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【マッチレビュー】20/21UEL QF 1stレグ アーセナル vs スラヴィア・プラーグ(8/Apr/2021)ホームで敗けに等しいドロウ。ELに暗雲

試合の論点

アーセナル vs スラヴィア・プラーグのトーキングポインツ。

ミッション・インコンプリート。ホームでアウェイゴールを許す大失態

0-0のほうがまだマシだったという。

まず、アーセナルのダメさについて書く前に、スラヴィア・プラーグについて書いておくべきだろう。試合後に「averageなチーム」というふうに彼らを評価しているひとも見かけたが、想像していたよりよほど強かった。

試合前のスカウティングで「チェコのリーズ」とあったように、たしかにハイプレッシング・ハイライン。かなりアグレッシヴにプレイしていた。

守備もオーガナイズされていて、アーセナルのビルドアップをフォロウしようとMFに落ちてくるESR、ウィリアン、ラカゼットには必ずマンマークが張り付いてくるのが印象的だった。しっかりわれわれを研究していたし、相手にやりたいプレイをさせない、という強い意思を感じた。

攻撃では、いつもバックからのプレイを試みるのは、ゴールキックをゴーロング一択にしてしまっているレノとは好対照で、オウンハーフでボールを奪われる危なっかしさもありつつも、勇敢さを見せていた。58分には、そのバックからのショートパスの連携でつなぐところから、レノにセイヴを強いるシュートまで大きなチャンスをつくったのには、感心した。それはアーセナルにこそ、必要なプレイだった。

また、つねにFWがふたりトップにいて、ロングボール一本で簡単に2 v 2になったりしていて、成功こそしなかったものの、あそこからいつビッグチャンスが生まれてもおかしくなかった。いかにもアーセナルがやられるパターンである。

彼らは、PLならミッドテーブルチームからボトムチームくらいのクオリティはあったと思う。アーセナルと10試合プレイすれば、5-6試合は敗けるだろうが、4-5試合ではポイントを奪うくらいには強い。みたいな。

セカンドレグはホームで無類の強さを誇るそんな彼らと戦うことに。

アーセナルは必ず得点をしなければならない状況で(0-0ではアウェイゴールで敗退)、自らをかなり難しい状況に追い込んでしまった。

そして、この試合でもっとも大きな論点は、やはりアーセナルの繰り返されるミステイクスの数々だろう。

ひとつは、チャンスを決められないこと。あれだけの大きなチャンスをつくりながら、決められない。

試合中、何度も頭を抱えるアルテタの姿がカメラに抜かれていたが、そうしたくなるのも理解できる。あれはコーチに教えられることではなく、完全に個人マターだ。

だが、一方でしかたがないところもあるだろう。だって、どんな選手でもチャンスを外すことはあるのだから。

29分のサカのチャンスと62分のラカゼットのチャンスは、GKと1 v 1の状況で、あれは決めなければいけなかった。だが、それ以外は、まあ決まればうれしかったが、決まらなくても驚きはない。そういうことがあるから、われわれは繰り返しチャンスをつくらねばならない。彼らが得点できるように十分なチャンスをつくらねばならない。

そしてそんなふうに何度も何度もチャンスをつくり、やっと得点した。それでいいと思う。あそこはアガったよね。

しかし、まただ。

この試合の大きな大きな、最大のミステイクは86分の得点後。残り4分で90分、1-0で勝ちをほぼ手中に収めたあそこはもう時間をつぶすだけの局面だった。なんなら、相手の前掛かりを逆手にとって自分たちがチャンスをつくるべきときだ。しかしそこで失点した。なんと93分。それでホームでアウェイゴールを喫してドロウという、敗けにも等しい結果になった。

もし来週このラウンドでEL敗退するようなことがあれば、このゴールが決定打になる可能性がある。あまりにも大きな、あまりにも痛い1点だった。

捨て身になった相手の極度の攻勢の勢いに押されてパニックに陥ってしまう。相手が10人になってから、逆に劣勢になるという、まるっきり先日のToTの再来である。

最後に失点したのはコーナーキックからだが、あの直前にもレノのセイヴしたボールがポストに当たるような強烈なショットを食らっていて、いかにもやられそうな空気はあった。

なぜ、われわれはリードを守れないのか。先行したときに落ち着いていられないのか。たびたび選択を間違えるのか。

これで14試合連続でクリンシートなし。ゆるゆるFC。

セドリックがガブリエルにボールを戻す場面。なぜここから!?

