく言い合ったのは、僕はポジティブなニュースに聞こえる。
粕谷秀樹氏じゃないが、強かった時代のマンUはケンガ腰で言い合ってた。
試合中にも、もっと近くに寄ってくれ、もっと動いてくれ、いろんな要求を出しあってる。
それは遊びや冗談ではなくて、ここにパスを通したいんだ!ここを埋めなきゃダメなんだ!っていう切実な要求のぶつけ合いで、それはシビアに突き詰めなきゃダメな事だと思う。
おそらく今のPLで勝つには、いろんな意味で人間の限界を絞り出さなきゃない。
だから少なくともいっぺんは、厳しいことを言い合うのも必要なんじゃないだろうか。
ラカは、昨シーズンCL優勝したバイエルンのミュラーロールがハマるとずっと思ってたので、このNo.10起用が当たったのは今後の起爆剤にしたいですね。(リバポが4231のトップ下にフィルミーノを起用しているように。)
昨シーズンのアウェイクリパレ戦のラカが降りてきてオーバにスルーパスでアシストしたのがいいモデルケースになりそうだなと。キャリア晩年にポジションを下げていったルーニーのようにモデルチェンジしていくのも面白いんじゃないかと思います。
今の面子で中央で受けて、パスをさばける選手はラカが一番うまいから、これはオプションのひとつでいいでしょうね。
とはいえ、ラカだけでなく、そこに絡めるAMNとかネルソンがいたからこそ輝けたと思います。そこに課題があるから、PLではドデカイ穴が中央に空いてると思われ。
パーティなら推進力あるし、絡めると思うんだよなぁ。NLDで見たいなぁ。
アーセナルに来てからいまいち輝けてなかったラカゼットがまさかのNo.10で活躍したら面白いし嬉しい。ストライカーなのにエースのオバメヤンもいるし苦しい思いもしただろうから。
ダービーは思い切った選手起用と戦術で積極的に行ってほしいです。