チャンスを決められないこと、リードしても試合を殺すことができないこと。

何度も何度も、同じ失敗が繰り返されていて、止めることができない。

これだけ同じことを毎回やらかすのだから、原因もわかっていないはず。だからこれからもつづく。この調子では、来週勝ってつぎのラウンドに進めるような気がしないし、PLでも当然勝てない。今シーズンもまた何も得ずに終わる可能性が非常に高いように思えてきた。

アルテタの首はほんとうに今後も安泰なんだろうか。

アルテタが問題なのか問題

チャンスを決められないことは、多くの部分で、おそらくアルテタの問題ではないだろう。選手が責任を負うべきだと思う。

試合中はピッチサイドで頭を抱える彼を観て、気の毒に思ったくらいだ。

ただ、最近個人的に感じているのは、アルテタのオーヴァーコーチングやコントロールフリークぶりに、選手たちが萎縮してしまっているのではないかということ。萎縮というと少し極端かもだが。

ピッチでどういう動きをすればいいか、すべきかを、選手たちはアルテタから事細かにインストラクションを受けていて、それをピッチ上で忠実に再現することが彼らの仕事になっている。自分で考える自由度が少ない。選手はみな自分でしたい/得意なプレイよりも、ボスが望むプレイを優先せざるを得ない。

彼らは極端にボールを失うことを恐れているのは、選手たちのプレイを観ていればわかる。最近はとくに、チャレンジングなプレイに消極的になっているように思える。それは、つい先日も少し書いたとおり。

おもしろいフットボールとアーセナル | ARSENAL CHANGE EVERYTHING

GKはバックからのプレイをほとんど諦めているし、選手たちはショートパスの連携やヴァーティカルパスよりも、ロングボールやサイドへの/バックへのパスをしたがる。MFは可能性の低いショットは打たないし、マークが張り付いている選手にはパスを出さず、ウィンガーはドリブルで相手DFにチャレンジするよりクロスボールを選ぶ。またU字のパス回しが戻ってきているような気さえする。

何かそうして過度に過保護?にされることで、逆に選手たちは自信を失ってしまっているのではないかと。

今回象徴的だったのは、ラカゼットのビッグチャンスだ。

彼は自分でプレッシャーからボールを奪い、相手ゴールまで独走するという絶好のチャンスをつくった。まさに対人でアグレッシヴにプレイする彼を起用した成果。そしてストライカーなら絶対に決めなければならないというレヴェルのチャンスが生まれた。

それが、どういうわけか彼は独走を始めてから、スピードを落としてしまい(ボールコントロールのため?)、結局相手のDFには追いつかれなかったものの、GKとの1 v 1でショットをフレイムから外してしまった(※実際はポストにヒット)。 ゴール裏からのカメラのリプレイでは、彼がどれだけGKにボールを当ててしまうことを恐れていたかがわかるくらいには、GKから遠くゴールのアウトサイドを狙っていた。

ああいうシーンでストライカーがショットを外すシーンというのは、しばしば観られることではあるので、それくらいにはじつは難しいプレイなんだとは思う。

だが、われわれがそこに観たものは、プレイの難しさというよりも、ストライカーのセルフコンフィデンスの欠如ではなかろうか。彼は絶対に外せない状況が、逆にプレッシャーになってしまいイージーなショットを外してしまったように見える。実際、彼ほどのクオリティの選手ならほとんどの状況では決めているはずだ。

しかし、ああいうことが実際に起きた。

サカのショットミス、ラカのショットミス、得点後のパニック。この試合の前に起きているすべての悪いこと。どれも必要以上にナーヴァスになっているためのように思える。そしてそれがどこから来ているのか。

やはり、アルテタというボスの醸し出しているプレッシャーなんじゃないかと思うのだ。個人エラーズの問題発生から以降がとくにひどい。想像するに、アルテタは個人エラーをやめさせようとして、何か正しくないインストラクションをやっているのかもしれない。非常にデリケイトに。もちろん彼は情熱的でもあるが、基本的にロジックで説得するタイプに思えるし、そういう相手に正面から反論はしにくい。選手は大きな責任も感じるだろう。

アルテタはまだリタイヤしてからさほど時間もたっていないので、選手の立場もかなり理解できるが、もしかしたら彼は自分のスタンダードを選手に要求しているかもしれない。そしてそれはかなり高い。

ぼくは教育やコーチングについては、あまり詳しくないので突っ込んだことは何も書けないが、誰かを指導するうえでは、おそらく状況に即した正解のアプローチというものはあるんだろうと思う。だから、アルテタのいまのやり方は何かが適切じゃないのではないかと少し疑っている。彼にはこれまでにマネジャーとして成功したキャリアはまだないわけで、そのあたりの経験がない。

あるアプローチがあったとして、それが選手に、人間の心理に、どう影響するか。いろんな性格の選手・人間がいて、あらゆるコンテキストがあるので、ひとつの正解があるわけではないだろうが、それにしてもその都度適切なやり方を見つけて習得していくためには、トライアンドエラーのようなものが必要で、それは彼にはまだ足りていない。

ちょっと思ったのは、ヴェンゲルさんのマネジャーとアルテタのヘッドコーチはじつはベストマッチングなんじゃないかということ。もちろん、いまさらアルテタが降格を受け入れるはずもないだろうが。

選手のインスピレイション重視で放任主義のヴェンゲルさんと、コントロールフリークで過保護のアルテタ。相互に補いあえる要素がたくさんある。このふたりならアメとムチみたいにして、かなりうまくいくんじゃないだろうか。

※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

5 Comments on “【マッチレビュー】20/21UEL QF 1stレグ アーセナル vs スラヴィア・プラーグ(8/Apr/2021)ホームで敗けに等しいドロウ。ELに暗雲

  1. 当地アメリカ国内の放送では、試合前に過去対戦の7-0のスコアシーンが出ていて、若きセスクの美しいミドルシュートから始まり、若きウォルコットが走りまくり、ヒールパスにゴール前の詰め・・・全てが美しかった。あの映像みせてから試合に臨んでいたらサカもラカも、あの1対1をリラックスして臨めたのかな・・・なんて。まあ、最後が全てでしょう。気持ちで押されていて、いつ入ってもおかしくない敗者のメンタリティー。ホームで1点しかとれないほうが、やっぱり問題な気がしますが。サカとマルティネッリはもうずっとスターターでお願いしたい。リースやエンケティアに、もう時間をもっと与えるべき。疲れたパーティーよりも、元気なエルネニーのほうがやっぱりいいので、交代の判断の遅さは常にボスの課題のような気がします。もっとベンチ活性化させてくれー。COYG

  2. 今回も楽しみにしてました!苦行のお供をさせてください!笑
    ヴェンゲル+アルテタのコーチ陣は魅力的ですね、夢物語でしょうが。。
    ウィリアンにしろガブリエルにしろトーマスにしろ、
    デビュー直後は期待に応えたあと徐々に錆びついていく感じがするのが何とも切ないですね。。
    次のゲームはとにかく1点取れるかどうかが焦点だと思うので
    是非攻撃的な姿勢を見せて欲しいですね(特にメンタル的に)COYG!

  3. アルテタ厳しすぎ問題はあるかもしれませんね
    ミドルが少なかったり、Uシェイプが多かったり独創性が無いのもそうでしょう
    結果が出てないのでそろそろエメリみたいに選手側から反乱起こすかも知れませんね

  4. >アルテタ厳しすぎ
    戦術的と言われる比較的若手の指揮官が、策に溺れてマネジメントに失敗するというのはありがちな気がします。
    個人的にはエメリもその部類。
    若手監督は心理の把握や組織マネジメントといった部分ではまだ未熟で、戦術定着とそこのバランスが取れないことがままあると思います。ある程度戦術を簡略化して指示をシンプルに、選手が動きやすくすることも必要だと思うのですよね。

  5. まあ普通にプラハは強かったし、いいチームだった。
    仮にもベスト8なんだから当然か。

    一杯一杯という感じはするけど、何とかチャンスを作ってたのは評価したい。
    アルテタのチームセレクトもかなり攻撃的だったと思う。
    僕はもう少し守備的にやるべきだと思ってた(今でも)けど、一貫性という意味ではこれが王道ではあると思う。

    今のストラクチャはかなり攻撃的で高い水準をキープしないと機能しないが、あくまでもその水準を越えるまでチームをプッシュしまくるつもりなのかも。
    サド気質のベンゲル?w

    攻撃的なサッカーを望んだのはファン自身でもあるし、これがアルテタのやり方なら最後までやらせるしかないかなあと。
    「小便は自分のPでするしかない」。。。英国の(下品なオッサン達の間の)諺なんだそうで。

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